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新婚なの! 7-3 (3)

「ヴィータさん。大丈夫でしたの!?」
「ああ、まあな。思ったより強くてちょっと驚いたけどさ」
「ヴィータがそんなこと言うなんてよ……よく死ななかったな、俺」
「別にそれでも良かったですのに……(ボソッ」
「うぅ……やだよー帰りてーよー」
「ここで帰ったら手当てなしだぞ。だからもうちっと我慢しろ」
「ふぇ~い。くそっ、コイツめ。いきなり噛み付きやがって」
「キューン」
「叩くな。今は大人しくしてるだろうが。よし、一旦基地に帰るぞ」
「もうですの?」
「こいつも怪我してるし。よく見てみりゃ結構な傷だ。保護したペットも預けてこないとな。それに」
「それに、まだなにかあんのか?」
「ちょっと暴れすぎた。森がざわついてるからな。下手に刺激しないほうがいい」
「それもそうですわね。一匹は確保したのですし、最悪これで満足してもらうしかありませんですわね」
「……最悪な。今はそうじゃない。おい、聞いてたか?」
『はい。ヴィータ隊長。準備が整うまでもう少しお待ちください』
「よし。出来次第、引き上げるぞ」

 

 

「お疲れ様ですわ。ヴィータさん」
「おう。お疲れさん。今日は悪かったな」

 今日は結局引き上げっぱなし。もう一度ジャングルに入ることはなかった。
保護したペットをもって次元航行隊の奴が一人帰っちまってさ。バックアップに不備が出るからダメだってよ。
そんなら予めもう一人遣しとけってんだ。
まあ、アタシもカートリッジこそ使わなかったけれど、結構疲れたしさ。
今日のところは好しとして、午後から休みをとることにした。
みんなで食料を調達したり、今後の作戦を練ったり。
食料と言っても食べられるものは少ないらしく、ここだけで腰を据えて活動できるほどは集められない。
あんまり遠くへも行けないし。
だから、軽食やら毎回のご飯に彩を添える程度。直ぐに終わってしまう。
作戦を練るのも、事前にフェイトから渡されてたのがあるし、それほど頭をつき合わせてすることもない。
今日のことがあったしさ。それの確認ぐらい。
全てが予定より早く終わってしまったせいで、夕ご飯は早めにとることになってしまった。
今日もアタシ達と航行隊の連中は別。
一緒の方が手間も省けて良いと思うんだけどさ。

「別に捨て置いても良かったのですけどね。あれでも一応同僚ですから」
「あんま苛めんなよ。アタシ達三人でやってんだからさ」
「肝に銘じておきますわ。それで」
「どうした」
「今日も指輪、付けてませんのね。まだ胸に?」
「な、なんだよ。またその話か……」
「あら。いけません?」
「べ、べべ別に指輪をどうしてようとアタシの勝手だろ。ちゃ、ちゃんとなのはと相談して、その……」
「せっかくの結婚指輪。よく了承してくださいましたわね」
「う、むぅ……」

 昨日と同じ。
緑色の月明かりが照らす中、僅かに緑を反射する河を眺めながら体育座りしてるとメンテの奴が話しかけてきた。
真面目に仕事の話かと思いきや、早々に切り上げるてまた指輪の話。
しかも何だかアタシとなのはのやり取りを知ってるみたいな口ぶりだ。
"了承してくれた" そう言われて思い出すなのはの顔。
指輪をはめてくれた時、はめてやった時。アタシが指から外すって言ったとき……
そりゃよ。アタシだって初めてのときみたいに笑っていさせてーよ。嬉しい顔させてーよ。
そんでもさ。任務に支障が出るようじゃ……ああっ、くそ!

