2008年7月17日 (木)
2008年7月15日 (火)
事の真相と重大発表?
そろそろ次の日記の予想も付きそうなところで、長女である海晴姉の登場です。
数日前に日記帳の背景が模様替えを行って、夏真っ盛り!な感じです。
そんな今年のGWの海へ行ったときのことを髣髴とさせる、透き通る青い海を背景にする海晴姉。
名前と、その性格。それと背景がぴったりとマッチしているんじゃないかしら。
そんな海晴姉の日記のタイトル。
なにやら予感させる響きを含んでいるんじゃないかしら。
「今年の夏の予定は!」なんて。だって、彼を迎えた初めての夏なんだから!(これはどの季節にも言えるのだけどね)
さて。
気になるタイトルで始まった日記は、霙姉さんのことです。
昨日の夕凪さんで、さらりと触れはしましたが、やはりちゃんとした報告が欲しいところです。
だって、海晴姉さんは「一晩くらい心配しなくたって大丈夫」なんて言ってたのに、当の霙姉さんは結構危なかったように思えるんですから。
そんな海晴姉さんの話によれば……
いくらみんなにお土産に買ってきた
カレーパンの数が足りなかったからって……
そんな遅くなるまでムキになって探し回ること
なかったのに、ねぇ?
ええー(棒読み
まさか、そんな理由だったなんて。
でも、みんなで食べたかったカレーパン(きっと家族でテーブルを囲むところを想像なんてしてたんじゃないかしら)の
数が足りないだなんて許せなかったんじゃないかしら。
兄を含めて20個(小さい子は食べられないからもう少し少ないわね)もあるお店なんてないでしょうし。
直ぐに見つかると思っていたから、意外に上手くいかないので、知らずの内にムキになっちゃったのかな。
霙姉さんに頑固属性がついたみたい。
色々拘りを抱いてそうな人だから、そうかのかも。
しかし、カレーパン。
どら焼きに始まり水羊羹と、餡子好きな霙姉さん。
若しかして、普段甘味ばかりなので「私も辛いものが食べられるという、姉らしいところを見せなくてはな。フフフ――」とか……思ってませんよ。
一晩中、空っぽのお腹を抱えながら、
そのパンを1つも食べないで取っておいたなんて――
これ。
一度買った分を家に置いて、足りない分をまた買いに行ったということかしら?
それなら青空が姿を見たというのも分かるのだけど……うーん。
それで、足りない分を何とか仕入れたものの、真っ暗になって裏門と間違えて、それで迷子になってしまって……
東屋があるようなトゥルーハウスですから、それを間違えては帰ってこれないほどに。
それにしても、迷子属性というか方向音痴属性というか。
どうにも、困ったちゃんな感じですね。霙姉は。
そしてここでも発揮された頑固属性。
「これはみんなで食べるんだから駄目だ。それに、私は辛いのは駄目なんだ」なんて、決死の想いで抱えたカレーパンに手をつけなかったのね……
可愛いわよ、霙姉さん。
どうしようもない駄目な感じはするけれど……それすら愛しいというか。
キミに見つけてもらえて、霙ちゃんも――
せっかく迷子になったかいがあったというものよね?
こ、これは!
やっぱり(普段から姉らしい、少しえっちぃ誘惑の霙姉さんですけど)霙姉さんも、彼のことが好きなのね。
だけど、コレがきっかけとなって迷子ブームが起きたりはしないわよねー。
自分もお兄ちゃんに見つけてもらうんだ!って。
うーん。精々隠れんぼを強請るぐらいかしらね。
でも、こんな話を一番上のお姉ちゃんがしてくれたってことは、太鼓判じゃないかしら。
霙姉さんを妹として評価できるのは、たった一人なんだから。
そうすると、海晴姉さん本人が一番謎ということになってしまうのだけど――
うわー、みんなキミと組みたがって大変だぞ~(はぁと
そんなこと言いながら、自分もちゃっかり争奪戦に参加する気満々なのを覗かせる辺り……
きっと、肘なんかでわき腹をウリウリ~っとしながら、どうするの~?と、小悪魔っぽく迫ったりしてるんじゃないかしら。
この家族がみんな大切なのに、こうまで言われてしまっては「海晴姉さんと一緒に行きたい!」なんて言ってしまう衝動に駆られてしまうかも!
