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新婚なの! 2-1 (2)

 *SSにイラストを頂きました。 

 
 
「じゃあレッツゴーだね」
「ああ、そだな……ん。なんだよ、その手」
「え? 繋ぐんだよ?」
「や、やだよ。こんな人の往来の多い時間帯にさ」
「そんな、私たち結婚したのに……今までだってヴィータちゃん、何だかんだ言って中々手を繋いでくれないんだもん」

 モジモジしながら、チラチラとこちらの様子を窺っている。
別にさ、やぶさかじゃないって言うか、嫌いじゃないんだけどよ。
アタシ達の身長差考えてみろよ。何だか仲の良い姉妹ぐらいの勢いだぜ?
だから、余り人通りの多いところや時間帯はイヤなんだ。

「ねぇ、どうしてイヤなの? やっぱり私とじゃ、イヤ?」
「イヤって言うかさ、なんて言うか、その」
「教えて……くれないの?」
「……だってさ。お前とアタシ、身長どれぐらい離れてると思うよ」
「う~んと。ヴィータちゃんの触覚のてっぺんが私の肩を少し越えてるぐらいだね」
「それぐらい離れてるとよ。……その、なんだ」
「? どうしたの」
「身長差がありすぎるって事」
「手が握りにくいとか、そういう意味?」
「ちげーよ。そのよ、えっと……」
「ほら、大丈夫だよ」
「違うんだ、そういう意味じゃなくて!
 この身長差で、そんな事してたらどう頑張ったって姉妹にしか見えねーじゃんか。せっかくさ、け、けけけ……」
「毛?」
「―――結婚したのによ、それなのにお姉さんに手を引かれる妹にしか見えねーじゃん、アタシがさ」
「ヴィータちゃん……」
「だから。今は、そういう理由で手を繋いだりしたくねーの」

 今までだってそういう風に見られるのがイヤだったんだ。
なんだかアタシとなのはが対等じゃなくて、なのはが上でアタシが下って感じするじゃんか。
二人の間ではそうなってなくてもさ。周りからそう思われないのはやっぱり……プライドがあるんだ。アタシだって。
アタシとなのはは対等なんだって。どっちが上とか、そういうんじゃないんだって。

「そういうの。私は気にしないよ、って言っても駄目だよね」
「まぁな……」
「でも、それはヴィータちゃんだけの問題じゃなくて……これからは私たち二人の問題だよ?」
「二人って言ったって。アタシが勝手に思ってるだけで、なのはは別に」
「駄目だよ、そんなの。だって、私たち今日結婚したんじゃない」
「なのは……」

 こういう風に、ある意味無神経とも取れるほど簡単に言って退けるコイツの性格。
アタシは嫌いじゃない。
もし嫌いだったら……こんなに一緒にいるもんかよ。
全部が良いってわけじゃない。たまには本当にイライラすることだってある。
それでもアタシの、はやてやフェイトに圧し掛かる重い荷物を半分、持ってくれる。
それはとてもありがたいことで、生半可な気持ちでなんか出来っこない事なんだ。
にも拘らず、いとも簡単に言ってのける。
そして、それを言った相手に信用させる、安心させる雰囲気がある。

「でもさ、周りは誰も認めてくれないぜ」
「そんなんだったら……お話、"聞いてもらう"から良いよ」
「―――ば、ばーか! そんなこと一々してたらこの街一帯から人が消えちまうじゃねーか……」
「大丈夫。手加減するから」
「か、勝手にしろよ。そんな事したって始末書の手伝い、しんねーからな」
「えー。ヴィータちゃん手伝ってくれないの?」

 本当に困ったような顔するなよ。
マジでやるつもりだったのか? 勘弁してくれって。

「もう、ヴィータちゃん意地悪なんだから」
「へん。前からですよーだ」
「うふふ、そうだったね」

 少し覗き込むようにするなのはの顔は、何の憂いもない笑顔だった。
なのははさ、その強さから色々言われてるけどさ。そのどれも魔法関連の話なんだ。
だけど、それって強さの一端であって本質部分じゃねーんだ。
アタシが思うに、なのはの強さって言うのはさ。この笑顔なんだよな。
何か根拠があるわけじゃないんだけどさ。
この笑顔を見てると、何とかしてくれるんじゃないかって。何とかなりそうだって思えて来る。
それを遣って退けてしまう、人にそう思わせる笑顔を自然に出せるのって大変なんだ。
でも、それをなのはは出来るんだ。
そうやって人に出来ないことを出来るのが、なのはの強さだって思うんだ。

