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新婚なの! 7-5 (2)

 転送先では連絡を受けた二人が出迎えてくれて、血塗れのマントを交換してくれた。
足がふら付くようなら大人しくしてなきゃいけないって分かってるんだけど、どうしても落ち着かない。
フーガのヤツはそれっきり連絡をよこして来ないし。余計にそうなる。
引き止める航行隊の連中を無視してジャングルへ引き返そうとしたとき、連絡が入った。
どうやら無事合流できたとのことだった。
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、続く言葉はアタシ達を少しだけガッカリさせた。
メンテがペットの下半身だけを拾ってきたとの事。
インカムの割り込みをしたメンテの報告によれば、大きな動物に襲われたのか上半身がなかったとのことだ。
最低のラインは確保できたが、すっきりとはしない。
これから持って帰るというが、隊長として一応現場を見ておかなきゃいけない。
詳しいことはアタシから報告しなきゃいけないしな。二人には任務のホントのところは秘密なんだし。
広域探査で今のところ危険がなさそうなのを確認してもらい、戻してもらった。

「おい、二人とも。大丈夫か?」
「ええ。この人と一緒にしないでくださいまして」
「……ぐぐ」
「そう言ってやるなって。お前のこと心配してたんだから」
「ふーん」
「べ、別に俺はお前の事なんか気にしてないんだからな! た、ただヴィータがその、えっと……」

 何を焦っているか知らないけど、身振り手振りを加えて必死に弁明をする。
別に否定するこっちゃないのにな。仲間を心配して頑張れるってえらいじゃんか。
まあ、余り引っ張っても可哀想な雰囲気なので本題に入ることにした。

「んで。死体があった場所は?」
「こっちですわ。思ったより近くて驚いてしまいましたわね」
「……ふぅん、確かに。アイツ等ならアタシたちは随分前から見えてたって事か」

 メンテに手招きされて立った場所は、随分と木や草が生い茂っているとはいえ、アタシ達が襲われた場所を見通せる位置にあった。
見える、っていうのは目視できるって意味じゃなくて、ここで生きてる連中なら余裕で探知できる範囲って意味。
……外の連中、見落としてたのか?
それにしちゃお粗末過ぎる……一体なにやってんだ。

「こんなに近くて分からなかったのか」
「それが悔やまれますわ」
「何で分からなかったのか……考える時間は少ないな」
「大きさは一番小さかったですわね」
「子供だったのか? 反応が小さかったのかもしんないぜ」
「う、うーん……どうだろな」

 参考までに二人の意見を聞きながら、足元の様子を確かめる。
ここで獲物に有りついたところでアタシ達に気づき、食事を中断したってところか。
若しかして、一昨日のヤツから話がいってるのか? 前に来たことのあるヤツがいるぞって。
それと関係なく、アタシが騒ぎすぎたせいで敏感になっているか……
どちらにしろ、アタシ等はここで凄く目立つ存在って訳だ。
その目立つ獲物を闇雲に狙ってるわけじゃない。相手は思ってたよりもずっと賢い。
確かに言うとおりだ。相手は確実に殺しにきてる。
それも捕食のためじゃなく、邪魔だから……かもしれない。縄張りは守らなくちゃいけないからな。
こうなってくると―――アタシも腹を括る必要がある。
アタシの勝手な制約に巻き込むわけには行かない。
ホントならそこまで含めた上でしなきゃいけないんだけど……覚悟が足りなかったってことだ。
情けないことに、さ。

「死体があった場所はここだな」
「ええ。血溜りがもう真っ黒にでございましてよ」
「よし。処理して帰るぞ。ちょいと作業するから回り、見張っててくれ」
「「了解」」
「ああ、そうだメンテ。回収袋、持ってるか?」
「ちゃんとこの通り。既にこのなかでしちゃったりですのよ」

