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2007年8月31日 (金)

お引越しなの!2 StS 27

 
 
 
「今日もお星様、綺麗だね」
「うん。モニタ越しだっていうのが少し残念だけど」
「今度、許可もらって夜間訓練でもしようか。敷地内に用意できるし」
「経費の無駄遣い、怒られるよ」
 部屋の照明を落とし、ベッドに対して横向きに。窓に足を向けて寝ています。
枕やクッションを重ねて少し頭を高く。
枕と言えば私はフェイトちゃんの左腕で腕枕、その腕で頭を抱いてくれているので、
私は身体の下へ通して、フェイトちゃんの細い腰を抱いています。
「でもね、フェイトちゃんの方が綺麗だよ」
「そ、そんなこと、よく言う///」
「えへへ。そうやって顔を赤くするの、可愛いよ」
 フェイトちゃんの方へ身体を起こして、自分の右手へ左手を重ねるように抱きしめます。
ぐっと近づいた、紅潮する頬。照れたように少しだけ逸らす瞳。
足もちょっとだけ、右足だけを絡ませて逃げちゃわないようにね。 
 
 
 
 

「でも、ホント。とっても綺麗。キラキラ透き通って金の絹糸みたいだよ」
「なのはの栗色の髪、琥珀色になってて宝石みたい」
 腕枕した手で、私の髪の毛を梳き流す。
髪の毛を通して伝わってくるフェイトちゃんの指先の感覚。こんなに細やかに感じれるものなんだ。
私もフェイトちゃんの髪を触りたくて、手を動かそうとすると。
離した左手が捉えられ、しっかりと握ると指が絡まっていく。
まるでこうするように決められているみたいに。身体に沁みこんでいるように、自然に。
「なのはの手。温かい」
「フェイトちゃんの手。いつもより熱いよ。どうしちゃったのかな」
「なのはが……一緒に居てくれるからだよ」
「だったら私、もっと熱くなっちゃいそうだよ?そしたら冷やしてくれる?」
「自信ないかな。だって、なのはと一緒だと、どんどん熱くなっちゃうんだもん///」
「それなら私だって。冷やしてくれなくて良い。もっと熱くても平気だよ///」
 ぎゅっと握り合う手は、ぴったりと張り付いて離れる気配がしませんでした。
 
 
 
 

「あのね、なのは。少し言い難いことなんだけど、聞いてくれるかな」

 しばらく見つめ合っていた中。
蕩けるような目をしていたフェイトちゃんが、少しだけ眉をキリリとさせて、話し始めました。
思わぬ表情の変化に戸惑いも少なくなかったけど、黙って聞くことにします。
「六課が立ち上がってその後の、キャロとエリオのことなんだけど」
「うん、二人の事がどうかしたの?」
「今日のことがあったばかりで言い難いことなんだけどね。二人の事、お願いできるかな」
「お願い……どうすれば良いの?」
「あのね。私は執務官として捜査に出なくちゃいけないから、ここを空ける時間も多くなると思う」
「うん。じゃあ、その間。二人の面倒を見てあげたら良いんだね」
「出来たらそうして欲しい。歳の割りにしっかりしてると言っても、やっぱり心配で」
「そうだね。環境に慣れるまでの間は、少なくとも私ぐらいは付いてた方が良いかも」
 本当に済まなそうな顔をする。
あんな、私が変な嫉妬なんかしなかったら、こんな顔させなかったのに。
改めて昼間の浅はかな自分の行動に嫌気が差します。
 
 
 
 

「そうなったら、私とフェイトちゃん。二人でお母さんだね」
「二人で……お母さん?」
「うん。フェイトちゃんの子どもだったら、私の子どもも同然だよ」
「二人が、なのはと私の子どもってこと?」
「昨日は子ども出来ちゃうかもね、なんて言ってたけど、もうフェイトちゃんにはいるんだから」
「でも、二人のことは私がしている事だから、なのはに迷惑は掛けられないよ」
 絡まる指も緩み、少しだけ距離を取ろうとする。
駄目、そんなこと絶対にさせないんだから。
「フェイトちゃんがしたい事。私、迷惑だ何て思わない。思うわけない」
「でも、なのはにだってしたい事はあるだろうし、だから、負担にならない範囲で……」
「じゃあ、フェイトちゃんは私と一緒に、子ども達と暮らしたりするの……イヤ?」
「う、ううん!そんなことない!そんな事ないけど、けど……」
「私は一緒にしたいな。フェイトちゃんを盗られちゃうなんて思った手前言い難いんだけど///」
「なのは……」
 

 
 
 
 引き寄せてぎゅっと抱きしめる。
肩に頭を預けて、胸を寄せた。フェイトちゃんのドキドキが薄い布越しに伝わってくる。
「二人のことだけじゃなくて。これからのことも」
「これから……他の子たちも?」
「そう。保護した子ども達の中には引き取り手を探せない子達もいるし」
「うん、私が保護者になったりは出来るけど」
「悲しいことだけど今後もそういう事が増えてくと思う。だから、一緒に。ね?」
「…………」
「フェイトちゃん?」
 少しずつ瞳の色が曇っていく。
私にはそういうのに、フェイトちゃんだって辛いこととか我慢しがち。
だから、こういう時は少し強引な方が良い。
「もう決めちゃったから。フェイトちゃんと二人でしていくんだって」
 

 
 
 
「なのは」
「二人でいれば寂しい思いをさせる時間も少なく出来るだろうし、ね?」
「……うん。なのはと一緒なら。私、嬉しい」
「えへへ、私もだよ。フェイトちゃん」
 笑顔が戻る。
やっぱり好きな人は悲しい顔じゃなくて、笑顔を見ていたい。
もうあんな風に悲しみに彩られるような事、しちゃいけないんだって強く思った。
「でもね、なのは。小さい子の相手は思ってるより大変だよ?キャロとエリオは少し特別」
「うぅ……それが心配の種なんだよね」
「大丈夫。なのはならきっと」
「そうかな。私はフェイトちゃんみたいじゃないから」
「ううん。なのはなら、若しかしたらなのはの方が上手かもしれないよ」
「どうして?私、そんな子どもの相手とかして事ないし」
「なんて言うか……なのはは相手がして欲しい事、分かるような気がするから」
「私が?」
 

 
 
 
 フェイトちゃんの言ってることがよく分からない。
自分で言うのもなんだけど、人の気持ちを汲み取るとか余り得意じゃないと思うんだけど。
「根拠は弱いけど……ヴィータを見ててもそう思うよ」
「そ、そうかなぁ?でも、フェイトちゃんがそう言ってくれるなら信じるよ」
 もしそれが違っていたって、それがフェイトちゃんの言葉なら、そのようにしなくちゃね。
至らないところがあったとしたら……お母さんに聞いたりして。
戦技教導官としてだけじゃなく、人間としても育てていかなくちゃいけない。
ただそれを、もっと自覚して行う事になった。そう思えば大丈夫。
「でも、私あまり小さい子に好かれないから」
「機会が少ないだけで、なのはなら大丈夫」
「う~ん。その点フェイトちゃんは小さい子に好かれるから羨ましいな」
「そうかな。私は……あんまりそうじゃない方が良い、よ」
「えぇー、どうして?」
「だって……子ども達相手にヤキモチ妬きたくないんだもん///」
「……!ううぅんもおおぉぉぉぉーっ!フェイトちゃんったらーっ!」
「えへ、えへへへ……///」
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 28 >

 

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2007年8月30日 (木)

お引越しなの!2 StS 26

 
 
 
「はい、今度はフェイトちゃんの番だよ。私が選んだの着て着て~」
「う、うん。そうだね、ええっと……うわぁ、これはまた……」
 フェイトちゃんが選んでくれたのとは真逆の、露出が高めの部屋着。
執務官服もバリアジャケットも黒色なフェイトちゃん。
ちょっと違った雰囲気の様子が見てみたくて探したんだけど、他にパッとした色がなくて……
結局のところ黒を選んでしまったのでした。
「ちょっと、特に上が……薄くないかな?これ」
「大丈夫。私しか見ないんだから」
「そ、そうだけど/// それにしたって、急にはやてとか来たり通信が入ったりするかもしれないし」
「そういう時は音声通信にすれば大丈夫だよ。設定、今のうちに変えておこう?」
「どうしても、着なきゃ駄目?」
「フェイトちゃんは私が選んだの……着てくれないの?」
「う、ううん!着る、着るよ!なのはが選んでくれたんだもん、そんな事ないったら!」
「えへへ~、それじゃ早く着て見せて~」
「あぅ~……///」 
 
 
 
 

 視線を泳がしたり、部屋着を何度も見返してみたり。
暫く繰り返していましたが、ついに観念したようなフェイトちゃんは、くるっと背中を向けました。
「どうして後ろ向くの?」
「だって、それは……恥かしいから」
「一緒にお風呂も入ったのに?今さら恥かしがることないったら」
「そ、それとこれとは別なの!」
 どう別なのか、今一分かりませんが、フェイトちゃん的には何かあるのかもしれません。
納得する気はないのですけど、その理由は気になります。
「どう別なの?」
「だって、お風呂は裸じゃないといけないけど、ここはベッドの上だし、それに、ほら。明るいから」
「う~ん。分からなくもないけど、お風呂も明るかったよ?」
「と、兎に角。着替えるからこっち来ちゃ駄目だよ」
 バサリとバスタオルが滑り落ち、白磁のように美しい肌が露になります。
うーん。昨日も思ったけど、やっぱり綺麗な背中……
「……(つつーっ」
「ひゃっ!?な、なにするの、なのは!?」
「うん?昨日のお風呂でも思ったけど、やっぱり綺麗だなーって」
 
 
 
 

