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新婚なの! 7-8 (2)

「どうやらこれで帰れそうだな」
「未だに帰ってこないところを見ますと、相当揉めてますのかしら」
「……まあ、大事なペットのことだかんな。諦めもつかないんだろうよ」
「全く迷惑な話ですわね、そのペットさんは」

 全員でお昼ご飯を食べた後、航行隊の連中も交えて明日の打ち合わせをした。と言っても確認を繰り返すぐらいしかすることないけど。
当然そんなものは直ぐに終わってしまい、時間を持て余したアタシ達は、暇つぶしにフーガが持ち込んだゲームでもして遊んだ。
こんな暑苦しいジャングル。その真ん中を流れる河の辺でゲームをするなんて……何という無駄。
アタシはゲームするなんて久しぶりだし、最新らしいモノにはさっぱりついて行けれない。
結局アタシとメンテは見るばかりで、フーガと航行隊の連中ばかりが遊んでいた。
コイツ等。こっちに来てからずっとこれで遊んでやがったな。
これは報告だ。フェイトに報告してやらなければいけない。減俸ものだ。
仕方なくアタシは一人で外の見張りしたり、晩ご飯の献立考えたりして時間を潰しているうちに日は暮れていった。
お日様がジャングルの向こうに沈んでいくに連れ、肌に触れる空気はひんやりと冷たく、昼間の暑さが嘘のよう。
川向こうがハッキリとしなくなり、背後に控える木々の間も段々と見えづらくなる。
夜になれば大きな月が顔を出して辺りを照らしてくれるんだけど、そうなるまでの間。
逢魔が時っていうんだっけ。この時間帯が一番危ない。
完全に落ちきってしまう前に、メンテが中から出てきてくれた。
今まで何してたんだと聞けば「黙って後ろから眺めていた」ときやがる。
……言っちゃ悪いが、すげープレッシャーじゃなかったんだろうか。
しかし、その中でも敢えてプレイを続ける連中も連中だ。余程面白いんだろう。
うーむ。帰ったら何か新しいのでも買ってみるか。なのはもアレで結構ゲーム好きだしさ。

「でも、私はもう少しここに居ても良いですけれどね」
「あれ? お前も帰りたがってたんじゃなかったか?」
「記憶に御座いません。きっと帰れるなら、という消極的ではあったかもしれなかったりでしょうけど」
「自分のことなのに何つー。まあ、どっちにしろ明日になってみないと分かんねーからさ」
「そうですわん」

 夕飯時になっても連絡に行ったヤツは帰ってこない。
やはり「消えた理由」ってので揉めてるんだろうか。それとも別の理由……根本的に。
どっちにしろ素人のアタシ等じゃここらが限界のような気がする。
ある程度、過去のものじゃない、実地のデータがあるんだから、改めて隊員を派遣した方が良いだろ。
一匹確保、一匹死亡確認。上出来だろ、素人が一週間程度でこれだけ出来れば。

「住めば都と申しますけど、それを実感しつつあるところですから」
「快適だしな。思ったよりってレベルだけど。そんでも都いうほどじゃねーだろ」
「うふ。好きあった方と一緒であれば、という注釈つきですけれどね?」
「……誰と誰が好きあってるって?」
「やだ。怖い顔なさらないで」

 ここでの生活も慣れつつはあるが、それでも住みたいと思うには程遠い。
ここはアタシが直接フェイトに掛け合ったほうが良かったろうか。
いや、任務の詳細に関わるかもしれないし、それが出来るなら初めから任務の核心部分を説明してくれるだろうし。
やっぱりここはジックリ待つか。
フェイトを無用に困らせるのは忍びない。

「下手したら明日も出かけなきゃいけないかもしんないからな。早く寝ろよ」
「ええ。ヴィータさんが寝かせてくれるのなら」
「アタシがいつお前の安眠を妨害したっていうんだよ」
「うふ。ヴィータさんの存在自体が、でしちゃったりですわ」
「……はぁ。もう良いよ。んじゃな、お休みだ」
「お休みなさいませ。ヴィータ隊長」

