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新婚なの! 5-5 (1)

 
 あまりにアタシ達が暴れてるもんだから、心配になった店員が様子を見に来た。
その瞬間に、なのはのヤツがアタシを抱きしめてたもんだから、ただイチャイチャしてただけって映ったらしい。
よく訓練された店員でも流石に堪え切れなかったのか、口の端をにんまり緩めて引っ込んでいく。
アタシとしては誤解を解きたいところだったけど、なのはが離さない。
結局そのまま店員の誤解を解くことなく、アタシ達は店を出る羽目になっちまった。
 
 
 
 
 
「ねぇ。まだ怒ってるの?」
「あったりめーだ。人前であんな事しやがって。アタシがあの店でどう思われるかと思うと……」
「どうって。それは私のお嫁さん♪ に決まってるよー」
「(ムギュ)」
「い、いったーい! どうして抓るのー?」
「なーにが"お嫁さん♪"だ。そういうんじゃねーだろ」
「じゃあ、何だって言うの~」
「何って。そりゃあんな店の中でもくっ付いてるようなアホな、その……」
「その、なに?」
「ア、アホな……新婚だってよ///」
「大丈夫だって~! どこも新婚さんならこんなものだよ~(ムギュ~)」

 歩道でタクシーを待っていると、またなのはが抱きついてくる。
これじゃさっきの二の舞三の舞いだ。いい加減一度ビシッと言っておかないとな。
何事も初めが肝心だ。
ここでしくじると後で面倒なことになる。
……まあ、今更って気がしないでもないけどな。
三つ子の魂百までって言うし。家に転がり込んできてからずっとこんな調子だしさ。

「だ、だから! こういう事を外でやるなっていうんだ」
「どうして。みんなしてるよ?」
「お前の皆ってのは当てに出来ないね。大体アタシはそんな新婚見たことねーぞ」
「そ、それはヴィータちゃんのアンテナが低いだけだよ」
「お前はこの立派なアンテナが目に入らねーのか!?」
「そ、そういう意味じゃなくて……」

 抱きつかれたまま、なのはを見上げて説教するのは何だか説得力に欠ける行為だけど仕方ない。
諦めたと思われるのも嫌だから、一応はグイグイと手で押しながら文句を言う。
そうしたら、なのはのヤツは言うに事欠いてアンテナが低いと言いやがる。
この頭の天辺ちょい手前で、ぴこぴこ揺れるのが目に入らないって?
これははやても可愛いなって言ってくれたんだぞ。
それを低いだの何だの言いやがって。何てヤツなんだ。

「じゃあどういう意味なんだよ」
「ええっと。情報のアンテナって意味でね。決して頭に生えてるアンテナって意味じゃないんだけど……」
「……マ、マジかそれは」
「うん。大マジですますだよ」

 なんてこった。
怒ったのはアタシの勘違いだって言うのかよ。
てっきりアンテナ言うと、頭のアンテナのことだと思ってた。情報のアンテナって言い方もあるんだな。
そういや、テレビの映りが悪いときもアンテナがどうこう言ってたっけ。シャマルが。
あの日は台風のせいで風の強い夜でさ。夜中に屋根に登って大騒ぎだったんだ。
アタシを叩き起こして、テレビの前で映ったの映らないだの実況させやがってさ。
はやては「明日すずかちゃん家で見せてもらうわぁ……」とか言って寝ちまうし。
本当ならシャマルと一緒にテレビを見るつもりだったのかな。
その前にシャマルのヤツ。アタシのところに来たときには頭にでっかいタンコブ作ってたな。
どうせシグナムに頼んで殴られたんだぜ。
こればっかりは同情できねぇや。結局寝不足で酷い目にあったし。

「ど、どうしたのヴィータちゃん」
「なんでもねぇ。アンテナって言葉でちょっと嫌なこと思い出しただけだ」
「そ、そう」
「……はぁ。まあ良いや。そんで、なのは」
「うん? どうしたの、ヴィータちゃん」
「こっからどこに行くんだ?」
「それはね~。えっへへへ、秘密だよー」
「何でだよ。もったいぶらずに教えろって」
「だって。教えたら逃げ出すかもしれないし」
「逃げ出すって。お前な、アタシを逃げ出したくなるようなところへ連れてく気なのか?」
「だから、かもしれないって言ったの。そうじゃないかも知れないけど」
「物は試しだから言ってみろよ」
「えー。あっ、タクシー来たよヴィータちゃん。早く乗ろう?」
「お、お前! 話を逸らすんじゃない! まだ終わってないぞ!」
「だ~め。お店には予約してあるんだから早く行かないと。随分時間をロスしちゃったから」
「そりゃお前のせいだろうが! アタシは知ったこっちゃねーって!」
「我侭言わないのー」
「そりゃこっちの台詞だ!」

 まだ話はついてないって言うのに、なのはに抱きかかえられてタクシーに連れ込まれた。
こうなるとタクシーの中で口論するわけにもいかなくて、仕方なくタクシーの中では黙ってることにした。
 
 
 
 
 
「……おい。いつまで抱きついてんだよ」
「あれ? ヴィータちゃんが抱きついてるんじゃないの?」
「バッカ言え。お前に抱きかかえられてタクシーに乗ったんだろうがよ」
「そうだったっけ。あはは、ごめん」

 今度はこいつの思い通りになるものかと、意を決して胸を押して引き剥がした。
しかしこの狭い車内だ。逃げるだの離れるだのは余り意味を成さない気がする。
それでもアタシの意思を示しておく事は大切だ。なのはを甘やかしちゃいけない。

「そんでさ、どこ行くんだよ」
「だから。内緒だよ」
「へっ。そうは言ったってよ。タクシーのおっちゃんに行き先言わなきゃいけないんだぞ?」
「ふっふっふ。それは甘いよヴィータちゃん。タクシーのおじさん!(ババッ! クィクィ、ミヨミヨ~」

 なのはは運転手のおじさんに向かって、何やらブロックサインを送る。
なんだ。そんなテキトウな事したって通用しないぞ。アタシをおちょくるのもいい加減にしろ。

「大丈夫だって。通じたみたいだよ」
「マ、マジでか」
「うん。ホント言うと半信半疑だったんだけど、はやてちゃんの言う通りで良かったみたい」
「は、はやてぇ~。なにしてんだよぉ~」
「えっへへー。はやてちゃんったら何でも教えてくれるんだよー」
「あ、あぁ……あんまなのはに変なこと教えないでくれよ……」

 はやて。なんでタクシー業界のブロックサインなんて知ってんだよ。
ニコニコ満足顔のなのはとすっかり頭を抱えたアタシを、乗せてタクシーは静かに目的地へ向かった。
 
 
 


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