「そんなだったら、なのはの背中だってき、綺麗だよ///」
 それだけ言って素早く上を着込んでしまう。
ちょっと残念だな、お風呂とはまた雰囲気違って良かったのに……
「わっ、ど、どうしたの?ちょっとぉ」
「えへ~、フェイトちゃ~ん」
 後ろからベタ~っと圧し掛かる。
腕を前に回して、顔をぴったり左側に後ろから寄せます。
耳は赤くなっていましたけど、ひんやり冷たくて気持ち良い。
火傷しちゃう時は、耳たぶを触るって言うけど、フェイトちゃんはどうかな。
フェイトちゃんの耳たぶで冷やすのは、冷たいって事以上に効果があったりしちゃいそう。
「な、なのは」
「どうしたの?若しかして重たかった?」
「お、重いだなんてそんな。その、えっと……せ、背中にね。えっと、なのはの、む、むむ胸が……」
「胸?ふふ~ん、じゃあもっと当てちゃおうっと~!」
「も、もう!な、なのはったら///」
 
 
 
 
 
 腕に力を込めて、ぐいぐいと身体を密着させます。
フェイトちゃんの小さく漏れ聞こえる声と共に、冷たかった耳が熱くなってるような気がします。
「えへへ。それにしてもフェイトちゃん、背中だけじゃなくて何処も肌が透き通ってて綺麗~」
「あ、ありがと/// で、でもそれだったらなのはだって」
「そう? でも、これだけ白いと逆に目立っちゃうかもね」
「な、なにが……?」
「黒子」
「ほくろ?」
「うん、でも良いんだ~。だって、フェイトちゃんの背中の黒子……」
「背中の……それが、どうかしたの?」
「幾つあるのか知ってるの……たぶん、私だけだよね……うふっ」
「背中のほ、黒子……わ、わわわわっ!?///」
「今度、私のも数えてみてくれる?」
「な、なななななのはの、せ、せせ背中……!///」
 ひんやり冷たかった耳は、はっきり分かるほどに熱くなっていました。
 
 
 
 

「うっわー。似合ってるよフェイトちゃん。色っぽーい」
「そ、そうかな。なのはが選んでくれたんだもん、嬉しいな」
 それからもベタベタしてたんだけど、まだ下を穿いていなかったことに気付いたので一端離脱。
そこでも恥かしがったフェイトちゃん。
また恥ずかしがるところを見たかったんだけど、着替えた姿も見たかったので我慢しました。
着替え終わって、身体を捻りながら自分の格好を確かめるフェイトちゃん。
私は寝転がって踵をぺちぺち合わせながら、その様子を眺めています。
「そうだ、なのは。ご飯の続き、する?」
「そうだね、また少しお腹空いてきたみたい」
 差し出された手につかまって起き上がり、そのままの勢いで抱きついちゃう。
お昼のときと違って、薄着になってる分、フェイトちゃんを余計に感じる事が出来ます。
抱きついたままフェイトちゃんに牽かれ、ベッドからペタンと一緒に降ります。
テーブルの上には食べかけの夕食。
残りは少なくて、残念に思いながらも、あーんと食べさせてもらってお腹はいっぱいになっちゃいました。
 
 
 
 

「ご馳走様でした~」
「お皿、返してこなきゃね」
「明日じゃ駄目?もう着替えちゃったし、今から行くの遅くないかな」
「う~ん。そうだね、明日朝ご飯の時に返しておこう」
「決まりー。はい、フェイトちゃんはこっちだよ」
「ああん、もう。急に引っ張らないでよ~」
 お皿を纏めている手を遮って、ベッドへ引っ張っていく。
テーブルを片付けてない事に初めは躊躇してたけど、直ぐに私のところへ来てくれました。
それが嬉しくて、一気に抱き寄せた勢いで後ろ向きにベッドに倒れこむ。
小さな可愛らしい悲鳴と共に、鼻先を擽った甘い香り。
お腹も胸もいっぱいで気持ちよかった私は、そのままゆっくりと目を閉じます。
すると、おずおずと遠慮がちに背中に回される手。
でも、一度回ってしまえば力強く抱いてくれる。
それに応えるように私も腕に力を込める。
そうやって暫くの間、二人で抱き合っていました。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 27 >

 

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2007年8月29日 (水)

お引越しなの!2 StS 25

 
 
 
「はい、あ~ん。して」
「あ~……ん。んぐんぐ」
「ねぇ、やっぱり温めてもらおうよ。温かい方が美味しいよ?」
「充分美味しいよ。それに温めに行ってる間の時間も惜しいんだもん」
「そんな急がなくたって、時間はたっぷりあるんだから」
「今日は無駄に寝ちゃった分、取り戻すんだからね!はい、あーん」
「はい、あーん///」
 隣同士で、ぴったりとくっ付きながらご飯を食べさせてもらう。
フェイトちゃんはとても上手だ。双子ちゃんにして上げたのかもね。
キャロとエリオには……流石にないか。そんな小さくなかったろうし。
でも、それ以外のこと。普通の家族だったらしてたろう事、色々してたはず。
二人はどう思ってるのかな。幸せだって思ってるかな。こんな美人で優しいお母さんがいること。
今までマイナスだった分。今ぐらいでプラスマイナスゼロかもしれない。
だから、これからずっと、もっと幸せになれるはず。
ううん、もっと幸せにしてあげなくちゃいけない。 
 
 
 
 

「どうしたの?何だかニコニコして」
 私の顔を不思議そうに覗き込む。
そんなに嬉しそうな顔してたかな。もちろん、嬉しいことに異論はないんだけど。
だって、大好きなフェイトちゃんが隣にいてくれるんだもん。
「うん?えっとね、こうしてもらえる私って幸せだなって思ってたところなの」
「こ、こんな事で良いなら何時だってしてあげるから///」
「そう?じゃあさっそく明日の朝もしてもらおうかなぁ~?」
「それ、それは駄目!みんなの前は、その……流石に恥かしいから……」
「ふぅ~ん、残念……。だったら、二人っきりのときは、ね?」
「う、うん。それだったら良いよ///」
「えへへへ。フェイトちゃんった、はっ、くちゅん!」
「大丈夫なのは!?ああ、しっかり乾かしてなかったから冷えちゃったのかも!」
「ぐず……うん、それじゃ先に着替えちゃおうかな」
「うん、そうしよう。風邪引いちゃ駄目だよ」 
 
 
 
 

「これがフェイトちゃんの選んでくれたの……えへ、楽しみ~」
「これがなのはの選んでくれたの……どういうのかな?」
「じゃあ……せーのっ!」
 タイミングを合わせて同時に袋から取り出す。
中から出てきたのは、可愛らしいピンクのパジャマ。
早速包装を取り外していくと、思いのほか大きくてビックリしてしまいました。
「うわぁ~、大きいー!フェイトちゃん。随分大きいけど、私のサイズ知らなかったっけ?」
「あ、ああ。えっと、間違えちゃった、のかな?そんなに大きいとは思わなかった、よ?」
 怪しい。とっても怪しいです。
何故か私と目を合わせようとしません。本当にただ間違えただけなのかな?
「ねぇ、本当に間違えちゃったの?私は何だか違うって気がするなぁ~」
「う、うぅ……えっと、うんと、その……本当に、間違えた……うん、ホント」
「誰にも言わないから。ね?ちゃんと教えてほしいなぁ~?」
 すりすりと寄っていくと、フェイトちゃんは恥かしげに俯いてしまいました。
本当にフェイトちゃんは嘘を吐くのが下手糞で、そんなフェイトちゃんが可愛くて堪りません。
 
 
 
 
 
「あ、あのね。本当は…………分かってて、分かってて買いました///!」
「どうして?この大きさじゃ上だけで充分な大きさだよね」
「だから、なんて言うか、その……上だけで良いように……ううん!他意はないんだよ///!」
「そっか。フェイトちゃん、こういうのが好きだったんだ~」
 上だけを身体に合わせてみます。
明らかにブカブカで、指先がちょっぴり出るぐらい。裾も充分過ぎる長さです。
改めてサイズを確認した私は、ちょっぴり意地悪な意味を込めた視線をフェイトちゃんに送りました。
見る間に顔は赤くなって、口は羞恥に戦慄いています。
「お、おおお願い!これは誰にも言わないで!ね、なのはぁ~」
「んっふふ。どうしようなぁ?」
「あぅ、お願い、意地悪言わないで、ね、ね?」
 手を合わせ懇願するフェイトちゃん。これ以上意地悪したら可愛そうかな?
「…………うん!誰にも言わない。これは私とフェイトちゃんだけの秘密にしておくね」
「うぅ、知られちゃった……やっぱり、普通のにしておけば良かったかなぁ……」
 ガックリ肩を落とすフェイトちゃん。意地悪のお詫びに、ここはちょっぴりサービスしちゃおう。
 
 
 
 
 
「はーい、フェイトちゃん。こっち見て~。ゆったりしてて肌触りも気持ち良いよ~」
「……!(はぇ~///」
 ボタンを一番上だけ外し、被るようにして素早く袖を通します。
ちょっとだけ出た指先で袖を摘み、手を振ってブカブカ振りをアピール。
裾はちょうど膝の辺り。膝立ちをしている今、ギリギリ踏んでしまわないぐらい。
普段着やBJよりも長いぐらいなのかな?
そんな私を、口をぽかーんと開けて魅入っているフェイトちゃん。
さっきまで戦慄いていた口も、恥かしさに赤くなっていた顔も全然様子が違います。
普段余り表情の変わることのないフェイトちゃんにしてみたら、百面相にも等しい変化です。
もっと変わったフェイトちゃんを見たくて、どうしようかと考えていたとき。
胸元がゴワゴワしているのが気になりました。
そっか。バスタオルを巻いたままだから、中で引っ掛かってるのかも。
座ったまま取ることも考えたけど、それだけじゃ詰まらないよね。
 
 
 
 
 
「どうかな?似合ってる?」
 ベッドの上でそのまま立ち上がって、くるっと一回転。
裾がフワッと舞って、巻いていたバスタオルを足元にバサリと落とします。
「……はっ!?う、うん!とっても、とっても似合ってるよ!」
「えへへ、そっか。フェイトちゃんが選んでくれたんだもん、当然だよね」
「う、うん……とっても、とっても似合ってる……///」
 惚けたように視線は上と下を行ったり来たり。
ううーん。フェイトちゃんはこういう格好が好きだったんだ。
知り合って随分になるけど、初めて知ったような気がする。こういう趣向を。
えへへ。明日から出来るだけ部屋ではこの格好でいよう。
それと。毎日一緒に暮すようになれば、もっと秘密が分かるかも。
うん、フェイトちゃんのこと。もっと詳しくなれちゃうんだ。
まだ知らないことが沢山あるんだって、まだフェイトちゃんのこと詳しくなれちゃうんだって。
それを知った私は、胸の高鳴るのを感じながら、はしゃいでしまうのを抑えるのに精一杯でした。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 26 >

