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新婚なの! 7-3 (1)

「あ~あ。今日も一日あのジャングルの中か」
「おはよう、ヴィータさん。昨日はよく眠れまして?」
「……まあな。お前があんまくっ付いてこなきゃもっと快適に寝れたよ」
「あら。人肌恋しいと思って抱きついて差し上げましたのに」
「どうしてそういう考えに至るんだ!」
「新婚さんなら乾く暇もないほどでしょうし、少しでも慰めになればと」
「??? 何の話してんだ?」
「……おほん。それでは今日も頑張って探しに行きまっしょい」

 日の出よりいくらか早く目を覚ます。
ミッド地上とは違ってかなり日差しがキツイせいで、あっという間に気温が上がってくからな。早くに準備を始めないといけない。
寝所のテントは性能良いから、少しぐらいの気温の変化なんて物ともしないんだけど、その後のスケジュールに響いてくる。
とは言っても、実際は予定よりも早く目が覚めちまって……理由は絶対に言わないけどさ。
なのはのヤツがちゃんと起きて準備して出勤出来てるか心配で、寝てるところじゃなかったから。
かと言って確認の連絡入れるのも調子付かせるだけだし、でも放っておくのも……なんて考えてる内に時間が過ぎていって。
ウトウトして、そろそろ寝るかなぁって言ってたら夜が明けちまった雰囲気。
仕方ないからそのまま起きて準備したって訳だ。

「今日はどの辺へ?」
「待て。まずあっちの連中と打ち合わせしてくるから。その間にアイツの面倒頼む」
「そういう趣味はないのですけど。ヴィータさんのお願いとあっては仕方ありませんわね」
「お前ももういっぺん、装備の確認しとけよ~」
 
 
 
 
 
「はぁ。アイツ、凹んでんだろうなぁ。いい歳した大人を慰めるなんざ……」
「おう、ヴィータ! ちゃんと起きれたみたいだな!」
「……はぁ。ウゼェ」
「人の顔見るなり失礼だな! まあ良い。昨日は語り明かして良い友を得たんだからな。気にしないぜ」
「あっそう。昨日の泣きっ面。帰ったら部署のみんなで見るから」
「お、お前マジで録画してたのかよ!」
「ウソは言わない。ほれ、あっちに言ってろ。アタシはこれから打ち合わせだ」
「へ~い……アイツと二人っきりなんて嫌だよぉ。ヴィータ、早く帰ってきておくれよ~」
「(なんでそんなに毛嫌いするんだ?)」

 ガッカリと肩を落として横をすり抜けていく。
正直他人を慰めたりするなんて得意じゃない。
かと言ってあんな調子じゃ危なっかしいしよ……しょうがない。早めに切り上げて戻ってやるとするか。
直ぐそこに見える次元航行隊の連中が使ってる寝所に向かった。

「ヴィータ隊長、おはようございます」
「ああ、おはよう。早速今日の話だけどな。初めの打ち合わせどおりで変更ないか?」
「はい。今日もAフィールドを中心にBフィールドまでお願いします」
「Cは……そうか。この川だもんな」

 アタシ達の横を流れる大きな河。
テレビで見たアマゾン川とかそんな雰囲気だ。すげー広い。しかも茶色い。
ジャングルの中の動物の大きさを見るに、この中を泳いでるヤツ等も相当大きかったりするのかな。
前来たときは、水の中なんて効率悪くて無視してたから調べてないんだよ。
う~ん。茶色く濁って全然見えねーや。
流れもゆったりしてるけど、深かったりして危ないんだろうなあ。

「昨日よりも遠出になりますから気をつけてください。一番端まで行きますと通信も届きにくくなります」
「そこらまで行ってない事を祈るだけだな。まあ、二日かそこらで移動できる距離じゃねーけど」
「死体でも構いませんので。回収するのが目的ですから」
「……あのさ。一個聞いていいか?」
「私で答えられる範囲であれば」
「今回の任務。本当に"ペット探し"なんだろうな」
「はい。私はそう聞いています」
「……ん。手間取らせたな。そんじゃ今日も頼む。外からのサポートがなけりゃ動けないからさ」
「お任せください。ハラオウン執務官から仰せつかっておりますから」

 すっかり今日の準備を終えようとしている次元航行隊の連中。
ただ、それを知ってる人間にしか分からない。外見上、アタシ達は同じ陸士部隊仕様になってる。
装備は中身の仕様が違って、外見はそれほど変わらない。
だから、このフィールド発生装置を積んだマントを羽織ってても、知らないヤツが見たら陸の人間だと思うだろうな。
問題はそこだ。
改めて問い質したのは、なんでそんな面倒なことしなきゃいけないかってこと。
偽装だろ、これ。任務の本当のところはアタシにすら知らされているか分からない。
そこまで隠さなきゃいけないのは……まあ、それだけ重大な事件なんだろうってことだけか。
手の内を見せないっていうか、機械的な感じすんな。
なにか隠してるように思えて仕方ない。

