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新婚なの! 4-3 (4)

 
「ねぇねぇ、本当に良いの?」
「二度も言わねーからな。イヤならいいんだぞ」
「ううん! だめだめ、せっかくのチャンスなんだもん。絶対にそんなことない!」
「分かったら大人しくしろ。良いな」
「は~い」

 遅すぎる夕食を食べ、すっかり日付が変わったころ。
後片付けしてる間になのはを風呂に入れ、出てきたときに言ったんだ。
「お前のベッドシーツ、洗濯したまんまだから今日は寝るとこないぞ」って。
そう言われりゃ当然「えー。じゃあ今日はどこで寝たら良いの?」と返す。
だからさ。「この家にベッドは二つあるだろ?」って。
そしたらよ、「えー! ヴィータちゃん、私と寝たいのー!?」なんて言うわけよ。しかも大声で。
時間帯考えろ。近所迷惑だろうが。防音対策はバッチリで助かったな、なのは。

「あとな。勘違いするなよ? ベッドがないからってだけで、別にお前と一緒に寝たいわけじゃないんだからな」
「はいはい、分かってますよ~。えへへへ~」
「っけ。気色悪いやつ。ほれ、早くしろ」
「わーい。ヴィータちゃんのベッド初めて~」

 その後風呂に入ってる間、アイツが何してたかはしらないけど、随分そわそわしてたみたいだ。
アタシが風呂から出てくるなり抱きついてきて、部屋まで手を牽こうとするんだから。
髪の毛乾かすから待てって言うと、意味もなく歩き回ったり髪の毛触ったり、やたらテレビのチャンネル変えたり。
様子見てると危ないヤツに見えてきて可哀想だったから、なるべく早くした。
流石に乾かさずに寝るわけにはいかないからな。朝の寝癖直しとか風邪引いたりとか。
実を言うと自分自身でも驚きだったっていうか、乾かす手が自然に早くなっていったって言うか、なんて言うか。
こんなの絶対になのはには言いたくないし、バレたら死ぬしかないけど、アタシもそわそわしてたって事だ。
だから、「終わったぞー」って戻ったときに、まだ生乾きのような気がしたけど気付かない振りをした。

「ああ、待て待て。いまクッション取ってやるから。えいしょっと」
「え~、大きな枕なんだから一緒に使おうよ~」
「ば、バッカ言え! そんなしたら顔が近すぎるだろうが」
「私は困らないよ。それにね、結婚してるんだから良いじゃない」
「け、けっけけ……ああ、駄目だ! そんなのに流されたりしないぞ」
「ちぇ~。今日は別々の枕で我慢する事にします」
「今日はって……まあ良いや。ほれ、ここだ」
「は~い!」

 ポンポンと叩いて形を整えるてアタシの隣におく。
布団を持ち上げるや否や、いきなりアタシに抱きつくように飛び込んできやがった。
ボスンと、聞いたこともない音を立てるベッド。
その勢いで倒れこむアタシに被さる布団。
急に真っ暗になって慌ててると、布団の中でなのはの顔が薄っすら見えた。

「えへへ。久しぶりのヴィータちゃん分だね」
「な、なんだ? そのヴィータちゃん分ってのは。それとな、離れろ」
「やだよ。だって、この三日間。全然会ってなかったし、抱きしめてなかったんだもん」
「…………ああ、仕方ねぇな」
「んふふ~。ヴィータちゃん分、補給~」
「あのさ。抱きつくのは良いから、いい加減外出ないか? 熱いんだけどさ」
「私はこのくらいの方が良いよ。だってベタベタしてるって感じする」
「せっかく風呂入ったってのに……仕方ないヤツだな」
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 そういって諦めると、それも伝わったのか顔を胸元に下げていって鼻をくしゅくしゅと押し付ける。
鼻先で撫でられるのと部屋着越しに感じる微かな鼻息が堪らなくくすぐったい。
それよりも、全くアタシの言う事聞かない心臓の音が心配でならなかった。
なのは何かに抱きつかれて、こんなにドキドキしてるなんて知られたくなかったから。
肩を押して退けようとするも、敵も然る者。
がっちり腰を抱いてるものだから、全然動く気配がない。
もう少し頑張ろうかとも思ったけど、布団の中は暑いしこれ以上頑張ることもないかって止めた。

「ん~。ヴィータちゃん、相変わらず良い匂い~」
「あ、あのさ。一緒のボディーソープ使ってるんだしよ。お前の同じ匂いなんだぞ///」

 それだけじゃない。
それほど拘りがあるわけじゃなし、こっちの世界のは良いの揃ってるから同じシャンプーやらを使ってる。
だから、胸元で時折顔を動かし、揺れる髪から漂う香りが布団の中に充満していた。
それに、今言ったボディーソープの香りも布団の暑さが手伝って、いつもより匂い立っている。
なのはがアタシの良い匂いっていうのは、アタシもなのはを良い匂いって感じてるってことなんだ。

