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新婚なの! 7-6 (3)

「ヴィータさん。こっちですわ」
「もう見えてるって。そんで足跡はここまでか?」
「そうみたいだ。ここらでプッツリと痕跡が途絶えてる」
「ふーむ。そりゃ奇妙だな」
「ここで狩られて別の場所へ持ち去ったのでは?」
「にしちゃ綺麗だ」
「初めから反応が弱かったしよ。途中で捕まえて、ここでご馳走したかもしんないぞ?」
「だったら足跡が違うだろ?」
「うーん」

 二人は草も腰の高さ程もなくなった開けた場所に立っていた。
周囲の木の高さも知らないうちに見慣れた大きさになっている。まだそれ程北上してないんだけどな。
そんな見渡しの良い場所に立っている二人の足元には、"何もない"。
銀棒の反応もここいらが一番強い。
と言うことは、ここが最後なのだろうけど、走ったせいで何かを見落としたのかもしれない。
ここで途切れてると分かっただけで良しとし、来た道を戻ることにする。

「そういやヴィータ。なにミスったったんだ?」
「なにがさ」
「さっき念話でミスったって言ったじゃないか。心配したんだぞ」
「ああ、あれな。実はさ、こういうの。知ってるだろ?」

 ポーチからカートリッジを取り出す。
なのはとフェイトが使ってた(今はアタシ達も使ってるけど)口径が大き目のヤツより一回り小さい。
面倒な言い方したけど、昔アタシ達が使ってた小さいのと大きさは同じぐらいだ。中に込められた量と質は段ちだけど。
その込められた魔力で簡単な魔法を使うことが出来る。
デバイスを介さずとも、使えるぐらいのごく簡単なヤツ。
例えば、今みたいにただ爆発させて目晦ましにするのから、チャージなしの射撃魔法とか。威力は当然ないけど、咄嗟の時なんかに。
そんなに使いはしないけど、持ってると便利って程度だ。

「ああ、知ってる。俺は使わないけどな」
「私もですわ」
「これ。デバイスに詰める以外に使い方があるんだけどさ。それが不発だったの」
「不発? そんなことあるのか?」
「少なくともアタシは知らない。割と長いけどこんなの初めてだ」
「帰ったら文句言った方が良いですわよ」
「そうする。これがデバイスに入ってたらと思うと気持ち悪い」

 不発だったカートリッジはメンテにほうって渡す。
そういやベルカ式なのにカートリッジ使わないって言ったな。女版ザフィーラみたいなもんか。
……そうだったか? ザフィーラってどうだったっけ。

「話はそんだけ。じゃ、戻るぞ」
「はいよ。しっかし、カートリッジ使いも大変だな」
「別に給料から引かれる訳ではないのでしょ?」
「そーいう意味じゃねーよ。暴発事故とかもあったりするんだろってこと」
「ベルカ衰退の原因の一つだな。まあ、長年使っててちょいと油断があったってことだ」
「勘弁してくださいましね」
「(ヴィータで長年ってどういうことだろう?)」
「この仕事が終わったらしっかりメンテナンスして貰うことにする」
「そうしてくださいな。任務中の大怪我で再起不能、なんてのは見たくありませんもの」
「……肝に銘じとく」
 
 
 
 
 
「な~んも手がかりなかったな」
「昨日までが順調すぎましたのよ。我慢弱い人ですわね」
「……それもそうだな。こんなけ広いジャングルでペット見つけろってのがさ、無理な話だもん」
「手掛かりがないってのが気になるけど。まあ、そういうこった」

 あの後、来た道を戻ったわけだけど、結局目ぼしい痕跡は何も見つからなかった。
銀棒には登録した、というか予め覚えさせた魔力しか反応しないから、それ以外のことは分かんないし。
何かに連れられて(それならまず死んでるけど)移動したのか、足跡が消えてしまっているのか。それの区別すらつかない。
兎に角、あの辺りが終点なのは分かったから、明日も同じような場所を探すことになるけど……多分見つからないだろ。
どのくらい材料を集めりゃ納得してくれるだろうか。
その辺り、根気が必要になるかもな。"いない"ってのを証明するのは難しいぞ。

