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新婚なの! 5-5 (6)


「……もう、起きなきゃね」
「ああ、そうだな」
「今日は……朝ごはんいらないから」
「…………」

 目覚ましを止め、のそのそと腰をあげてベッドから降りる。
横を通り過ぎるなのはが、凄く小さく見えた。
別に可哀想とか思っちゃいない。
そう。これは、最後にはなのはの為になるんだから。
変に甘い考えを出しちゃいけない。
アタシのためにしてくれたってのは分かってる。
昨日の為に頑張ってたのも聞いた。相手の為に頑張ってるのを無下にする気はない。
でも、それで助け舟を出すのは違う。これはなのはの為なんだ。
ここらで一つ、ビシッと注意しなくちゃいけないんだ。…………いけないんだ。

「……おい。朝ごはんは食ってけ。力でねーぞ」
「それなら冷蔵庫にあるの飲んでくから」
「悪い。それならアタシがこの間飲んじまった」
「……そうなの?」
「お前がいないときにな。時間がなくてさ」
「そっか。じゃあ、行く途中でなにか買ってくよ」
「……なんだよ。誰も作ってやらないとは言ってねーぞ」
「でも、今からじゃ間に合わないよ」
「弁当は厳しいかもな。でもよ、朝ごはんぐらいは何とかなる。それに」
「それに?」
「お、お前のヤツ。勝手に飲んじまったからな。それのお返ししねーと」
「良いよ別に。そんな高いものじゃないし」
「こういうのは値段の問題じゃない。だからさ」
「???」
「……お前の口座番号。置いとけ」
「…………えっ?」
「だから。お前が口座番号を書いた紙をテーブルの上に置いとけっての」
「え、でも、なんで……?」
「だ、だから、そうすりゃアタシが勝手に振り込んどいてやるって言ってんの」
「で、でもさっき」
「銀行で手続きとって、アタシも口座に触れるようにしとけ。分かったな?」
「あ、あの、えっと……ヴィータちゃん?」
「なのはが勝手に指輪買ったりドレス注文したみたいに、アタシが勝手に口座に振り込むだけだからな!
 別にお前に貸したりとか! アタシの為にしてくれたからちょっと何かしないとなとか! 全然そんなことねーぞ!」
「ヴィ、ヴィータちゃん……」
「そ、それに! どうせ返すつったって、お前の節約って言うのはアタシの出費なんだからよ!
 貸さないってのはそういう意味! どうせアタシが払うことになるだけだから、別に面倒にしないってだけのこと!」
「う、うん……」

 振り返らない。誰も居なくなったベッドに向かって大きな独り言。
背中になのはを感じるけれど、絶対に振り向いたりしない。
そうなんだ。結局はアタシがなのはの出費を一緒に払ってるみたいなものなんだ。
それが返ってきたところで、別にアタシの懐が温かくなるわけじゃない。
元々、今回のことだって転がり込んできてから貯めたお金なんだ。
だからアレは貰ったんじゃなくて自分のなの。
なのはが買ってきただけで、アタシが自分でお金を出して自分で買ったようなもんなんだ。
そうだ、そう考えることにした。そう納得した!
後ろで今一要領の得ない感じだから、もう一回独り言を言ってやる!

「分かったらさっさと顔洗って着替えてこい! そ、その間に朝飯用意しといてやるからよ!」
「……うん! ありがとう、ヴィータちゃん!」
「ば、ばか! 朝から抱きつくんじゃねーって!」
「えへへ~。今抱きつかなくて、いつ抱きつくっていうの~?」
「そんなこと言って毎日抱きついてるじゃんかよ!」
「うん、うん……!」
「だから勘違いすんなって言ってるだろ! 別にお前のことなんてこれっぽちも心配してないんだかんな!」
「分かってる、分かってるよヴィータちゃん」
「けっ。ホントに分かってんのかよ」
「…………ホント、ゴメンね。ヴィータちゃん」
「……謝ってる暇があったら顔洗って来いって言ってるだろ」

 弁当の準備が出来なったどころか朝食すら食べ損なった上に、二人で髪のセットもしないまま家を出る羽目にあった。
 
 
 
 
 
「なんや。それで結局ヴィータが足りん分、払ったんか」
「ま、まぁな。ところではやて。なんでそんなこと知ってんのさ」
「あ、うん? 銀行員って口軽いなぁってこと」
「はぁ? なんだそれ」
「ヴィータが大きな額動かした言うて教えてくれたんや」
「はぁ……まさかはやての耳に入るとは思ってなかった」
「しっかし、ようお金あったね」
「ま、まぁ」
「なのはちゃんの性格見越して用意しといた……言うんは流石に買いかぶりすぎか……って。あれ?」
「///」
「ア、アカン。まさかここまで甘いとは思わなんだわ」
「ち、違ーって、はやて! こ、これは偶然口座にたくさん残ってただけで、別になのはのためとかそんな!」
「そうかぁ? 今の反応見るにそういう感じに見えるんやけどな~」
「だから違うんだって!」
「あーあ。こうやってヴィータが甘やかすから、どんどん駄目人間になってくんやろな~。なのはちゃん」
「だから違うって、はやてー!」
「あががががが! そ、そんな揺らしたってアカンよよよよよ!」
「くぅ~……ぐすっ」
「うぅえぇ~~。……ゲホ。まあ、なのはちゃんもヴィータに頼る気はなかったと思うけど。
 自分のこと心配してお金貯めててくれたやなんて知ったら感動するやろなぁ。なぁ? ヴィータ」
「し、知らねーです///」
「ヴィータの一世一代の晴れ姿のために頑張るなのはちゃんに、なのはちゃんを心配するヴィータ。
 ああ。なんて美しい夫婦愛なんやろ。あんまり甘いんで砂吐いてしまいそうやわねー? にししししし」
「そのイヤらしい笑い方、やめた方が良いって……」
「まあまあ。そんでヴィータ。他になんか言いたいことあるんと違う?」
「あ、そっか。あのさ。ドレス作ったときの話したよな」
「うん。なんで身体の寸法がばっちりやったのか?って話やったね」
「そうだよ。ああいうのって普通はしっかり図って仮縫いとかしたりするもんじゃねーの?」
「その辺はミッド脅威の科学力ってやつや。データ渡したんは私やし」
「…………は?」
「なのはちゃんに頼まれてな。教えるのも面倒でデータ直接渡したんよ」
「もう~! はやてー! 一言言ってくれりゃ良いじゃんかー!」
「いやいや、こういうのって内緒にしといた方が楽しいやん? あははは、痛い痛い」
「うぅ。敵は意外なところにいたって感じだ……」
 
 
 


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