練習 41
*練習 40 の続きです。
「涼宮さん。ちょっと良いかしら」
「どうしたの涼子。今ちょっと立て込んでるから後にしてくれると助かるわ」
ハルヒはいつの間にか、朝倉の事を涼子と呼ぶようになってる。
理由は知らんが、まあ仲の良いことは美しきかな。別に俺が困るような事態じゃないしな。
「涼宮さんの知りたい事。私知ってるんだ」
「!?ど、どうして知ってるのよ」
「あのね。キョン君からは言い難いことなのよ」
「言い難い?キョンが私に、ってこと?」
おいおい。何を言うつもりか知らんが本当のことを言うのは止めてくれよ。
あー駄目だ。いつもの委員長スマイルだ。全く裏を読み取れん。
「じゃあ良いわ。涼子、教えてくれないかしら」
「良いわよ。本当は当日まで内緒にしておきたかったんだけどね」
「む~。どうして団長たる私に秘密なのよー」
襟首を掴む手を離してくれたのは助かるが、後ろから冷凍庫を開けた時のようなひんやりとして空気を感じる。
いかん、これはいかんぞ。
今頃古泉の携帯電話が鳴っているかもしれん。頑張れ古泉。もしもの事があっても、お前のことは忘れないからな。
「あのね?キョン君がSOS団のみんなで休日何処かへ行こう、って言ったの」
「何処かへ?不思議探索が不満だって言うの?」
「そうじゃなくて。不思議探索をした後に、どこかでお弁当を食べようって計画なの」
「お弁当?」
「そう。ピクニックを兼ねるってことね」
「ふんふん」
「いつもお店に入って食べるじゃない?だから各自でお弁当を持ち寄ったら楽しいんじゃないかって」
「……ふ~ん、なるほどね」
ナイス朝倉。ハルヒの声のトーンが徐々にいつものそれに戻ってきているぞ。
「それは分かったけど、キョンが一人で弁当食べる理由にはならないんじゃない?」
「あのね。でもキョン君はそういうの駄目じゃない」
「そうね。キョンは自分じゃ作れないし」
おいおい。言ってくれるじゃないか。
大体ハルヒが俺の何を知ってるって言うんだ。いや、全くその通りなんですがね。
「だから一人で特訓中なの。でも練習中のものを人に見られるのは恥ずかしいでしょ?」
「なるほどね。だから適当な理由をつけて教室以外の場所で食べてたってわけ」
「そういう事。これなら"SOS団の集まり"っていうのも強ちウソじゃないでしょ」
「うん、分かったわ」
ハルヒの機嫌は直ったようだ。ありがとな、朝倉。古泉の分も言っておくぞ。
「キョン君ごめんなさいね。秘密にしておくって話だったのに」
「あ、ああ。いや、礼を言うのは俺の方だ。悪かったな、手間掛けさせて」
「いいえ。どう致しまして」
「でも、私に内緒ってのが気に食わないわね」
それに対しての回答は述べてなかったな。
ここからは俺が説明しようかと思ったが、辻褄が合わなくなるとせっかくの朝倉の好意が無駄になるからな。頼む。
「サプライズっていうの?たまには私たちから涼宮さんを驚かせようって」
「誰がそんなこと言い出したのよ」
「……キョン君?」
なんで疑問系なんだよ。
「ふーーーん。キョンがねぇ」
怖くてハルヒの顔が拝めない。ここまで上手く来たのにな。
「キョンも分かってきたじゃない!そうよ、私もそろそろ何か新しい方法を考えようと思ってたところなの!」
「はぁ?」
「普通にするのも詰まらないでしょ。だから変わった事をしようと思ってたってこと!」
「そ、そうなのか」
別にピクニックがそれほど変わったことだとは思わないぞ。むしろ普通だ。
まあハルヒにとってそれが良いというのなら、それで良いんだけどな。
いきなり野球大会に参加させられるよりマシだ。
「そっか。みんなで作ったお弁当を持ち寄って食べ比べするのも楽しそうよね。うんうん」
ハルヒはすっかり次の不思議探索に思いを馳せているようだった。
良かった。これで完全にピンチを脱したようだ。
「じゃあキョン!毎日お弁当の出来を私がチェックしてあげるわ!」
「お、おい、待ってくれ!当日に見せ合って驚かせる計画なんだぞ。毎日見せ合ってたら意味ないだろうが」
「えー。団長である私が直々に見てあげようって言うんだから文句言うんじゃないわよ~」
「あらあら。これは大変ね」
「じゃあ私もこれから次の休みの日まで毎日作ってくるから。キョン、良い?アンタもサボるんじゃないわよ!」
マ、マジかよ……
「あのな、長門。今日はその」
「知ってる。朝倉涼子から聞いた」
「そうか」
「そう」
「それでだな。明日からなんだが」
「仕方ない。次の週末まで我慢する」
早めに部室へ行った俺は、何を置いても長門に事情を説明する。
それこそ口調はいつも通りだったが決して本から目を離さなかった長門を見て、とても済まない気持ちでいっぱいだった。
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