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新婚なの! 5-5 (2)

 
「ありがとうございましたー」「ました」
「さて。行こうか、ヴィータちゃん」
「お、おう」

 タクシーから降りたアタシ達の前のある建物。
そこの入り口上に掲げられた看板を見て、なのはがしたいことは大体分かった。
アタシはなのはが楽しみにしてる事を無下にしたりするつもりはないし、それは分かってるだろうと思うけど。
こういうやり取りも、二人で生活していく上で大切なことだって思ってるから気にしない。
だからか、アタシが逃げないように腕を掴んで後ろからグイグイと背中を押す腕にも、それほど力は入ってない。
それに対して、一応嫌だの止めろだの言いながら、店の中に入っていった。

「予約の時間に間に合ってよかった」
「タクシーが随分急いでくれたからな。それに信号でも捕まらなかったし」
「うーん。流石にそこまで影響力ないかな~」
「……お前さ。すげー怖いこと言ってるぞ。頼むから余所で言わないでくれ」
「分かってる。まだはやてちゃんに教わってないし」
「は、はやてがドンドン悪い人間になっていく気がする……」
「うそうそ冗談。はやてちゃんも交通局までには影響力ないから」
「勘弁してくれ。あんま冗談に聞こえないからさ」
「……そだね。私もそう思う」

 入り口で待ち構えていた店員の案内に従って奥へ入っていく。
視界の端で、なのはの手が行き場のなさそうにわきわきしてたから、仕方なく握ってやった。
いつもより汗ばむ手の平。やっぱり緊張してたのか。
意外に……と言っちゃ悪いけどさ。さっきの指輪といい、表に出さないだけで心配性だ。
いつも人の世話ばっか焼いてる気がする。
それで全然自分は大丈夫だって顔するくせに、本当のところは寂しがりだったりするし。
まあ、これはなのはに限った話じゃなくて、はやてもフェイトも同じだと思う。
もう、大概大人だし、アタシや周りの人間が心配する歳でもないってのは分かってるけどさ。
それでも心配なことには変わりないし、変に溜め込む性格なんかも含めて。
下手すりゃ3人ともギリギリ倒れるまで頑張ったりする。
流石にそうなった方が迷惑が大きいって分かってきてるんだろうけど、そうじゃない時は本当に大変だった。
だから、そういう三人にはアタシが気をつけてやらなきゃ駄目なんだ―――というのは偉そうかなと思わないこともないけど。

「でもね。そうやって思ってくれてるヴィータちゃんのことが私たち、一番心配だよ?」
「……うっせ」
「ねぇ、ヴィータちゃん。私たちね、ヴィータちゃんが……」
「良いよ。そんなこと言わなくてさ。分かってる」
「自信満々だね」
「お前ほどじゃねーですよーだ」

 嫌味が通じる相手だとは思ってないけど。一応。
真横に並んで歩いてるから顔は見えないけど、だらしない顔で笑ってるだろう事は容易に想像できる。
普段ならこの辺りでお尻の一つでも抓ってやるんだけど、ここじゃ無理だ。
ため息一つ。店員の後ろをついて、結構奥まで進むんだなって思った矢先。店員がこちらです、立ち止まる。
その先にある部屋は、見渡す限り衣装が並んでて、見てるだけで嫌気が差すほどだった。

「ヴィータちゃん。衣装も予約してあるから。後は着替えて撮影するだけだよ」
「撮影? 何をするのさ」
「それはね~…………花嫁衣裳だよ。ウェディングドレス!」
「ウェディングドレスぅ!? なんでそんなの今アタシが着るんだよ」
「だって。お嫁さんだし。お嫁さんはドレス着るんだよ」
「違うって。そういうのは式挙げるときに着るもんじゃないのかってこと」
「じゃあ式挙げる? みんな呼んで。局の同僚の人とか」
「あ、あぅ」
「ヴィータちゃんはそういうの嫌かなって思ったから、こうしたんだけど。そっか。そんなに式を……」
「あ、ああー! いやいや、そんならそんで良いんだ! 全く。そうだ、うん」
「あれ、いいの? 私はヴィータちゃんの好きなようで良いんだけど」
「いや、ここで着るので良い。式なんて勘弁してくれ!」
「そう? ならここで新婚写真撮っておこうねー」
「あ、ああ……ぐぅ。まんまとはめられた気がするぞ」
「そんなことないよー♪」
「ギギギ……!」

 余裕綽々のなのはに、歯をぎりぎりと言わせるアタシ。
その様子に店員は心配そうな顔するものだから、なのはが何やらフォローしてたみたいだ。
納得した店員に手を引かれ、そこでなのはと別れた。
そのまま衣装室の奥へ進んでいくと何人か店員が準備万端とアタシを待っていた。
一言二言挨拶すると、奥のケースを開く。
中からは、なのはが言ったとおり。ウェディングドレスがお目見えした。

「あの。これってサイズとか合わせなくて良いんですか?」
「いいえ。すでにお客様からデータは承っておりますが」
「は、はぁ?」

 店員の一番偉そうで年上そうな女の人が、一瞬不思議そうな顔をしたのを見逃さなかった。
どういうことだ? アタシの身体のサイズが店にちゃんと渡ってるって。
まさか指輪の時みたいに、抱きついたときに覚えてたのを……って訳でもないだろ。
それは流石に無理ってもんだ。
そんだけ覚えるのが無理臭いし、それにその……そこまでべたべた触られた覚えないし。
しょっちゅうアイツが抱きついてきたりしてたのはあるけどよ。流石にそれはないと……思う。
ふぅむ。一体どうやったんだろうな。
 
 
  


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