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新婚なの! 8-2 (4)

「へへーん。これでもう出来ないね」
「む、むぅ。油断した」
「油断大敵あめあられ、だよ」
「くっそ~。今日は上手くいきそうだったのによ」
「えへへへ。きっとダメだと思うなぁ」
「あにがさ」
「だって。ヴィータちゃん、好きな人の前では油断しまくり、だよ?」
「す、好きだぁ!? お前、どういう意味だよ!」
「意味も何も、言葉どおり。はやてちゃんと一緒にいるのを見てれば一目瞭然」
「そ、そりゃはやての前ってなら異論はねーけどさ。どうして"好きな人"って括りなんだよ。はやてと~で良いじゃんか」
「だって」
「だってじゃない」
「私の前でもそーなんだよね? うん、そうだよ」
「はぁっ!? 自惚れんのもいい加減にしろよ! いつ、アタシがお前の前で油断したよ!」
「いま自分で言ったじゃない。むぅ、油断した、って」
「あっ……」
「認めるんだよね~? 油断したって」
「……ま、まあな」

 油断した上に迂闊だとは。くぅ、こんなの命がいくらあっても足りないぜ。

「なぁ、放せって。まだ途中なんだぞ」
「途中なのに余計なことしたのは、どこの誰だったかなぁ?」
「そ、それはお前がはぐらかして中々喋んないからだろうが」
「えー。私のせいなの?」
「そうだ」
「う~ん……分かった。じゃあ言うね。ヴィータちゃんがそんなに聞きたいって言うんなら」
「な、なんだよ。その言い方は」

 風呂上り。プリンやアイスを食べた後だというのに、なのはの体温はまだ高い。
頭に響く胸の鼓動は、だんだんとそのリズムを早くしていった。
なんだろう、そんなに恥ずかしいことなのか。
腕に篭る力と、鼓動の早さ。絶対に見られたくない顔なのだろう。
人のは見たがるくせに、自分のは見せようとしない。不公平だと思わないこともないが、今は黙っておく。

「あのね。実は……怒らないでくれる?」
「さっきと聞いてること違うじゃねーか。まあ、努力はするけどよ」
「うん、えっとね。その……ヴィータちゃんが使ってた目覚ましそのままに起きたんだよ」
「だったら時間あるじゃねーか」
「うん。それで全部の準備を終わらせてね? えっと、ヴィータちゃんに魔法、かけてたんだ」
「魔法? なんのさ。呪いの類か」
「しっつれいだなぁ。私だってれっきとした魔導師なんだから」
「割と好きな癖に……まあ良いや」
「魔法ね。首が痛いって言ってたから、治療魔法を、少し」
「お、お前! それじゃ、その時間がなかったってのは、その」
「うん。ギリギリまでしてたから朝ごはんの時間、なくなっちゃったの」

 声の調子は変わりなく、いつものように軽めに冗談っぽく。
でも、俄かになのはの匂いが強くなったように思う。体温が更に上がり、鼓動も早くなる。
照れてるんだろうことは明白だ。
そんなに恥かしかったのか。

「じゃあ、あのフワフワする感じ。お前が魔法かけててくれたからなのか」
「分かっちゃった? 首の痛みは取れたみたいだけど筋肉痛は取れなかったみたいだし……もう少し勉強が必要みたいだね」
「む、むぐぐ……!」
「どうしたの? 苦しい?」
「ちげーよ。ちょっとばかりだな、怒ってんだ」
「怒らないって言ったのに」
「努力するとは言ったけどな。怒らないとは言ってない」

 さっき考えてた通りだ。
確かに感謝してる。人を想っての――それが教導だったりフェイトのことだったり――ことで、悪さをしているわけじゃない。
だけど、そのために省みない態度が嫌なんだ。
その好意を有難く思っていると、なのははどんどん進んでいってしまう。
だから。こっちが遠慮しなくちゃならない。
自分のはただの天邪鬼っていうか、まあそんなところだけど、フェイトなんかはそうだと思う。
そうやって断った分。人を心配するいうか、そういうのを半分でも自分に向けて欲しい。
本来、自身に向けるはずのモノが自分に向いているのがイヤなんだ。
そのせいで、なのはの身が削れるのがイヤなんだ。

「教導の仕事、どういうのかアタシだって少しだけ分かってる。朝ご飯抜くなんざ問題外だ!」
「う、うぅ。だから、その」
「感謝してる。それが悪いとは言いたくない。だからな、それの半分、いや四分の一でも良いから自分を心配しろっての!」
「……はーい」
「それで若しもの事があったらどうすんだよ……」
「だったらね。それは私だって思うことだよ」
「何がさ」

 腕に篭る力は相変わらずだが、口調の変化に伴って違う意味を持つように感じる。

「ヴィータちゃんだって、自分のこと放っておいて人の心配ばっかりしてるよ」
「なっ! ア、アタシはそんなことねーぞ。お前みたいに人のことばっか心配しねーもん」
「それって本気で言ってるの? だったら、自覚が足りないね。私と同じで」
「お、お前と一緒にすんじゃねーよ……」
「任務とかでもよく自分だけ残ったり、危険なところに一番に突っ込んだりしてない?」
「き、切り込み隊長だしよ。ランクに応じた役割があるんだから、好き好んでしてるわけじゃねーし……」
「そうかな。私の耳にはそういう風に聞こえてこないよ」
「い、いっぺん耳鼻科にでも行ったらどうだ」
「そういう評判だってこと。ヴィータちゃんは頼りになるって」
「……ふ、ふーん」
「私。鼻高々だよ。私の奥さんはこんなに慕われてるんだって」
「そりゃ、ようござんしたね」
「でね。ヴィータちゃんが私を心配してくれてるように、私が……みんながヴィータちゃんのこと。心配してるって」
「けっ。心配性なこって」
「もちろん。一番心配してるのは私だよ。うん、はやてちゃんよりそう思ってる」
「ア、アタシは……ま、フェイトの次ぐらい、かな」
「えー。一番じゃないのー?」

 話している内に気が済んだのか、口調は柔らかなモノに戻っている。
それで冗談っぽさも含みだしたかに見える中で、はやての名前を出す。
前とは違い、自信がある。冗談としても、自分がはやてより心配してるんだって口に出来る。
それに対して応えることはしない、出来ない。
自分はフェイトの次だって。
それは気が引けるとか、そういうんじゃなくて。
単に恥ずかしいから。なのはみたいに自信たっぷりに言い切るのが。
こういうとき。勝手ながらフェイトの存在が身に沁みるぜ。
何ていうか……二番手でいられる。
なのはは自分を一番だって言ってくれるのに……卑怯者だな。

「良いだろ、別に。一番と二番がちゃんと居てくれてるんだからよ」
「それじゃフェイトちゃんも家に呼んじゃう? 居てくれるーなんて言うんなら」
「なんで自分家みたいに言うんだよ。言うならアタシの台詞だろうが」
「今は結婚してるんだから、私の家でもあるんだもん。ねぇ。ちゃんと一番だって言ってよ。アタシが一番心配してるんだぞーって」
「へん。やなこった」
「もうー。意地悪なんだから~」
「意地悪は相変わらずだって、知ってるだろ?」
「そうだね。素直じゃない意地悪ヴィータちゃ~ん」
「んぐう! だ、だから抱きつくなって言ってるだろ!」
「抱きつくのも相変わらずだって、知ってるでしょ?」

 だからこうやって。
観念したように、なのはの背中に手を回すんだって。知ってるんだ、なのはのヤツは。


 


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