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2007年2月11日 (日)

練習 40


 最近は4時限目終了のチャイムが鳴り、ハルヒが飛び出していくのを確認してから俺も教室を後にする。
行き先は言うまでも無く、長門が待つSOS団の部室だ。
だが、今日は終了のチャイムがなって5分も経っているのに、今だ俺は教室の中。
それは何かと尋ねたら、あそれ。
「キョン、お昼はどうしたのよ」
「別に。どうもしないさ」
「なら早く食べなさいよ」
「あ、ああ」
 今だ後ろの席でハルヒがふんぞり返ってるからだ。しかも。机の上には弁当箱を広げて。
今日は一体どういう風の吹き回しなんだ。
それにな。何でお前に命令されて弁当を食べにゃならんのだ。
「今日は早起きして暇だったから作ってみただけよ」
 ハルヒは自分用の弁当箱と言うのがないんだろうか。
クラスの女子が持ってきているような大きさじゃなく、俺のと変わらないプラスチック製のと同じ大きさだ。
まあ、こいつが小さい弁当箱を抱えているより、大き目ので美味しそうにパクパク食べてる方が可愛いけどな。
やっぱりちまちま小鳥がついばむ様に食べるよりも、そっちの方が見ていて気持ち良い。
しっかし、今更言う事じゃないが相変わらず凄い女だよ。お前は。
"早起きして暇だったから"。こんな理由で弁当の一つを作ることが出来るんだからな。
俺なんか玉子焼き一つに大騒ぎだったのによ。
いや、ハルヒにしてみれば俺と比べられたら迷惑かもしれんが。
「なに?今日は忘れちゃったの」
「いや、そういう訳じゃないんだ」
「ふぅーん」
 口をへの字に曲げて不満そうだ。
あのな。今更かもしれんが、女の子がそんな顔するんじゃありません。
しかし、困ったな。
なんでハルヒは俺が弁当を食い始めるのを待ってるんだ。
さっさと食べて教室を飛び出してくれりゃ良いのに。こういう時に限って俺の後ろに居座るんだからよ。
仕方ない。ここは諦めて食べ始めるとするか。
ここで鞄を持って教室を出れば、ハルヒは確実に食いついてくる。
そんな面倒は勘弁だからな。
鞄から自分の弁当箱を取り出し、机の上に広げる。
蓋を開ける前に、教室の前の方でクラスメイトと楽しげに昼食を食べている朝倉に目をやった。
多分俺の視線に気づいてくれるだろう。
よし。俺の視線に気づいたのか、会話を続けたままチラリと一瞬こちらを見たのが確認できた。
俺の仕草を追ってくれているものとして、指差しなんかのジェスチャーで「ハルヒが動かないから教室を出られない」と言う事を伝えた。
分かってくれただろうか。
出来れば俺に代わって長門に伝えてくれるとありがたいんだが。
朝倉に取り合えず頼み、放課後にちゃんと自分からも事情を説明しようと心に決め、蓋を開けた。
「おい、キョン。今日はここで食べるのか?」
「……はぁ」
「な、なんだよ。どうして俺が声をかけたら溜息が出るんだ」
 ちっ。余計なことしやがって。
そりゃ出るだろうよ。これから俺の身に起きる事を考えたらな。
「なあに?キョンはいつも教室で食べてるんじゃないの?」
「違う違う。何言ってんだ。いつも涼宮がキョンたちを集めてるんだろ?」
「……ふ~ん」
 不満とも興味津々だけとも言えない、色々なものが複雑に交じり合ってどうも判別できない声が聞こえる。
こりゃ不味い。さぁて、どうする。どうするよ俺。
すかさず言い訳をするか?いや、黙ってる方が余計怪しい。
要らんことを言ってくれた谷口を非難の意を込めた目で睨むが、全然気づいてないようだ。
お前はそんなんだからモテないんだよ。
「ねえ、キョン」
「なんだ、ハルヒ」
「私、知らなかったんだけど最近どこでお昼食べてるの?」
「ああ、そりゃ俺も知りたかったんだ。教えてくれよ、キョン。いや、別にお前らの集まりに興味があるわけじゃなくてだな」
「あんたは黙ってて」
「……へいへい」
 ハルヒに気圧された谷口は、すごすごと引き下がって行った。
「ほらほら。教えなさいよ。なあにしてんの?」
 ぐいぐいと襟首を後ろに引っ張りながら、身を乗り出して問い詰める。
お前はいつもそうだな。後ろから引っ張って。用があるなら自分がこっちに来なさい。
「え~っとだな。ほら、あれだ。気分転換ってやつだよ」
「気分転換~?ならどうして"SOS団の集まりだー"なんてウソつくのよ」
 ここで"そういうと人払いが簡単だから"と言う言葉はグッと飲み込んだ。
確かにそういう言い訳も可能なんだが、流石に気が引ける。
何と言おうとSOS団はハルヒを始め、みんなの団なんだからな。それに発起人であるハルヒを目の前に言うほどデリカシーがない訳でもない。
そんな最も有効的な手段を自ら放棄した為に俺は一気に窮地に立たされたのだが。
しかしだ。良いことをしてると神様ってのは見てくれてるもんだ。
古泉によればハルヒも神様に例えられるような存在らしいが、少なくとも俺にとっては違う。
何せその神様が俺を窮地に追い込んでるんだからな。
ハルヒに引っ張られ、その苦しさにいい加減振り返ろうとしたとき。
その助けはグッドタイミングで現れた。

 

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