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新婚なの! 5-5 (5)

 
「ふぁ~あ。……ったく。昨日は疲れたぜ」

 まだなのはが寝てるベッドから身体を起こし、一人台所に向かう。
今まで別に寝てたしよ。余り気にしなかったけどさ、疲れた時に手足を伸ばして寝るやつは邪魔でしょうがない。
はやてとかフェイト見たいに大人しく寝てくれよ。全く。
気持ち良さそうに眠る顔を思い出しながら、エプロンを手に取ったところで電子音がピコンと鳴る。

「う、うん? なんだ……これ」

 テーブルの上に浮かび上がる封筒の形したモニタ。
エプロンを付ける手を休めて覗き込む。嫌な気がするけど、急な知らせかもしれないしな。
モニタに書かれた文字を見るに銀行からだった。しかも2通。
なんだろな。保険の勧誘でもないだろうし……若しかして請求書か?
最近そんな大きな買い物もしてないし、カードの請求日はもうちょい先だ。
もう一度見てみると、宛先はなのはになっていた。

「気になるな……」

 まだ嫌な感じが拭えない。
こういうときの感触ってのは信用するに限る。特になのはと暮らし始めてからは。
セキュリティレベルは低い。これなら家族でも確認できる。
なのはがちゃんと手続きを怠ってない事を願って開封してやった。

「……ふぅ。やっぱり請求書だ」

 請求元は昨日行った宝石屋と衣装屋だった。
落ち着け、落ち着くんだアタシ。
買い物をしたんだ。請求書が来るなんて当たり前じゃないか。
それに請求先はなのはだ。アタシが冷や冷やすることなんてない。

「ええっと。ゼロが……ひい、ふう、みぃ、よぉ…………お、おおおっ!?」

 思わず後ずさりする。
な、なななな何だこの額はっ!?
こんなゼロが並んだのなんて、はやてがこっちで家を買ったとき以来見たことねーぞ!
い、いやそれよりは流石に少ないけどな。
ううん、違う。そんな、そんな問題じゃねー!
そこには請求額よりも大きな問題が記されてんだ!

「おーいっ! なのはっ! 起きろ、なのはっ!」
「う、う~ん……どうしたの、ヴィータちゃん。まだ目覚まし鳴ってないよぉ?」
「アタシのは鳴ってんだよ! くっだらねーこと言ってねーで、さっさと起きてこれを見ろ!」
「ふぅわあ~あ。……むにゅ。え~っと、これ……ああ、請求書だね。もう届いたの?」
「もう届いたの、じゃねーよ。寝ぼけ眼をひん剥いてよく見やがれ」
「……うーん。凄い額だね。まさかここまで行くとは思ってなかったよ」
「その下だ」
「下? …………あれ?」
「あれ、じゃねー。どういうつもりだ、それ」
「おっかしーなぁ。どうしてマイナスになるんだろう?」
「そんなの知るかよ。しかも、無茶苦茶マイナスじゃねーか!」
「うーん。あ、そうだ。危険手当が入ってないからだ」
「危険手当? お前、そんなのつい最近じゃん」
「うん。そうだよ。でも、どうしてかな」
「アホか。翌月締めだ。振込みは来月。まだ入ってねーんだよ」
「…………あ、ああー!」
「やっと気付いたのか。それにだな。危険手当一回かそこらで追いつく額じゃねーぞ」
「うぅーん。……ど、どうしよう、ヴィータちゃん」

 やっとここまできて事の重大性に気付いたみたいだ。
なのはの通帳は、嘗てないほどのマイナスを示していた。
今までマイナスにしたことないから、少しは余裕があるにしたって、その期間でどうにかなる額じゃない。
そりゃ悪の秘密組織で一発悪いことでもすりゃ分かんねーけどさ。
そんなの出来るわけねーし。
大体限度額とかるだろうが。一体どうやって買い物したんだよ。
いっぺん銀行に掛け合って限度額を厳しく制限してもらう必要があるな。

「どうしてローン組まなかったんだ?」
「この日の為に頑張って貯金してたから大丈夫だと思って」
「見込みが甘ーんだよ。どうせお前のことだからお金の方は何とかします、とか調子良いこと言ったんだろ」
「だって。材料とかデザインは拘りが……」
「大体な、頑張って貯金したとか言ってるけどよ。この家に転がり込んできてから生活費払ったことあったか?」
「……えへへ。そうだったっけ?」
「惚けた顔したって無駄だぞ」
「そ、それでも無駄使いしなかったんだし、他事にだって使わなかったんだよ?」
「あったりめーだ、そんなもんは」
「うぅ……ヴィータちゃんの意地悪」
「意地悪で結構ですよーだ。そんで、どうすんだよ。これ」
「うぅーん……困った、困ったよ」
「言っとくけどな。フェイトに借りに行くんじゃねーぞ」
「やっぱり駄目かな」
「バカ! フェイトはお前に甘いんだからホイホイ貸しちまうだろうが!」
「うぅ~ん」
「フェイトはキャロとかエリオとか、他にも保護した子どもに金使ってんだから、少しは考えろよ」
「そっか、そうだったね……」

 なのはぐらいになりゃローンぐらい組ませてくれるだろうけど、あんま良い顔はされない。
管理局って組織はデカイ癖にあんま信用ないよな。余程じゃないとローン組ませてくれないし。
そういう事があるっていうのに、こんなにマイナス出しちまったら大事だ。
はっきり言って、なのはに今すぐどうにか出来る額じゃない。
でも、それはなのはだけなら。の話だ。
この事態の解決法。
無いわけじゃない。というよりはある。まさか今だとは思わなかったけどさ、これが。
でも、なのはを甘やかしちゃいけないって決めてるし、悪い癖を付けかねない。
他のことは大丈夫なのに、どうしてこう一般生活において抜けてる部分があるんだろうな。
アタシを罠にはめるときの周到さとか、ホント他のことにも使って欲しいぜ。
だから、そういう所を注意するためにも、今回は手を貸してやらないんだ。
うん、そうだ。これは……なのはのためなんだ。

「ねぇ、ヴィータちゃん」
「言っとくけどな。アタシは貸さないぞ」
「……やっぱり駄目?」
「あったりめーだ。今回の請求の殆どはアタシの指輪とドレスに使ってるのは分かる。けどな」
「私が勝手にしたことだから?」
「そうだ。自分でやったことぐらい自分で責任取れ」
「…………はい。分かりました」

 明らかに凹んでる。
これはアタシが貸さないって言ったからじゃない。
流石に自分の無計画振りが響いたんだろう。
せっかく昨日は自分の思い描いてたことが出来たのに、こんなオチが待ってるなんて思ってなかったからだ。
通帳は大赤字。アタシは珍しく怒ってる。はっきり言って八方塞り。
すっかり凹んだなのはの横では、目覚ましの二度目の朝の知らせが部屋に鳴り響いていた。
 
 
 


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