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新婚なの! 8-2 (3)

「ねぇ、ヴィータちゃん」
「なんだよ」
「明日からも遅かったりする?」
「ああ、どうだろうな。一週間空けてたわけだから……ちっとは遅くなるかもしんない」
「そっか。私は今日と同じぐらいだと思う」
「ふーん。今回の連中は出来が良いみたいだな」
「そーだね。特にすることがなくて私としては物足りないかな?」
「ふぅん」

 そんなこと言ってるくせに全然残念そうじゃない。
訓練校時代から所属先での教官による指導。自分達の関わった育てるってことが、よく浸透している証だからか。
錬度が高いとか、管理局としての戦力って意味もあるけど重要なのはそこじゃない。
それだけ生き残る可能性が高いってこと。それだけ一歩前に進めるってこと。
死んじまうのは何にもならない。
そうならないよう、思いを込めて日々取り組んでるんだ。
その成果の一端を目の当たりにすれば、嬉しくなって当然だ。
……まあ、楽だって思ってるだろうことも否定しないけど。

「あのね。今日の買い物した分だけじゃ少し足りないでしょ?」
「少しどころか全くな。ホント間に合わせぐらいだし。なんだ、明日代わりに行ってきてくれるのか?」
「うん。だから、出来れば一緒に行きたいなって」
「う~ん……残念だけど無理かもな。もしタイミングが良けりゃ早めに連絡すっから」
「は~い」

 なのはの気持ちが触る髪から伝わってくる。
口ではどう言ったって、そういうのが隠し切れないところ。お前ら似てるんだよ。自覚ないんだろうけどさ。

「でも作ってくれるならそれで良いよ~」
「……あ~、はいはい。具合が良けりゃ作ってやるよ」
「えへへ~。嬉しいなぁっと。久しぶりのヴィータちゃんのご飯~」

 ご飯ご飯と口にする。
これだけ喜ばれりゃ悪い気はしない。
こんな事なら朝起きてだな―――あっ、そういやぁ……

「そういやよ、なのは。お前に一個聞きたかったことあったんだ」
「なぁに?」
「朝ごはん、何食ったんだ?」
「朝ごはん? なんだったかなぁ」
「食ってないんだな」
「……えへへ」
「どうしてそういう事すんだ。言っとくけどな、向こうに行ってから食ったとか嘘つくなよ」
「う、うぅ……そ、そんなこと言うつもりなんだからね」
「あのな。そうだって白状してるようなもんじゃねーか。分かってんのか?」
「……なんでもお見通しなんだね」
「一応付き合い長いからな。それに、普通に考えてだ。普段より遅く出てそんな時間あるわけねーだろ」
「じゃ、じゃあ! 途中で軽食買ったよ。うん」
「あのな。じゃあ、って言い方おかしいだろ。それに、お前の仕事は体力使うんだ。軽食とかで――」
「……ごめん、ヴィータちゃん」
「アタシに謝るな。自分のことだぞ。仕事熱心なのは良いけどな。もうちっと身体のことも考えろ。
 それにだ。お前がそんな調子じゃ指導を受ける方も困るだろ。向こうは必死なんだぞ。それに応えてやるって言ってたじゃ……」

 黙ってしまった。
別に怒るつもりではなかった。ただ、純粋に心配で、熱が篭るあまり己を省みなくなる態度が怖いんだ。
なにより体調管理を含め、自分のことがしっかりコントロール出来ないヤツに勤まる仕事じゃない。
教導隊に入ってからは自覚も芽生え、そういう意味での無茶はなくなったが一本気なところに変わりはない。
悪く言えば視野が狭くなりがち、ということ。
そういう無茶の絶えないなのはだから、アタシとフェイトの悩みは尽きない。
今は朝、昼、夜とどうしてるのか把握しやすくなったから、それに悩まされることも少なくはなったけれど。
少なくなっただけで、心配の種が尽きたわけじゃない。

「……ん? 終わったのか」
「うん、終わり。これで纏めたらね」
「そっか。よし、次はアタシがやってやるよ」
「い、いいよ! うん、ヴィータちゃんは先に寝てて!」
「あのな。隣で髪の毛梳かしてたら気になるだろ」
「う、うーん。それじゃ」
「良いから後ろ向け。それと櫛だ。さっさとしろ」
「……はーい」

 髪を触らせろといったり、終わったら余所余所しくしたり。
さっきの話で気まずいと感じたのか、それとも何か感づかれたくないことでもあるのか。
このままでは眠れない。髪を梳くきながら同じように解きほぐしたい。
櫛を髪に通しながら、先ほどの会話を遡る。
朝ごはん、朝ごはんだ。

「おい、さっきの話だけどよ」
「な、なあに」
「なんで朝ご飯、食べなかったんだよ」
「え、えーっと」
「起きたのが遅かったのか? それなら、起こしてやれなかったの悪かったかなって」
「ち、違うよ。ちゃんと目覚ましかけて起きたもの」
「そう、だよな。アタシがいない間はちゃんとやってたんだろ?」
「う、う~ん。まあ、ね」
「だったらなんで」
「えっとね、なんていうか、その……。言い難いなぁ」
「言い難い? 怒られるようなことか」
「怒られないとは思うけど、え~っと」

 はっきりしない。でも、悪いことを誤魔化そうとしていないのは確かだが。
ここからでは髪の毛しか見えず、表情を窺い知ることは出来ない。だが、大体想像はつく。
付き合いは長い。口調とか、ちょっとした仕草とか。
普段、もう少し気をつければと思わないこともある。それはアタシも改善しなければならない点だ。

「気になるから言え」
「だって、恥ずかしいんだもん」
「恥ずかしい? 恥ずかしい理由で朝ごはん食べる時間なかったのか?」
「う、うん」
「余計気になるな……ああそうだ。梳くの、まだ時間かかるぞ」
「う、うーん……困ったなぁ」
「ほれほれ、言っちまえよ」
「ひゃんっ! もう、ヴィータちゃんったら!」
「気になんだもんよ、仕方ないじゃんか。言わないともっとするぞ」
「うひゃん、あっ、あん!」
「ほれほれ、どうだ」
「あ、ああん! や、やだったら~」
「いひひひ。いっつもの仕返しだ! そらそら」
「あん、あははは、ひゃん! も、もう! ヴィータちゃん!」
「しまった! むぎゅっ!」

 わき腹をくすぐっては、普段の仕返しをしていたが調子に乗りすぎたか。
楽しくて油断しちまったのか、腕を掴まれ、前に引きずり出されるとそのまま押し倒された。
毎度毎度の展開に、いい加減対処できても良さそうなものだがちっとも上手くいかない。
そんなに迂闊だろうかと、なのはの胸に押しつぶされながら考えた。


 


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