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新婚なの! 1

 
 
 
 なのはと一緒に部屋でテレビを見てる。
こういう時、つくづくテレビってのは偉大な発明品だと思う。
映し出される画面をぼや~っと眺めてるだけで、なんとなしに時間が過ぎてくんだからな。
普通なら部屋に二人っきり。同じテーブルに座っていたら気まずくてしょうがない。
間が持たなかったり、ふとした瞬間に会話が途切れたときとかさ。
まあ、気まずくない関係の二人なら良いけどよ。
そんな二人でも、必要なときってのはあるもんでさ。喧嘩したときとか。
そんな時でもテレビさえ点いてりゃ黙って見てるだけで時間なんて過ぎてくもんだ。

「ねぇ、ヴィータちゃん」
「……んー、どうした」

 番組が一つ終わって、次の番組の宣伝をしてるとき。
今まで黙ってたなのはが口を開いた。
別に返事が遅れたのは画面に見入ってたわけじゃなくて、単にボーっとしてただけだ。
一瞬だけそちらに意識を向け、またテレビに戻す。
リモコンを弄りながら、次に見る番組を番組表から探すために矢印ボタンを押す。
どういう顔をしてるか知らねーけど、なのはは一人、話を続けた。

「あのね。いきなりの事だから驚くかもしれないけど」
「また報告書を溜め込んでたとかじゃねーだろうな。もう手伝ったりしないぞ」
「あはは。あの時はホント助かったよ」

 大して見たい番組も見つからない。たまにはこういう日もあるかもな。
まあ、なんて言うかアタシは普段からそんなにテレビ見たりしないんだ。殆どなのは専用になってる。
適当にニュース番組の類にチャンネルを合わせ、リモコンをなのはに放る。
若しかしたら見たい番組あるかもしんないし。

「んで。話ってなんだよ」
「うん、えーっと。えへへ」
「ちぇ。はっきりしねーのな、気色わりぃ」

 でーんとソファーにひっくり返って、クッションを手繰り寄せて枕にする。
やっぱり座椅子欲しいかなぁ、なんて。昔ははやてと一緒にザフィーラに寄っかかってたのを思い出したりした。
テーブル越しに聞こえるテレビの音声は、今日あった一日のニュースを手短に伝えている。
どうやらチャンネルは変えなかったみたいだ。

「あのね?……八神なのはと、高町ヴィータ。どっちが語呂が良いかなって」
「はぁ? なんだそれ」
「一応真剣なんだから」
「一応、ね。う~ん……どっちも語呂悪ぃな~。少なくとも八神なのはってのは駄目だ」
「どうして?」
「そりゃ、お前は高町なのはだからだろ? なんかそれ以外ってしっくりこないね」
「ふぅ~ん。じゃあ、そうしとくね」
「???」

 何やらコンソールを叩いている音がテレビの音声の合間に聞こえる。
一体なにしてんだろうな。
それと、今の質問に何の意味があったんだ。
アタシが高町ヴィータって……想像もできねーし、苗字がつくってのが違和感あるぞ。
全く。いつもいつも突拍子のないことをするヤツだ。
そんなお前に付き合うこっちの身にもなって欲しいってもんだぜ。

「ヴィータちゃ~ん」
「うわっ! な、なんだよ急に顔を出したりして!」
「えへへー、びっくりしちゃった?」
「ったりめーだろ。あとな、テーブルの上に乗るな。行儀悪いぞ」
「直ぐ終わるから。あのね、ヴィータちゃん」
「早く退けって」
「その……結婚しよっか?」
「――――――は?」

 自分でもびっくりするほど間抜けな声。それも返事が数瞬遅れた上でだ。
でもそれは、余りに突拍子もない提案に驚いたってのもあるけど。それよりも―――
テーブルに乗っかって、アタシを見下ろすなのはの笑顔のせいだって。
でも、これは絶対に内緒だ。
 
 
 

 

「はやて! 聞いてくれよ!」
「なんや、朝ごはん作ろうと卵割ったら黄身が二つで朝からラッキーってのを報告か?」
「ああ、そうそう。なのはに朝食作ってやろ――って違う! そうじゃねぇ!」
「そやろなぁ。そうそう二卵黄になったりせんか。はぁ、それにしても私寂しいなぁ~(イジイジ」
「な、なにがさ」
「何がって、そうやって毎朝な? 朝ごはん作ってあげてるんやろ? ええなぁ、羨ましいなぁ~(イジイジ」
「す、拗ねないでくれよ、はやて。今度帰ったら作ってあげるからさ」
「ホントやね!? ひゃっほーい」
「それは分かったからさ! ちょっとアタシの話を聞いてくれよ!」
「んー。ほれほれ。八神家の主である私に何でも言ってご覧なさいな」

