« リンク、とか | トップページ | 新婚なの! 7-7 (2) »

新婚なの! 7-7 (1)

 その日もちゃんと寝袋にごっそり入って寝た。
昨日同様、少しだけ覗かせていると何が楽しいのか知らないが、メンテはポーカーフェイスを崩していた。
付き合いきれない。
目を閉じた後のことを考えると眠れなくなるので、頭を空っぽにしようと必死になるなんて本末転倒なことをしながら眠りに就いた。
ぐっすり眠るのは得意なはずなのに、また夢を見た。
寝しなに余計なことを考えていたのが悪かったのだろうか。
兎に角内容としては、なのはにカレー作ってやって、豚肉にしたら「えー美味しいのー?」とか怪しんだくせに一口食べたらニコニコしたり。
それで満足したかと思いきや、今度は辛いねーとか言い出して、甘口はヴィータちゃんにピッタリだねとか言ったりして。
いつ甘いのが好きだ何て言ったんだよ、アタシはアイスが好きなだけだ!とか。
次にはニンジンが少ないよとか、今日のサラダは美味しいねとか。
他にも色々喋ってて、アタシが早く食べろよって言っても全然聞かなくて。
そんななのはにしょうがないヤツだなって文句言えば、今度は私が作ってあげるねーって言うから黙って食べる夢。
取りとめもないし、こんなことが実際にあったような無かったような内容で。
まあ、何が言いたいかと言うと。
また早くに目が覚めた。
 
「ヴィータ隊長。今日もお早いですね」
「ふぁ~あ……まあな。お前は見張り番か? お疲れさん」
「まだ三十分ほどほどありますが宜しいのですか?」
「まあな。目覚めちまったし、このぐらいの時間、ちょっと靄がかかって良い雰囲気じゃん」

 今日はやけに靄が多い。昨日は寒かったのか。
そんな風に思わなかったのは、寝所の性能が良いから冷え込みが分からなかったからだな。
ふーむ。そういうのも良し悪しだ。
近くを流れる大きな川の辺りは特に靄が濃くて、本当にその向こうに何かが潜んでいそうな雰囲気だ。
夜は当然に真っ暗で、一寸先は闇。なんてのは言い過ぎでも草むら向こうに何がいるかなんて分からない。
外からの探査とデバイスの警戒がある状況ってのは恵まれてるって思わされる。
……そう思うと余裕が出来るしな。
時折、外からの探索が疎かになっている気がしないでもないが。

「私は……その向こうに何かが潜んでいそうで怖いですね」
「あ~、そっか。見張りしてるとそう思うわな」
「何も無ければ良いのですけれど」
「だと良いな。そんんじゃ、あと三十……うーん」
「どうなさいました?」
「一緒に朝ご飯、食べねーか」
「…………」
「どうした」
「……いえ。なんでもありませ、ん。……くっ」
「?」

 ダメだと思いながらも食事に誘ったが、案の定断られた。
しかし昨日までと反応が違って、なにやら残念そうと言うか何かを堪えているように感じた。
何やら事務的な受け答えの裏に隠された真意、というと大げさだが、それはとても大したことないことの様に思えてきた。
時間もないので、しつこくしたら悪い。
じぃっと見つめられる視線を背中に感じながらその場を後にした。
早起きついでにメンテの装備品もチェックしといてやるか。
 
 
 
 
 
「おはようございます、ヴィータさん」
「ああ、おはようさん。よく眠れたか?」
「ええ。ヴィータさんの控えめな寝言がありましたけど、さほど問題ではありませんことよ」
「ね、寝言!?」
「ええ。なのは~、早く飯食え~とか。なのは~、抱きつくな~とか。なのは~、風呂入れ~などなど」
「そ、そそそそんな内容だったか!?」

 チェックも終わり、そろそろ起床時間になる頃。
寝所で物音がしたかと思うとメンテが起きてきた。コイツは早起きだな。なのはも見習って欲しいところだ。
見習って欲しいと思わせたメンテは、開口一番とんでもない事を言いやがった。
しかも、物真似つき。
見慣れた顔から飛び出す自分の声というのは、とても珍妙というか珍妙だ。
なに? アタシがそんなこと言ってたって? 冗談も休み休み言いやがれ!
などと心の中では思っていても、口を吐いて出た内容は、ただただ動揺するばかり。
そんなアタシを見てなのか、メンテは満足そうに口の端を緩め、目を細めながら続けた。

