« 新婚なの! 5-5 (3) | トップページ | 新婚なの! 5-5 (5) »

新婚なの! 5-5 (4)

 
「えっへへー」
「んだよ。気色悪ぃ笑い方しやがって」
「だって~」

 写真も撮り終わり、家に帰るところ。
結構時間がかかったのか、随分陽も傾いて街はそろそろ夜の準備を始めようという時間。
赤みがかった街の風景はいつ見ても寂しげで、肌を撫ぜる空気以上に寒く感じる。
こういう景色の中にいればさ、何だか家に帰るのも寂しくなるってもんだ。
すっかり別の顔になった街の景色に、全部楽しかったことが幻だったかのような感覚に囚われる。

「うわ、な、なんだよ」
「なんだか寒そうだったから。上着、持ってくればよかったね」
「あ、うん、まあ」
「それどころじゃなかった? ヴィータちゃんにしてはちょっと迂闊だったね」

 肌寒さを感じていた腕に、ふと温かみが宿ったかと思えば、ぐいっと抱き寄せられる。
抱きつくってほどじゃないけど、身体を殆どなのはに預ける形になっちまった。
文句言おうと思ったらさ、上機嫌ななのはの顔。
別に寒いなんて一言も言ってないのにさ。何で分かったんだろうって。
それにこんな格好じゃ上着っていうか、何か羽織るものを持ってくるのが普通なのに忘れたのは確かに落ち度だ。
珍しくまともなこと言うし、何でそんな基本的な事忘れたのかって悟られたくなかったのに。
上手く言い訳できなくて口ごもってると、見事に言い当てられた。

「う、うっせーよ。お前が遅いから、その、アタシが準備する時間が減ったんじゃねーか」
「そうだったっけ。私より早く用意してたよね。そんな事なかったんじゃないかな」
「う、ぐぅ……」
「えへへ。珍しく全然だね、ヴィータちゃん♪」
「ふ、ふん。黙ってろよ」

 ホントなのはの言うとおりだ。全然調子出ない。
出かける時から主導権握られっぱなしで、なのはに言い負けてばかり。
知られたくないことばっかりバレちゃってさ。
お陰でどんどん調子に乗りやがる。
今だってこうやって、さも自然に抱き寄せやがって……

「あ、あー、んだよ。いつまでくっ付いてんだよ」
「くっ付いてるのはヴィータちゃんでしょ? 何時もみたいに離れないんだもん」
「う、あ、そ、それは別に」
「……うふふ。やっぱり寒かったんでしょ?」
「……ま、まあな」

 あんまり自然なもんだから、すっかり離れるの忘れてた。
調子乗るのかと思ったら、ちょっと考えてアタシにくっ付いてられる口実を言ってくれる。
余裕あるのか気遣ってくれたのか。
アタシなら別にくっ付かれても嬉しくないからさ。そんな気遣いしたりしないけど。ホントだぞ。
寒かったのは事実だし、なのははくっ付いてくれてた方が嬉しいんだろうし。
偶々両者の利害が一致しただけなんだ。他に理由なんてないんだからな。

「まだ寒い?」
「当ったり前だろ。どんどん陽が暮れてくんだからさ」
「そうだね。いくら季節が良いって言ってもやっぱり夕方は寒いよね」
「そゆことだ」
「そうだね。私は暑いぐらいだけど」
「じゃあ離れようか?」
「ううん。もっと暑くても良いぐらいなんだから」
「……あ、あっそ///」

 その後も、ずっとくっ付いたままタクシーを待って、乗った後もずっと。
タクシーの中は少しだけ空調が効いてて、別に寒くも何ともなかったんだけどさ。
なのはの奴が「ちょっと暑くなってきたかなー?」とか三回ぐらい言った気がしないでもないけどさ。
そんでも寒かってくっ付いたのは事実だし、何だか離れるタイミング逃したっていうか。
なのはにくっ付いてる場所が、この上なくアタシに現実を認識させてくれる。
夕暮れに染まる街を眺めて、すっかり寂しくなってたのなんかバカみたいだなって。
なのはにそれを気づかれてくっ付かれたのが悔しくもないけど、偶にはこう言うのも良いかって。
だから、ずっと家に帰って着替えるまでくっ付いてた。

 
 


 新婚なの! 5-5 (5) >


  

|

« 新婚なの! 5-5 (3) | トップページ | 新婚なの! 5-5 (5) »

新婚なの!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 新婚なの! 5-5 (3) | トップページ | 新婚なの! 5-5 (5) »