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2008年3月31日 (月)

新婚なの! 9-8

 

「ヴィータ。お風呂入っておいで」
「んー。分かった」

 以前のようにザフィーラ座椅子にもたれてノンビリとテレビを見ているヴィータ。
旦那様はどうしているかと言うと、大人しくシャマルと並んでソファーに座っています。
本当なら隣にくっ付いていたいところですが、幾ら座椅子本人に勧められ、長い付き合いになる仲だといっても流石に気が引けたからでした。
しかも、なのはの脳裏には人間型のザフィーラの姿もチラつくため、それも躊躇させる原因でした。
「詰まらんことを気にするんだな」というザフィーラと、「ザフィーラ分かってないわね」と思うシャマルなのでした。
そんな中。途中まで一緒にテレビを見ていたはやては、そろそろ時間ということで席を立ち、お風呂の準備。
それが整ったのでヴィータに勧めたところでした。

「よいしょっと。んじゃ先に失礼するわ」
「んもー。なんやの他人行儀に。あ、そや。久しぶりやから一緒に入ろか? な? うん、そうしよ」
「そーする? えへー、はやてと入るの久しぶ……」

 意気揚々と立ち上がるヴィータでしたが、そう言い掛けては、チラリとソファーへ視線をやります。
なのはは、如何にも今気がついたように振舞い、笑顔で手を振るだけでした。

「よーし。旦那様の許可も出たことやし、久しぶりに頭洗ったげるな?」
「お、おう」

 手を引かれて浴室へ向かうヴィータでしたが、直ぐにテレビへ視線を戻してしまったなのはが気になって仕方ありません。
本当に気にならないのか、気を使ってくれたのか。
さっきまでの態度からするに、普通に考えてはこう易々とはやてに譲りそうに無かったからです。
それでも、目の前のなのはは"許可"をくれた訳ですし、ここは大人しくはやてとのお風呂を楽しむべきだと気持ちを切り替えました。

「ヴィータ。着替え持ってきてる? あの鞄か?」
「そう。一応下着だけ。海鳴に帰る前に一回家に行くから。荷物少なくしたかったし」
「それもそか。普通こっちは日帰りコースやもんね……っと。それならもうちょい積極的に顔出してくれへーん?」
「うにににに。なるへくそーふるー」

 洗面所で服を脱いでは、ほっぺをムニムニされるヴィータ。
久しぶりのムニムニに手を重ねて、前もこうしてたなぁ、というヴィータに、はやてはそのまま続けました。

「そうそう、ヴィータ。その指輪、もういっぺん見せてくれへん? ああ、外さんでエエから」
「ど、どう? アタシさ、こういうの分かんないから」
「ふーん。随分とシンプルやね、うん。これはなのはちゃんが選んだんやったね?」
「そう。何だか加工が難しいとか何とか、お店の人が言ってた。ま、あんま色々付いてても仕事の邪魔だし、そうなるのイヤだからさ」
「せやね。なるべくそう言うのは排除したいわな。せっかくの結婚指輪なんやから。しっかし、それにしても」
「ん? どうしたのさ」
「あんときの話は笑ったわ、なのはちゃんってあない計画性の無い子やったかなぁって」
「ホ、ホントだって。アタシが金持ってなかったらどうする気だったんだよ、全く」

 ヴィータの左薬指に収まったままのシンプルな指輪を、表面を触ってみたり角度を変えたり、まじまじと見つめるはやて。
前に報告に来たとは然程興味を示さなかったのに、今日はどうしてしまったんだろう。とするヴィータに、視線を上げないまま聞きました。

「……なんやな、こない小さな手に指輪が収まってるの。改めて見てみたら不思議な気ぃして、な」
「そ、そか? アタシはもう慣れたっていうか」
「ふふふ。ああやってブツブツ文句言うてたのがつい先日みたいや思うのになぁ」
「そ、そうかな。もう2ヶ月近く経ってる気がしないでもないけど……う~ん」
「その馴染んだ指輪、大切にしや? くれた旦那さんと同じに」
「へ、へん。それはなのはに言っといてくれよ」
「照れない照れない。ホント、ヴィータは可愛らしい子やなぁ~。ぐいぐい~」

 顔を上げると同時に、頭を抱きこみ赤い頭をわしわしと撫でぐります。
かなり力が入ってしまってヴィータとしては痛いぐらいですが、その強さがはやての気持ちであるかのように感じられるのでした。

「さぁて。裸同士でいつまでもイチャイチャしとるのも旦那さんに悪いかね」
「あ、ああぅ。そうしてくれると有難いです」

 髪をクシャクシャにしたまま、いざお風呂へ入ろうとした時。ヴィータはあることに気がつきました。

「そういや寝巻き忘れた……」
「ふーむ。ちょいとした荷物減らしでなまかわしたらイカン言うことやね。どうする? シャマルにお願いするか?」
「どうだろ。家から家だし、一応引っかからないとは思うけどさ」
「まあ、出てから考えよか。アカンかったら探したげるし。ちゃ~んと捨ててあらへんよ、ヴィータの寝巻き」
「あ、そっか。アタシは持ってこなくて良かったんだ。ありがと、はやて。あ、でも、なのはの分……」
「なのはちゃんならシャマルと同じぐらいやない? 多分大丈夫やろ」
「う、うーん。そうするしかないかな」
「そうそう。ほれ、風邪ひいてまわん内に早う入ろな?」