 

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2007年8月28日 (火)

お引越しなの!2 StS 24

 
 
 
「ねぇ、フェイトちゃん。着替えちゃおうか」
「着替えって……なにに?」
 どれくらいこうしてたのかな。
映し出された外の風景はすっかり夜の色。
あれからずっと、フェイトちゃんは私の胸に乗っていた。
とっても幸せだった。この重さが私の幸せの重さなのかなって、そう感じられたから。
「今日買ってきた部屋着、フェイトちゃんが選んでくれたの」
「そうだね。少し早いけど、ううん、その前にお風呂。入ろう?」
「お風呂?」
「うん、だって……少し汗、かいちゃったから///」
 もそもそと動くけど離してあげない。
身体を抱き上げて、顔を正面に来るように持ち上げて抱きしめる。
持ち上げたとき、驚いたように目を見開いて、ちょっぴり頬が紅潮していたのが可愛かった。 
 
 
 
 

「そう?……ん。そう言われると少し、汗かいてる気がする」
「ちょっと、吸っちゃ駄目ったら///」
 耳の後ろ辺りから首筋にかけて鼻を当てて、胸いっぱいにする。
髪と汗の匂いが交じり合って、甘酸っぱいような匂いが鼻腔をくすぐり頭をクラクラさせます。
「うぅ~ん、今お風呂に入っちゃうのは少し勿体無いような気がするなぁ」
「やっぱり入る!もう、そんなに言うんなら入っちゃうんだから」
「ああん、だ~め。離しちゃヤダ」
 身体を起こそうとするから、離れきってしまう前にまた抱きしめる。
フワッと舞う髪の匂いとともに覆いかぶさり、また私をドキドキさせます。
「しょうがないね、なのはは。それなら……これでどうかな」
「きゃっ!?」
 身体の下に腕を入れられたかと思うと、フワッと浮き上がる。
抱きついたまま、私はフェイトちゃんに抱っこされてしまったのです。
 
 
 
 
 
「このままお風呂、だからね」
「…………(ほぇ~」
「ど、どうしたの?急だからびっくりしちゃった?」
「う、ううん。なんて言うのか……お姫様抱っこって、気持ち良い///」
 いつもより凛々しく見えるフェイトちゃんに、また跳ね上がる私の心。
凄い、お姫様抱っこってこんなにも相手を凛々しく、格好よく見せるものなんだ。
「だ、だったら、なのはは何時にも増して……可愛いよ///」
「フェイトちゃん……」
「なのは……」
 タイミングを合わせたわけじゃないのに。
お互いにお互いを抱きしめる腕に、同時に力が込められる。
もっと近づくフェイトちゃんの顔。
そういうことは、私の顔もフェイトちゃんに近づいているんだね。
 
 
 
 
 
「じゃあお風呂入る。だからこのまま連れてって」
「このままお風呂まで?甘えたさんだね、なのはは」
「うん、いっぱいフェイトちゃんに甘えちゃうんだ♪」

「ふえぇぇ~~」
「ごめん、なのは。よく考えたらご飯食べてなかったんだね」
「う、うぅ~~ん……」
 一緒に脱衣所まで行ってお風呂に入れてもらったんだけど、興奮しすぎたのか直ぐに倒れてしまった私。
折角フェイトちゃんと一緒のお風呂だったって言うのに、それどころじゃなかった何て……
これが逆上せるならまだしも、まさか空腹で倒れちゃうなんて、情けなすぎるよ。
バスタオルを巻いてベッドにひっくり返る私は間抜け過ぎて、涙が出ちゃう。
隣で風を送ってくれているフェイトちゃんに、この情けない顔を見られたくないよ。
思わず腕で顔を隠すようにした。
 
 
 
 

「大丈夫、なのは? これ、温くなっちゃってるけど、呑んで」
「うん……ありがと、フェイトちゃん」
 抱き起こしてもらって、フェイトちゃんにもたれ掛かるようにして水を飲む。
後頭部に当たる胸の感触がとっても気持ち良い。ふよふよ、ふかふか。
ああ、これって昨日と逆なんだ。
えへへ。して上げるのも良いけど、こうやってして貰うのも気持ち良いなぁ~。
「ちょ、ちょっと。そんな頭動かしちゃ駄目だったら。あんっ」
「えへへー。だって気持ち良いんだもん」
「もう。さっきまで倒れてたのはだぁれ?」
「誰だったかな~?」
「ふふふ、悪い子だね、なのはは」
 頭を胸に乗せて顎を上げると、覗き込んでたフェイトちゃんと瞳がばっちり合う。
濡れ髪のフェイトちゃん。髪の毛を拭いたときに少し乱れたまま。くしゅくしゅとなっている。
いつもの綺麗に整えられた真っ直ぐな髪と様子が違って、なんとも色っぽい。
しかも、今日は一日アップにしてたから、しんなりと垂れ下がった今の様子はそれを倍増させてた。

 
 
 

 顔の脇に下りてきた髪先を指に絡ませて弄ぶ。
キューティクルぴかぴか。枝毛一つない髪は、憧れの対象だ。
私も気をつけてはいるけれど、訓練が多い分、どうしても髪の毛は痛みやすい。
絡ませたまま、ジッと見つめる髪から良い香りが漂ってくる。
同じモノを使っているのに、フェイトちゃんからは違う香りがするような気がするのは何でかな?
くるくると弄んでいると、後頭部に感じるドキドキとした振動は、段々と強くなってきた。
それをもう少し堪能していたかったのに、上から優しげな声が降ってきました。
「ほぉら。いつまでも遊んでないで、早く飲んじゃおうよ」
「じゃあ飲み終わってもこのままで居てくれる?」
「で、でもそれじゃご飯が食べられないよ?お腹空いてるんだから」
「う~ん……それなら、食べさせて///」
「ちゃんと起きたらね。それなら、食べさせてあげるから///」
「わーい」
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 25 >

 

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2007年8月27日 (月)

お引越しなの!2 StS 23

 
 
 
「……あのね、なのは」
「なに?フェイトちゃん」
 私とフェイトちゃん。お互いのドキドキが少し落ち着き始めたころ。
胸に抱かれたままのフェイトちゃんが、ちょっと言い難そうに私のことを呼びました。
「えっと……さっきのこと。シグナムのことなんだけど」
 シグナムさん。もうすっかり忘れてた。
フェイトちゃんと仲直り出来た今、もう気にすることなかったんだけど、一応聞いてみることにした。
「実はね。その、昨日、シグナムが怖がりだって話。覚えてる?」
「うん。真っ暗で静かなところとか、お化けが怖いって話?」
「そう。それで自販機があった場所。暗くて雰囲気がそういう感じだって」
「……えっと、若しかして」
「うん。なのはの考えてる通りだと思う。
 コーヒーを買ったところで、私が急に声をかけたからビックリしちゃったみたいで
 それで小さく悲鳴を上げながら、私に抱きついちゃったって言うのが、その……本当、なんだ」
 
 
 
 
 
 そう言い終わると、さらに私に抱きつく腕に力を込めて、顔をぐっと埋める。
「そ、それでね。なのはを追いかける為に、えっと……」
「ど、どうしたの?」
「……思い切りシグナムのこと突き飛ばして……凄い音がしてた」
「す、凄い音って……」
「なのはの事追いかけるので頭がいっぱいで、自販機に思い切り頭を打ったらしいの」
「フェ、フェイトちゃん」
「はやてに様子を聞いてみたら"後頭部におっきなタンコブ作ってた~"って」
「それで何て言ったの?」
「シグナムは何て言ってた?って返したら、"別になんにも"って笑ってた」
「それは多分、バレちゃってるね」
「うん。だから謝っておいてって言ったんだけど……悪いことしちゃった。シグナムに」
 顔を埋めたのは、恥かしかったからなんだ。
「寝ているなのはの横で、何て言おうって、そればかり考えてて……」
「フェイトちゃん」
 
 
 
 

 シグナムさんには悪いけど、こんなに私に一途になってくれるフェイトちゃん。
それなのに、そんなフェイトちゃんを信用できなかった私。
思わずフェイトちゃんを抱きしめる腕に力が篭ります。
「な、なのは……///?」
「ごめんね、フェイトちゃん。本当に……ごめん」
「ううん。気にしないで、私のことは」
「でも、シグナムさんのこととか、今日は私ずっと」
「良いの。だって、今はこうしていられるんだから。……なのは」
「フェイトちゃん……」
 また少しずつ私の胸が高鳴っていく。
それに合わせて、お腹の辺りに当たるフェイトちゃんのドキドキも高鳴っていくのが分かります。
聞きなれたフェイトちゃんの鼓動を感じながら、ゆっくりと目を閉じると安心できる。
フェイトちゃんも私の鼓動を同じように感じてくれるのかなって思いながら。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 24 >

 

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2007年8月26日 (日)

お引越しなの!2 StS 22

 
 
 
「ケーキ屋さんに行ったとき。抱きつくヴィータちゃんを見て、その時のフェイトちゃんがを見て。
 まるで二人と私の間には見えない大きな壁か溝があるように感じた。
 一歩も動けなかった。一番にフェイトちゃんの名前を呼んで抱きついたヴィータちゃんに。
 それを優しく抱きとめるお母さんみたいなフェイトちゃんに。
 朝食のときのこと、思い出しちゃって……二人の間に入り込めないって……そう感じた」
「……でも、それなら私だって」
「飛び出して、一直線にヴィータちゃんの所へ行けるフェイトちゃんが羨ましかった。
 ホントはそうやって、フェイトちゃんを独り占めしてたかった。
 でもそれは我慢してた。嫌われたらどうしようって。それが怖かったから。
 そうしてたら、フェイトちゃんが遠くに行っちゃうようで。とっても……寂しかったの」
 ワガママだと思った。
自分でしたことなのに、まるでフェイトちゃんが悪いみたいな事を言って。
ココへ来て、思わず抱きしめる腕に込める力が緩んでいった。 
 