「それじゃ、行こっか。ヴィータちゃん」
「……ん」

 モジモジしていた手が、自然とアタシの前に差し出される。
普通なら、こいつ分かってないな、なんて思うとこだろうけどさ。

「この建物出るまでだぞ。出たら離すんだからな」
「うん、それでも良いよ。それでも良いから……ね?」

 差し出された手の、指先だけをそっと握る。
そうすると、なのはも指先だけでそっと握り返してくれた。
恥かしいっていうか、何だか背中と足の裏がむずむずするような感覚に視線を上げていられなくなる。
視界の端には、上から降りてきてるなのはの指が見える。
それにアタシはちょっとだけ手を持ち上げて握ってる。
それがイヤなんだ。
肩を並べて、同じように手を握って歩きたいんだ。

「でもね、ヴィータちゃん」
「……なにさ」
「こうやって、二人がお互いに少しずつ相手を思いやって手を握れるのも素敵だと思わない?」
「…………」
「ヴィータちゃんの気持ちも分かるよ。
 でも、こういう風に出来るのは私たちだけだって思えば、それはとても素敵で、特別なんだって」
「特別……」
「うん。私たちってそういう特別な関係なんだよ。だから、少なくとも私は気にしてない。寧ろ歓迎かな」
「……それでもアタシはさ」
「分かってる。無理に私の考えを押し付けようとは思わないから」
「……うん」

 もっとなのはは言いたいことがありそうな雰囲気だったけど、そこで止めた。
黙って、アタシの返事を待たずに先に歩き出す。それに黙ってついていく。
視線を上げられないせいか、繋いだ指先だけが妙な現実感をアタシにもたらしてくれる。
ジンジンと、雪を素手で触ったように熱をもつ指先。
段々と感覚がそこへ集まっていって、周囲の色や感覚が、まるでモノクロのフィルムのように色あせていって。
逆になのはと繋いだ指先だけが、その中で染め抜いたように鮮やかに浮かびかがってくる。

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「……ータちゃん。もう玄関まで来ちゃったよ」
「う、ん?そうか」
「手、離しても良いから。もう一つだけお願いがあるの」
「なんだ、言ってみろよ。言うだけならタダだぜ」
「あのね。一緒に、せーのっで外に出たいんだ」
「なんだそれ」
「だってね。結婚して、初めてのことなんだもん、一緒にしたいじゃない」

 詰まんない事気にするんだなって、正直な感想だった。
だけど、そういうのも偶には良いかなっていうのも、アタシの正直な気持ちだ。

「分かった。しょうがねーな。合わせてやるよ」
「えっへへ。じゃあ、いっくよ?せーのっ!……あ、ああー! ヴィータちゃん、おっそーい!」
「ば、ばっか言え! 自分とアタシの歩幅考えろよ! そんなとこから踏み出したらアタシが届かない事ぐらい分かるだろーが!」
「え、だ、だって。そんなのヴィータちゃんが合わせてくれるって思って」
「さっきと言ってること違うじゃんか! お前がアタシに合わせろよ! こっちはちっせーんだぞ!」

 庁舎の入り口を跨いだところで見事にタイミングの合わなかったアタシたち。
アタシとしては、まさかこのタイミングで踏み出すとは思わなくて、完全に虚を疲れた格好になってこうなった。
何だかすげー良い話になりそうだったのに、結婚初日からこんな失敗するとは……
むぅ、何だか嫌な予感がしないでもないぜ。

「大丈夫だよ、ヴィータちゃん。私がついてるんだから♪」

 それが心配だってのが分かんねーのかね、こいつ。
 
 
 
 本日のイラストは楽描き格納戸のカプセル超獣さんにいただきました。

 

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