 トントンと背中を押され、浴室へ入っていくヴィータ。
中には暖かな雰囲気満天さを演出するかのように湯気が立ち込め、今の我が家よりも一回り大きい湯船にはたっぷりとお湯が張られています。
くるくると髪を纏めている内にはやてにかけ湯をしてもらい、換わってかけ湯をしてあげてから、湯船に浸かります。
そのとき。先に入ったヴィータはとても自然に手を差し出しました。

「あっ、そっか。もう良いんだったよな。えへ、えへへへ」
「もう八年も前のことやのに。やっぱヴィータはエエ子やね。よしよし」
「う、ううん……」

 恥ずかしそうに俯くヴィータ。
こちらに越してくる以前にしなくなった、まだはやての足が不自由だった頃の名残。
どうして今のタイミングで出たのか。それは本人にも分かりませんが、はやては湯船に浸からずとも、とても暖かな気持ちになってのでした。

「ふぃ~。一番風呂は久しぶりや~。どうこう言う訳やないのに、なんや気持ちエエ気がするね~」
「うん。アタシも一番風呂は久しぶり」
「そうなんか? と言うことは何時もはなのはちゃんが一番風呂なん」
「うん。なのはは朝早いからさ。早く入れないとちっとも寝ないの。放っておくと遅くまで起きてたりするし」
「ふぅん。何時までもテレビ見てるとか? いや~、それはないと思うけど」
「あのさ。いつもって訳じゃないけど、仕事持って帰ってきたりして全然寝なくて。
 身体が資本の仕事してるくせによ、全然顧みなくって。人よりまず自分の心配しろって言っても聞かなくてさ。だから」
「ふぅ~ん。そうなん」
「いっつもいっつも人に心配かけてよ。あんなんで一人暮らししてた時のこと考えると、ホント寒気がす――ど、どうしたの、はやて」

 電灯の明かりを受けて、ゆらゆらと煌く水面を見つめながら、いつしか口調が変わっていくヴィータ。
その変化に、はやてはニヤニヤと口元が歪むのを抑えられません。
ハッと気づいた時に遅く、湯船に浸かっているにも関わらず、背筋に走る寒気に思わず後ずさりするヴィータでした。

「ふーん、ふ~ん。ヴィータってホンマお嫁さんしてるんやねぇ」
「そ、そうかな? いや、別にこれぐらいは何て言うか、その……」
「お嫁さんやのうてもする? そうやろか。まあ、本当になのはちゃんのことが好きなら当たり前かも知れへんけど」
「す、好きぃっ!? ど、どどどどうしてそう言う話になんのさ!」
「どうしてって。私はお友達やけど、そこまでしたれるか?って聞かれたらちょいと疑問やなぁ」
「は、はやてだって一緒に暮らしたらさ。思わずそうしちまうって。はやては優しいもん」
「そやろかね」
「け、結婚する前からしてた事だし、あんま特別してるって感じしなくて。どうしても、なんか放っておけないっていうか……」
「まあ、放っとけない感じいうんは同意するかな」

 視線を逸らすヴィータに対し、天井を仰ぎ見るように湯船の縁にもたれ掛かるはやて。
立ち込める湯気と、それに乱反射してボンヤリと柔らかに明かりを灯す電灯。
雰囲気はとても暖かな浴室ですが、その一瞬だけ。
足の先が触れ合いそうな距離が、とても遠くに。一つの湯船に浸かっているとは思えなく感じるのでした。
その距離感がヴィータを押し黙らせます。
そして、横たわる沈黙がぶくぶくと大きくなっていき、息苦しくなってきた頃。
はやてはそのままの格好でボソリと呟きました。
 

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2008年3月29日 (土)

新婚なの! 9-7


 

「やっぱはやての作るご飯はギガ美味だなー。あ~あ、お腹いっぱい」
「お粗末さまでした。いや~、私もホント久しぶりで気合入りまくりやったもん。そう言ってもらえて嬉しいよ」

 はやて達とすれば、久しぶりのヴィータを交えた夕ご飯。
ヴィータ達にすれば、久しぶりの大人数での夕ご飯。特にヴィータは家族との、という注釈がつきます。
どちらにしても、今回の夕ご飯が楽しくないものになる要素が皆無で、誰もが予想したとおり、とても楽しい食卓になったのです。
テーブルいっぱいに並べられたお皿は、次々に片付いていき、はやては内心足りなくなるのでは?と心配したほどでした。
今は、ご馳走様の挨拶をして、お茶を一杯。一服しているところです。

「これから毎日ヴィータちゃんが来てくれないかしら?」
「それは普段の食事に不満があるっちゅーことの裏返しかな? いやー、シャマルがそないな事思ってたとはねぇ」
「あ、いえ! 決してそうじゃなくて、えぇっと~……ねぇ、ザフィーラ?」
「……太るぞ、シャマル」
「ああぁんもー! フォローしてよー!」