 
 
 

 お腹の辺りを抱きしめていた手が緩んだ瞬間、目の前の金髪が揺れた。
手首を捕まれ、赤い瞳に捉えられたかと思うとグイッとそれが迫ってきた。
「!?」
「それだったら!私は、なのはに素直に甘えるヴィータが羨ましかった!」
 その口調とは裏腹に、瞳は悲しみに彩られてるように感じた。
「車に乗ってから、ううん。なのはに手を引かれてる時から。ヴィータの表情、見てなかったの?」
「うん。余り見ちゃ可哀想かなって、そう思ったから」
「なのはのこと、ずっと見てた。車に乗ってからもずっと見てた。
 なのはがそっと抱き寄せたとき。頭を預けたヴィータ……凄く安心してるのが分かった」
「そんな……全然」
「あんな表情、はやて以外にも見せるんだって。それがどれだけの事か、なのはだって分かるでしょ?」 
 
 
 
 

「ヴィータの事を心配してたから、離れてなんて言えなかった。本当は言いたかったよ」
「…………」
「なのはが気にするなら、そんな時にまで嫉妬した私のほうが余程酷いよ……
 昨日も言った、ヴィータが羨ましいって。もう、そんなの通り越して自分を抑えるのが精一杯だった」
 手首を掴む手に、腰に当てられた手に力が込められる。
掴む手に当てられた手から、フェイトちゃんの悲しみが振るえと共に伝わってくる。
「それに今の話……なのはがそんな風に思ってたなんて気付けなかった。
 私、誰よりも一番になのはのこと分かってるって。そう思ってたのに、そうじゃなかったんだって」
「ち、違うよフェイトちゃん!そんな事ない――」
「朝はアルフの事で、買い物のときはキャロとエリオのことで。
 他ごとで頭がいっぱいで、なのはの事全然気に掛けれてなかった。
 なのはがそんな風に思って、一人悩んでたなんて……ごめん、なのは」
 やっぱり言うべきじゃなかった。
こんな風にフェイトちゃんに悲しい思いさせたくなかったから。
どうしてこんな事を我慢できなかったんだろう。黙っていられなかったんだろう。
 
 
 
 
 
 フェイトちゃんに、ごめんね、なんて言わせたくなかった。
そんなつもりじゃなかったのに。浅はかだったと言わざるを得ない。
こんな風に私が言えば、こういう顔をするって。少し考えれば分かるはずだったのに。
「でも、なのは」
 ドキリとした。心臓が跳ね上がる。
捕まれた手をそっと引き寄せられ、たおやかな膨らみに押し当てられる。
「私は何処へも行かないよ。なのはが望まない限り離れたりなんかしない」
 手が、指がゆっくりと沈む込む。
シャツ越しだけど、その柔らかさも温かさも、まるで直に触れ合っているかのよう。
「私の鼓動、感じて?私はココに居るから。ずっとなのはの隣に居るから」
 早鐘を打つよう。壊れてしまいそうなぐらいに。
でもそれが、フェイトちゃんの想いの丈のようで私を安心させてくれる。
 
 
 
 
 
 もっとフェイトちゃんを感じたくて。徐々に詰まる二人の距離。
もうお互いの胸が触れ合ってしまいそうなぐらいに。
今度はフェイトちゃんに感じて欲しかった、私のこと。
隣に居てくれるって言ってくれたフェイトちゃんに。
「わっ!?な、なのは……?」
 空いた手で引き寄せ、その頭を胸に抱いた。
そのままの勢いで後ろに倒れると、フェイトちゃんは何の抵抗もなく一緒に倒れこんだ。
「私もそうだよ。今だって頭の中はフェイトちゃんのことでいっぱいなんだもん」
「……うん、分かるよ。凄くドキドキしてる。私のこと、想っててくれて?」
「うん、もちろん。さっきからずっとこうなんだから」
 フェイトちゃんの胸に当てられた手から伝わってくる鼓動。
それに自分自身の鼓動が重なって、もうどっちがどっちの鼓動なのか分からなくなる。
そうやって一つに重なって、まるでフェイトちゃんと一つになったみたいだった。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 23 >
 

 

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2007年8月25日 (土)

お引越しなの!2 StS 21

 
 
 
 そろそろと頭を上げていく。
モニタに映し出された文面は、ここからだとしっかりと読むことは出来ない。
ある程度の範囲から外れると個人的なモニタは覗けないんだった。
メールの内容を盗み見るような事は良くない。
こそこそと悪いことをしている自分に、また気分が悪くなるようだった。
「……よし。次はキャロとエリオに送らないと」
 二人へのメールは直ぐに終わったみたい。
若しかしたら、アルフさんに送ったメールで内容が被っていたのかも。
そのまま直ぐに次のメールに取り掛かる。
今度はコンソールを叩く音に混じって、何か呟いているのが聞こえる。
二人にメールを送るときは、文面を声に出して確認してるみたい。
やっぱり二人は小さいから、気をつけてるんだね。
こんな毎日のことからも、どれだけ二人を大切に想っているのかが伝わってきます。 
 
 
 
 

 静かな部屋に、フェイトちゃんの呟きが微かに聞こえる。
「……は、二人の……よ。色々……て、迷っ……だよ。それで……しみにして……く会いたい……ね」
 所々しか聞こえないけど、多分今日の買い物のことを書いてるみたい。
二人にプレゼントするなら当日まで内緒にしておいた方が良いのに。
でも、それは二人に会うのをどれだけ楽しみなのかって事が、ひしひしと伝わってくるよう。
そんなに楽しみにしてたんだね……
フェイトちゃんのその想いに素直に応えられなかった自分が思い出された。
また、枕に顔を埋めてしまおうかと思ったその時。
微かだったけれど、はっきりと。
文面をなぞっているだろう、フェイトちゃんの声が聞こえました。
「……を、なのはも一緒に……だよ。二人で待ってるね」
 違う、違うんだよフェイトちゃん。
私はフェイトちゃんの為に、そう装っていただけで二人のためにしてた訳じゃないんだよ。 
 
 
 
 

 嬉しそうなフェイトちゃんをがっかりさせない為にそうしてただけなの。
私は、そんなフェイトちゃんが思ってるような人じゃないんだよ。
「そうだ。引越しが済んだこと。アリサとすずかにも連絡しておこうっと」
 今度は日本にいる二人に向けて別のモニタを出すフェイトちゃん。
毎日メールを受け取っていた事を思い出して。
今日のお買い物のときの事を思い出して。
その時、私はとても詰まらないことを考えていた事を思い出して。
そして……フェイトちゃんの心が自分に向いてないんじゃないかって思ってしまった事。
逃げ出したい、ココに居たい。
相反する考えのせめぎあう中で、最後に勝ったのは―――
「――きゃっ!?あっ、ちょっと!勝手に消しちゃ駄目だよ」
「…………ごめん、フェイトちゃん」
 後ろから抱きつき、コンソールとモニタを消してしまいました。
 
 
 
 
 
「もう……。そうだ、なのは。お腹、空いてない?」
「空いてない。それより……ごめんね、フェイトちゃん」
「どうしたの?」
「だって。今日は私……本当は酷いことしたの」
「酷い事?何のことかよく分からないんだけど……なに?」
 抱きつく腕にもっと力を込める。
こんな嫌な私、フェイトちゃんの顔も見れないくせに、寂しくてその温もりを欲しがってる。
だから、振り返れないようにしっかり腕で固めて、そして思い切り身体を押し付けた。
「あのね。キャロとエリオへのプレゼント、選んでたとき」
「うん。なのはも一緒に考えてくれたよね。それが、どうかしたの?」
「……あれはね。全然違うの。私、あの時何も考えてなかった。ううん、違うこと考えてたの」
「違うこと?」
「それは、キャロとエリオの二人に……嫉妬してた」 
 
 
 
 

「嫉妬?どうしてなのはが?」
 振り返ろうと身じろぎするけど、絶対に腕の力を緩めない。
さわさわと揺れる髪から甘い香りが漂い、私の鼻先をくすぐる。
少しして諦めてくれたのか、私の手にそっと手を重ねてくれました。
いつも同じ、ひんやりと冷たくて吸い付くようなその感覚が私を余計に追い込みます。
「二人のことを話してるフェイトちゃんは本当に楽しそうで幸せそうで。
 まるで、私のことなんて忘れちゃったみたいに感じちゃって。
 勿論、フェイトちゃんがそんな事ないって分かってる。分かったんだけど……」
「なのは……それなら、そうと」
「だって!そんなワガママ言って嫌われたくなかった!
 せっかくフェイトちゃんが楽しそうにしてるのを……邪魔して嫌われたくないって思ったの」
「私、そんなことで嫌ったりなんて」
「あの時の私は、二人への嫉妬で頭がいっぱいだった!
 もし、この気持ちがバレちゃったら、嫌われちゃうんじゃないかって。他に考えられなかった。
 だから嫌われないようにって、二人のためなんかじゃなくて!何でもないの!自分のためだったの!」
 
 
 
 
 
「なのは……」
「本当はそれだけじゃない。朝からそうだった。
 ヴィータちゃんとご飯食べてるときも、自然なやり取りに阻害感があった。
 とっても仲良さそうで、私が気付けなかったヴィータちゃんの仕草にフェイトちゃんは気づいてた。
 何だか私一人だけが置いて行かれてるみたいで、ホント……ちょっと寂しかったの」
「……全然、そんな風に思わなかった」
「私のことを心配してくれてるって分かってる。自覚ある。
 だけど、それで二人が仲良くしてるのを見てそう思ってしまう自分がイヤだった」
 本当はこんな事言いたくなかった。
こんな薄暗い気持ちなんて仕舞いこんで、フェイトちゃんの前では笑っていたかった。
なのに、どうしようもなくて。一度溢れ出した言葉は止められそうにない。
「それで二人のことがあって、そういう気持ちがどんどん膨れ上がっていって……」
 身体が震えてるのが分かる。
そして、それを抑えるようにフェイトちゃんを抱きしめる腕に力を込めた。
きっとフェイトちゃんは痛がってるに違いない。けど、止まれなかった。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 22 >
 