「どうしましたの? 思わず旦那様の顔でも思い出してまして?」
「……なのはが旦那でアタシが嫁ってのは決定事項かよ。まあ良いや。あのさ」
「お願い事でしたら何なりと」
「今の任務が終わったらさ。ちょっと付き合ってくんねーか」
「あら。まさかヴィータさんから不倫のお誘いがあるだなんて……どうしましょう」
「違う! 最後まで聞けって。あのさ、指輪付けたままで大丈夫なように訓練するから、それに」
「……そうですの。でしたら早速明日からでも良くなくて?」
「明日って。こんな任務中に出来るわけねーだろ」
「私のことならご安心を。それに今回の任務ぐらい、私一人でもこなして見せますわよ」
「どっからその自信が出てくるか知らねーけど、バカも休み休み言え」

 メンテは一人で調子の良いことを言う。
確かに人をランクだけでは計れない。コイツはAランクだ。ギリギリって話だけどさ。
そりゃこのジャングルを通り過ぎたりするぐらいなら大丈夫かもしれない。要領良いし。
でも今回は探しものをしにきてるんだ。
しかも相手はジッとしてない動物。そう易々と見つかるわけない。
それだけならまだしも、今日みたいに危険なレベルに達するヤツだってうじゃうじゃしてるんだ。
そんな任務に一人で放り出せるかっての。
アタシが一緒にいなきゃ――なんて偉そうなこと言えないけど――危なくてしょうがない。
要領が良いとか以前の問題だ。

「残念。せっかくヴィータさんが指輪をつけて旦那様を驚かせる~という計画を……」
「驚かせる?」
「うふふ。そうでございましてよ」
「ど、どんな計画さ」
「あら、食いつきが良いですわね。簡潔に申し上げれば」
「う、うん」
「指輪を外して出かけたお嫁さん。それが、任務から帰ってくるとその指にはキラリと輝く結婚指輪が……」
「う、ん」
「旅先で何があったのか、どうしたのかしら」
「ふ、ふむ」
「モジモジするお嫁様を見て考え至ります。きっと私がいなくて寂しかったなの。ああーヴィータちゃん可愛いなの~。でしてよ」
「う、むぅ」
「抱き合う二人。お前を喜ばそうと頑張ったんだ。うん、私嬉しいなの。潤んだ瞳と瞳。重なり合う身体と唇」
「う、ん?」
「さすれば奥手な旦那様と奥様も今夜は……という具合だったりしちゃいますことよ」
「は、はぁ」

 何を言い出すかと思いきや、さっきの話の続きらしい。
しかも一人でニヤニヤしながら。
そんでニヤニヤしてたかと思ったら、芝居がかった立ち振る舞いで一人芝居を始める。なのはの真似までしやがって。
しっかし似てるんだ、なのはの真似が。
仕草から声色まで。しかも"~なの"だって。アハハハ、他人が言うと変でやんの。
でもさ。それでその晩がどうなるって?
今日の朝とかさ。偶によく分かんないこというな、コイツ。

「……そっか。やっぱ喜ぶかな」
「ええ。それは勿論。もう離してくれませんでしてよ。一晩中」
「まあ、それはいつも通……いや、なんでもねぇ」
「どうします? 明日から挑戦するか、それとも帰ってからになさるか。私はどちらでも問題ありませんですわ」

 負い目があるわけじゃない。そう、思いたい。
でも、あの日のことは小さな棘となって喉奥に引っかかってる。
あんな悲しげな顔。もうさせたくない。自分のせいで人が泣いたりするのは嫌だ。
だからと言ってこういう判断はよくない。嫁として、隊長として。
変に相手を意識して、喜ばせようだなんて言うのは駄目なんだ。
普段の"相手が楽しんでくれるように"って何か考えるのとは違う。
なのはが内緒で指輪用意したり写真撮りに行ったりしてた、純粋に二人で楽しもうってのと。
だから、やっぱりこういう判断は正しくないんだろうって思うのにさ……
どうしても、なのはの顔が脳裏にチラついて仕方ないんだ。

「……ちょっと面倒かける」
「あら♪ その気になっていただけました?」
「まあな。でもよ、このことは絶対に内緒だぞ。絶対だかんな」
「ええ。それはもう心得ておりましてございます」
「……ちぇ。なんだかウソ臭いな、お前」
「誠心誠意、尽くさせていただきますわよ。ヴィータ隊長」


 


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