 勿論、ザフィーラの徳用おしゃれペット皿(大型犬用)にも、テーブルの上と遜色ない食事が盛られていました。
しかし、それは偶にであるから――例えば盆と正月――良いのであって、毎日では確実にカロリー取りすぎ。ダイエット一直線です。
八神家の永遠の成長期と言えばヴィータですが、その実シャマルの食いっぷりも負けていません。
しかも、シャマルの縦の成長期は既に横への成長期に変わりつつあるのですから、当然のことです。

「あははは。まあ、思わず食べてまうって言うのは嬉しい評価やね。そんでそこの新婚さん。義姉の作ったご飯は如何でしたかな?」
「む~ん……!」
「そうやってさっきからエライ難しい顔してらっしゃるけど。なにか気になることでも?」
「あんだよ、なのは。はやての作ったご飯になんか文句あるってーのか。滅多なこと言うもんじゃねーぞ。うん」
「まぁまぁ、そう言わんと。そない難しい顔してる可愛い顔に皺寄ってまうって」
「むむむ……!」

 ご飯を味わう、と言った風でなく何かを鑑定するような、店の主人としては嫌な客タイプな態度だったなのは。
食べ終わり、みなが一服している間も、空になったお皿とはやてを交互に眺めていました。
ふーむ、と鼻から息を抜くと難しい顔を保ったまま、ボソリとつぶやきました。

「これがヴィータちゃん好みの味……なの」
「は、はぁ。そりゃそうかもしれんね。こっち来てから初めて食べたんが私のご飯やし、それが基準になってんねやろ」
「そんなレベルじゃねーよ! 色んな世界で色んなモン食ったけど、はやての料理が一番美味かった!」
「そか? 桃子さんの料理もエライ褒めてたと記憶してるけど」
「あ、あれはさ。桃子さんは、なんて言うか……いー! はやての意地悪!」
「おほほほ。相変わらず可愛い子やね、ヴィータは」
「むーん」

 悩んでいたなのはの眼光が鋭く光ります。何かを決意したようです。
すっと面を上げはやてに向き直ると、一旦深呼吸をして、しっかりと言いました。

「はやてちゃん!」
「は、はいな。なんじゃらほい」
「私にも料理を教えて欲しい! はやてちゃんの味を教えて欲しいの!」
「―――は、はぁ。なんや、そんなことか。そない気合入れんでも普通にお願いしてくれたらエエやん。知らん仲やないやろ?」
「そうじゃなくて。ヴィータちゃんの旦那様として教えて欲しいの!」

 なのはの思わぬ提案にその場にいる全員が例外なく驚きました。
寡黙なザフィーラも流石に尻尾の毛が逆立ち、シャマルはひっくり返そうになったところでテーブルを掴み辛うじて体勢を保ちます。
なのはの隣、はやての左前に腰掛けたヴィータはあんぐりと、これまた見事に大きく開いたまま固まっていました。

「……わ、私の料理、を? いや、言うてくれるのは有難いけど、上手になりたい言うんなら桃子さんに習ったほうが私は……」
「良いの! 私ははやてちゃんに習いたいんだから。それに、お母さんにはそんな会えないし」
「いや。私らもあんま会えへん身やと思うんやけど……」
「お願い、はやてちゃん!」

 手を合わせ、頭を下げるその姿に、はやても断りきれないと言った雰囲気です。
ちらりとヴィータに目配せしますが、なのはを見るばかりでこちらに気付きそうにもありません。
十年来の親友であり妹の嫁にここまで頼まれて断ったとなれば、人が廃るというもの。
はやては、なのはに面を上げさせ、ゆっくりと頷くのでした。

「やった! ありがとう、はやてちゃん!」
「う、んまあ。教えるとか大層なことは出来へんやろうけど、メールとかで受け答えぐらいはするから。うん」
「はーい。よろしくお願いします、はやてちゃん」
「…………まあ、精々がんばれよ」

 屈託なく笑うなのはの顔を、なんとも言えない顔で見つめているヴィータでした。

「うんうん。やっぱりはやてちゃんの料理は三国一の美味しさってことよね!」
「ああ。それは多くの人が認めるところだと思う、がな」
「がな、って。何かあるの?」
「……シャマルは習おうと思わんのか。確かに、食べられないものを作ることはなくなったようだが」
「ひっどーい。あのね、ザフィーラ。人にはそれぞれ役割ってものがあるの。分かるかしら?」
「確かに私は皆を守る盾の守護獣を名乗り、お前は泉の騎士だと言ってはいるが、それと何か関係があるのか?」
「ええ。そうやって役割が決まっているのは、日常生活においても変わらないと思うのよ。
 私は気付いたの。この家では食べる役だって。美味しいものを食べて"美味しいわはやてちゃん!"と言う係りなの!
 そうやって、はやてちゃんが"明日も美味しいご飯を作ろう!"って気持ちにエールを送る役なのよ! 分かるかしら、ザフィーラ?」
「……そうだな。それが家族のためと言うヤツだろう」
「な、なんだか納得いかないわ……」

 

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2008年3月28日 (金)

新婚なの! 9-6


 
「なぁ、はやて~。誰が来て――おっ、ザフィーラ! ひっさしぶりじゃんか!」
「ああ。身体の方はどうだ、ヴィータ」
「どうだも何も、いっつも元気だってーの! えへへ、お前にこうすんのもホント久しぶりだなぁ~」

