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新婚なの! 6-1 (1)

  
「今日は久しぶりに遅くなっちまったや」

 出来の悪い同僚に付き合ってダラダラと仕事を片付けてたら、すっかり街は夜の風景。
別に残業代なんてそんな出ないって分かってるんだからよ。今度こそ、アイツが何を言おうと先に帰るんだ。
……こうやって何回思ったか分かんなくなってるけどさ。
マンションのセキュリティを解いて入ると、既になのはが帰宅しているのが分かった。
これも何回言ったか分かんないけど、帰るときになったら連絡しろって。
夕飯の用意とか色々あるんだからよ。
肝心なときに捕まらないし、端末持たせてる意味がねーじゃんか。
どうせ帰るなり開口一番「お腹空いたー」とか言う憎らしい顔を想像しながら階段を上る。
自分の住んでる階に到着し、人気のない廊下を歩いて行って玄関の鍵を開ける。
鍵じゃなくて生体認証とかいうんだっけ。便利だよな、これ。
分厚いけど見た目より軽い玄関ドアを開けると、そこには見慣れた靴が……二足あった。

「おっかえりなさーい! ヴィータちゃ~ん」
「お、おう。なのは。今帰ったぞ」

 リビングから顔を覗かせたのは、もう見飽きるほど見た栗色の髪をしたなのはと。

「こんばんわ、ヴィータ。久しぶりだね」
「あ、ああ。そうだな」

 相変わらず人の目を牽く、キラキラと透き通るような金髪をした……フェイトだった。
 


 
 
「今日は遅かったね、どうしたの?」
「ちょっと残務処理に手間取った。お前みたいにドン臭いヤツがいるせいでさ」
「むぅー。そこで私を引き合いに出す必要あるの?」
「さぁね」
「ヴィータ、きっと他の人に付き合ってあげてたんでしょ?」
「あ、ああ。まあな。と、ところでフェイト。どうしたんだ、急に」
「うん。仕事のことでちょっとこっちに用があって。そしたら偶然なのはに会って、それで」
「そっか。なんだよ、言ってくれりゃ何か買ってきたのに」
「ううん。そんな長居するつもりはないから」
「えー、久しぶりなんだしゆっくりしてってよー」

 靴を脱いで下駄箱に片付けていると、なのはとフェイトがパタパタとスリッパを鳴らしてこっちに来た。
なのはは珍しくエプロンを着けていた。なんだ、夕飯でも作ってくれるのか?
後ろからついてきたフェイトは、執務官の黒い制服を着ていた。
仕事でこっちに寄った、というのはどうやらホントみたいだ。
偶然なのはに会った……のまでホントか分からないけど。
そんなフェイトに、なのははベタベタとくってついている。

「ホント、少し寄るだけだから」
「そんなこと言ってー。さっき来たばっかりなんだよ、フェイトちゃん」
「ふーん。じゃあ、お前が帰ってきたのも、ついさっきか」
「うん。立ち話するにはあれな時間だし、近くだったから家まで来てもらったんだ~」
「あっそ」

 少しテンションの高いなのは。
靴を片付けたアタシがリビングに向かう間、後ろでずっと喋ってる。
今日は珍しく、一日何があったかじゃなくて、今まで何をフェイトと喋っていたかをベラベラと。
生返事を繰り返してると、面白くなかったのか肩を掴んで振り返らせようとする。
面倒がって手を振り払う。
そのまま黙ってリビングに着いたら、上着を脱いでソファーの背に放る。
皺になったりするからホントは駄目なんだけど、直ぐに片付けるから良いんだ。
そうやって構わず無視してるのに、それでもめげずになのはは話し続けた。
アタシの態度に文句言ってたのは最初だけで、話している内に機嫌は直ったらしい。
また生返事を繰り返した。

「それでね。久しぶりに私が夕飯作ろうかなって思うだけど……どうかな」
「んー。好きにしたら良いんじゃねーの?」
「なーにー、その言い方」
「ちょっと疲れてるんだよ」
「うふふ」
「……なに笑ってんだよ、フェイト」
「あ、気を悪くしたらごめん。でも、なんだか可笑しくって」
「ヴィータちゃんの顔が?」
「なんでアタシが前提なんだよ。まだフェイトは何も言ってねーじゃん」
「半分正解かな? もちろん、顔じゃないよ」
「へへー。半分正解だって」
「なんでそんなに自慢げなんだよ。半分も間違えやがって」

 どかっと乱暴にソファーに腰を下ろす。
ネクタイを解いて、ワイシャツのボタンを二つほど外して一息つく。
今日はフェイトがいるからな。あんまだらしない格好は出来ない。面倒くさいけどしょうがない。

「あのね。二人のやり取りが相変わらずだなって思って」
「なんだよ、なのはのせいで笑われちまったじゃねーかよ」
「私の責任だけじゃないよ。半分ヴィータちゃんのせいなんだから」
「うっせー。ほれ、さっさと夕飯の準備に取り掛からないと遅くなるぞ」
「もう、ヴィータちゃんったら。フェイトちゃんも食べてくよね?」
「え、あ、だから、えっと」
「後がつかえてるんじゃなきゃゆっくりしてけよ。なぁ、なのは」
「もっちろん! 私、頑張ってご飯作っちゃうよ! もうエプロンもばっちり!」
「で、でも……」
「良いから遠慮すんなって。滅多にご飯の用意なんかしないなのはが作るって言ってるんだからさ」
「も、もう! なんでそういう余計なこと言うの~?」
「へっへーん。言われたくなきゃ普段からやるこったな」
「むー。……じゃあ、今から作るね。フェイトちゃんはテレビでも見て待ってて? ヴィータちゃんは」
「今のうちに着替えてくる。言っとくけど手伝わねーぞ」
「意地悪ー」
「意地悪も相変わらずだろ」

 なのはは台所に行きがてら文句を言ってるけど、相手にしてやらない。
今日のなのはに構ってると調子狂う。
変にテンション高いってのもあるし、それに付き合ってるほど元気残ってねーんだ。
そんなゲンナリしてるアタシを見て、ニコニコしているフェイト。
何だよ。と思ったけど、なのはがいなくなった今、何だかそれを言うのもはばかれた。
一言何か言うべきなんだろうけど、何も思いつかないまま、ソファーの背から上着を取って黙って部屋に向かった。
 
 
  


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