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新婚なの! 6-2 (2)

 
「そ、そんなことねーよ」
「でも……」
「それを言うなら、来たくなかったのはフェイトの方なんじゃねーのか!?」
「!? ヴィ、ヴィータ」
「なんだよ。アタシが引っ越したばっかの頃はさ、ちょくちょく遊びに来てくれたのによ」
「う、うん。そうだったね」
「なのはが転がり込んできたから……ぱったり来なくなってよ」
「……」
「ホントはフェイトがアタシに会いたくなかったんだろ」

 言っちゃいけないことだ。
分かってはいたけど口にしちゃ駄目で、それもフェイトには聞かせちゃいけない言葉だった。
なのに……今日は言っちゃいけない事ばかりが口を吐いて出る。
顔を背けてるから、フェイトがどんな顔をしているか分からない。
でもきっと、眉毛を下げて"凄く困った顔"をしてるんだ。
怒ったり泣いたり、そうやって感情を強く表に出さない。どうして良いか分からない。
でも笑ったりするのは変。だから"困った顔"をするんだ。フェイトはそうしてる気がする。

「……はぁ。もういいだろ?」

 口から吐いた言葉は戻ってこない。
どうしようもなくて、少しでもフェイトと距離を取るためにまた歩き始めた。
少し早足気味に足を進める。
フェイトの横を黙って通り過ぎると、ワンテンポあってフェイトが追いかけてきた。
フェイトよりアタシの方が歩幅が狭い。同じように歩いていたら直ぐに追いつかれる。
それがまた面白くない。

「ついて来るなよ。車はどうしたんだよ」
「ちゃんとロックしてあるから大丈夫だよ」
「そういう問題じゃねー。さっさとなのはのところに戻れって」
「駄目だよ。ヴィータを一人にしておけないもん」

 どんどんフェイトの声が近くなる。
アタシとフェイトじゃ、子どもと大人ぐらいの身長差がある。
特に足の長さが違うから――フェイトは特に足が長い――歩幅に差が出る。
でも、そんなことは随分前から分かってた事だし、それが面白くないわけじゃない。
一番面白くないのは……それはアタシとなのはの歩幅が合わないってことと同じなんだ。
つまりそれは、なのはとフェイトは歩幅が合うってこと。アタシよりピッタリと。
婚姻届出しに行ったときのことだよ。
肝心なときに歩幅が合わない。
アタシの歩幅が狭いこと分かってるから、なのはに要らない気を使わせる。
同時にアタシだってそれなりに気を使う。
でもそれだってフェイトと一緒に歩くとき、なのはは気を使うことがない。
フェイトはちょっとだけ気を使ってるかもしれないけど、アタシほどじゃない。
気兼ねなく、二人で仲良く歩きながら話したり出来る。
視線だってほぼ同じ高さだ。アタシみたいに、ちょいとだけアンテナが肩口に届く程度じゃない。
普段気にしてなくたって、そういう時に現実をイヤと言うほど突きつけられるんだ。

「アタシの事なんてどうでも良いだろうが! お前は好きななのはと一緒にいろよ!」
「!!! ヴィータ。私はヴィータだって好きなんだよ」
「へん! そんなの知らないね! それに、さっきは会いたくないって言ったじゃねーか!」

 振り返ってキツイ調子で言う。
こんなのフェイトにしたら完全な八つ当たりされてるだけだ。
それなのに、フェイトは相変わらず"困った顔"をしているだろう。
どうしてだよ。アタシが悪いんだ。怒鳴り返すなりしたら良いじゃねーか。
それなのに、フェイトは非難するでも何を言うでもない。
流石にアタシだって二の句が継げなくて、二人の間に深い沈黙が横たわる。
どんどん膨れ上がって二人を包み込みそうな勢いのソレに、どうしたら良いものかと思った矢先。
フェイトが先に口を開いた。

「……会いたくなかった訳じゃない。ヴィータは大切な親友だし」
「そうかよ」
「ホントは……ホントはね? なのはに会いたくなかったの」
「な、なのはに!? お前がなのはに会いたくないって、それ」
「うん。だって、ヴィータの隣で嬉しそうにしてるなのはは……見たくなかったから」
「……フェ、フェイト」
「なのはに笑顔をプレゼント出来るのはヴィータなんだって分かったから。
 そんな現実を目の当たりにしたくなくて……逃げ出したって言うのが正解なのかな」
「な、なに言ってんだよ。お前……さっきのなのは見てたろうが!」
「うん、ヴィータが帰ってくるまで一緒にいたよ」
「それなら分かるだろ? お前と一緒にいるときのなのはがどんだけテンション高いとか!
 アタシが帰ってきてからもお前の話ばっかりじゃん! ずっとニコニコしてたろ! これはどう説明すんだ!?」
「ヴィータ……」
「お前の勘違いなんだ! ホントはお前と一緒にいるのが楽しいんだ、好きなんだ!
 昔から変わってない! アイツの一番はお前なんだ! だから黙って帰ってりゃ良いんだよ!」

 思わず声を荒げる。
ホントは涙が出そうだった。自分の惨めさに。
だけどこう言った手前そんな顔も出来なくて、勢いで睨んでやれば、やっぱりフェイトは困った顔をしていた。
いや、寧ろ悲しげな色を瞳に湛えていた。
悲しくて泣きたいような意味じゃなくて、ただ悲しい、寂しいって。
そんな顔見たら、これ以上なにも口から出てこなかった。
悲しげな瞳でアタシを見つめるフェイト。
そのままアタシが何も言えずに黙っていると、ゆっくりと質問に答えてくれた。
 
 
 


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