 どっかりソファーに腰掛け、悠然と足を組んで余裕満点といった感じのはやて。
ぐぬぬぬ……!今日ばかりはこの態度がちょいと不満だぜ。
いや、今はそんな事考えてる場合じゃない。
この事態をどうにかするために、ちゃんと聞き出さなきゃな!
気合を入れるために胸いっぱいに新しい空気を満たすと、それを全部吐き出すようにはっきりと。大声で。

「なのはと結婚ってどういうことだよ!」
「えー。私はなのはちゃんと結婚なんかせーへんよ?」
「ち、違う! そうじゃなくてアタシとなのはが結婚ってどういうことだよってこと!」
「あ~、ヴィータがってことね。てっきり私の事かと思って焦ったわ」
「全っ然、焦ってるように見えないんだけどな」
「まあまあ、抑えて抑えて。そんで? なのはちゃんと結婚するんが問題なん?」
「ったりめーじゃん! なんでアタシが結婚しなくちゃいけねーんだ?」
「じゃあ、ヴィータは結婚するのイヤなん?」
「い、嫌っていうか結婚する意味がないっていうか。大体さ、結婚して何するって言うんだ?
 今だってよ、もうアタシの部屋に転がり込んで一緒に暮らしてるんだ。
 仕方なくさ、朝ご飯の面倒見てやったり。ああ、それは晩飯もそうな。
 流石桃子さんの子どもっていうか、アイツ味に五月蝿くってさ。
 お陰でこっちを出てから料理の腕は随分上がったけど。あ、そうだ。今度はやてにも作ってあげるな」
「ふ~ん……」
「あと! 何回か泊まってった日の朝にさ、寝坊してよ。そんで歯を磨かずに仕事行くとかいうからさ。
 仕方なく歯ブラシとか身だしなみ整えるの買ってやったの。寝坊したとき用に。
 そしたらアイツ、自分のを次から次に持ち込んでさ。どんどん私物を増やしてきやがって。
 今ではアイツ。自分の部屋は綺麗に片付いてて、アタシの部屋ばっかにモノが置いてあんだぜ?
 その代わり掃除とか洗濯とか、まあ偶にはやってくれるし、ああ、そう言えばたまに晩ご飯も作ってくれるな」
「ふ、ふ~ん……」
「まあ、二人でする方が効率的っていうか勿体無くないしさ。
 任務やら教導とかで一緒になることもあるし、不便はないっていうより便利なのは確かだ。
 帰りが遅かったりしても、お互いに家事分担したりすりゃ楽なこともあるし、そういう事もあるけどさ」
「なんやのそれ。もう結婚してるようなもんやんか」
「い、いやだからさ。してなくてもそうなら、別にする必要だってないじゃんか」

 初めの態度からして、またアタシをからかって冗談言ってるのかと思ってたけど違うみたいだ。
じゃあ若しかして、アレって本気なのか?
用意した書類は本物で、はやてのサインもちゃんと効力のあるやつってことで……

「それもそうやね。うん、ヴィータの最終的な合意が必要なんやし? 嫌なら拒否したらエエやん」
「あ、うぅ……」

 背もたれに背中を押し付けながら、ぐぃーっと伸びをする。
もう、言いたいことは言ったって感じだ。こうなるとアタシのすることは一つ。
はやてに意見することじゃなくて、行動で示すってだけだ。

「でもさ、別に今までどおりで良いじゃんか。そんな、紙の上での話なんか……」
「そんなん、私に言いなさんな。ヴィータよ」
「そ、そりゃそうかもしんないけど……あ、そうだ!」
「うん? なんやの」
「なのはがどうやって結婚話を持ってきたとか、その時の話を聞きたかったんだ!」
「ああ、それね。えぇ~っと、何があったかなぁ」
「忘れるほど前の話じゃないんだからさ、思い出してくれよ」
「ああ、思い出した思い出したわ」