 

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2007年8月24日 (金)

お引越しなの!2 StS 20

 
 
 
 何処をどう走ったのか、全然覚えていない。
けれど、なんとか部屋まで辿り着いた私は、そのままベッドに倒れこんだ。
柔らかなベッドに身体を預け、大きな枕に顔を埋める。
真っ暗になった。
それは枕に顔を埋めて視界が塞がっただけじゃない。本当に"真っ暗"になったように感じてた。
フェイトちゃんの事になると冷静に、ちゃんと頭が回らなくなる。
今だって何か言い掛けてたかもしれないのに、それを待ってちゃんと話を聞く余裕もなかった。
しっかりお話を聞けば、何か理由があっての事だったかもしれなかったのに。
「うぅ~……ばかぁ」
 あの時のショック。拒絶感。隔絶。断絶。
もっと他にも沢山あるけど、もうこんな風になった自分の状況を分析したくなかった。
出かける頃から、時折。薄々感じていたこれらの感覚。
それが決定的になって目の前に突きつけられた。
そう感じられて仕方なかった。 
 
 
 
 

「……まだ寝てる、のかな」
 フェイトちゃんの声が聞こえる。
いつの間にか寝ちゃってたみたい。目を開いてもまだ真っ暗。
うつ伏せのままなんだ、寝返りも打たなかったみたい。
真っ暗の世界に、フェイトちゃんの足音が聞こえる。
どんどん離れていく。少しずつ小さくなっていった足音はそのまま部屋の外へ消えていった。
もう、それだけで涙が溢れてくる。
枕を思い切り抱きしめる。
なんで今抱きしめてるのが枕なんだろう。
昨日。ううん、今日の朝まで。この腕はフェイトちゃんを抱きしめていたって言うのに……

「……のは。ご飯、もらって来たから。お昼、食べてないでしょ?」
 また頭の上で声がする。
朝のアルフさんみたいに、私にご飯を持ってきてくれたみたい。
だけど、今はとても何かを口にする気分になれなかった。
 
 
 
 
 
 離れていく足音。次いで聞こえたのはトレイが何かに当たる音。
それでまた何処かに行ってしまうのかな、と勝手な孤独感に苛まされる。
だけど、それは本当に勝手な思い込みであって、足音が途切れるとベッドの反対側が沈み込む。
フェイトちゃんがベッドの端に腰掛けたのかな。
起きるなら、顔を上げるなら今だと思った。今しかないって。
なのに身体は全く言う事を聞かなくて、頭と身体がバラバラになってしまったみたい。
「温めること出来るから、その……ゆっくりしてて」
 それは私の返事を待っていないような口ぶり。
でも、それだからって嫌な感じじゃなくて、私のためを想った気遣い。
そんな気遣いも、今の私の感じる大きな溝を埋めるには足りないし、とても重く感じられた。
こんな勝手なこと。
きっとフェイトちゃんに嫌われちゃうね……
自分の吐く息で温く湿った枕の生暖かさ。この不快感が今の自分の後ろめたさそのもののようで。
イヤでイヤでしょうがなかった。
 
 
 
 

 ――ピ、ピピピ、ピ
軽い電子音だけが部屋に聞こえる。
コンソールを叩き続けているんだ。仕事でも入ったのかな。
フェイトちゃんは出向だけど、当分はこちらの用意に専念出来るようにするって。
だから、向こうから仕事が入らずに準備を終わらせてしまえば、二人でゆっくり出来るって。
そういうはずだったのに……今はそれどころじゃなくなっちゃった。
……私一人のワガママで。

「よしっと。これで大体良いかな」
 う~ん、と伸びをする声。
どうやら用事は済んだみたい。
随分と時間が掛かってた気がする。何か大変な仕事だったのかな……
うん、今だ。今しかない。
顔を上げてフェイトちゃんに謝るんだ。
 
 
 
 
 
 意を決して、今度こそ。そろそろと顔を上げる。
一気に上げれば良いのに、まだフェイトちゃんの顔が見れない、卑怯な自分とのせめぎあい。
それでも、随分と沈み込んだ枕からやっとの事で顔を上げると、綺麗な金髪が目に飛び込んできました。
上着は制服のワイシャツになっています。
私が寝てる間に仕事でもあって、誰かに会ってたのかな?それで着替えたんだね。
そっか、着替えちゃったんだ……残念。
「さて。メール、今のうちに打っておこうかな」
「?」
 そのまま、どうするのかと思っていると、フェイトちゃんはメールを打ち始めました。
誰に打ってるのかな。
ゆっくり。気づかれないよう、頭を起こしていくとモニタの端が見えました。
どうやらアルフさんに打っているようです。
急に帰っちゃったし、どうしてるのか気になるよね。
双子ちゃんの様子も含めて。
 
 
 
 
 
 ピ、ピピピ、ピピ……

結構な量を送ってるみたい。
フェイトちゃんは誰にでもそうなんだね。
私に送られてくるメールも、いつも文面が多くてビックリしたもん。
特に中学を出て、会う機会が減ってからかな?それまでも充分に多かったけど。
でも、それがイヤとかそういう事は全く思わなかった。
だって。文面からフェイトちゃんの私に何か伝えたいって想いをひしひしと感じたから。
どんな些細な事でも、今日一日自分にあった事、感じたことを知ってほしいって。
だから、一日の終わりにフェイトちゃんからのメールをチェックしなきゃ眠れなかくて。
そうして、それに対する返事を考えながら、微睡むのが心地よかった。
でも、もうそれが今は凄く昔のように感じる。
六課の来る、つい先日までしてたことなのに……
「送信、と。さて、次は母さんとエイミィだね」
 すぐさま次のメールに取り掛かるフェイトちゃん。
また同じようにメールを打ち始めた。
同じ家に住んでるのに送るのだから、全く別の内容なのかな。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 21 >

 

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2007年8月23日 (木)

お引越しなの!2 StS 19

 
 
 
「シャーリー、いるかな」
「先に確認しておこうね……あ、シャーリー?」
 相変わらずの素早い応答。
通信士だからかな?そう言えばエイミィさんも素早かった気がするし……うーん。
フェイトちゃんが、これからそっちに行くことを伝えて通信を切りました。
「ねぇ、昨日来たときも思ったんだけど」
「うん」
「どうして技術部のあるところって暗いのかな。計器類とかの灯りだけで」
「そう言えばそうだね。ひんやり暗くて、そういう雰囲気を醸し出してるのかな」
 靴の底が廊下を叩く音だけがやけに響く。
こういう光景ってホラー映画とかスパイ映画とか何かで見そうな場面だね。
なんて言えば、若しかしたらシャーリーの趣味かもって返すフェイトちゃん。
そっか、ホラー映画好きなんだ……シャーリー。 
 
 
 
 

「シャーリー。お土産持って来たよ」
「あ、ありがとうございます~。今日はどういった様子でしたかー?(棒読み」
「うん……それがちょっと」
「シャーリーの言う通り。私たちの不注意具合がよく分かったよ」
「そうですか。では、今日の経験を生かして今後は充分に気をつけてくださいね」
 やけにご機嫌な様子。
お土産、そんなに嬉しかったのかな。
もう少しキツク叱られるものだとばかり思ってたから、拍子抜けしちゃった。
「それで、何を持ってきてくれたんですか?」
「えぇっと。それは中を見てのお楽しみかな。ね、フェイトちゃん」
「うん、そうだね」
 楽しげな感じを装うとしたけど、フェイトちゃんの相槌はごく普通のものでした。
一体どうしちゃったのかな。
こっちに来る間は、ちょっとだけお話できたと思ってたのに。
フェイトちゃんの心が。全然つかめません。
 
 
 
 
 
「何か飲み物でも買ってくるね。そのままじゃ食べづらいだろうし」
「いいえ、お構いなく」
「私も飲みたいと思ってたところだから、ついでに」
「そういう事でしたら、お願いしちゃいますね」
 箱を受け取ったシャーリーに、飲み物を買ってくると言って部屋を出ていくフェイトちゃん。
他事を考えていた私は一瞬出遅れて、ついて行くって言い損ねてしまった。
閉まる扉に消える後姿を見送るだけ。
閉まりきった扉を前に、小さく漏れた声がただ虚しく響くだけでした。

「一緒に行かなくて良かったんですか?」
「う、うん。ちょっとついて行くタイミング、逃しちゃった」
「ふぅ~ん。いつも仲の良いお二人でも、そういう雰囲気になったりするものなんですね」
「そういう雰囲気?どういうこと?」
「私の口から言わせるんですか?」
 何だか意地悪なシャーリー。 
 
 
 
 

「……ああ、そうだ。3つもコップを持つのは大変ですから、追いかけて行ったらどうでしょう?」
「コップを……そっか。うん、そうだね」
「では。お気をつけてー」
 何かを確認したのか、突然の提案。
ちょうど身体で遮っていて、その後ろにあるモニタに何が映っていたのか分からなかった。
でも、フェイトちゃんを追いかける口実の出来た私にとっては些細なことで。
直ぐに部屋を飛び出して行くのです。

「近くの自販機、どこかなぁ……」
 仄暗い廊下を歩いていく。
一回来ただけだから細かい配置や何かはまだ覚えてない。
その内よく来る事になるだろうから、今のうちに覚えておかなきゃいけないね。
そんな事を考えながら歩いていくと、「きゃっ」と言う可愛らしい声が聞こえた気がしました。
少し響いて正確には聞き取れなかったけど、静かな廊下に小さな悲鳴らしき声。
何か嫌な予感がした私の足は知らずに駆け出していました。
 
 
 
 
 