 一足遅くリビングへ顔を覗かせたザフィーラに、一目散に飛びつくヴィータ。
首周りの長い毛の内側に顔を埋め、以前のようにモフモフとその柔らかな感触を楽しみます。
その身を守るために少し硬い毛に覆われていますが、その内側は体温を保ったりするために柔らかで短い毛が密集しているのです。
この種類の狼に詳しいでもなければ、家族しか知りえない内容です。

「ヴィータ? 久しぶりなんは分かるけど。ほれ、向こうで旦那さんがこわーい顔で睨んでらっしゃるよ?」
「だ、そうだ。ヴィータ」
「……むーん、プハァ! おう、そうするー」

 ザフィーラは他の犬やらと同じで頻繁にお風呂に入ったりしませんが、獣臭いでもなく、何か良い匂いがするぐらいなのです。
これで最後だと言わんばかりに顔を押し付け、ぎゅーっと抱きしめてからソファーへ戻ります。
しかし、ソファーで待つ旦那様は別に怖い顔などしておらず、ヴィータはもう少し抱きついてても良かったのに、と思いました。

「まだシャマルが来るから。ちょいコート片付けてくる言うといて」
「はーい。お、そうと噂をすればシャマルじゃんか。久しぶり~、シャマル」
「は~い、ヴィータちゃ~ん! シャマルお姉さんですよ~」

 コートを持ったはやてが奥へ引っ込んでいくと、入れ替わるように反対側からシャマルが出てきました。
ヴィータの声に手を振りながらやってきては、隣へ腰を下ろしぎゅーっと抱きしめ頭にスリスリと頬を擦り付けます。
頭を抱きかかえられ、顔に大き目の柔らかオッパイがこれでもかと押し付けられるヴィータは、少しばかり鬱陶しく感じたようです。

「うぃー。ちょっとくっ付きすぎだ、シャマル。それに手が冷てーって」
「外から帰ってきたばかりだし、手を洗ったんですもの。だ・か・ら~」
「んだよー。気色悪ぃ声出しやがっ……っひゃ! むぎゅ!」
「ヴィータちゃんが暖めて~。あ~、昔を思い出すわ~。やっぱりヴィータちゃんの高い体温が一番よねー」
「だ、だから冷てーって言ってるだろ! お前は昔っからそうやって触るんだからよー!」
「…………あの、シャマルさん。ちょっとお話があるんですけど」

 服の中へ冷たい手を突っ込んだかと思うと、膝に乗せ思い切り抱きしめます。
ヴィータで暖をとるなど、これこそ家族ででしか出来ない行為です。
シャマルの腕の中で必死に暴れますが、腕が完全に折りたたまれた状態では力も入らない上、皆が思っている以上にシャマルは力持ちなのでした。
モゴモゴと髪を振り乱しながら暴れるヴィータに、幸せそうに頬を緩ませるシャマル。
しかし、そんな状況を打ち砕く一言が、直ぐ近くから発せられました。

「―――あ、あ。なのはちゃん? どうしちゃったのかしら」
「シャマル。早くその手を離せ」
「え、ええ。あ、あのねなのはちゃん。ちょーっと久しぶりでテンション上がっちゃったっていうか、その~」
「ブハッ! く、苦しかった~。さんきゅーな、なの……は」

 シャマルにぴったりと横へ付けたなのはの目は見事に据わっています。
この中では一番付き合いが長いヴィータですら、言葉に詰まってしまうほど。
その場に居合わせた三人は、背後に漂う黒いオーラが見えたような気がしました……が。

「さっき、ヴィータちゃんを抱きしめてましたよね?」
「え、ええ」
「そこで言ったこと、覚えてますか?」
「え、えーっと……体温が高いわn」
「違います! その前です!」
「ま、前!? えーっと……あ、ああ! 昔を思い出すわ~、ね!」
「(よく覚えていたな、シャマル)」
「そうです。 そこでモノは相談なんですけど。ヴィータちゃんと昔何してたか教えてもらえませんか?」
「…………へ? そんなことでいいの?」
「はい。え、えっと何か違うことだと思いましたか?」
『お前のその様子じゃ誰だってそう思うぜ』
『……ここは同意しておけばいいのか? ヴィータ。お前の伴侶だろう』
『構やしねーよ。アタシが言ってるんだからよ』

 あの纏っていた(ように見えた)黒いオーラは何だったのでしょうか。
怯えるシャマルに呆れるヴィータ。念話でこっそりと応えるザフィーラ。
そんな三人を他所に、なのはは一人訳が分からぬと言った顔をしてこちらを見ています。

「そ、そうね。ちょっと勘違いしちゃったかも。何せなのはちゃんに会うのも久しぶりだったしね。ねぇ、ザフィーラ」
「(私に振るのか、シャマル)流石、管理局期待のエースと言うところだろう。風格が出てきたようだ」
「(それはフォローになってねぇぞ)まあそう言うこった。んで、シャマル。答えなくて良いぞ」
「え、えー! どうしてー? ヴィータちゃんの過去を知る貴重なチャンスなのにー」
「うっせ! 世の中にはな、知らなくたって良いこともいっぱいあるんだよ」
「言わなくて良いの? せっかくなのはちゃんともっと親しくなれるチャンスだと思ったのに……」
「バ、バカ! だから余計なことを言わなくて良いっつってんだろ!」