 ピン!と頭の上に豆球でも光ってそうな顔で、ポンと膝を打つ。
これが演技なのか素なのか、家族のアタシでも判断できないぜ。さすがはやてだ。

「豪勢な菓子折りもってな? "お宅の娘さんを私に下さい"って言われたんや」
「おい。それは普通アタシを連れて行って言うもんだろうが。何考えてんだ、アイツは……」
「またそのお菓子が翠屋謹製の美味しい、予約せんと口に出来んのでな?」
「……まさかとは思うけどさ」
「ん?」
「それに吊られて了承したとかじゃ、ないよな……?」
「んー? ―――てへっ♪」
「ガーーーーーーンッ!!!」

 その時のアタシのバックには、漫画宜しくフェイトの放つ稲妻みたいな効果が出てたはずだ。
そのどこぞの菓子メーカーの看板キャラみたいに可愛らしく舌を出してみたところで全っ然可愛くねぇ!
ぐ、ぐぬぬぬぬ! ひ、酷い。酷すぎる!
菓子折り一つだとは思わねぇ。流石に一年食い放題とか優待券とかとも一緒についてたはずだ!
アタシはそんなに安い女じゃない!
しかしだ。それにしたって酷いじゃないか!
はやてがアタシをそんなのであっさりと引き渡したりするなんてよ…………

「うおーん! はやて~、アタシってば要らない子だったのかよーーー!」
「ヴィ、ヴィータ!?」
「ぴぎゃー! もう家を出て行っちまって、なのはと一緒にいたからかよー!」
「そ、そんなんやないんやけど、自覚あるんなら帰ってきて」
「んなこと言ったってよ~、はやてったら捜査とか何とかで家に全然いないじゃんかー!」
「そ、それは仕方ないやんか。仕事なんやし」
「びやー! アタシははやての子で居たいんだよー! はやて~~!」
「ヴィータ……うげぇ!?」

 ソファーに腰掛けるはやての腰元に勢いよく抱きついた。
頭の上でヒキガエルを踏んだような声が聞こえたけど、この際そんなこと気にしない。
ぼろぼろと溢れ出る涙を、はやてのお腹に押し付けて全部拭った。

「げほっ、げほっ……うえぇ」
「高町の家の子になりたくないんだよ~。ずっとはやてん家の子で居たいんだよぉ……」
「……なんや、そんな事やったんか」
「そんな事って。アタシにとっては凄い大切で重要なことなんだよ~」
「そか。あんな、ヴィータ。別に相手の家と結婚するわけやない。好き合った相手と結婚するんや」
「で、でもよ。苗字がさ、変わるって……」
「それやったら別に申請したらエエ」
「そんなこと出来るのか?」
「余程自分の名前に思い入れのある人だけしかせんから、苗字は変わってしまうもんやって勘違いしてたんやね」
「だったら……別に高町じゃなくたって良いってことだよな?」
「そや。それに結婚したってヴィータは私の家族なんやもん。いつだって帰ってきたら良い」
「……」
「よしよし。まさか結婚ごねる理由が苗字変わって、私の子やなくなってしまうのを気にしてたやなんて」
「……だってさ。知らなかったんだからしょうがないじゃん」
「うぅんもおうぅう。あんたは何て可愛い子やの~!」
「い、痛い。痛いってはやて!」
「久しぶりなんやし、ちょっと撫でさせてぇな」
「……うん、分かった。はやて……ぐすぐす」
「よしよし」
 
 
 
 
 
「そんじゃ一回帰る。明日の準備とかもあるし」
「うん。帰ったらなのはちゃんに宜しく言っといてな」
「分かった。バイバイな、はやてー!」
「んー。またな~」

 目元を少し赤く腫らしながらも、元気に腕を振って帰っていくヴィータ。
何度も何度も振り返りながら、その姿は次第に小さくなっていきました。

「はぁ……もうちょっと揉めるかと思ったんやけど。意外にあっさり片付いたなぁ」

 がっかりと肩を落とし、とぼとぼと家に上がっていく。

「ヴィータ。なのはちゃんと結婚する事自体には全然反対やないんやもん。
 せやけど、それも自覚なしに言うてるんやし、敵わんわなぁ。
 まあ、惚気話を聞かされんかっただけマシやと思わなアカンかね。
 はぁ~あ。なのはちゃんが羨ましいわ~。どうやったらヴィータとあない仲良う出来るんやろね?」
 
 
 

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