« 新婚なの! 6-3 (1) | トップページ | 日記 イメージ »

新婚なの! 6-3 (2)

 
「なのはの料理さ。ウソ吐いたことなんてない。アタシはお前に嘘なんてつかない」
「嘘って……なにがどう嘘なの?」
「お前の料理さ、美味しいって言ってたの。あれ、ホントだから。嘘じゃないんだ」
「えっと……どっちがどういう意味?」
「あ、あのとき本心で言ってないって言ったのが嘘……あの時言ったこと、全部」
「ぜ、全部? 全部って、どこからどこまで!?」
「お、お前の料理を美味しいって言ったのはホントだけどさ」

 背中を向けたまま、恥かしくて振り向きもせずに、でもちゃんと聞こえるぐらいの大きさで。
自分が悪いくせに。それなのに、ちゃんと顔を見ていえないなんてさ。最低だ。
でも、そのときのアタシは罪悪感っていうか後ろめたさでいっぱいで、それ以上のことが出来なかった。
情けなくて仕方なくて、ぎゅっとシーツを握っていた。

「ヴィータちゃんっ!」
「んがっ!? 急に抱きつくなって!」
「だって、だって!」
「だって言うな! そ、それに苦しいぃ……!」
「駄目! 苦しいって言ったって離さないもん!」
「ぐ、ぐぇ。こ、これじゃ続きが話せねーだろぉ……」
「じゃあ念話でして! ちょっとでも離したくないの!」
「う、うぅ……仕方ねぇ」

 まだ結論まで言ってねーのに気の早いヤツだ。
しかも、力いっぱい抱きしめやがる。これじゃ息を吸うのも一苦労。
この事態を打開するには、なのはに言う通りにするしかなさそうだ。くそぅ、手間かけさせやがって。

『おう。これで聞こえるか、なのは』
「うん。聞こえてるよ、ヴィータちゃん」
『お前には嘘吐きたくねーんだ。だから、ちゃんと不味いときは不味いって言う』
「不味いときなの?」
『……美味くない時は美味いって言わない。ちゃんとホントだ』
「だから、そういうことじゃなくて」
『……ちゃんとお前の料理は美味しいから。嘘で言ったことなんてないから』
「ほ、ホントだね! 嘘じゃないよね!」
『ぐえぇ~。だから力緩めろって! これじゃ念話も儘ならねーよ!』
「うえーん、だってぇ。嬉しいんだもん、ヴィータちゃん可愛いんだもーん!」
『……は、はぁ、はぁ。し、死ぬかと思った』
「ねぇ、もう一回言って? 私の料理、美味しいって」
『お前がしつこく迫るときもあるけどさ。それでもちゃんと正直な感想だ。ちゃんと……美味いぞ、なのは』
「……うん、うん。ありがと、ヴィータちゃん……」
『な、なに涙声になってんだよ。いつも言ってることじゃんか』
「だって、だって。さっきはホントにそう思ったんだもん。ヴィータちゃんが気を使ってたんだって思ったんだもん!」
『バ、バッカだな、お前は。気を使ったってしょうがないだろ』
「でも、いくら一緒に住んでるって言ったって、そういう事はやっぱり」
『ちょ、調子に乗んなよ。お前に気を使ったところで調子に乗るだけで意味がないってだけなんだからよ……』
「それってどういう意味なの?」
『言葉どおりだよ。お前は褒めて伸ばすタイプでも、褒めすぎると調子に乗るってこと』
「ひっどーい! ヴィータちゃんってそういう風に思ってたんだー!」
『ぐえぇぇー! 中身がでる、でる!』
「そういう酷い事を言う子には当然なの!」
『お、おおお前が悪いんだろ!』

 ぐずぐずと鼻を鳴らしながらも、アタシを離さないなのは。
言ってる内容は軽くても、涙声なもんだから普段なら爆笑してるところだった。
だけど今日は流石にそういう気分になったりしない。
フェイトにあんな表情させたのも、なのはを涙声にしたのも全部アタシのせいだからだ。
見っとも無い。情けない。
アタシは二人にこんなことをして、一体何がしたいっていうんだよ。

「じゃあ、ヴィータちゃん。私が作ったご飯、これからも食べてくれる?」
「あ、ああ。お前の料理を食いたがるような酔狂なヤツは、そうそういないからな」
「良いもん、それで良いんだもん……」
「なんだ。それで良いのか? アタシとそれに……フェイトしかいないぜ?」
「良いんだもん。二人いれば充分だから。ううん、ヴィータちゃんがいてくれれば充分……」
「…………」
「一人ね。自分の料理を食べてくれる人が、食べさせたい人がいれば充分だって――」
「それ。フェイトに言うなよ……」
「――え?」
「今日はこのままで良いから。だから、今言ったことは忘れろ。良いな」
「忘れろって、どういう……」
「いいから。お前はフェイトの一番の……親友でいてやれよ」
「…………うん」
「そんじゃな、お休みだ。なのは、明日も寝坊すんなよ」
「うん。お休み、ヴィータちゃん」

 結局フェイトに対して「親友」だとしか言ってやれないアタシの不甲斐なさに泣けてくる。
アタシの、アタシとなのはの結婚を笑顔で祝福してくれたフェイトに対して何もしてやれない。
あのとき言った「好きだ」って気持ちは嘘じゃない。
なのはを離さないってのも嘘じゃない。
だけど。フェイトには敵わないって改めて思い知らされた気がしたのも確かだ。
あの時はフェイトの意見を肯定したけど、正直自分でも疑問だ。
嫉妬はするくせに、素直に相手を好きだって言えない。
自分に好意が向いていないと不機嫌になるくせに、自分に向けられた好意を受け入れる勇気がない。
なのはがフェイトのことを嬉しそうに喋るだけでイライラするくせに。
それを正直に言えない。
なのはは今日。ホントに落ち込んでた。
アタシがフェイトに嫉妬して、なのはに嘘を言ったからだ。憎まれ口を叩いたからだ。
誤解は一応解けたけど、ホントのことを言ったらどう思うだろう。
フェイトへの嫉妬から、なのはに嘘を言ったって。
幻滅するだろうか。呆れるだろうか。
どちらにしろ碌な結果にならない。

「(何やってんだ、アタシは……)」


 


 新婚なの! 7-1 (1) >

 
 

|

« 新婚なの! 6-3 (1) | トップページ | 日記 イメージ »

新婚なの!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 新婚なの! 6-3 (1) | トップページ | 日記 イメージ »