長姉にして、一番の困ったちゃんかもしれませんね。海晴姉さんは。
ここでもう一つ話に出た裏山。
なんだか昔は手入れをしていたかのように読み取れもしますけど……どうだったのかしら。
この海晴姉さんをして「今やかなり――激しい感じよね……」と言わしめる裏山。
(その直後に、とても軽い感で楽しんでしまうのですけど)
そんな恐ろしい裏山を使うイベントとして思いついたのが「肝試し」!
さっき危ないって言ったのに!
しかも「ほら、ウチにはレーダー役の観月ちゃんがいるし(はぁと」だなんて。
でもここで、観月の力というものがホンモノらしい、という話になってきていますよね。
はぁ。
なんでも楽しんでしまうほどのバイタリティがないと、この家族の長姉は務まらないのかも……ね。
そういうわけで、じゃじゃーんっ!!
(ふ、古い。って思ったのは内緒ね)
そんな海晴姉の口から飛び出した重大発表の内容とは……?
1:夏の旅行は8月11日から18日までの一週間!
(だからその間は、この日記はお休みね(はぁと )
2:7月の連休はみんなでプールに行くこと!
3:8月2日は花火大会
4:8月最終週は、盆踊り大会
おー!
でもこれってトゥルー家では、毎年恒例の行事なのかしら。
でも、今年は新しい家族を迎えての初めての夏休みなのだから、内容は同じでも気合充分!かも。
ああ、これは楽しみだわね?
彼もいつも以上にテンションの上がった家族を前に、倒れたりしないよう、今からしっかり体力付けておかないとね。
逃げたら――許さないから(はぁと
そんなこと言いながら、悪戯っぽい瞳と、がっちり固める腕で、絶対に逃がさないつもりの海晴姉さんが可愛くてしかたないです。
2008年7月14日 (月)
新婚なの! 10-23
「なんか元気ないね」
大きく唸りを上げながら、定刻より少し遅れて到着したバス。
こんなところからも、自分は今、故郷に帰ってきたんだなぁと思わせてくれます。
静かに、定刻どおりにやってくる公共交通機関。
日本のそれは、大概時間に正確ですが、色々と技術の進んだミッドでは、もう一つ正確なのです。
そんな、少し遅れたバスに乗り込んだ二人。
顔をむっと撫ぜる熱気に、思わず声が漏れてしまいます。
今日は、この時期にしてはいくらか温かいというのに、バスの中は充分すぎるほどに暖房が効いていました。
日差しと反対側の、陰になっている席を取ろうかと思いましたが、もう一度親友の顔を見たいと思い、なのはは、あえて日の差すほうを選びました。
そこで、手を取っていたお嫁さんのことを思い出します。
嫌じゃないかしら、と思い尋ねてみれば、別に、とだけ。
素っ気無いのはいつもの通りだとしても……
引っかかりは、やはりという思いでしたが、ここは自分を気遣ってくれたのを無下にしないよう、なのはは素直に好意を受け取ることに。
ガラス越しに受ける日差しは、こちらへ来た時よりも幾分か弱くなっているみたい。
単に位置的な問題なのか、主観なのか、それは分かりません。
そうする内に、車内にアナウンスが流れ、バスは一度、大きく身体を揺らしては、ゆっくりと進み始めました。
「私、こっち側で良いよね?」
尋ねる声に、またも素っ気無く答えるヴィータ。
というのも、尋ねる前になのはは窓側にいましたし、ヴィータは既に腰を下ろしていて、尋ねるまでもないだろ、と言うことだったかもしれません。
足を投げ出し――深く座ると、足が床に着きません――、ぐったりするように背中を預けているヴィータ。
ひどく疲れたように見えます。
自分たちだけで盛り上がってしまったし、気疲れしてしまったのかもしれません。
その、気疲れというのがどういう意味でのモノなのか、考えなくてはならなくて、必要ならば、ちゃんと確かめなくちゃ――
今のヴィータの様子だけではなくて、その前からの違和感の正体。
なのはが、それらを考えようとしたところで、バスの前方に、バニングス邸の大きな門構えを見ることが出来ました。
窓側に身体を寄せ、ぐっと顔をせり出します。
アリサちゃんとすずかちゃん、まだ居てくれるかな――
なのはの、そんな想いとは裏腹に、既に表門には二人の姿は見えず、僅かばかりに気を落とすことに。
やっぱり不義理が過ぎたかなぁ、などと冗談めかせば、ヴィータも同じように窓の向こう――反対側ですが――へ視線を投げ、物思いにふけっているようです。
こう言うときは先制攻撃。