 マント羽織ってるせいで回収袋を持っているのを確認できなかった。
死体を回収したと言った時点で聞いておかなきゃいけなかったんだけど……ちと気を抜きすぎだ。
腰のポーチからスプレーやらを取り出して、地面に広がったどす黒い血溜りを処理する。
実験動物だからな。こっちの世界にどういう影響及ぼすかしれないし、血なんかは影響大きいだろ。
まあ実験動物だからしなきゃいけない訳じゃなくて、アタシ達も含めてそうなんだけど。
だからそれはこの二人も分かってて、特に不審がられることはない。
しかし、今回。一番の目的は後から追ってきた連中に成果を残させないためだ。
本体じゃなく、血とかでも十分って事もあるからな。
なんだっけ。遺伝子がどうとかさ。そういうのでも十分らしい。
抜け毛とか、そういうのも回収する必要がありそうだけど、そんな手間かけてちゃ管理局に見つかっちまう。
……逆にここがそいつ等のお膝元っていうなら別だけどさ。
それならアタシたちが自由に出来ないだろうし、それはないだろう。

「結構染み込んでんな。このスプレーで固めて……えっしょ、よっと。よし、終わりっと」
「へぇ~、便利そうだな、それ」
「ああ。揚げ物の後の油固めるヤツみたいな感じだ」
「……? なんだ、それ?」
「うん? あ、いや、えっと。なんでもねーよ」
「ふーん。偶にヴィータって訳分かんないこと言うよな?」
「そうでしたかしら。あなたの理解力が足りないだけだったりなかったりしません?」
「こ、今回のはちげーよ。絶対そんなのないって」
「まあ、今のはアタシが前にいた世界の話だからな。分からなくて当然だ」
「ほれ見ろ」
「ヴィータさんの優しさは人をダメにしますわね」

 そっか。ミッドには固める○ンプルなんてないもんな。
アレって不思議だよな。油が固まっちまったら元に戻ったりしねーんだもん。どういう仕組みなんだろうってさ。
そんな風に、ちょっとだけ日本のことを懐かしく思い出しながら作業を続けた。
薬剤で固まった土を掘り出し、専用の袋に入れて回収完了。
不恰好に地面に穴が開いちまったもんだから、周りからかき集めて何とか見栄えだけでも見れるようにした。
草とかもついでに抜いたから余計に、ぽっかり穴が開いたように見えちまうのは、まあ勘弁しておくれ。

「よし、終わったぞ」
「んじゃ帰ろうぜ。まだ早いけどさ。二人でそんな荷物抱えてウロウロ出来ないだろ?」
「そんなに言うのでしたら、あなたが持ってくだされば宜しいのでなくて? 勿論、二人分」
「や、やだよ! こんなところで両手塞がるなんて自殺行為じゃんか!」
「……ですらか申し上げたのですわ(ボソッ」
「ひぃ~ん。ヴィータ~」
「あー、はいはい」

 ポーチに土の入った袋を仕舞っていると、また二人が何やら毎度の言い合いをしている。
毎度毎度同じ展開で、最後は決まってフーガが泣き言を言う。
よく飽きないよな、メンテはさ。
昨日、あんま苛めるなよって言ったばっかなのに……はぁ、仕方ない。

「今日は帰るぞ。荷物を持って帰って貰わないとな」
「そうそう。ヴィータも帰ろうって言ってるぜ?」
「あなた。やけに帰りたがりますわね」
「か、勘違いスンナよ。ヴィータのことだよ、今は。それに。お前だって何時までもその格好じゃいられねーだろ」
「……それもそうですわね」

 フーガに指摘され、血塗れのマントをパタパタと叩いたり身体を捻っては、改めて汚れを確認している。
マントはまだしも、あれだけ髪と顔が血塗れになって気持ち悪くねーのかな。
流石のメンテはも指摘は事実だし、言い負けたとかそういうのは関係ないって事か。
中々気が利くようになってる、せっかくの好意だ。今日は早めに引き上げて明日の準備を万端にするとしよう。
もう一回転送してもらって、回収した死体と土、メンテとフーガのマントも一緒に持って帰ってもらった。
アタシが予備の一個を使ってしまっている。もう二つはないらしい。
なんだよ、最低三つは用意しとけっての。準備が悪い奴らだな――などと悪態をつくことはしない。
そのお陰で待機が決定したのだし、怪我の功名いうのは変だけど、それで良しとした。
装備を変えても身体が血塗れのままじゃ意味がない。
次は身体を綺麗にしなきゃな。
フーガのヤツはアタシを抱いてただけでそれほど汚れてないので、風呂は後で良いそうだ。
そういう訳でアタシら二人が先に風呂を頂くことになったわけだけど。


 


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