「今の声……一体なんだろう?」

 若しかしたらフェイトちゃんかもしれない。
一度そう思ってしまえば、小さな不安は大きくなっていくばかり。
声らしきものが発せられたたと思しき方向へ急ぐ。
館内だから部外者によるトラブルが起きるとは思えないけど、万が一ってことがある。
静かな廊下に響き渡る床を強く叩く音。
誰かが追いかけてくるように、反響する足音を聞きながら次の角を曲がった瞬間。
ぼんやりと灯りを放つ自販機。
ここにフェイトちゃんが!
安心して声をかけようとした私の、目に飛び込んできたのは―――

「あっ……!な、なのは!?」

 しっかりとシグナムさんと抱き合ったフェイトちゃんでした。
 
 
 
 
 
 足元には倒れたカップが1つに、零れたコーヒーらしき液体。
手を広げた状態で硬直してるフェイトちゃん。
片足を絡ませて、しっかりと抱きついているシグナムさん。
ちょうど顔は私から反対側になっていて、どういう表情なのかは窺えません。
「あ、あの……えっと」
「…………!」
 しっかり。冷静に状況が見えているようで頭の中は全く逆の状態でした。
何がどうとか。そういう事を考える余地すらありません。
ただ、ただ二人がしっかり抱き合っているという、それだけが頭の中を占拠していました。
「待ってなのはっ!」
 身体が、足が勝手にその場を後に、全力で駆け出します。
後ろからフェイトちゃんの声が追って来るけれど、今の私の耳には届きませんでした。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 20 >
 

 

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2007年8月22日 (水)

お引越しなの!2 StS 18

 
 
 
「それじゃ先に車、置いてくるね」
 私とヴィータちゃんを降ろして、車はゆっくりと駐車場へと走っていきます。
玄関前には私とヴィータちゃんの二人。
車が見えなくなるまで、黙って見送っていました。
「……あのね、ヴィータちゃん」
「もう良いって。昨日は偉そうなこと言ってたのにさ」
「うん……これから私たちも気をつけるから」
「そうしてくれ。はやての迷惑も考えなきゃいけねーんだしよ」
 そっと寄り添って頭を抱くようにする。
いつもなら嫌がるのに、今日は黙ってさせてくれた。
するすると指通りが良い髪。いつも触ってるから分かる。
その髪の感触をいつものように味わうことなく撫でていると、脇腹の辺りにコツンと当たる肩と、頭。
びっくりしたけど、私も黙ってそのまま撫で続けました。
この寄りかかるヴィータちゃんの、意味と重たさをじっくり噛み締めるのでした。
 
 
 
 

「ヴィータは?」
「もう行っちゃった。早くはやてちゃんに会いたかったんじゃないかな」
「……そっか。なら、良いんだけど」
 玄関の奥を見つめるフェイトちゃん。まるでヴィータちゃんの背中を追うように。
その視線は、私がヴィータちゃんを心配するものとは違うような気がしました。
「あ、そうだ。買い物袋、忘れてたよ」
「本当?わざわざごめんね」
「ううん、そういう事。たまにあるし」
 買い物袋を受け取るときに、指先が触れ合う。
けれど、それに反応しちゃったのは私だけで、フェイトちゃんは心ここに在らずといった感じでした。
どうしちゃったんだろう。
別に何か特別なことを期待していたわけじゃないけど、無反応なのは当然気になります。
視線も、心も。こことは別のどこかにあるような気がして。
この紙袋一つ分の距離が、また私とフェイトちゃんを隔てる大きな壁のように感じたのです。 
 
 
 
 

「シャーリーのお土産。また今度にしようか」
「そうだね。今度暇を見つけて連れてってあげよう?」
 色々と手伝ってくれたりのお礼が出来ないのは心苦しいけど。
フェイトちゃんを横目に、音もなく開く大きなガラス扉をくぐって建物の中に入っていく。
やっぱり雰囲気が違う。
何か考え込んでいる風に見えた。
さっきのヴィータちゃんのことを考えてる……のとはまた違う感じがする。
「ん?どうしたの、なのは」
「う、ううん。何にも、何にもだよ。ちょっとフェイトちゃんを見てただけ」
「? 変ななのは……」
 慌てて視線を逸らす。
フェイトちゃんと視線を合わすことが出来なかったから。
考え込んでる風な横顔の印象が、何故だか怖く感じたからかもしれない。
気を悪くしてないかな……ゴメンね、フェイトちゃん。
 
 
 
 
 
「今日、これからどうする?」
「うん……一度はやてちゃんのところに行って相談しよっか」
「そうだね。何かする事とかあるかもしれないし」
「……」
「……」

 さっきからこんなのばかり。
会話が全然続かない。やっと口を開いても二言三言交わしただけで今みたいに途切れてしまう。
フェイトちゃんはどうか分からないけど、私は何か距離を感じていた。
積極的に近づけないと言うか、壁があるというか……その正体は分からないけれど。
それは私が勝手に思ってるだけで、実は壁を作っているのは私なのかも。
それはヴィータちゃんの様子が思考の端をチラついているからかもしれません。
このままで部屋に帰るのはどうかな、なんて。さっきはアレだけ二人の部屋に帰りたがっていたのに。
隣を歩くフェイトちゃんの事も考えている私に、不意に呼び止める声が背中にかかりました。
「おい。なのは、フェイト」
「ヴィータちゃん?」
 
 
 
 
 
 振り返ると、そこにはさっき別れた時のままのヴィータちゃんが。
違うのは手に握られた箱の大きさだけです。
「あのさ。シャーリーんとこ、行くはずだったんだろ?」
「うん、そのつもりだったんだけど」
「コレ。持っていってやれよ、好みに合うか知らねーけどさ」
 たっと駆け寄ってきて無言で箱を突き出します。照れたように顔を逸らして。
「……うん。ありがとう、ヴィータちゃん」
「んじゃな。渡したからな、こんで何も無しだ!」
 受け取るや否や、踵を返して有無を言わさず走り去ってしまう。
ヒラヒラと翻るチュニックの裾が可愛らしかった。
「これでシャーリーのところに行けるね……フェイトちゃん?」
「……え、え?そうだね、荷物を置いたら」
 いつまでもヴィータちゃんの背中を見送っているフェイトちゃん。
でも、その表情はさっき玄関でヴィータちゃんの背中を追っているのと同じなのを見逃しませんでした。
 
 
 Vattach_21

 *本日のイラストは楽描き格納戸のカプセル怪獣さんに頂きました。

 

 お引越しなの!2 StS 19 >
 

 

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2007年8月21日 (火)

お引越しなの!2 StS 17

 
 
 
「……ふぅ。なのは、ちょっとこっちに来てくれないかな」
「え、あ、うん。ちょ、ちょっと待ってて」
 困ったように眉を下げるフェイトちゃん。
その一言に、何とか地面に張り付いていた足を引き剥がします。
棒のような足でヨロヨロと駆け寄ると、ヴィータちゃんの足元にしゃがみ込みました。
「ヴィータちゃん。ほら、フェイトちゃんもそう言ってるし。ね?」
 また、こっくりと頷くだけ。
本当は顔が見たかったけど何故かそれが憚られて、顔を見ないよう立ち上がって手を引きました。
頭のアンテナだけが、ひょこひょこと揺れているのが見える。
その横を追い越し、先に車の準備をするフェイトちゃん。
音もなく動き出し徐行運転で、後部ドアを私たちの前に来るように止めてくれました。
「ほら、ヴィータちゃん。乗って」
 また頷くだけ。なるべく顔を見ないよう、注意しました。
 
 
 
 
 
 のそのそと乗り込むヴィータちゃん。
その右手に白い大き目の箱が握られているのに気づきました。
全然目に入ってなかった、どうやら買い物が終わった後に囲まれちゃったみたい。
乗り込んだのを確認して、私も後ろから続きます。
「大丈夫、出して」
 ゆっくりと振動もなく動き出す。
膝に箱を抱えているヴィータちゃんをそっと抱き寄せると、珍しく頭を預けてくれます。
タイミングよく車の往来も途切れていて、スムーズに車道へ出ることが出来ました。
その時。お店の前に視線をやると、そこの人たちはまだ戸惑っている様子でした。

「あの、ヴィータちゃん?」
「……すまねぇ。迷惑かけちまったみたいで」
「ううん。タイミングよく通りかかれて良かったよ。ね、フェイトちゃん」
「そうだよ、気にする事ないったら」
 
 
 
 
 
 理由は聞かないほうが良い、かな。
なにか怖い目にあったんだろうし。ヴィータちゃんが涙目なんて相当だもん。
何も言わないまま、抱いた肩を優しく擦っていると、俯いた顔から小さな声が聞こえてきます。
「あのさ。お前らって、いつもああいう風で怖くないのか……?」
「うん?いつもって、えーっと、周りを取り囲まれたりすること?」
「……うん」
「昔はどうだったかな。最近は滅多にないし。ねぇ、フェイトちゃん」
「そうだね。もしそうだとしても、慣れちゃったかな」
「嫌な慣れだけどね。それがどうかしたの?」
「あのさ。今日はやてと分かれた後にさ、一人であの店にケーキ買いに行ったんだよ」
「はやてちゃんが言ってた用事ってそれだったんだ」
「はやてに連絡取ったのか?……まあ、それでさ。昨日はお前らと食べたし」
「今日ははやてちゃんと、ってこと?」
「ああ。そんで、今日ははやてとリインに買って行ってやろうって」
「そっか。それなら内緒にしておかないとね」
 
 
 
 

「そんでさ。この箱に詰めてもらって店を出たらよ。いきなり周りを囲まれちゃってさ」
「そうだったんだ。今までそういう経験、なかったの?」
「流石にあんな大勢はさ……びっくりしちまってよ」
 落ち着きを取り戻してるみたい。
息も深くなってるし、髪の毛の隙間から覗く顔色も良くなってる。
「きっと、いきなりの事だったから少し大げさに反応しちゃったんだね」
「あんな風にさ。なんて言うか、珍しいモノでも見るみたいに取り囲まれるの……久しぶりっていうか」
「久しぶり、ね」
「そういうのは慣れたりしないし……ヴィータは特に」
「見下ろすように囲まれるのって怖いよね」
「どうして良いのか分かんなくて、テンパっちまって。下手な騒動起こせばはやてに迷惑かかるし……」
「昨日は大丈夫だったんでしょ?どうして今日に限っ――」
 そこまで言って、思い出す。
それは出かける直前のシャーリーの言葉。何か噂になってるって。
若しかしたらそのせいでお店には昨日よりお客さんが多かったのかも……
 