敢えて、ヴィータちゃん元気がないね、と聞いてしまえば、当然のように――しかも素っ気無く――いつも通りだ、と答えます。
そう言ってくれるなら大丈夫だ、と思う反面。
憂いとは違う、悲しみともいえる光を湛えた、その青い大きな瞳。
今にも溜息を吐きそうに開かれた、小さな口。
なんの意思も感じられない、手。
一度中断されてしまった、違和感の正体を探るべき思いが、ふと蘇り、その感覚にある程度の確信を得るのです。
今確かめようか、それとも――
自分に気付いていないだろう、彼女の視線に、なのはは幾らか悩むのでしたが。
「そっかな。いつもはもっとぷりぷり怒ってる感じだ――いたたっ」
「怒らせてるのは誰だよ。アタシだって怒りたくって怒ってるわけじゃないんだぞ」
「んもー。ぷりぷり、ってところが可愛いのに……」
大げさに頬をさすってジットリ目を装えば、お返しとばかりに、いーっ!としてそっぽを向いてしまいます。
そんな顔も可愛いんだよ~?なんていって、次の反応を引き出そうとしますが、そっぽを向いたままの顔は、なのはを向くことはありません。
怒っているより、笑ってくれる方が嬉しいのは当たり前ですが、落ち込んでいるよりは、怒っている方がマシです。
落ち込んで、内へ内へと向いてしまうのは良くない傾向です。
どこまでも落ち込んでいってしまうから。際限なく、内へ内へ。下へ下へ……
そうやって落ち込んだ心は、いつしか身体をも引っ張って落ちていってしまいます。
そんな心に引っ張られた身体は、少しずつ蝕まれ、気付いた頃には、取り返しのつかないことに。
ならば、となのはは思ったのです。
かつての自分が同じであったから。
そうする自分に、ヴィータはいつものように怒ってみせます。
怒っているのは、少なくとも、外へ関心が向いているから。
だから、安心したのです。
鬱屈を溜め込むことなく、外へ向けることで、それに身体が蝕まれてしまうことを防ぐことが出来るから。
今のヴィータが、それほど重症ではないだろうけれど、それは他人からは気付きにくいもの。
いくら夫婦だといっても、結局は、どこまでも二人は別の人間なのですから。
若しかして、と思うならば、行動に移すべき。
間違っていても、それが杞憂ならば問題はないのです。
それを恐れて、取り返しのつかないことになるぐらいなら、比べることすらないほどに。
そうやって、なのははヴィータが怒るという反応を見せてくれたことに、少しだけ安心するのでした。
「もう。ヴィータちゃんったら~」
人気のないバス。
心地よささえ感じる、エンジンの振動。
足元のヒーターが吐く熱い風に、窓からの温い日差しが思考を鈍化させます。
ヴィータちゃんとお喋りしたいなぁ。
それは、純粋な欲求と懸念。
けれど、落ち込むその理由と、そこから立ち直らせることへの突破口が見つからないまま、微温湯のような空気に委ねてしまうのでした。
2008年7月12日 (土)
新婚なの! 10-22
少し早めのお昼ご飯も終わって、珈琲タイム。
積もる話もあったわけでしたが、いかんせん時間が圧倒的に足りません。
三人は――ヴィータは様々な理由で余り参加しません――、そんな残りの時間を惜しむように、話に華を咲かせるのでした。
その場において、先ほどの"空気の悪さ"の原因を知らない、なのは。
一人、いつもの調子を崩さなかったわけですが、果たしてそれは、知らぬが故の当然の態度であるのか、それとも。
それは、本人にしか分からぬことで、ここ数年寝起きを共にしているヴィータが本来の調子であれば、本当のところが分かってかもしれませんが。
多くの場合において、なのはの態度は前者であるとみて間違いないでしょう。
ですから、アリサとすずかも、特に詮索することもなく、この残り少ない時間を楽しむことに決めたようです。
この、不義理な親友が、またいつ自分たちの前に姿を現すか分からないのですから。
「ごめんね、次の予定もあるから」
「ううん。少しでも久しぶりに電話越しじゃない声が聞けて嬉しかったよ」
「こ、今度からはもう少し顔を出すようにします」
食後のコーヒータイムも終わり、二人を見送る為にアリサとすずかも正門まで足を伸ばします。
一度は言いましたが、再度断るなのはに、すずかは初めて、皮肉に類する棘を忍ばせたのです。
油断していた――なのはは、そう言わんばかりに苦笑いをしては、素直にしゅんと、反省するのでした。
アリサと違って、こういう場面において、すずかに敵うわけがないからです。
