« 予行練習 後 | トップページ | 広報 »

新婚なの! 7-4 (1)

「……おはよう」
「おう、ヴィータ……って、どうしたんだその顔」
「ああ、ちょっとな」
「ふーん。そんで、なにやらゲッソリしたヴィータに比べ、お前の艶々した顔はなんなんだ」
「おほほほ。あなたなんかに説明する義理はありませんことよ」
「ぎぎぎ……」

 一晩明け。また今日も一日が始まる。昨日と変わらず今日も暑くなることを予感させる朝。
太陽が上がりきってしまう前に行動を開始しないといけない。動くのが嫌になっちまうからな。
二人に装備品のチェックを指示して、航行隊の連中のところへ行く。
昨日バッチリ打ち合わせしたら今更言うことないんだけどさ。一応挨拶だけな。
向こうも向こうで全員起床済み、せっせと用意をしていた。

「おはようさん。今日も宜しくな」
「おはようございます。ヴィータ隊長。こちらこそ。元々はこちらの仕事なのですから」
「その分バックアップ、きっちり頼むぞ。そんで、昨日の話なんだけどよ」
「はい、なんでしょう」
「どうだった。持って帰って」
「ええ、ホッとしてましたよ。これで随分捜査が進むはずだと」
「そんでさ、その持って帰った動物。どうなんだ? これから」
「私は関知しないことですので」
「……ふーん、あっそ」
「……」
「でさ。話は変わるけどよ。朝飯はどうしてんだ? アタシ等はこれからだけどよ。良かったら一緒に」
「いえ、既に済ませております。それに交代制ですので」
「そっか。んじゃな、行ってくる」
「お気をつけて」

 踵を返し、顔も見ずに手だけ振っておく。
普通にしゃべってた癖に、持って帰った奴のことを聞いたときだけ事務的に答えやがった。
馬鹿だなーって。そんなことすりゃ答えたくないこと聞かれたんだなってバレちゃうじゃんか。
まさか、それを見越して裏の裏を斯いたってわけでもないだろうし。
持ち帰った動物がどういう扱いになるのか。予想できたことだけど、改めて意識すると何とも面白くない。
アタシは文句言える立場じゃない。だからせめて担当者の良心に期待するしかない。

「にしても。あっちは飯一緒に食わないのか。二度手間だろうに」

 わざわざ別に食事を取ることもないと思うんだけどさ。
みんな一緒にってのは。時間合わせたりしなきゃいけない分、不便だってことだろうか。
任務のこういうとこ。効率が前に出て、なんとも味気なくなる。
そういうのってさ。空気が張り詰めてる分、余裕なくなるんだよな。
今回は空と海で違うってのがあるせいだろうけど、そういう面倒なの無視して気兼ねなく仲良くすりゃ良いのに……
何の足しにもならない愚痴を言いながら、二人のところに戻り、昨日見つけた付近へ転送してもらった。
 
 
 
 
 
「ふぅ。しっかしこの森ってのはどっから光が来てるんだ?」
「さあな。聞いてみたけどよく分かんないってさ」
「魔力がかなりの高濃度で漂っていますから、その影響ではございませんの?」
「何をどうやったら魔力でジャングルん中が明るくなるんだ」
「……はぁ」
「んだよ。その呆れたって顔は!」
「暑いんだからそう怒るなって。アタシだって意味分かんないのは一緒なんだからよ」
「うぅ。ヴィータの優しさが身に沁みるぜ」

 昨日ペットを捕獲した辺りに転送してもらって探索開始。
基本似たような行動を取るだろうし、出来るなら昨日の続きで探しにいければ良かったんだけどさ。
トラブルがあったし……というのは黙っておく。
見た目には分かんないけど気にしてたら可哀想だし。若ししてなかったら……してなきゃ減俸ものだ。
まずは昨日ペットを発見した木の袂に到着。
三人で念話の届く範囲でまず手分けして付近を探る。
保護した動物を持って帰った奴に、例の唯の銀色の棒にしか見えないのを二人分持ってきてもらった。
初めからそんな直ぐに見つかるとは思ってなかったけど、流石に向こうも動き出してるだろ。
なるべく相手には回収されたくない。出来れば全部、こっちで押さえたいらしい。
危険だから役割分担をしっかりした方が良いんだけどさ。
一人は周囲の警戒し、残りの三人で探す。しまったな、ホント。あと一人連れてくるべきだった。
いつ緊急の任務が入るか分からないし、アタシの勝手で連れ出しても大丈夫そうなのが、この二人だけってのが……
ここは一つ、アタシが頑張るしかない。

「こっちはないぜ、ヴィータ」
「右に同じですわ」
「そっか。一緒にいてくりゃ楽なのによ」
「躾がなってねーなぁ、こいつ」
「あなたに言われるのは心外でしてよ、きっと」
「お、親を馬鹿にすんな!」

 外に出たことないヤツなんだから、怖くてジッとしているかと思いきや。
昨日のは必死になってた故の例外だと思ってたけど、どうやら認識を改めなきゃいけない。
そもそも普通のペットじゃなくて、何かしらの実験動物ってことだからな。
フェイトがその辺、口外できないこともあっただろうし。
そういうことも参酌して、アタシにはちゃんと資料が渡ってきてると思いたい。

「一回戻ってみるか」
「戻るって、基地にか?」
「そこまで戻ってどうする。見つけた場所から逆に辿ってみるってことだよ」
「昨日みつけた子が一番動いていて、他の子は動いていないと?」
「可能性のはなし」
「わーった」
「ちゃんと返事しろよ、アタシ以外にはな」

 あの穴には一匹分の足跡しかなかった。
同じように他の二匹も動いていると思ったけど、それが例外って可能性もあるからな。
三匹集まれば、一匹ぐらい違ったことをするヤツが出てきたりするもんだ。
……いつの間にかその一人に影響されてか、つまらない事に才能を発揮するのもいるけどさ。
つまらない事を考えている内に、二人が到着した。
昨日来た道を辿ろうと歩き出した頃には、頭上のお天道様がそろそろ天辺に到達しようとしていた。
 
 
 
 
 
「収穫なしですわね」
「来た道から離れるに従って反応なくなってくもんな」
「う~ん。やっぱダメか」
「広域探査はここじゃ精度悪いっつったて、幾らなんでも悪すぎだろ」
「まあそう言ってやるなって。メンテ、昨日逃げる時。やっぱ制御利きづらかったか?」
「ええ、そうですわね」
「コイツにしては小回り効いてなかった感じだったぞ」
「あなたという荷物が余分でしたから。私の能力不足ではありません」
「に、荷物……!」
「うん、分かった。そんじゃ、一旦休憩な」

 来た道を戻ってはみたものの収穫はなし。
やはり三匹とも同じように移動したと考えるのが妥当だということに。
徒労に終わったとなれば疲労感が増す。しかも、このジャングルでの行動で気づいたことがある。
一つ一つのものが大きいために移動した感がない。
同じような風景ばかり――アタシは特に視線が低いせいかもしれないが――で、同じところをぐるぐる回ってるような錯覚を覚える。
それが余計に神経を疲れさせる。ちゃんと移動してるのか、全然移動できてないな、と。
こういう時は、小まめに休憩を挟んだ方が気持ちの切り替えが出来て良いだろうという判断。
時間的にもちょうどお昼ご飯だったというのも手伝っていた。


 


 新婚なの! 7-4 (2) >


  

|

« 予行練習 後 | トップページ | 広報 »

新婚なの!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 予行練習 後 | トップページ | 広報 »