 
 
 

 ヴィータちゃんはこの噂話を知らなかったんだ。
だから、昨日のように出かけてトラブルにあった。事前に知っていれば対策も立てられたのに。
ココに来て自分の考えの浅はかさが身に沁みる。
はやてちゃんの言う通り、自重しなきゃいけなかった。
「あのね、ヴィータちゃん。その……」
「いっつもはやてと出かけてるからさ。そういうの、今日はちょっと面食らっちまった。
 ケーキも守らなきゃいけないし、はやてに迷惑かけちゃいけないしさ。テンパっただけだ。そんだけ」
「で、でもね。ヴィータちゃん」
「お前らのせいじゃねーよ。今日はちょっとドジ踏んだだけなんだ。気にすんなよ」
「うん……ごめん」
「なんでお前が謝るんだよ……アタシの不注意だったって言ってるじゃねーか」
 私に寄り添ったまま、優しい口調だったけど、もうこれ以上言うなって意思を感じ取れた。
ちゃんと謝りたかったんだけど。これは後で時機を見てそうしよう。
……ごめんね、卑怯な私で。 
 
 
 
 

「ヴィータ。はやてに連絡、入れとかなくて良いの?」
「おお、そうだな。帰りが遅いと心配するかもしんねーし」
 身じろぎをして端末を取り出すと数瞬遅れてモニタが反応し、はやてちゃんが顔を出した。
うん、やっぱりこのタイミングだよね。シャーリーは早すぎる。
モニタに出たはやてちゃんと、簡単なやり取りでこれから帰ることを伝える。
はやてちゃんも忙しいらしくって、それだけで直ぐに切ってしまった。
「もう良いの?」
「あんま喋ってるとバレちゃうかもしんねーし。これで良いんだ」
 ケーキの箱を膝に乗せたまま、端末をしまうのは中々に難しいみたい。
そっと箱を持ち上げると、あっ、と小さな声を上げる。
でも、こっちを見ることなく端末をしまい終えるので、確認してから箱を降ろす。
箱は随分重たかった。
何を買ったのかなって。普通ならそういう話も出来たはずなのに……
そんな話も出来なくした自分の配慮のなさを悔やみながら、車は走っていきます。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 18 >

 

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2007年8月20日 (月)

お引越しなの!2 StS 16

 
 
 
「そういえば。はやてちゃん達、どうしてるかな」
「上手く行けば会えるかなって思ったけど、アレだけ広いと流石に無理だったね」
「ちょっと連絡取ってみようか?」
 車に乗り込み、ショッピングモールを出たところで、ふとはやてちゃんの事を思い出す。
確かヴィータちゃんと一緒に出かけてるんだったよね。
端末を取り出し、はやてちゃんを呼び出してみます。
移動中なのか、中々反応がありません。一度切ろうかと思ったところで反応がありました。
「はいはい、はやてです。なのはちゃん、どうかしたん?」
「ううん、ちょっと気になって。今何処にいるの?」
「今か?えっとな、もうとっくに買い物終わって私は隊舎に帰る途中や」
「私は?ということはヴィータちゃんとは別行動なの?」
「う~ん、そやね。途中で何やら用があるみたいな事言うたから、そこで別れたんや」
「そうだったんだ。あのね、私たちは今帰るところだよ」
「今?随分先に出かけたはずやのに……相変わらずやね、お二人さんは」
「えへへ……それじゃ、もうすぐ帰るから」
「はいはい。今日は大人し帰ってきてね。それじゃ、フェイトちゃんにも宜しく」
 
 
 
 
 
 向こうの運転中なのか、手短に要件を済ませて終わりました。
話の内容を簡単にフェイトちゃんに伝えて、私たちも早く帰ることにしました。

「あ、そうだ。昨日寄ったお店、どうする?一応シャーリーがああ言ってた事だし」
「そうだなぁ、昨日買えなかったのもあるし。気をつければ大丈夫じゃないかな」
「うん。だったらコレを見て、着くまでに決めておいて。向こうで悩まなくて良いように」
「昨日もらってたの?さっすがフェイトちゃん、だね」
「そ、そんな褒められちゃうと照れちゃうな///」
 目の前に映し出されたモニタを横目に、フェイトちゃんに顔を向ける。
フェイトちゃんは真っ直ぐ前を見るんじゃなくて、キョロキョロと視線を彷徨わせています。
背中がむず痒くなるような恥かしさに、落ち着いてられないって雰囲気が伝わってくる。
「あ、見えてきた。なのは、もう決まった?」
「うん。取りあえず昨日買わなかったのを中心に。シャーリーへのお土産も考えたよ」
 ゆっくりとセンターに寄りながら減速していく。
そろそろお店が見えてくる頃、少し変わった光景が目に飛び込んできました。
 

 
 
 
「ねぇ、あの人だかり。一体なにかな」
「並んでる訳じゃなさそう。何か取り囲んでるって感じがする」
 対向車線の流れが途切れない。その隙間から覗くお店の前の様子は変だった。
何かを取り囲むように人だかりが出来ている。
あの中心には一体なにがあるのだろう、皆が少し下を向いていた。
「ねぇ、フェイトちゃん。何だろうね。……フェイトちゃん?」
「――なのは!しっかり掴まってて!」
 じぃっとフロントガラスの向こうを見つめるフェイトちゃん。
何か見つけたのか、車の流れが途切れた一瞬をついてお店の駐車場へ滑り込んだ。
まるで映画の一シーンのよう、路面をタイヤが擦り凄まじい音を立てながら駐車ペースへ。
止まるや否や、車から飛び出していく。
一体何があったのか、私も慌てて後を追いました。
 
 
 
 

 走るフェイトちゃん、歩道に飛び出すと人だかりに向かって声を荒げました。
「ヴィータ!どうしたのヴィータ!」
「ヴィータちゃん!?」
 人だかりが一斉にこっちを向く。
みな一様に目をまんまるに見開いて、"驚く"という表現が見事に当てはまる表情でした。
そうして静まり返った人だかりの中から、フェイトちゃんの言葉どおり。
真っ赤な髪の毛の子が、足元を掻き分けながら飛び出してきました。
「てしゅたろっしゃ!」
「「あっ!」」
 そのまま一直線に。迷うことなくフェイトちゃんに抱きつく。
私の「あっ!」と人だかりの「あっ!」は、きっと違う意味だったと思う。
ひしっと腰元に、まるで迷子の子どもが、やっと見つけたお母さんに抱きつくように。
そんなヴィータちゃんを優しく受け止め、落ち着かせるように何度も頭を撫で付けます。

 
 
 

 その光景を、一歩も動けず見つめる私。
ヴィータちゃんのこと、私だって一緒に心配してあげたいのに。
たった数歩のこの距離が、遥か遠くに感じられ、しかも、足が地面に根を下ろしたように動きません。
呆気に取られる人たちを放って、ヴィータちゃんを慰めるフェイトちゃん。
ある程度落ち着いたのでしょうか。
頭を上げ、眉をキリッと吊り上げると、珍しく低めの声で問いました。
「みなさん、一体どうなさったんですか……?」
 ざわざわとするだけで、全く要領を得ない。
皆が皆、お互いを見たり口ごもるばかりで、いくら待っても返答を得られそうにありませんでした。
「……そうですか。行こう、ヴィータ。送ってくよ」
 打って変わって優しい声。
でもそれは、今のヴィータちゃんにとって余り効果がなかったのかもしれません。
こっくりと頷くばかりで動く様子を見せず、足が僅かに震えているのが確認出来たからです。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 17 >
 

 

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2007年8月19日 (日)

お引越しなの!2 StS 15

 
 
 
「あ、そうだ。なのは、アレを見ていこう?」
 ふと立ち止まり、館内情報を取り出すフェイトちゃん。一体どうしたのかな?
追い越してしまって振り返ると、私に気付いてモニタを指差しながらこう言いました。
「部屋着。昨日アルフが言ってたじゃない、新調したらどうだって」
「う~ん。アルフさんがそんなこと言ってたね」
「こっちを真っ直ぐ行けば売り場が見えてくるんだけど、どうする?」
「そうだなぁ……うん。今日、買っちゃおう?」
「分かった。じゃあ、こっちだよ。なのは」
 モニタを消し、一歩踏み出して差し出される手。
ダンスに誘うような仕草、それが自然に出来るフェイトちゃん。
その手を見つめる私に、ちょっと照れたような表情で返してくれる。
自然な仕草でも、そこから胸のうちが伝わってくるよう。
そのドキドキした私の手を重ねて、どちらからともなく歩み寄る。
今度は二人並んで。さっきほどしっかりと握らなかったけど、それでも充分でした。
 
 
 
 
 
 そのまま二人で洋服売り場まで。
フェイトちゃんのソワソワしている気持ちが伝わってきます。
何を買おうか考えてるのかな?
でも、それは私も同じで、この気持ちは同じようにフェイトちゃんに伝わったりしちゃってるのかな?
こっそりと、横目でそんなフェイトちゃんを見つめ、思わず指に力が篭っちゃう。
流石にそれで気付いたのか、ハッとした表情の後。
どうしたの?とでも言いたげな、少し心配したような顔を向けてくれる。
チラチラと見ていた私にとって何か気まずく感じられたその視線に、慌てて話を逸らしてしまいました。
「あっ、こ、ここだ。へぇー、また大きな売り場だね~」
「? わぁ、本当だね。これじゃ見て回るだけで疲れちゃいそう」
「目的をしっかり決めていけば大丈夫だよ。えぇっと……よし。この辺りみたいだね」
「割と奥の方なんだ。ゆっくりカタログ見ながら行こう?」
 モニタを出して、話を逸らそうとしているのがバレてしまったのかな。
先に行こうとする私の手を牽きとめ、一緒に行こうと言うフェイトちゃん。
色々な気持ちを抱えながらも、誘われた嬉しさには敵わなくて、そっと手を握り返したのでした。
 
