« 新婚なの! 4-2 (2) | トップページ | 新婚なの! 4-3 (1) »

新婚なの! 4-2 (3)

 
 その日の午後は普通に仕事が出来た……とは言い難かった。
アタシ達のことが同僚の間で噂になって嬉しそうにしてたなのはを思い出してたから。
そして、それを必死に否定してた自分のこと。
さっきも考えてた通り、アタシ達は結婚してるんだから、それを公衆の面前でするかどうかを置いておけばだ。
それをしたって嘘でもさ、なのはが満足そうなら別に良いじゃんって。
事実なんだし、何も周囲にバレて困るような関係じゃないんだし。
ただ、あんま言いふらされたり噂になったりするのは、良い気分はしない。
それに、不意に思い出されるアイツのこと。きっと、今回のことも耳には言ってるはずだ。
アタシとなのはが浮かれてるのを聞いて……いや、アタシは浮かれてなんざいねーけどさ。ホントだ。
そんなこんなで、色々考えているうちに、なんとなく一日が終わっていった。
 
 
 
 
 
「たでーまー……て。誰もいないか」

 センサーで家に帰ってくるある範囲になると家の様々な電源が入るサービスがある。
初めは便利だと思ってたけど、誰も居ないのに電気点いてるって変な気がして直ぐに止めた覚えがある。
そんなわけで真っ暗な部屋を歩いて電気をつけていく。
いい加減にソファーに鞄を放り投げ、部屋に着替えを取りに行こうとしたところで端末の呼び出しがあった。

「おっと、なのはからか……はい、ヴィータです」
『あ、ヴィータちゃん? 私、なのはだよ』
「んなこと分かってるって」
『それだったら"はい、ヴィータです"っていうのも変じゃない? ヴィータちゃんの携帯にかけてるんだし』
「そ、それは……そんなの分かんねーじゃん。アタシ以外のヤツがさ、その」
『はいはい。分かってますよ~。えへへ』
「ちぇっ。んで、要件はなんだ。わざわざ電話するんだから相当なモンなんだろうな?」
『もう。ヴィータちゃんの声が聞きたくて電話したのに……ひどい』
「ば、バカ///! 電話だってタダじゃねーんだぞ。何にも用ないんだったら切るからな」
『家族間通話は無料なのに……ひどい』
「か、家族……うぅ~~うるさい! からかうなら切るぞ!」
『ま、待って待って! あ、あのね。今日は帰れないかもって言ってたけど』
「案の定、帰れなくなったってわけか」
『うん。だから、それを言っておこうと思って。それで、今どこ?』
「ちょうど家に帰ってきたところだ。今日はほぼ定時上がり」
『そっか。ご飯とか用意しちゃう前に連絡できて良かった』

 アタシの意地悪な言葉にちょっとだけ拗ねたみたいな態度を取るなのは。
だけど声のトーンは寧ろ上がっていて、それが見せているだけというのが分かる。
部屋に着替えしに行くのを止めてソファーに引き返し、ドカッと腰を下ろす。
ちゃんとご飯が要らないときは連絡するよう躾けたのはアタシだ。
夜遅く帰ってきたからさ。また夕飯作るの面倒じゃん。台所は片付かないし。
まあ、今から思えばその時から夕飯作るのが当たり前になってたってことだよなぁ。
なのはを躾けたようで、実はアタシが乗せられてたってことか……ふぅ。

「二度手間になったりするの心配してくれるのは良いけどさ。それだったらメールでも良いだろ」
『メールだったら見ないかもしれないじゃない。だから』
「よっぽど忙しいときを除いてさ、アタシがお前からのメール見なかったことあったか?」
『今日がそのよっぽど忙しいときかもしれないじゃない』
「ま、まあそういう可能性もあるけどさ」
『でも……そうだよね。ヴィータちゃんは私のメール、絶対に見てくれるもんね♪』
「うん?」
『やっぱり好きな人からのメールは待ち遠しかったりする?』
「た、たた他意はないんだぞ! 勘違いすんなよ!」
『うふふふ~。そんな照れなくても良いのに~』
「あ、あー! そんな言うなら切るぞ! もう要件は済んだんだろ?」
『えー。もう少しお話しようよー』
「悪いけどアタシから何も言うこと無いです」
『もう、ヴィータちゃんの意地悪』
「ふん。答えないからな。そんで? 泊まりは今日だけなのか?」
『う、うーん。分かんないってのが正直なところ。土壇場でゴタゴタ揉め始めちゃったし……』
「相変わらずオッサンどもは変なところで意地張るな。主導権がどうとか、そんなこったろ」
『そうだね。はぁ……上手くいったとしても明日も帰れそうにないかな』
「そか……うん、分かった」
『な、なに? 私が帰れないって分かって寂しくなっちゃった? ねぇ、寂しい?』
「バカっ! 下らないこと言ってねーでさっさと仕事戻れっ!」
『わーん。ヴィータちゃんが怒った~』
「もう切るからな。本当に切るかなら!」
『はーい。じゃあ、ヴィータちゃん。お休みね♪(チュッ』
「あっ……」
『ばいばーい。また明日電話するね~』
「わ、分かった。んじゃーな」

 電話が切れた。
最後にアホみたいなことしやがって……
それでも、直ぐに電話を切ったわけじゃない。ほんの一寸、間があった後、惜しむように別れの挨拶してた。
若しかしてアタシが何か言うの待ってた……なわけないか。
だってさ。今のことだって同じようにしたの一回目じゃないし、それで返した事もない。
あっても電話口で怒るぐらいだ。
それでも、以前とは少し違う関係になったことで、なのはとしては何か期待してたんじゃないか?
いま、なのはは端末の通話画面を前にどんな顔をしてるんだろう。
落ち込んだりしてないだろうか。
これからまだ仕事だって言うんだ。何か一言かけてやった方が良かったんじゃないか。
なのはとの通話時間が表示されたモニタを見つめながら、小さく溜息をついた。


 


 新婚なの! 4-3 (1) >


 

|

« 新婚なの! 4-2 (2) | トップページ | 新婚なの! 4-3 (1) »

新婚なの!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 新婚なの! 4-2 (2) | トップページ | 新婚なの! 4-3 (1) »