 夕ご飯もアタシが用意することにした。何となしに期待されてる感があったから。
決して不味いとかそういう訳じゃないんだけどレーションばっかじゃな。味気ないっていうか……古い考え方かも。
ただ、作るといっても材料は持ち込んでないし現地で調達といっても、決して数は多くない。
その出来る範囲内で出来た夕ご飯は、思ったよりも見た目が豪華になった。
それだけでも満足だったんだけど、航行隊の連中は昼以上に喜んでたことで、もう一つ満足を得ることが出来た。
その反対に何故かフーガは不満げだったな。食べ始めるまでは。
テーブルに並べられた皿は次々に綺麗に片付いていって、アタシと小食らしいメンテは出遅れたせいで少し食べ損ねた。
アタシはいつもなのは相手に作ってるせいもあってか、ガツガツ食べる光景ってのが珍しくてさ。
あんな風にあっという間に片付いていく皿を見るのが楽しくって、つい。
ご馳走様の挨拶が終わっても食事中の和やかな雰囲気は続き、夕食の感想をああだこうだと言い合っていた。
これも飯を作った時の醍醐味だよなって。
ただ、作りなれた相手とは違う感想に、僅かばかりの違和感を覚えたけれど。
 
 
 
 
 
「結局、アレで根を上げたみたいだな」
「良かったですわね。ヴィータさん」
「なんでアタシの名前が出てくんだよ」

 次の日。
連絡が来ないのを良いことに、少し遅めに起床し、昨日同様に全員で朝ご飯を採ることにした。
わいわいと朝ご飯を食ってる最中に連絡があった。
どうやら今日中に引き上げて来いって話らしい。
航行隊は随分ぶー垂れてた。
朝ご飯を食ってる最中だからか、寧ろ喜べよとも思ったが、それほど文句を言うことだろうか。
それから荷物を整理し、寝所を片付けているうちにお日様はどんどん天辺を目指していき、いつの間にか昼になろうとしていた。
その時だ。アイツ等の不機嫌な理由が分かったのは。
「ヴィータ隊長、そろそろご飯の時間ですよね」なんて四人揃って言いやがる。
朝一番で帰って来いなんて連絡があったものだから、アイツら、今日一日はないものだと言う予想が外れたせいらしい。
そんでも実際片付け始めると中々進まず(どうして入っていたはずのものが一旦出すと中に入らなくなってしまうのか)結局お昼まで。
この分なら少なくとも昼ご飯には在りつける!ということで機嫌を持ち直したようだ。
そんなにアタシの料理を気に入ってくれたのかと。流石に悪い気はしない。
一旦作業を中止して、みんなでお昼ご飯を食べることにした。
昨日、そして朝同様。あっという間に目の前に並んだ皿を次々と片付けていく。
ジッとしているだけで汗が滴るような暑さの中、よくこれだけ食べるもんだと半ば呆れながら見てた。
嬉しかった反面。昨晩の夕ご飯どきの違和感が少しだけ大きくなっていた。

 

 

「この分なら夕飯時までには帰れそうだな」
「先ほどから心ここにあらず、って感じですわね。何か気になることでもあるんですかい?」
「なんだよヴィータ。見たいテレビ番組でもあるのか?」
「……はぁ。本当に空気読めませんのね。テレビぐらいなら録画すれば宜しいこっちゃですがな」
「へ、へんだ。オレが珍しく空気を読んだらそれはそれで不気味がるくせによ」
「ええ。不気味ですわ。今みたいに物分りが良いのも」
「く、くぅ~! で、でも良いんだ。これで帰ればお前と毎日顔を引っ付き合わせる日々にさよなら出来るんだからよ」
「同じ部署だけどな」
「……ヴィータも意地悪だ」
「なら意地悪ついでにもっとしてやろうか?」
「いいえ、結構です」
「それじゃ押し売りセールスを断れませんわよ」

 片付けも終わり、アタシたちは一足先に本局へ帰った。
久しぶりに踏みしめる硬い床は、ほんの数日振りだと言うのにやけに懐かしく感じた。
整然と真っ直ぐに伸びる通路に白い壁。程よく効いた空調は快適だけど何か物足りない、そんな感じだ。
だからと言ってもう一度あそこへ戻るかと言われれば勘弁なのだけれど。

「装備の殆どはあっちが片付けてくれるってんだから楽でいいよな」
「向こうでは大変でしたけれども、荷物が少ないと言うのは助かりますわね、ホント」
「さて。家に帰るとするか」
「「了解です」」