「良かったら車出すわよ? こっからじゃ不便でしょ」
「そこまで甘えるわけにはいかないよ。じゃあ、バスの時間見てくるね」
アリサの有難い申し出を丁寧に断り、バニングス邸の正面を構える門構えを抜けて、少し離れたバス停へ駆けていくなのは。
ヴィータをその場に置いて行くのに、意味はないでしょう。
生返事をするヴィータ。
徐々に小さくなる背中に、何故か自分もついて行くとの言葉を継ぐことが出来ませんでした。
それは、自分の隣に立ったアリサの、無言の訴えがあったからかもしれません。
それが気になって、生返事にもなってしまったのです。
ただ、アリサは無言なのですし、雰囲気がそうだと言っても、これが勘違いである可能性は充分にあります。
勘違いならそれで構いませんし、もし、自分の直感が正しいのであれば、伴侶の親友のそれを聴かなければなりません。
まだその親友は、何か言いたい雰囲気を、珈琲を飲んでいるときから纏い続けていたように感じたからです。
完全になのはの気配を感じなくなった頃。
それは、隣に立つアリサも同じだったのでしょう。
それを合図にするかのように、アリサが独り言のように、切り出しました。
「……ヴィータ」
「はい」
日が昇りきり、後は下っていくだけの昼下がり。
身を包む空気は充分に温まりきり、すでにピークは過ぎた頃でしょう。
そのお陰で、薄い上着を羽織るだけでも充分な、冬を前にした時期とは思えない温かさ。
そんな温む空気が、さあっと動いては二人の頬を、そっと撫ぜていきます。
まるで、ささくれ立つ心を宥めるように。
そっと髪を抱えるすずかとは対照的に、風の撫ぜるままに任せるアリサ。
身長の違うヴィータには、当然に、その二人の姿を見ることは出来ませんでした。
「私は――なのはがあんなだから正直、フェイトじゃなくて良かったと思ってるわ」
「は、はい」
先ほどとは違うことを口にする。
けれど、そこには揶揄も恨みもなく、その言葉通りの意味で捉えてよいようです。
しかし、聡明なアリサのことです。
そこには自分では分からない何かが潜ませてあるのかもしれません。
ヴィータは、話を先へ進ませるためだけの、なんの意味のない返事をするだけしか出来ませんでした。
それに構うことなく、アリサは続けます。
「だから。人任せってのは基本的にイヤなの。でも、仕方ない――ああ、この言い方もイヤだわ、ホント」
「……」
本当に嫌だということが分かる。
舌打ちをしんばかりに吐き捨てるそれは、自分自身に向けられたもので、ヴィータは遠慮することはないのですけど。
アリサの、自身に向けられた嫌悪感とでもいうべきものは、あふれだし、ヴィータの皮膚をピリピリと敏感にさせるのに充分なほどでした。
それほどの嫌悪感。
それでもアリサは続けます。
「今、なのはの隣にいる人に任せるしかないじゃない。フェイトも……あたしも、違うんだから。だから――」
「…………」
「――なのはのこと、頼んだわよ」
無感情な、抑揚のない声。
けれど、触れる空気すら痛いほど敏感になったヴィータには、その裏にひそむ意味をある程度ですが、掴むことが出来ました。
悔しい。
心配。
気がかり――それと……
言葉に、既存の言葉で言い表してしまうと、陳腐にさえ感じられる。
言い表せない、もやもやとグラデーションのように境目のハッキリしない、それ。
正直に、赴くままに露わにしてしまうのを躊躇った理由は分かりません。
ですが、アリサが現にそうしたのは事実なのです。
胸に抱える想いを押し止めた結果が、紡がれる言葉をそうした。それだけです。
「あの子。昔っから突っ走る傾向があるし、向こう見ずっていうか。よく言えば一途なんだけど」
「分かります、それ」
呆れるように。
けれどしっかりと、愛情を滲ませる。
遠くに投げかけられるように。
「だから。フェイトみたいに遠慮するんじゃなくて、ヴィータみたいにはっきりモノの言えるこの方が良いわけよ。
まあ、あの子は人を見る目があったわね。友達選びから――伴侶選びまで。自分に必要な人が分かってるんだから」
「それって自分のこと?」
笑いながら、からかうようなすずか。
くすくすと、隠す様子もないそれは、久しぶりに感じた笑みのようにヴィータには思えます。
話の腰を――それも嫌な形で――折られたアリサは、おほん、と咳払い。
「茶化さないの。ま、そういうこと。"あたしが"、頼んだから」