「仕事の話はまた後で。夕ご飯が出来たぞー」
「ヴィータ。今日の晩ご飯はなんだ?」
「匂いで分かんねーか? カレーだ、カレー」
「おおー! カレーだー!」
「……具が大きいですのね」
「なんだ。小さいのが良かったのか」
「なに言ってんだ。大きい方が豪華な感じがして良いじゃないか。ちみっちゃいのが入ってるのなんざレトルトだけで十分だ!」
「ヴィータさんが作ったのですもの。不満なんてこれっぽっちの欠片ほどもありませんですのことよ」
「だったら黙って食えよ。そいじゃ、いっただきまーす!」
「……頂きます」

 アタシが作ったと言っても半分レトルトだけどな。
そのレトルトの具が小さかったのと、明日のことも考えて量を増やしたかったから手を加えたんだけど。
メンテの言うとおり、ちょっと大きかったかもしれない。
普通家で使うような大鍋より一回り大きいので作ったもんだから、それに合わせてる内に段々大きくなっちまったというか。
そんなカレーと大き目の具にご機嫌なフーガと、すっかりいつものポーカーフェイスなメンテ。
アタシも一歩遅れて席に着き、スプーンでカレーをすくった。

「…………う~」
「どうした、ガジでもあったか?」
「違いますわ。きっと辛かったのでございましょ」
「そ、そんなに辛かったか? レトルトそのままなんだけどよ」
「な、なんつーか……これ。いや、かなり辛い、です」
「そんな事ありませんわ。私としてはもう少し辛くても良いぐらいで」
「味見してるときにちっとは辛いと思ったけど……わりぃ、ジャガイモ潰してくれ」
「や、やだよ。せっかく大きめに切ってあるのにさ」
「だったら我慢して食べることですわね」
「くぅ~……ひぃ」

 意気揚々とカレーを口に運ぶが、その一口目でピタリと止まってしまう。
辛いか?と聞いたのは、その額と鼻の頭にみるみる玉のような汗が噴出し、顎を伝ってポタポタと滴り落ちたから。
舌を出し、会話の合間にヒーヒー、フーフーと吸ったり吐いたりして、なんとか凌ごうとしている。
そんなに辛くて仕方ないくせに、具を潰すのはそれを上回ったらしく、珍しく根性を出して二口目を頬張った。

「おい。肘着いて食うな。こっち来てからずっと言ってるだろ」
「わ~ってるよぉ。ひぃー」
「メンテ。必要以上に弄繰り回すな。見っとも無い」
「……大きいんですもの」
「ったく」

 やはり根性だけでは何ともならないのか、テーブルに肘を着いてジッとカレーと睨めっこを始める。
思わずそういう姿勢をとったのかもしれないが、行儀が悪いことには違いない。
厳しく言うと涙目でだらしなく舌を出しながらも姿勢を戻した。
こうして叱られている時は、大概ほくそ笑んでるのは、スプーンの端を持って湯船でもかき混ぜるかのようにルーの中をグルグルしていた。
これのほうが行儀悪さは上だ。
注意すると、少しだけ口を尖らせながら未練がましくこちらを見る。
そんな珍しい表情をされても作ってしまったものは仕方ない。

「ふふふ。普段もこうなんですの?」
「普段? ああ、なのはは別に大丈夫だぞ。それ以外が鬱陶しいけ―――って何言わせんだよ」
「別に。いま、とっても嬉しそうな顔なさってましたわよ?」
「う、嬉しそう!? ば、バカ言うな、ばか!」
「うれひそうって言うか、ちょっと自慢げらったじゃれーか。ひー」
「辛くて喋れねーなら黙ってろ! ルーを口に流し込むぞ!」
「カレーは飲み物と聞きますものね。レッツチャレンジ!でござりまする」
「ふざふぇんなっ!」
「口に物入れて大声出すな!(ゴチン」
「いへぇーよ~」

 アタシに平穏な食事は戻ってこないのだろうか。


 


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