「ヴィータさん。これもそうでなくて?」
「どれどれ。……お、こりゃビンゴだな。割と新しいぞ」
「ヴィータ。こっちも反応出てるぞ。結構近いんじゃないか?」
「(普通は反応を見てから足跡探すんだけどな)よし。周りの警戒は任せろ。お前らは下向いて探せ」
「了解ですわ」「了解だ」
「その前に。アタシに貸せ。下向いてちゃ使えないだろ」
「分かったよ、ほれ」

 朝一番から出かけたお陰で、昨日よりは足取りが軽い。
早くしないとグングン気温が上昇するからな。昨日で一回体験してるとはいえ、そう慣れるもんじゃない。
そんな中で見つけた痕跡。
夜は明けてまだ少し。しかも足跡は新しい。
これなら今日中に少なくとも一匹は回収できるかもしれない。
それは二人も分かってる。俄然やる気が出てきたようだ。

「早く捕まえませんと、こんなジャングルじゃ死んじゃいますものね」
「気に食わないがペットに罪はないからな」
「そういうこった。帰ったらもう少し手当て寄越すよう談判してやるよ」
「マジか! 流石話の分かる隊長様は違うぜ」

 やる気になってる二人には悪いとしか言えない。
元々を言えば"死体で良いから先を越されるな"だからさ。
今から死体だったときのフォローを考えておかないとな。口ごもると悟らそうで怖いし。
それともう一つ、考えておかないといけない言い訳は「どうしてこんなところに逃げ出したか?」だ。
何でか知らないけど、今のところ全く気にする素振りを見せない。
気にしてないならアタシとしては助かるけど、メンテは分かってて黙ってる可能性がありそうだ。
アタシの前で下向いてるコイツは……結構真面目だしな、こう見えても。
探すことに一生懸命で、そっちまで考えが及んでないのかも。
腐っても航空隊だし、アホじゃ勤まんねーもんな。

「あら? ……ヴィータさん。この穴、怪しいとは思いません?」
「ん、どれどれ。う~ん、足跡も繋がってるな。よし、アタシが潜ってみてくる。外の守り、頼むぞ」
「了解です」
「いや、それは良いけどよ。この木の股。随分深いぞ?」
「うーむ。でもよ、虎穴にいらずんば虎児を得ずっていうしな。行ってくる」
「コケツニ……? まあ、気をつけてな」

 ポーチからペンライトの強力なヤツを取り出し、身を屈めて穴に入る。
前方と足元を交互に照らしながら慎重に足を進める。
相手は普通の犬ぐらいの大きさらしい。なんだっけ、柴犬ぐらいとか思ってた覚えがある。
それならアタシ一人でも捕まえられそうだ。
どうやって捕まえようか、あれこれ考えていると、前を照らした光りが何かに反射した。

「この星で人工物はありえないだろうし……ビンゴかな」

 今反射した様に見えたのは目だろうか。
それなら、アタシが穴に入ってきたのを知って警戒してるってところだな。
大人しく寝てりゃさ、まだ眠たいだろうに。その辺はやっぱ動物の本能ってところか。
ライトを口に咥え、両手を自由にしたところでニジニジと近寄ると―――

「この辺りのはず……ん? うわっ!? んぎゅっ!」

 一瞬。あるはずの場所に光りを反射するものが無くて、疑問に思ったのが失敗だった。
どうやらその一瞬で飛び掛ってたみたいだ。
それに考えが及んだ時には既に前足でアタシの肩を押して上に乗っかってきてた。
驚いて咥えてたライトは落とすし、去り際に後ろ足で顔を踏まれて間抜けな声を出しちまうし。
違う、そんなことを言ってる場合じゃねー!
この距離なら念話が届くはずだ。身体を起こしながらライトを探し、外の二人に念話を飛ばした。
光を発している辺りを乱暴に掴んで走り出す。
中腰になってるせいでそれ程速さは出ないけど、表の二人が捕まえてることを信じて足を緩めない。
外の景色が見え始めたけど、そこに人影は無い。
どうしたんだ? 捕まえたから……いや、それなら念話で知らせが入ってるはずだ。

『ごめんなさい、ヴィータさん。逃がしてしまいましたわ!』
『何だよコイツ! いきなり噛み付きやがって!』
「動物なんだから噛み付くぐらいするだろ! アタシに構わず行け!」
『了解ですわ!』

 ちぇっ。室内飼いで大人しいっつーけど、しっかりしてるじゃないか。
ライトをポーチにしまいながら外へ飛び出すと、右前方にフーガの後姿を確認できた。
少しぬかるむ地面を蹴って背丈ほどもある草を掻き分け走る。
この辺りに生えてる草は、背丈もある上にかなり硬くてかき分けるのも一苦労だ。
こうなると背の低い動物の方が圧倒的に有利だ。
かき分けた瞬間に見える後頭部を追いかけていくと、メンテから念話が飛んできた。


 


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