 依然シャマルの膝の上にいるヴィータは肩をグラグラと両手で揺らしますが、当の本人は果敢にもなのはとの会話を試みようとします。
頭が揺れ、まともな言葉一つ発することの出来ないシャマル。
なのははそれを止めさせようとしますが、ヴィータも己の過去が懸かっているのです。簡単には引けません。
三人がソファーの上で揉み合っている中。
足元で寝そべっているザフィーラは密かに「念話を使えば良いものを……」と思ったりして静観を決め込むのでした。

「ぎぎぎぎ……! は、離せなのは!」
「だーめ! こうしてないとシャマルさんの邪魔するんだもの!」
「おやおや。なに三人で楽しそうなことしてんの? それも私に内緒で。するなら声かけてーな」
「あっ、はやて!」

 なのはに抱きかかえられたヴィータを覗き込むと、軽々と持ち上げてしまいます。
その勢いでパタンと後ろへ倒れてしまうなのはを避けて、借りてきた猫のように大人しいヴィータを椅子へ着かせます。

「さて。二人が帰ってきたことやし、ご飯にしよか?」

 はやては元気よく、夕ご飯開始の合図を告げました。

 

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2008年3月27日 (木)

新婚なの! 9-5


 

「ただいま帰りましたー」
「ただいま帰りました。主」

 夕ご飯の準備も目処がつき、後は二人の帰りを待つばかりというところで、図ったようにシャマルから連絡がありました。
あと三十分で帰宅するということでしたので、続きは帰ってきてからすることにし、また三人でのんびりすることにしました。
まずはヴィータを座らせ、左にはやて。右になのは。
ガッチリ両脇を固められ、居心地が良いのか悪いのか判断に困るヴィータ。
お菓子を食べたり弄られたり。
好き勝手してー、と一応文句は言うのですが二人に挟まれるこの事態をある程度楽しむことにしたようです。
はやてに会うのは久しぶり。なのはとくっ付いているのは満更でもない。
だから、これと言って断る理由が見つからない。だったら――という消極的なモノですが。
ヴィータとしては仕方ないというのを全面に押し出しているつもりでしょうが、これを口に出そうものなら、はやての格好の餌食です。
それを本能的に悟ったのか、ヴィータは表情にこそ出すものの、決して口にはしませんでした。
しかし、黙っていればこちらのモノ。
調子に乗ってなのはとはやては、二人が帰ってくるまでたっぷりとヴィータ分を補給するのでした。

「お帰りさん、二人とも。寒かったやろ? なんか温かいもんでも作ろか」
「今日はそれほどでも。それにザフィーラが風除けになってくれましたから」
「風除け? 久しぶりに人間モードになったんか」
「ええ。少し風が出てきましたので」
「ふぅん。ザフィーラのそういうとこ。私好きやなぁ。ああ、そうそう。ヴィータが旦那様連れて里帰りしてるんや。早う会ったって?」
「この靴、ヴィータちゃんとなのはちゃんのだったんだー。あぁ~ん、それならそうと早く言って下さいよ、はやてちゃ~ん」
「落ち着けシャマル。今日帰ってくることは予め伝えてあったはずだぞ」
「昨日の夜言うたやろ? 今日はヴィータが帰ってくるって」

 玄関口でザフィーラの足拭きマットを準備し、シャマルからコートを受け取るはやては、早くヴィータに顔を見せるように勧めます。
俄かにテンションが上がり、まるで里帰りの話を初めて聞いたかのような反応ですが、うっかり忘れていたのか、全く聞いていなかったのか。
ザフィーラとはやては同時に突っ込まざるを得ませんでした。

「そ、そうだったかしら? オホ、オホホホ……さ、さぁ、久しぶりにヴィータちゃんの顔を見てきますね~」
「シャマル。少し待て」
「もう、なによザフィーラ~。あ、若しかして自分より先にされちゃうのが嫌なの? そうならそうといってくれれば良いのにぃ~」
「――手洗い、うがいが先だ」
「……あら、そう」

 拍子抜けしたシャマルは足を拭いているザフィーラに見送られ、スキップしながら洗面所に消えていくのでした。

「ホント、うっかり屋さんが治らん子やね。シャマルは。まあ、今のがうっかりかどうかは議論の余地を残すところやけど」
「これが本来の気性だったのでしょう。シャマルは一番に馴染みましたから」
「なるほどね。ところでザフィーラ」
「なんでしょうか、主」
「犬って手洗いは兎も角、うがいはどうなってんのやろう?」
「……今まで風邪をひいたことも、伝染したこともありません」
「それもそやね。よし! そんならヴィータに会いに行こうかね、ザフィーラ」
「分かりました」

 はやてが二度、頭をポンポン撫ぜたのを合図にザフィーラは爪を鳴らしながらリビングへ向かいました。

 

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2008年3月25日 (火)

開花宣言

 関東甲信越地方は、4月までには出ているようですね。

 語りかけているようで、それでいて詩的な書き方に一瞬戸惑ってしまいます。
全体的な雰囲気からは何か物悲しいような、この季節に似合わないようでいて、ある意味この時期だからこそなのか。
そういった中で今日の日記を書いたのは、去年までのお内裏様であったヒカルです。
今までの傾向というか、先月辺りで「日記が書けない」とか言っていたとは思えない内容です。
何かあったと見るべきでしょうか?
幼稚園、小学生は既に春休みに突入していて、中学生組ももう春休みでしょう。
卒業式でも(そうしてしまうと高校にあがってしまうので終業式でしょうけど)あれば、このような心境の変化も納得です。

