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新婚なの! 8-1 (2)

「な、なんとか。近くのコンビニぐらいはいけそう、か?」

 このまま寝ていると、なのはが帰ってくるまでこのままで居てしまいそうだった。
それは幾らなんでも避けなければいけない。自分を奮い立たせ、何とか着替えを済まし家を出た。
昔、まだはやての足が完全に治る前。
バレないように魔法で地面から数ミリ浮かせて、いかにも歩いてる風に見せてた時がある。
分かりやすいようにいうと、某青たぬきロボット方式だ。
その方法を使っても良かったかもしれないけど、こっちの世界は市街地での魔法使用は厳しく制限されている。
バレなければ良いという発想は民間人のもので、自分のように局務めのモノには厳禁だ。
便利な方法があるのに、それを使うことが出来ない。なんと苦痛なことか。
二つの感情が頭の中でせめぎあう中、軋む身体を引きずってなんとかコンビニへたどり着いた。

「ぐぐぐ……この時間じゃ流石に遅いかぁ」

 全てに手間取り、コンビニに着いたのは午後一時をまわっていた。
昼時の混雑に巻き込まれなかったのは大いに助かったけど、その代わりに商品の選択権を失ってしまった。
棚はがらんどうとしているのに、店内の明かりが煌々と照らしている。
その対比が、がらんどうな棚を余計に寂しく見せ、哀愁すら漂わせていた。
マイナス思考はよくない。
ここは逆に選ぶ手間を省いてくれたと考えよう。
色々考えて店内をウロウロと歩き回る元気は残されていなかったから、コレで良いじゃないか。
さっさと必要なものだけ買い物をして帰ることにしよう。

「ありがとうございましたー」

 店員の元気のいい挨拶に、足と同じように軋む手を振って応える。
久しぶりだ。自動ドアの有り難味が身に沁みたのは。ああ、素晴らしい。文明の勝利だ。
少し大きめの袋をぶら下げ、素晴らしく澄み切った青空に相応しいお天道様の、さんさんと降り注ぐ陽気を背に家路に着いた。
 
 
 
 
 
「相変わらずクドイなぁ。なんで日本とあんま変わんないんだろ……」

 空になった器を前に、ため息を吐く。
別に不味かったわけじゃない。いや、美味い。量も多くてバリエーションも豊富。
しかし余り量を食べられる味じゃない、というのは個人的な感想。
はやてもなのはも余り濃い目の味は好きじゃないので、自然と自分もそういう環境になる。
教えてくれたのははやて。作る相手はなのは。誰も濃い目の味を求めない。

「おにぎりがあるのは有難いけどな。やっぱおにぎりだろ」

 おにぎりは美味い。そりゃ手作りの塩にぎりに敵うモノはないと思いながらも、こういうのも好きだ。
突飛なものもあるけれど、大よそは日本で見かけるものと変わらず、こちらへ越してきても困ることはなかった。
一体日本とミッドチルダにはどういう繋がりがあるんだろう。
ユーノ辺りにでも聞けば調べてくれるだろうか、などと考えながらゴミを片付ける。

「さてと。ゴミを捨てて、残りを冷蔵庫にしまうとするか」

 まずは残りを冷蔵庫へ片付ける。
必要なものだけ買って帰る――そのはずだったのに、手には大きめのプリンアラモードとアイスが乗っていた。
上手いものである。ディスプレイだけで売り上げが変化するというのも強ち嘘ではなさそうだ。
弁当とおにぎりを籠に入れ、会計を済まそうとしていた自分の目に飛び込んできたモノ。
こういうところ。甘いと言われる所以だろうか。
気づいたときには、弁当とおにぎり。プリンにアイスが会計されていた。

「いや、これはアタシようだ。そう、自分用なんだ」

 プリンをしまいながら冷蔵庫に。アイスをしまいながら冷凍庫に。
言い訳するように独り言をつぶやいて、少しだけ彩を取り戻した冷凍庫の戸を閉めた。
次はゴミ箱。
なのはがゴミを捨ててないかも知れないことを頭の隅に置き、蓋を開けた。