それまでにない、強い意志を感じます。
特別な力などない、魔法も使えないと言うのに。
そこには抗えないと思わせる、強く、胸を叩くような衝撃をヴィータは受けるのです。
"頼まれた"という事実。
そこに込められた、親友である彼女の想い。
その言葉を何度も反芻しては、しっかりと胸の中に染み込んで行くのを感じるのでした。
そんな二人の間を、温かな風が吹き抜け、身を纏っていた空気が、それに溶け込んでどこまでも広がっていくようです。
段々と近づいてくるなのはに、その想いが知られてしまうんじゃないかしら、と意味もない心配をして。
ただ。その風に身を任せるのでした。
「ふぅ、ただいま。バスの時間ね、今から丁度来るみたいだよ?」
「だったら向こうからヴィータを呼べば良いじゃない。二度手間でしょ?」
アリサの指摘に、あっ、そうか、という顔を一瞬作りながらも、すぐにかぶりを振るなのは。
「アリサちゃんとすずかちゃんにちゃんと挨拶しなきゃって思い出したから」
「ふうん。普段の不義理をする様子からは、考えられないような心掛けね。結構よ。これからもそれを忘れないように。分かった?」
「は~い、分かりました」
まるで先生のように偉ぶるアリサに、それこそ叱られた生徒のように、余り反省の色を見せないなのは。
それでも、ヴィータから「今度からアタシが言ったときにちゃんとするんだぞ」なんて、すかさずアリサへの援護射撃。
流石のなのはも、これでは形無しです。
どうにかこの場を切り抜けようと考えたのか、ぽんと手を打ちました。
「じゃ、じゃあ。バスに遅れちゃうといけないから。アリサちゃん、すずかちゃん。またね。近いうちにきっと遊びに来るから」
「精々期待しないで待ってるわ。んじゃ、身体に気をつけて」
「またね、なのはちゃん。フェイトちゃんとはやてちゃんにも宜しく伝えておいて」
「は~い。それじゃヴィータちゃん、行こう?」
話を引き摺られないよう、ヴィータの手を取るなのは。
強引に引っ張ろうとしますが、まだ自分は言いたい事があるのだと、その場に踏みとどまります。
「あ、あの……また近いうちになのはを連れてきます」
「ええ。待ってるわ」
「ヴィータちゃんも。ああ、そうだ。鍵、持って行ってね」
「はい、ありがとうございます」
親友との別れは名残惜しいはずですのに、叱られてばかりのなのはは、逃げるようにヴィータの手を牽いて走り出します。
まだ何か言いたいことが――
何か、なのはに直接あったんじゃないか、とアリサの視線を感じていたヴィータですが、それを聞き出す勇気も器量もありません。
苦々しく思いながら、それに代えて"また連れてきます"とだけ。
伝わっただろうか、と思いながら、しっかりと握るなのはの手に、黙って引っ張られていくのでした。
「嵐が過ぎ去ったみたい――かな?」
「全く。もう少し余裕を持って来なさいよ。普通もっとゆっくりしていくもんでしょ?」
聞くべき人間のいない言葉。
悪態を吐いたとしても、それは意味を成さないのかもしれません。
そうだとしても、アリサは言わずにはおれず、すずかは、親友の気質を踏まえて応えます。
「う~ん、そうだね。ちょっと残念だったかも」
「そうやって甘やかすから駄目なのよ」
走り行く二人の背中を見守る二人。
その影は、段々と小さくなっていきます。
昔は運動音痴で、それほど足の速くなかった子なのに、いつの間にそうなっちゃったのかしら。
管理局での訓練でそれが変わったというなら――
その当時から、自分と彼女の距離は少しずつ開いていたんだ、と認めたくない現実が、アリサの胸に悲しさをもって去来します。
「……ねぇ、アリサちゃん」
「……言いたいことは分かるわよ」
これだけ付き合いが長ければ、言わずとも伝わることもあります。
しかも、人の想いに敏感になった――自分がぶつけてばかりだった反動か――アリサには、いつも以上にはっきりと分かるのです。
「類は友を呼ぶ、かな。私たち、そうかもしれないね」
「さあね。……ん。風、出てきたみたいだし、中に入りましょ」
温い風は体温を奪うこともなく、ただゆっくりと髪や頬を撫ぜていくだけです。
それでもアリサは、それをこの場から立ち去る理由にしましたし、それを分かって、すずかは従います。
踵を返し、背を向けるアリサの胸には一つの想いが。
そればかりは、すずかにも伝わることなく。
少しずつ――日は西に向かって傾いていくのでした。



