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新婚なの! 5-2 (2)

 
「せっかく早起きしたのに、結局そんな早くなくなっちゃったね~」
「ま、まあな」
「ヴィータちゃんが早く用意してくれたのにね~」
「う、うっせ」

 家から歩いて行くには流石に遠いし、免許はなのはが持ってるけど車ないし。
車両課から回してもらうなんて公私混同は出来ない。放っておくとなのはがやりそうなので予め釘を刺しておいた。
だから今は、近くの公共施設にでも立ち寄ってタクシーを待っているところ。

「ねぇ、ヴィータちゃん」
「なんだよ」
「その格好。ちょっと目立たない?」
「わ、分かってるよ。そんなことはさ」
「やっと着てくれたのは凄く嬉しいけど、こういう日に着るのじゃなくてもっと」
「知ってる。ちょっとしたドレス仕様だからって言いたいんだろ」
「うん。駄目ってわけじゃないけど」
「あ、あのさ。なんて言うか、そのよ」
「うん?」
「きょ、今日はさ。大切な日じゃんか。け、けけけ結婚指輪、取りに行くんだろ」
「うん、そうだよ」
「だからさ。そういう日だってこと。アタシにだって分かる。だから、その、えっと」
「うん」
「他にさ。ちゃんとしたの持ってないし。あったとしても局の制服だしよ。でもそれじゃ味気ないしさ」
「うん。そうだね」
「ちゃんと大切な日には、しっかりした服装でないと駄目だって、はやても言ってた」
「うん」
「……そ、そういう訳だからさ。その……」
「私の買って上げたの、着てくれたってこと?」
「か、かか勘違いするなよ! 別に持ってないわけじゃないんだからな!
 お前が買ったのをわざわざ探して着たって訳でもないんだからな! 調子乗るなよ!」
「さっき持ってないって言ったじゃない」
「こっちの家にはないって意味! はやての家に帰ればちゃんとあるんだぞ! はやての買ってくれたのが!」
「ふ~ん、そっか」
「でもよ。取りに帰る時間なかったし、お前が約束しちまったって言うから仕方なくなんだからな!」
「今日取りに行くのは分かってたんだから、昨日のうちに取ってくれば良かったのに」
「!!! う、うっさい!」
「五月蝿くて良いも~ん」
「わっ!? ば、ばか! 抱きつくな!」
「うぅ~~ん。ヴィータちゃんったら可愛くて仕方ないんだも~ん」
「家じゃないんだぞ! ここを何処だと思ってるんだよ!」
「気にしない気にしない。新婚さんなんだもん、これぐらい当然だよ~」
「だ、誰がアタシ達を新婚だって分かるって言うんだよ!」
「その為に指輪を取りに行くんだったね。あ~、早くタクシー来ないかなぁ~」
「ぐぅ~! 離れろったら~!」
「駄目だよ、そんな暴れたらせっかく可愛いのに皺になっちゃうし、髪だって、ほら」
「うぅ~……!」
「うふふ。すっごく似合ってる。見立てたとおり、その赤い髪にぴったりだよ」
「うぅ……」
「このおっきなリボンもアクセントになって可愛い。どう? ヴィータちゃんとしては」
「べ、別に。リボンとかそんな、興味ないし」
「髪留めとかリボン、いっぱい持ってるの知ってるよ」
「お、お前、勝手に人の引き出し開けんなって!」
「やっぱり持ってるんだ」
「あ、ぐぅ……」
「それにね。開けなくたって、毎日ヴィータちゃんのこと見てれば分かるよ。そのぐらい」
「う、ぐぅ……」
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 こんな往来の激しいところで大声出すのはマナー違反というか、格好も手伝ってイヤでも目立つ。
でも、小さく呟いて否定するんじゃ効果ない。
それは、なのはに対してじゃなくて自分自身に対してなんだ。
若しかして、朝からタイミングが合わなかったのは、なのはのせいじゃなくて自分の問題だった。
洗濯も掃除も、服を選ぶのもその他、出かける準備まで全部。
なのはが遅いんじゃなくて、アタシが早かったんだ。
指摘されるまで分からなかった。
今日これからの事が楽しみで、そわそわしてて、思わず早く準備してたなんてさ。

「気分で変えたり、出かけるときとか。はやてちゃんの家に帰るときにするのがお気に入りなんだよね」
「…………」

 別に結婚したって言うんだし、勿論なのはのことは嫌いじゃない。
だから、今日のことだって躍起になって否定する必要は全くないんだ。
なのに、何でか知らないけど、いつもの調子って言うか。
まだ素直に認めることが出来ない。
何でだろう。何が怖いんだろう。
今日だって、ちゃんとこういう日を大事にしようって事で服を選んだのにさ。
だから……なのはに言ったことはホントで、ほんの少し――嘘。

「分かってる、ちゃんと分かってるよ」
「……ふん。お前、全然アタシのこと分かってねーよ」
「そっか……うん、そうだね」
「はやてと一緒に居る時間の方が長いんだ。お前なんかよりはやての方がずっとアタシに詳しい」
「そうだね。悔しいけど、はやてちゃんには負けちゃうね」
「ったりめーだ」
「でも!」

 抱き上げて自分の顔の真正面へアタシの顔を持ってきた。
いつもニコニコ、へらへら笑ってるくせに。
こういう時にする真面目な顔が、人をからかってるみたいで……

「結婚したんだもん! いつかはやてちゃんの時間を追い越しちゃうんだ!」

 そんで自信満々に言い切るこの性格が―――好きじゃない。

「約十年だぞ、十年。そんな簡単にいって大丈夫なのかよ」
「大丈夫だよ。ヴィータちゃんが私を嫌わない限り、ね」
「なんでアタシが心変わりするのが前提なんだよ。お前の方が先かもしれねーじゃん」
「あっ、だったら今は私のこと好きだって。認めるんだ?」
「~~~~!?」
「えへへ~、ヴィータちゃんったら素直じゃないんだから~」
「アタシはなんも言ってねーぞ!」
「目は口ほどにモノを言うって言うでしょ?」
「わー! だったら見るな、見るなー」
「いたっ!? いたたた! ヴィータちゃん、目を押さえるの禁止~!」

 卑怯な技だけどしょうがない。
ベルカに伝わる目潰し攻撃だ。ちょうどジャンケンのチョキの格好なんだ。
ちなみにグーとパーもあるぞ。グーはパンチで、パーは張り手だ。
しかし、それでもアタシを抱き上げる手を離さないなのは。
ここまで来ると根負けしてやっても良い気がしないでもないけど、今日ばかりはアタシにも意地がある。
なのに、この日は意外なところから、なのはに援軍が現れた。

「お客さん、乗られますか?」
「「えっ!?」」

 抱き合ったまま揉み合うアタシ達の横にぴったりと停車したタクシーの運転手だった。

「あ、あわわわわ!」
「乗ります、乗りま~す!」

 アタシはなのはに抱えられまま、タクシーに転がり込み、結局今日もなのはに負けた格好になった。
 
 
 
 本日のイラストは月咬洞さんに頂きました。

 
  


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