 偽装してるんだから、元々装備品は向こう持ち。
地上部隊だと思われてるのは、実は次元航行隊だなんて夢にも思ってないだろうと思う。
片づけを代わりにやってくれるとなれば、疑う暇よりも手間が省けたと喜ぶだろう。
その予想は当たっていて、二人の頭の中はすっかり帰宅モードだった。
帰るまでが任務です、なんて言うつもりはないけど、毎回締めの言葉には困る。
だけど何も言わないわけにもいかなくて、色々考えた結果。この辺りに落ち着いた。
それはアタシだって例外じゃないからだ。
シンプルなのが良いんだ。

「あ、そうだ」
「まだ何かあるんじゃないだろーな、ヴィータ」
「これ。二人ともサインして事務に出しとけ。明日は休みだ」
「マジでか! 休みくれんの!?」
「急な仕事だったしな。このぐらいの融通は利かせてやる」
「では有難く受け取っておきますわ。それではヴィータさん。明日はたっぷり旦那様に甘えてくださいましね」
「ヴィータもしっかり休めよ」
「うっせ。バカ言ってないでさっさと出してこないと取り消すぞ」

 各自の端末にデータを送った。これにサインして事務に出しとけば明日は休みだ。
フェイトからどういう風に手を回したか知らないけど、アタシの了解印つきで休暇をくれる手続きらしい。
ある程度のランクを超えた任務をこなすとこういうのがあるんだっけか……どうせ関係ないと覚えてないんだよなぁ。
休暇の話を聞いたフーガは、どこにそんな元気が残ってたんだ、あと一日向こうに居ろと言うほどの勢いで走っていく。
メンテは軽く会釈すると、気持ち早足で帰っていった。何だかんだ言って家に帰るのが楽しみだったんだろう。
……さて。アタシも帰るとするか。

「あ、しまった。あいつ等に口止めしとくの忘れた」

 この六日間、何してたかって口裏合わせるのやっておかなくちゃいけなかったんだ。
仕方ない。明日中にメールで連絡しておくか。

「う、ん?」

 口裏合わせのこと、フェイトに確認入れておいた方が良いかと思案していると、メンテが踵を返しこっちに向かってくるのが見えた。
いつもの涼しい顔だけれど……なにか忘れモンでもあったか?
立ち去る際よりは少しだけゆっくり。上体を揺らしながら近づいてくると、ぴったり、二歩ほど手前で止まり屈んで見せた。
ずいっと顔を覗き込ませる行為に、思わず顔を背ける。

「……何か忘れもんか?」
「ええ。一つ、言い忘れた事がありまして」
「一応聞いてやる」
「では。おほん。指輪、外してしまいましたのね。片付けているときに?」
「……ま、まあな」
「せっかく。ほんの四日ばかりでしたけれど慣らしをしましたのに」
「良いだろ、別に。もうちょっとちゃんとしてからさ、するつもりなんだ。悪いけどほっといてくれ」
「久しぶりに帰るのですから、今日がベストなタイミングだと思うのですけど。初めにそう申しませんでしたかしら」
「……休暇取り消されたくなかったら黙って帰れ」
「差し出がましいようでしたわね。それでは、また」

 表情を変えぬまま、すくっと背筋を伸ばすとお凸がくっ付きそうなほど深々とお辞儀をする。
踵を返すその動作は局で訓練されたものではなく、モデルか何かを彷彿させた。
戻ってきた時と同じように、ゆったりとした足取りで帰っていく。
その背中は満足そうにも、また不満そうにも見える。どういう理由でゆっくり歩いているのか分からない。
端末を弄ってる。今度こそ帰ってくみたいだけど……油断は禁物だ。
しかし、こっそり指から外したはずなのによく気がついたな。
抜け目ないっていうのが遺憾なく発揮されたってところか。
ちぇっ。頼りになるのかならないのか。自分に向けられると迷惑千万だな、こういうのはさ。

「さて。アタシも帰るとするか」

 端末を取り出し、休暇の手続き用データの打ち込みをしながら家路に着く。
意識しているわけじゃない。そのはずなのに、自然と足取りは軽く、速くなっていた。


 


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