「寝袋から僅かに覗くお顔はとても満足げでしたわよ。口では嫌がっていましても」
「ま、まさか……いや、あり得ねぇ」
「新婚夫婦の生活を垣間見た瞬間でしたわ。きっと普段もそうなのでしょうね」
「ち、ちげーよ。勝手な想像すんな!」
「あら、そうですの?」
「そうだ、そうだぞ! た、確かによ、なのはとカレー食った夢は見たけど……」
「ふぅん。へぇ~」
「お、覚えてねーだけか? ちょ、ちょっと待てよ……」
「…………う・そ」
「―――は?」
「嘘だっよー、でしちゃったりですわ」
「な、なぁにぃっ!?」
「でも、旦那様との甘~い新婚生活な夢はみてらっしゃったりなのは当たりだったみたいのようですわね」
「むぐ、むぐぐ! て、てんめぇー!」
「ああ、そうそう。夢と言うのは意識化に潜んだ願望が現れるらしいですわね?」
「な、なっ!? あに言ってんだ!」
「おほほ。内緒にしておきますから大丈夫ですわ。しかしヴィータ隊長がそれほど旦那様の温もりに飢えていらっしゃったとは……」
「バ、ババババカっ!」
「私でしたらそんな寂しい思いはさせませんのに」
「…………頼む、マジで」
「うふふふふ」

 ハメられた。
やっぱりそんな夢見たりしてなかったんだ。それを何を焦ったのか変なこと口走っちまってさ。
ああ、駄目だ。なんてこった。家の外でこんな風になったの一度も無いのにさ!
どうしてだ。どうしてこんな風になっちまってるんだ?

「もう七日目ですもの。本格的に旦那様の体温が恋しくなるのは当然だったりするでござんしょ?」
「べ、べべべ別に七日ぐらいじゃそんなになったりしねーよ!」
「七日ぐらい? では、もう少し離れればなっちゃったりしますの?」
「ち、違う! そういう意味じゃない!」
「ではどういう意味で?」
「あ、いや、だから。時間の問題じゃなくてだな、その……」
「あ~、なるほど。そういうことですの」
「どういう意味だよ。説明もしてねーのに納得すんじゃねー」
「あら。時間の問題でなければ、離れるということ自体が寂しいと言う意味ざんしょ?」
「ちっがーうっ!」
「あらあら。朝からそんなに怒っては血圧上がっちゃいますわ」
「お、お前が怒らせてんだろうが……」

 普段は表情を余り崩したりしないくせに、こっちに来てからやたら表情が豊かになった……というと少し違うけど。
腕は立つけどちょっと変わり者、程度に思ってたのが嘘みたいだ。
うぅ……帰ったら対応を考えなきゃな。
こんなのに振り回されてちゃ、家でも仕事先でも心休まるところがなくなっちまうよ。
ったく。なんでアタシの周りにはこんなヤツばっか集まんだよ。
その筆頭は勿論、なのはだけどさ。
……なのは、か。
なのは。どうしてるだろうなぁ。
こっちとあっちじゃ時間が違うから、今どうしてるか分からないけど。
ちゃんとしてるだろうか。起きれてるか、朝飯は食ったか。家の中は滅茶苦茶になってやしないか。

「…………はぁ」
「どうしましたの? どこかお加減でも」
「別に。ほれ、そろそろフーガを迎えに行くぞ。朝ごはんの準備もあるしさ」
「了解ですわ」

 かぶりを振ってなのはを追い出す。
朝からこんな調子じゃ一日持たねーや。
そんなに気になるなら、こんな所でヤキモキしてる間にさっさと仕事を片付けりゃ良い。
気合一つ。腰を上げると朝食の準備に取り掛かった。


 


 新婚なの! 7-7 (2) >


 

|

« リンク、とか | トップページ | 新婚なの! 7-7 (2) »

新婚なの!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« リンク、とか | トップページ | 新婚なの! 7-7 (2) »