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新婚なの! 2-1

 
 
 
「ご結婚ですか?」
「はい♪」
「おめでとうございます。今日はお一人で?」
「はい。お互いに仕事の都合がつかなかったもので」
「そうでしたか。それでは受理いたしましたので、これで手続きは終了です。ご結婚、おめでとうございます」
「はい♪ ありがとうございました~」
 
 
 
 
 
「ったく。紙一枚出すのになに手間取ってやがるんだ」

 大きな庁舎の入り口。人の行き来が激しいロビーの片隅でなのはを待つ。
これが日本なら、こんな時間に子ども一人でいるなんて人目につくだろうけど、その点ミッドではそんなことない。
しかも局の制服着てるしな。仕事か何かだと勝手に思うだろう。
別にアタシは子どもじゃねーけどな。

「やっぱ今の時間って混んでんのな。なのはも窓口で詰まってんのか?」

 いい加減壁によっかかったりするのも疲れてきて、そこらのソファーに腰掛ける事にした。
庁舎のロビーらしく、随分座り心地の良い革張りのソファーは、ゆったりとアタシのお尻を受け止めてくれた。
床に着かない足をブラブラ、頭の後ろで腕を組んで、なのはの消えていった通路の方へ目をやる。
あっちから出てくる人と消えていく人。
どちらかと言うと、出てくる人のほうが多い。
さっきまでは向こうへ消えていく人の方が多かったから、人足も途絶えて今は順当に処理してもらってるってことか?
それならもう少し待ってみるか。

「わざわざ今日なんかにしてさ。別に逃げやしないんだからよ、もっと暇な日で良かったじゃんか」

 今日だって勤務が終わってから、待ち合わせしてさ。それからこっちに向かったんだ。
仕事終わってから手続きしようなんて、他のヤツとか急ぎの人とかいて混んでるだろうから、別の日にしようぜって。
それなのに「だめだめ、善は急げって言うじゃない」とか何とか言ってさ。
全く譲りそうにないのは分かってたから、仕方なく付いてきたけど。
案の定、アタシの言った通りになってるみたいだ。
あ~あ。こんなことならさ、珍しく仕事が早く上がったんだしよ。
今日はどっかで食べてくるとかさ、丁度この間テレビで美味そうな店を紹介してたんだ。
こういう時ぐらい外で食事して、家に帰ってのんびりしたいじゃん。
いつも家に帰ってもさ、明日の準備で忙しくて寝るのが遅くなったり、ゆっくり出来ないんだからさ。
ったく。早く帰って来いって言うんだ。
今からなら、まだどっか空いてる店もあるだろうし。
もう混んでるようだったら、スーパーで出来合いのモノを買ってきても良いんだ。
今ならちょうど叩き売りしてるだろうし、それなら準備も後片付けも楽に済ませてさ、のんびり出来んのによ。
なんでわざわざ忙しくしたりするんだよ。

「……待てよ。何、なのはが帰ってくんの心待ちにしてんだ」

 大体こんなの一人で出しに行けるんだからよ、アタシまでついて来る事なんてなかったんだ。
そうだよ、そうじゃんか。

「待ってるなんてアホらしい。結婚したいったのはアイツなんだから、一人ですりゃ良いんだ」

 未練たらしくなのはが消えていった方を見るのが嫌になって、身体を捻ってソファーの背もたれ越しに窓の外へ視線をやる。
いつの間にか陽は随分と傾いていて、すっかりビル群の谷間に沈んでしまっていた。
ぽつぽつと街灯が灯り始め、薄暗くなり始めた建物の影を照らしている。
そんな街灯の下を急ぎ足でいく人、二人仲良くどこかへ出かける風な人など。
みんな家に帰ったり、二人で楽しく出かけるところなんだろうなぁ……

「早く帰ってこいよ。暇になると詰まらないこと考えちまうじゃないか……」

 すっかりソファーに上がりこみ、背もたれに肘を着きながら行きかう人たちに視線を送っていると、アタシを呼ぶ声が聞こえた。
振り向かなくったって分かる。
アタシをこんな呼び方、しかも公共の場で大声出すのはアイツだけだ。

「ごっめーん。窓口がすんごい混んでて」
「だから言ったろ。こんな押してる時間じゃなくて、もっと暇な日にしようってよ」
「だって」
「だってじゃない」
「せっかくヴィータちゃんが、うんって言ってくれたんだもん。ホントは昨日の内に済ませたかったぐらいなんだから」
「う、うぅ……」

 いつの間にかアタシより随分背も高くなって大人になったなのは。
そのくせ今でもこうやって子どもみたいにしょ気たり拗ねたりするから敵わない。
これじゃ、どっちが大人だか分かんねーじゃねーか。
ん? 待てよ。生きた年数でいけばアタシの方が大人じゃないか?
全く。一人でさっさと大きくなっちまってよ。嫌なヤツ。

「ああ、分かったよ。で、もう済んだんだろ?早く帰ろうぜ」
「うん。でも、これからちょっと行きたいところがあるんだけど」
「今からか?どんなとこだよ」
「えっへへー。秘密」
「はぁ? 駄目だ、そんなのには付き合えない」
「えー。どうして?」
「もう遅いだろ。また今度にしろ。それに、どこかも言えない所じゃ予定も立てられない」
「予定はもう立ててあるから大丈夫だよ♪」
「……はぁ、分かったよ。行きゃ良いんだろ」

 しょ気た顔がにっこり笑顔に変わる。
今のは別に、なのはのワガママに折れたわけじゃなくて、何やら楽しげなことを考えてるだろう事に乗りたくなっただけ。
こういうのって大切だよな。
はやてと一緒に暮らしてるときもそうだったけどさ。
こうやって相手にこっそり計画立てたり、何か楽しげな事を考えて実行するのって良いことだ。
だから、そういう時は素直に乗ってやらなきゃいけない。
逆のときだってあるしな。
まあ、一個問題があるとすれば、はやてもなのはもアタシにとっては碌でもないことを考えることが偶にあるってぐらいだ。
……偶にな。

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