「違うよ。これはヴィータちゃんの匂いなの」
「わかんねーな。そんなの」
「じゃあね? ヴィータちゃんも私に抱きついてみれば分かるよ」
「は、はぁ? なんでそんな――うわっぷ!」
「どうかな。分かんない?」
「…………分かんない」
「強情だなぁ、ヴィータちゃんは」
「うっせ」

 顔を離したかと思うと、いきなり自分の胸元に抱き寄せるなのは。
いつの間にか随分と大きく育った胸に顔が埋まる。
ドキドキとした心臓の音が伝わってきて、さっきから感じていた匂いが一層強くなる。
頭がクラクラしてきた。
これは暑いからだ。
布団の中に二人で頭まで入ってるから暑さでクラクラしてるんだ。
絶対になのはとか関係ないんだからな。そうだ。関係なんかあるもんか。

「ヴィータちゃん。大人しくなっちゃったね」
「…………」
「分かるかな。私、とってもドキドキしてるの。えへへ」
「ああ、こんなけ近けりゃイヤでも分かるよ」
「ヴィータちゃんに抱きしめてる時からこうなんだよ?」
「ああ」
「ヴィータちゃんを抱きしめたら、もっとドキドキしちゃってるの」
「……ああ、分かってるよ」
「ふぅ、ちょっと暑くなってきちゃったかな?」
「ほれ見ろ。アタシの言った通りじゃねーか」
「布団から出る?」
「……このままで良い」
「なんで? ヴィータちゃんは暑くないの?」
「暑いけどさ。外に顔出したら同じ枕使うんだろ? お前と顔引っ付き合わせて寝るなんて勘弁だ」
「そっか。なら、このままで良いね」
「ああ。仕方ないからな」

 なのはのアタシを抱く腕に一層力が篭る。
でも、アタシは腕に力を込めて抱きついたりしない。一応プライドがあるんだ。
なのはに……抱きついたりするかよ。

「ねぇ、ヴィータちゃん」
「ん? あんだよ」
「あのね。本局に行ってる間にね」
「うん、この三日間にか」
「ちょっと噂を耳にしたんだけど……」

 声のトーンが落ちてる。
もしかしてだけど、あのことかなって直感的に感じた。
やっぱこれは説明っつーか……言い訳はしない方が良いよな。

「なんだ、言ってみろよ」
「……やっぱり良い」
「んぐぐぐ。苦しい苦しい!」

 別に一緒に寝ようとか言ったのは罪滅ぼしとかそういうんじゃない。
でも、なのははそう思ったのかもしれない。
だから、それは違うんだって。
絶対に言わないけど。死んだって口に出したりしないつもりだけどさ。
久しぶりに夕ご飯一緒に食べて、やっぱりこういうの良いなって思ったんだ。
今までの味気ない三日間。
今日のソファーで漏らした一言がアタシの本音なんだって、自覚せざるを得ない。

「あ、あのさ。実は……」
「良いの。良いんだって。ヴィータちゃん」
「でもさ」
「だって。ヴィータちゃんと結婚してるんだもん」

 顔は見えない。口調から判断するだけ。
若しかしてアタシの言いたいことが分かったのかもしれない。
凄く自分勝手で卑怯で、こんなの褒められる行為じゃない。けどさ。
抱きしめた手の、利き手の方でアタシの頭を優しく撫でてくれた。
まるで「分かってるんだよ」とでも言いたげに。

「……お前さ」
「なに?」
「こういう時だけ勘、良いのな。いつもズボラで横着の癖に」
「え~。それって全然褒めてないよ」
「ふ、ふん。そうそうタダで褒めたりするかよ」
「もう。意地悪なんだから」
「残念だな。アタシはいつだってお前限定で意地悪だよ」

 もう恥かしくて堪らなくて、顔を見られないように思い切り抱きついた。


 
 
 
「きゃー! 遅刻遅刻~!」
「お、お前が目覚まし切るからだろうが! なんで起きなかったんだ!」
「だ、だって!」
「だってじゃない!」
「ヴィータちゃんを放したくなかったんだもん///」
「……! ば、ばーか」
「っと。用意できた。じゃあ、行ってきまーす!」
「おう、気をつけてな~」
「わっと。忘れ物忘れ物~!」
「なんだ? ハンカチか? 端末か?」
「ううん。こ~れっ♪(ンチュ」
「!!!」
「えへへ~。じゃあ、改めて。行ってきま――」
「待て。なのは」
「え、なに?お説教なら帰ってから聞くよ~」
「そうじゃない。ほれ、こっち来い///」
「う、ん?」
「―――(チュゥ ……ん、行って来い///」
「……ねぇ、ヴィータちゃん」
「あんだよ。時間ないぞ///」
「私、行きたくなくなっちゃった……///」
「バカ! そんなこと言ってるともうしてやんねーぞ!」

 玄関前で繰り広げられる、毎朝の光景…………にするつもりはないけどさ。
偶にはこういうのも良いかもしれねーな。なのは。
 
 
 
 本日のイラストは楽描き格納戸のカプセル超獣さんにいただきました。

 

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