 しかし、ここの学校はどうなっているんでしょう。
この冬のいろいろな出来事が――」あるように、新しい家族が増えたのは冬からです。
ヒカルが中学三年生であり、受験が控えていたのならそういう話題が少なくとも出たはずだと思います。
しかし、受験の影など全くなく、毎日の家族との生活を満喫していたように見えました。
すると、ここは中高一貫なのか、若しくは幼稚舎から……(登校途中で分かれてしまうと言う描写からあり得ませんか)
やはりここは、年度の、季節の移り変わりに、ヒカルも何かしら思うところがあった。だけに止めておいた方が良いでしょうか。

    
それでもたまに見失ってしまう気がする。

――自分の居場所。
    

 これは新しい家族が来たことが影響していそうです。
先ほども書いたように前年はお内裏様を演じ、ほか日常でも「王子様」的役割を演じていたことが窺えます。
その自分のポジションに、すっぽりと、"本来通り"の家族が現れたのです。
当時からヒカルは戸惑っているような節があったように思います。(氷柱や麗は拒否の方が強いようですし)
「自分はもういいんだ」という開放からの安堵と、その反動の、急に放り出されてしまったことから来る不安。
それが、「春は――出会いと別れの季節。新しい――旅立ちの季節。」という時期に合わせて一気に表面化したのかも。
これも、今年の状況の変化から思い立ったことなのか、それとも毎年繰り返される、この季節のたびに思っていたことなのか――

    
桜の季節には――

華やかさと寂しさとが同時にやってくる。
    

 やはり急に思い立ったことではなく、毎年その胸に抱いていた思いなのかもしれません。
以前に、ヒカルは上と下で"女の子らしい女の子"に挟まれていて、その事を引け目に思っているかも?と言うようなことを思いました。
それでも、表面的なモノとは別に内面に積もる"女の子らしさ"は募っていったはずです。
その部分は大きく安堵として現れ、今回の「華やかさ」にも表される感情ではなかったかと思います。
しかし、反面。「寂しさ」に表された感情。
今までの自分の居場所がなくなってしまい、けれど、それを埋める方法が見つからない。
一体どうしたら良いんだろう。
そういった不安の気持ちが大きく現れているように思えます。

    
誰かの手に少しだけ――

すがりたくなる。
    

 きっと意識した言葉ではなくて――
思わず呟いて、口から零れてしまった言葉――
でもそれこそ本音が強く現されているのではないでしょうか。
この「誰か」とは母親でもなくて、姉達でもなくて、勿論妹達でもなくて――
けれど新しい家族であるとは出てこなくて――

だけど、この日記は読まれることを前提として書いている日記です。
自分だけの、日々を綴っていくモノではないのですから、何かしら訴えたい気持ちもあったのでは?と。
無意識に。けれど、頼りたい、すがれるかも、頼れそうかも。そんな相手に向けて書かれたモノ。
明日からどうなっていくのでしょう。

 

 それでも、家族中の目に触れる日記に書いてしまう辺り、無防備と言うかなんというか。
明日辺り大騒ぎ(例えば立夏が。氷柱の前科があるわけですし)されて弁解すると言うか、そういう展開もあるかもしれませんね。
ああ、自分でSSなど書いてみましたが、まだまだ考えが足りなかったようで。

 

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2008年3月24日 (月)

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2008年3月22日 (土)

新婚なの! 9-4

 

「はやて。シグナムとシャマル、ザフィーラはどうしてんの?」

 また一通りヴィータ弄りを堪能した二人。
そろそろいい時間ですので、はやては晩ご飯を用意することにしました。
久しぶりにヴィータの口に入るご飯ということもあって、腕まくりをし、気合十分に台所に立つエプロン姿のはやて。
予めヴィータとなのはが来ることは分かっていましたので、冷蔵庫には食材がいっぱい。
一緒に覗いた二人に「どんなんか楽しみに待っとってね?」とはやて。
どんな料理が出来上がるのか、二人はダイニングに移動してテーブルに頬杖を付きながら楽しみに待つことにします。

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これがひょうちゅうのじつりきか

 あのホワイトデーにおける氷柱の、私たちトゥルー家族においてその脳内に展開されていた光景。
それがまるで最大公約数の再現を得たかのよう!
この氷柱可愛いよ!氷柱の下僕は幸せですよ!
しかも翌日の様子というのが堪りません。
演出過剰気味とのことですが、いえいえ麗とのやり取りからこういう表情の豊かな可愛い子ですよ、きっと。

何の話かって、それはこちらをどうぞ、です。

 他にもバレンタインデーでの様子を捉えた大きな写真もありますの。

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2008年3月20日 (木)

新婚なの! 9-3

 

「せっかく来てくれてこないな話するのもなんやけど、何時までおれるの? 今日ぐらいは泊まっていけるやろ?」
「うん、そのつもり。だけど明日の夜にはこっちを発たなきゃいけないかな。ね、ヴィータちゃん」
「そうなんだ、はやて。時差とか考えて、向こうに昼前には着きたいから」
「発つってどこへ? 向こう言うことは……まさか新婚旅行?」