「……なんだ、これ」

 中はさっきのコンビニの商品棚のごとくがらんどうとしていた。
底の方にいくらか空のパックやら袋が散見出来るが……一週間経ったゴミ箱とは思えない閑古鳥の鳴きっぷりだ。
冷凍食品やらの類を退けてみると、そこにはパウチが転がっていた。当然空っぽ。
冷凍庫を開けたとき気づかなかったが、これは余りモノなんかを冷凍しておいたヤツだ。
別にそれを使ったことは問題ない。
ただ、それ以外にゴミが見当たらないのが気になる。
上に乗っていた空袋、一袋一食と考えると大体の数が合う。

「なにやってんだ、なのはのヤツ」

 ゴミを捨て蓋を閉める。
予想は外れていないだろう。面白くない方向に。
黙って閉まったゴミ箱を見たところで何も解決するわけでもない。
なのはが帰ってくるまでに出来ることをしておくべきなんじゃないか。
もう、陽は傾いていくばかりだ。

「さて。洗濯物でも済ませておくか」

 重い腰を上げ、今度は澄み切った青空と燦燦と降り注ぐお天道様を有難く思いながら脱衣所に向かった。
ワレながら勝手なものだと思いながら。
 
 
 
 
 
「ただいまー、ヴィータちゃん♪」
「おう。おかえりだ、なのは」

 洗濯物も取り込み、しっかり出来ているようで途中で投げ出した感満載な部屋を掃除。
遅いだろうと思いながらも、今日付けのチラシをチェックしながら夕ご飯のメニューを考えていると、聞きなれた電子音がした。
なのはがセキュリティーを解いたのを知らせる合図。
帰ってくる前に連絡しろと、口を酸っぱく言っているがそれでも忘れる事はある。
それの理由が大体のところ不愉快でないため、なあなあで終わってしまい、それがダメだと言う自覚はあるんだけど……

「今日はヴィータちゃんがいるからって早く帰ってきちゃった」
「あ、あっそ」
「仕事はちゃんと終わらせてきたよ?」
「あったりめーだ、そんなの。そうじゃなきゃ叩き返すとこだ」
「えへへー。ヴィータちゃんあったかーい~」

 玄関で出迎えられたなのはは、アタシを見るなりニヘラっと表情を崩し、喋りながらもどかしそうに靴を脱ぐ。
照れるようなことを平気でいうものだから、思わず顔を背け注意を忘れてしまう。
だけど今日は別。直ぐに靴を出さなきゃいけないから。
そして、次なにを言われるか分かっているので、自分へのフォローは万全に。
案の定、脱ぎ散らかした靴を揃えもせずに抱きつくなのは。
引っぺがしてやろうかと思ったけれど、思いのほかその手と頬は冷たく、仕方なくそのままリビングまで一緒にした。

「今日の夕ご飯、どうする?」
「そのことだけどよ。冷蔵庫、空っぽだな」
「そ、そうだったかな」
「ああ。全然買い物とか行ってなかったみたいだな。冷凍庫まで綺麗に片付いてたぞ」
「えへへ」
「笑い事じゃねーっての。そんで、夕ご飯の話だけどな」
「う、うん」
「これから材料買いに行く。帰ってきたばっかで悪いけどさ」
「―――え? 今から?」
「ああ。昼間はさ、筋肉痛とかで殆ど動けなくてよ。そんで、今なら大丈夫だから、その」
「んっふふふー。なるほどねー、ヴィータちゃん」
「な、なんだよ、その顔! ホントなんだかんな!」
「はーい、分かりましたー」
「むっかつくなぁ、その態度」

 玄関に着くまでに外出用の服は用意しておいた。
横でニヤニヤと下品に表情を崩すなのはを無視してそれらを着込み、手を引いて家を出た。


 


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