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新婚なの! 5-5 (3)

 
「は、はぇ~……」
「大変お似合いですよ。私どももお客様のイメージ通りに出来たのではないかと自負するところです」

 店員の言う通りに着付けてもらって出来上がったウェディングドレス姿。
今日は割りに派手なワンピース着てたから、装飾やら頭の飾り以外ではイメージそんなに変わらないけど。
それでも、正面の鏡に映る自分は今まで見たこともない自分で、ただただ声にならない声が漏れるばかりだった。

「これが……なのはのイメージ通り?」
「高町さまの……あの。ヴィータ様はご存知なかったので?」
「あ、ええっと。まあ、そういう風です」
「では内緒だったのですね」
「そ、そうです」

 人と喋るときは、一応アタシだって普段と違ってちゃんとする。
でも、そのお陰なのか、余計に今の自分が自分じゃないみたいな感じがして、どうにも落ち着かない。
背中はむずむずするし、足も地面に着いてるんじゃなくて、何だか空を飛んでみるみたいにフワフワしてる。
白のウェディングドレスの下の胸は、基礎体力訓練の時みたいにドキドキと跳ね上がりそう。
身体も底のほうからカアッと熱くなってきた。
そわそわ。ドレスの裾を握ったりして気を紛らわそうとしていると、後ろから声がした。

「……はい、分かりました。ヴィータ様。撮影の準備が整ったようです」
「は、はぁ」
「それではこちらへ。高町様もお待ちです」

 部屋の外から来た店員に手を引かれ、アタシは撮影室で待つなのはのところへ向かった。
 
 
 
 
 
「……あっ、ヴィータちゃん?」
「お、おう」
「うっわーっ! 凄い、凄い! とっても可愛いよヴィータちゃん!」
「うわわっ!? だ、だから抱きつくなって言ってるだろ! み、みんな見てるじゃないか!」
「ヴィータちゃんの晴れ姿なんだよ? ばっちり決まってて嬉しい!」
「そ、それにせっかく髪のセットとかしてくれたんだぞ! 無茶苦茶にしてどうする気だ!」
「あ、そっか」
「ったく。お前は人の仕事を増やしてばっかで。この頭の飾りとかだってな……」
「あー、はいはい。分かってますよー」
「むぅ。その言い方がなんか腹立つな。ホントに分かってんのか?」
「ほらほら。撮影の人も待ってるから。はい、並んで並んで」
「な、なんだよ。まだ話は……」

 なのはに無理矢理後ろを向かされると、暗くしたスタジオの向こうにはカメラを構えた人が何人か待機してた。
こういうところはアナクロなのな。
日本にいた頃と殆ど変わらないじゃんか。
まあ、なんと言っても向こうさんをまたせちゃいけないし、黙ってなのはに従うこ……

「おい。なのは」
「なぁに? ヴィータちゃん」
「ところでどうしてお前は局の制服なんだ。しかも教導隊の」
「え、だって。これが正装だし」
「式典用のマント羽織ってるし、そりゃ言いたいことは分かるけどさ」
「だったら良いでしょー」
「そうじゃなくて! お、お前アタシにだけこういう格好させて自分は制服とかおかしくないか!?」
「おかしいって……あ、なるほど」
「今日はやけに物分りが良いじゃねーか」
「腕章とか付属品が足りないって事だね。あれは流石に持ち出せなかったから」
「…………」
「どうしたのヴィータちゃん。浮かない顔して」
「もう良い。もう良いからさっさと撮影して帰ろうぜ……」
「はーい。じゃあ、お願いしまーす」

 ご機嫌ななのはが大きく手を振って、向こうでカメラを構えている人たちに合図を送る。
なのはにカメラの方へ向かされると、横にぴったり寄り添ってきた。
少し距離を取ろうとしても、そのまま肩をがっちり掴まれて動くことが出来ない。
肩が出てるデザインだから痛かったのもあって、黙って従うしかない。
むぅ。こういうときに発揮する用意周到さを、普段の仕事にも役立てて欲しいもんだ。
ああ、仕事だけでいいぞ。家にまでは持ってくるな。
毎日こんなのに振り回されたら堪ったもんじゃねーしよ。

「もうちょっと笑っていただけますかー?」
「ほら、ヴィータちゃん。笑って笑って」
「わわ笑えねーよ。そういうお前はどうなんだ?」
「わ、私は笑ってるよ? ほ、ほら。この通り」
「お二人とも、もうちょっと楽に。楽~に、ね」
「……だとよ。なのは」
「は、はーい」
「では、いきますよー」
「……ねぇ、ヴィータちゃん」
「な、なんだよ」
「今日は色々ありがとうね。私に付き合ってくれて」
「ま、まぁな」
「ヴィータちゃんの晴れ姿。一番良い形で残したかったから」
「そ、それならお前だって……」
「ううん。だってね? 好きな人には一番素敵であって欲しいから……」
「あ、あっそ……///」

 ぴったり寄り添うなのはの感覚。
肩に当てられた手は、逃げないように強く掴んでるんじゃないって分かった。
また手の平にじっとり汗をかいてる。
ちぇ。こんなの分かるなんて損じゃんか。アタシだって同じように緊張してるっていうのによ。
スカートの裾を握るわけにもいかないし。すっげー良い生地つかってるみたいでさ。
強く握ったりして変な皺とか寄っても困るし。
幸い手には何も握らされなかったから、固く拳を作った。

「もう少し楽になりませんか? そんな討ち入り前みたいに力込められましても……」
「お、おい。なのは。いい加減さ、肩を掴む手に力込めるの止めろよ」
「ならヴィータちゃんだって、握り拳なんて似合わないよ」

 結局、緊張が上手く解けて表情が出来るまで、十数回も取り直す羽目にあった。
 
 
 


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