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2008年3月18日 (火)

ホワイトデーの後


「氷柱。おはよう」
「あ――!」
「おっはよー!おにいちゃ~ん!あれ?氷柱お姉ちゃんは朝のご挨拶しないのー?」
「ゆ、夕凪!あ、いや、それは、その……(ど、どうして朝一に顔を会わせちゃったりするのよ!ち、違う。そんなんじゃなくて、えっと)」
「おはようございます」
「おはよう、夕凪。吹雪、昨日はよく眠れた?」
「はい。少々夕凪姉が元気なぐらいでしたから」
「も~、吹雪ちゃんは直ぐそう言う~。あ、えへへ~。もうちょっと静かにするねー」
「うん。二人とも元気そうで良かったよ」
「――はい」

 撫でられ、擽ったそうに首をすくめる二人。

「さ、顔を洗っておいで。もう直ぐ朝ご飯だろうから」
「は~い。あ、氷柱お姉ちゃん、どうしたの?顔が赤いよ~」
「え、え!?私が?」
「うん。お熱でもあるのかな。ね、吹雪ちゃん」
「べ、べべべ別にどうってことないわよ!さ、早く行きましょ!」
「――確かに。多少、体温の上昇が見られます。離れている私にも感じられるほどに」
「吹雪まで!」
「氷柱お姉ちゃん。お熱があるなら吹雪ちゃんに近づいたらダメだよ?お風邪がうつっちゃうかも~」
「氷柱、本当に何でもないのかい?」
「な、なんでもないったらないわよ!私の心配するぐらいなら、その、自分の――」
「大丈夫です。病気の類ではないように思えます。ただ――」
「ただ?どうしたの?」
「呼吸が浅いです。また、額などに見られる発汗、視線の動きに、瞳孔の収縮。思考の乱れが言語活動に多少の障害を引き起こしています」
「え、えー!それってジューショーだよ!」
「心拍の乱れに、頬の紅潮は首筋まで広がっています。確かにこの状態は異常です」
「た、たいへーん!えいせいへい!えいせいへーい!」
「夕凪、そんな言葉。どこで覚えてきたんだい……」
「待ってください、夕凪姉。先ほども申し上げたようにこれは病気ではありません」
「ふ、吹雪?その辺にしておきま――」
「じゃあ、なぁに?氷柱お姉ちゃんはどうしちゃったの?」
「確かなことは言えませんが、これは――」
「ふ、吹雪!?」
「――異性に対して好意に値する感情により引き起こされる身体活動の変化の特徴によく似ています」
「こ、こーいー?あ、その前にいせいってなに?」
「そ、そそそれは、あれよ!別のお星様から来たってこと!ね、夕凪」
「いえ。氷柱姉の指摘は正しくありません。具体的にいうなら……あなたのような――男性のことです」
「えー!お兄ちゃんのことー!?」
「ぎゃー!」

 動揺の余り叫ぶ氷柱。

「ふ、吹雪?さ、あっちへ行こう。ほら、手を引くよ。氷柱も手伝って、ね?」
「あ、あわわわわわ!」
「好き――ということです。恋をする、と言ってもいいかもしれません」
「恋?わぁ!すっごー!氷柱お姉ちゃん、恋しちゃったのー?」
「ち、ちちちち違うわよ!そんなのないったら!ほら、吹雪もそんなこと言ってないで!」
「本で読んだ限り。その可能性がとても高いかと」
「うわぁ~!もしかして、夕凪の魔法にかかっちゃったのかもー!」
「きゃー……――へ?」
「どういうことかな、夕凪。魔法って、あの?」
「うん!このお休みの間にね、お兄ちゃんが元気になるように魔法をかけてあげたの。その時ね、氷柱お姉ちゃんも一緒にいたから、もしかして」
「そ、そうだったんだ。なるほどね、夕凪。ありがとう」
「えへへ。どういたしまして」
「魔法、ですか。夕凪姉」
「そ、そんな一緒にいたからって。それに、ほら。それは病気の治る魔法なんでしょ?そうだ、吹雪もほら、魔法は――」
「確かに魔法の存在は信じ難いものです」
「えー!ひどーい!」
「――けれど。そう言う不確かで不可解なものの存在を考えても良いと思います」
「どうしちゃったのよ吹雪まで」
「何故だか分かりません。この私を取り巻く熱量の存在と合わせて。でも、氷柱姉と私の――」
「吹雪。いま無理に考えなくてもいいよ。その内、きっと答えが見つかるだろうから。ほら、みんなが待ってるよ」
「(ぐ~)あ、お腹がペコペコだって教えてくれたみたい~。えへへ~」
「夕凪もそう言ってるし、ね?」
「――分かりました。次への課題にしておきたいと思います」
「あははは。そうだね」

 連れだってダイニングへ向かう二人。

「氷柱も一緒に――」
「ちょ、ちょっと。良いかな……」
「うん、構わないけど。どうしたの?」
「せ、先週の……やっぱり良いわ。――あ、あのね!キライじゃないってだけだから。好きだ何て言ってないから!」
「うん。分かってるよ」
「も、若し何かあっても、それは…………夕凪の魔法のせいよ!その辺り、思い上がらないでね!」
「……分かってるよ、氷柱」
「それだけだから!――呼び止めて、その……ううん、なんでもない」