 
 
 
 
「色々あって迷っちゃうね」
「うん。これなら前のと同じ感じので良いかな。やっぱり慣れたモノの方が安心だし」
「そうか……あっ、良いこと思いついた!」
「良いことって、なに?」
「えへへへー、それはねぇ……」
 私の声にちょっとだけ警戒するような仕草のフェイトちゃん。
失礼しちゃう、そんな悪いことじゃないんだよ。はやてちゃんじゃないんだから~。
「あのね?お互いにプレゼントしあうって言うのはどうかな?」
「お互いに?それって、私がなのはのを選んであげるってこと?」
「そうそう。私がフェイトちゃんのを選ぶの。それで何を買ったかは内緒ね」
「内緒?二人別に買うってこと?」
「そういう事。今日の夜、帰ってからのお楽しみってことで」
「う、う~ん、どうしよう……」
「悩んじゃ駄目。もう決まりね。それじゃ、買ったらここに集合ね~」
「あっ、待ってよなのは……って。もう行っちゃった」
 
 
 
 
 
 一緒に見て回るのも勿論よかった。
でも、今の私じゃきっと、隣のフェイトちゃんを意識しちゃって選んだり出来なさそうだった。
だから、ここは理由をつけて少しの間、離れることにしたの。
半ば強引に離れちゃって、フェイトちゃんは呆れちゃったかな。
そうやって、距離を取れば落ち着くかなって思った心は、予想通りだったけど。
それよりも離れたフェイトちゃんのことが逆に気になっちゃって。
冷静さを通り越して、何だか寂しくなってきちゃった。
「……早く選んでフェイトちゃんのところに戻ろうっと」

 意気込んで早く選ぶはずだったのに、いざフェイトちゃんの事を考え始めると上手くいかなくて。
ああでもない、こうでもない。こっちが良いかな、あっちが良いかなって。
頭の中で勝手にフェイトちゃんのファッションショーを繰り広げる私。
その度にどんどんフェイトちゃんの事ばかりが頭を占めてしまって、慌てて振り払う。
それを繰り返すばかりで、結局随分時間がかかってしまいました。
 
 
 
 
 
「ごめんフェイトちゃん。ちょっと遅くなっちゃったかな?」
「ううん、私もいま来たところだから」
 待ち合わせ場所に急ぐと、既に店のロゴが印刷された袋を持って待っているフェイトちゃん。
何だか、こういうやり取りってどこかで聞いた事あるような。
え~っと……そうだ。デートの待ち合わせみたいなやり取りって感じなんだ。
ど、どうしたのかな。そんな風に意識した途端にドキドキしてきちゃう。
「どうしたの、顔が赤いよ?」
「そ、そうかな。えへへ」
「走ったりしたからじゃない?そんなに急がなくても良かったのに」
「ううん。そうじゃなくて。えっとね、何だか恋人同士みたいだなって/// そう思ったの」
「こ、ここ恋人……///」
 お互いに意識してしまってまともに顔も見れない。
よく考えてみると、普通の友達でだってこういうやり取りはしたりするよね。うん、きっとそう。
だけど、今の私には何故かそんな考えは微塵も浮かんで来なくて。
ただただ、目の前のフェイトちゃんを意識するばかりでした。
 
 
 
 
 
「それ、それじゃあ。もう帰ろうか」
「う、うん。もうお昼過ぎてるもんね。ちょっとお腹も空いてきたし」
 暫く黙っていた後、そっと口を開いたのはフェイトちゃん。
その言葉に、どちらからと言うでもなく手を差し出しあう。
触れ合う手。自然と絡み合う指。吸い付くようなヒンヤリとした肌。
フェイトちゃんに私はどう感じられているんだろう。
汗かいてないかな。私の手は変に熱くなってないかな。この気持ちが溢れてないかな。
手を離したいような、絶対に離れたくないような。
でも結局は離れたくない気持ちが強くて。これはフェイトちゃんも同じであって欲しい。
私を引っ張るように、半歩だけ先に行くように歩くフェイトちゃん。
今日は引っ張ってもらってばかり。
真横じゃなくて、少しだけ斜めからその横顔を見つめる私。
これならバレちゃわないかなって、今度は心置きなく見つめるのでした。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 16 >
 

 

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2007年8月18日 (土)

お引越しなの!2 StS 14

 
 
 
「どうしたの、まだ気になるのがあった?」
「ううん、そういうんじゃなくて……ねぇ、フェイトちゃん。膝枕してあげる」
「ええっ!?」
 キョロキョロと辺りを見渡す。周りに殆ど人影はないみたい。
ソファーを買うなら当然膝枕もしてあげたいよね。その為の感触を確かめておくのは重要なことだよ。
膝をポンと叩き、そこへ頭を乗せるよう催促する私に、一瞬で耳まで赤くするフェイトちゃん。
う~ん、その反応がますます私をやる気にさせるの。
「こ、こんな人通りの多いところで。それに、ほら。はやてに注意されたばかりだし」
「だって。もし買って寝転心地が悪かったらイヤでしょ?」
「どうしてソファーで寝転ぶことが前提なの?」
「そうしないと膝枕して上げられないし、して貰えないんだもん///」
「わ、わわ私が、なのはに膝枕……///」
 フェイトちゃんの顔はもう茹蛸みたいに真っ赤で、今にも湯気が噴出しそうです。
 
 
 
 

「そうでしょ?だからぁ、まずはフェイトちゃんを膝枕なの~。ほらほら~」
「う、うん……///」
 更に催促するように叩く。
すると周りを気にしながらも、少しずつ頭を降ろして……膝の上に、ポン。頭を乗せてくれました。
最近してなかった膝枕。でも、その感覚は昨日のことの様に思い出されます。
この頭の重さも、膝にそっと添えられる指の感覚も、そよそよと撫でる息の暖かさ。
そして、ちょっとだけ遠慮して頭を全部預けないようにしてるのも。
フェイトちゃんがどんな顔をしているのか想像しながら、優しく髪を撫ぜるのです。
でも、今日はアップに纏めているので、何時ものように指通りを楽しむ事が出来なくて残念。
「どうかな、寝心地は。足は全部乗せられてないけど」
「う、うん。良い感じだよ、でも……それよりなのはの膝枕、の方が気持ち良いかも///」
「うぅんんもおうぅぅぅ!フェイトちゃんったらー!」
 いつもなら髪で隠れてしまっている耳と綺麗な首筋が、みるみる赤くなっていきます。
普段が白磁のような分、その赤みがより一層鮮やかに、透き通るようなピンクに見えるのです。
 
 
 
 

 ガバッと身体をくの字に曲げてフェイトちゃんの顔を覗き込めば、油断してたのかな。
びっくり大きく見開く深紅の瞳。口も池の鯉みたいにパクパクとしています。
もう、その様子が可愛くて可愛くて。そのまま抱きしめてしまいました。
「ちょ、ちょっとなのは!いきなり、うわっぷ!?」
「んふー。もうフェイトちゃんが可愛すぎるのがいけないなの~」
 今日のフェイトちゃんは何時もと違って髪をアップに纏めています。
いつもより顔のラインがはっきりと見える、その印象の違いに胸はドキドキと高まるばかり。
その胸元では、驚いたフェイトちゃんが身じろぎしています。
「えへー、そんな動いたらくすぐったいよ~」
「だ、だってこんな風に抱きつかれちゃったら……えいっ、よいしょ」
「きゃっ」
 脇に手を当て、一気に持ち上げられてしまいます。
う~ん、フェイトちゃんも中々の力持ちみたいなの。私もサボってる訳じゃないんだけどな。
 
 
 
 
 
「もう、少し解れちゃったよ」
 そのまま直ぐに身体を起こし、髪の解れを押し込んで直す。
こうやって後ろから髪を整える姿と解れた後れ毛がとても色っぽくて、また見惚れてしまいました。
「コレで良しっと。ところでなのは、ソファーはこれで決めちゃうの?」
「これ?う~ん、どうしようかなぁ」
 胸元に手を当て息を整えるような仕草をしながら。
そうだったね、ここにはソファーを買いに来たんだった。
座ったまま、再度カタログを呼び出す。直ぐに取り扱っているソファーの一覧が現れました。
「いま座ってるのがこれでしょ?他には……この素材が今一番の売りみたい」
「そうなんだ、後はデザインと色の違いぐらいしかないみたい。どうしようか?」
「フェイトちゃんはどうだった?寝心地」
「う、うん。ベッドとはまた別の感じというか、なのはの事で余り覚えてないかも……///」
「じゃあこれにしちゃおう。フェイトちゃんを乗せてもお尻、痛くならなかったもん」
「も、もう。なのはったら///」
「えへへー。さて、店員さん、近くに居てくれるかな?」
 
 
 
 
 
「ありがとうございましたー!」

 手続きを終える私たち。
急に必要なものではないので、明日中に配送してもらう事にしました。
「結構な荷物になるから明日は大変そう。アルフもいないし」
「そうだね、どうしようか」
「普通なら業者さんにお願いするんだけど。こういう時、特殊施設は不便かもね」

 買い物を終え、大回りして元入った出入り口へ向かう。
来た道をそのまま帰っても良かったんだけど、せっかくなんだし、他にも見て回りたかったから。
様々な商品が目に飛び込んではくるけど、それらは話の種にこそなっても、食指は動きません。
何よりフェイトちゃんとお話出来るのが楽しかったから。
それはフェイトちゃんも同じみたい。
だから、冷かしにならないよう、お店には入ったりせず、二人でゆっくり歩いていきました。
 
 
 
 お引越しなの!2 StS 15 >
 

 

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2007年8月17日 (金)

お引越しなの!2 StS 13

 
 
 
「それじゃ次、行こうか」
「行くって、どこへ?」
「まだソファーを選んでなかったでしょ?」
「あ、そっか。そうだったね」
 先に立ち上がって手を差し伸べてくれる、格好良いフェイトちゃん。
そっと手を差し出せば、ぐいっと引き寄せ立ち上がら