お引越しなの!2 StS 3
「ねぇ、なのは。アルフのこと、見ててくれない?私、朝ごはん取ってくるから」
「分かった。もし起きたらそう言っておくね」
「うん、お願い。急いで戻ってくるから」
開いたままの扉を後ずさりして部屋をそっと出て行くフェイトちゃん。
そんな静かにしなくても起きないと思うんだけど、こういうのが優しさなんだね。
でも、私としては今のうちに起こしておいた方が良いと思うんだけどな。
「アルフさ~ん。もう朝ですよ~」
ベッドに寝転びアルフさんと目線を同じにする。
目の前でふーっと膨れては緩やかに空気が抜けていく様子が手に取るように分かるお腹。
もったりと発酵させた生地のような触感の身体に柔らかな毛並み。
一回抱っこすると、熱いぐらいの体温が気持ちよくて離したくなくなっちゃう。
頭からゆっくりと尻尾まで。その毛並みと体温を楽しみながら手を這わせていく。
そう言えばザフィーラさんも海鳴に居るときは小さくなってたんだよね。
フェイトちゃんが抱っこしたそうにしてたのに、頑なに拒んでたのを思い出す。
はやてちゃんとヴィータちゃんに散々からかわれてたっけ。ちょっと可哀想だったかな。
「アルフさん、フェイとちゃんがご飯持ってきてくれるんだって」
「う、うう~ん…………」
"ごはん"って言っても起きない辺り、かなり深く眠っているみたい。
二度寝ってそんな寝ちゃわないものなんだけどなー。アルフさんは違うのかも。
それに二度寝って起きたとき頭痛くなっちゃうよね。あれがイヤでちゃんと起きちゃうんだけど。
ふぅ~ん……フェイトちゃん、早く戻ってこないなぁ……
はぁ。アルフさん気持ち良いなぁ~、フェイトちゃんとはやてちゃんが羨まし~……
ぽかぽかと暖かい日差しの昼下がり。私とフェイトちゃんはどこかに出かけている。
今日は買い物の続きをするはずなのに、全然違う所にいるみたい。
周りは見慣れた風景で……海鳴?
「ほら、なのは。早く行こう?」
「う、うん――って、フェイトちゃん!?それ、どうしたの?」
「どうしたのって。なにが?」
「何がって……その格好、なんで制服なの?」
全く考えられない光景だった。何せ今のフェイトちゃんが聖祥の制服を着てるんだもん。
もちろん、サイズは今に合わせてるんだけど何て言うか、その……凄い。
ワンピースはスタイルが余り出ないデザインなのに、それでも浮き出る身体のライン。
胸の膨らみはワンピースを全体的に持ち上げちゃって、スカートが気持ち短くなってる。
「なんでって。そう言うなのはだって制服着てるじゃない」
「え、えぇっ!?」
見下げてみて驚いた。自分の服装も聖祥のそれだったから。
そして身体の大きさも今のまま。フェイトちゃんと同じだった。
「もう、しっかりしてよ?今日は二人で一緒に朝練するって言ったじゃない」
「あ、え~っと……そうだったね。うん、ごめん」
「まだ寝ぼけてる?ちょっと珍しいかな」
2,3歩戻って私の手を取る。
不思議とその手は冷たくも暖かくもなかった。
でも、ぐっと近づいたフェイトちゃんの顔に心臓が跳ね上がってしまう。
「ほら、早く。時間がなくなっちゃうよ」
ぐいぐいと手を引っ張ってくれる。何だか今日のフェイトちゃんは積極的。
時折振り返っては笑顔を向けてくれる、言葉は交わさないけどそれで充分だった。
というより、その笑顔を見るだけで胸の鼓動は早鐘を打つようになり、留まるところを知らない。
ここで何か優しい言葉をかけられたらホントにどうにかなっちゃいそうだったから。
「う~~ん、良い気持ち。なのははいつもここで朝練してるんだ」
「うん、そうだよ。人目にも付かないし見晴らしも良いから」
途中から私の指示で朝練場所まで来た。
それでもフェイトちゃんが手を引きながら私の前を行くのは変わらない。
振り返る度にどきどきするのを隠すのが精一杯で道を間違えないか、とっても心配だった。
それは杞憂に終わったから良かったんだけど。
「ねぇ、なのは」
「ど、どうしたのかな。フェイトちゃん」
眼下に広がる街と海を眺めていたフェイトちゃん。その横顔に見惚れていると急に声をかけられた。
驚いて隠すことなくうろたえてしまった私に、フェイトちゃんは構わず続ける。
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