 氷柱は顔も見ず、二人の後を足早に追いかけていくのでした。


 ホワイトデー用だったのに……トゥルーの高みはいまだ遠く――


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2008年3月17日 (月)

新婚なの! 9-2

 

「ふぃー。ヴィータ堪能したわぁ」
「私もー」
「エエなぁ、なのはちゃんは。毎日こうやってヴィータ分を補充してんねやろ?」
「や~ん、もう。そんなこと言ったら晩から朝までだよ~」
「バ、バカ! そういう余計なことは言わなくて良いんだよ! それにちょいと言い辛そうな振りすんな!」
「ほらほら、ゆっくりしてなきゃ。は~い、いい子ですねぇ」
「ったく。んなら黙ってろよ……」

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2008年3月15日 (土)

新婚なの! 9-1

 

「たっだいまー、はやてー!」
「こんにちは、はやてちゃーん」

 久しぶりの光景。1ヶ月ぶり、それよりもう少し振りぐらいにくぐる玄関。
上がり口で元気よく、部屋の奥へ届くように挨拶をすればドタバタとした足音とともに家の主が駆け寄り、勢いよく抱きしめます。

「お~ヴィータ~、よう来たねぇ。よしよしよし」
「えへへへー。はやて~」
「うーん、よしよし。そいでなのはちゃん、お久しぶり。元気してた?」
「うん、お陰さまで」
「そかそか。二人とも元気そうで何よりや。ささ、立ち話もなんやから。上がって上がって」
「はーい。お邪魔しまーす」

 久方ぶりのヴィータを抱きしめるはやて。
はやてに抱きつかれながら器用に足だけで靴を脱ぐヴィータに、遅れて家に上がるなのは。
普段は靴を揃えるのはヴィータですが、今日ばかりはなのはが揃えるます。
そのままリビングへ通され、ソファーに腰掛ける二人。
ヴィータは元々自分の家であるのだし、なのはも何度か来たことのある家だけに動作は慣れたもの。
しかし、なのはは少しだけ腰が浮くような、そわそわして深く腰掛けようとしません。
台所へお茶請けを用意しに行こうとしていたはやては、その僅かな変化に目敏く食いつくのも当然でしょう。

「んっふふー。どうしたん、なのはちゃん」
「え、え? べっつにー」
「そかー? 落ち着かんみたいやけど? まあそれも当然っちゃー当然かもしれへんけどなー」
「んー。どうしたんだよ、なのは。やけに落ち着きねーな」
「なんでもないったら、ホント。気にしないでヴィータちゃん。ね?」
「怪しいなぁ。お前のさ、"気にしないで"ってのはよ。こっちが気にしなきゃいけないことなんだよな、大概」
「う、う~」
「うんうん。それは私等も重々承知してるところやけど」
「だけど、なに?」
「そういうのは今までフェイトちゃんの役目やったやん? それがヴィータになったって辺りに感慨深いものがあるわー。にへへへ」
「ア、アタシに変わったとかどういう意味だよ!?」

 茶化すように軽く振舞いながら、二人の様子をチラチラと窺うはやて。
なのはの言葉に、ヴィータは相変わらずだと言わんばかりに呆れながらも、その目は心配の色を含んでいます。
そんな二人のやり取りが、面白くて堪りません。
もっと二人のやり取りが見たくなってくるのは当然でした。
飽くまでも自然に、そうした意図が透けて見えないように、もう一押しするはやて。
案の定、ヴィータは腰を上げて食いつきました。

「勿論、ヴィータだって同じように心配しとったことは、私以外にも知るところやけど、口に出してたんはフェイトちゃんやったやろ?
 それがなによ。私が知らんうちにすっかりヴィータまで口にするようにして。しかもエッライ自然に。んー? その辺どうなんよって気になるやん」
「ど、どうなんよって言われたって。別になんつーか、その」
「しかも注意されとるというのに、なのはちゃんの嬉しそうなこと」
「えへへ。それはなんと言いますか、その」
「二人には私の知らん時間が随分あるってとこを見せ付けられたみたいで、なんや妬けるわ」
「そうかな~? 妬けちゃうんだ。んもー、照れちゃうな~。ねぇ、ヴィータちゃん」
「し、知らねーよそんなこと! こ、これは別にアタシがしたくてって訳じゃなくてフェイトが居ない間はその、なんつーか」

 最初はなのはも同様にからかわれていた筈ですが、いつの間にかヴィータを弄ると言う点ではやて側に立っています。
二人に挟まれてしまえば、ヴィータに打つ手なし。口をモゴモゴと、あの勢いは何処へやら。腰を下ろしてしまいました。
しかし追撃の手を緩めないはやて。
アイコンタクトの一つもせず、なのはと共に話を続けるのでした。

「なんつーか、なぁに?」
「そこが一番重要やない? なぁ、私も聞きたいなー」
「ホント、なんでもないって。フェ、フェイトがさ……うぅ」
「なるほどね。フェイトちゃんが海に出てる間に代わりをしとっただけやと。そう言いたいん?」
「あ、いや。そこまでは、その……」
「えへへー。そんな風に言っても騙されないからねー」
「だ、騙されるとかどういうことだよ」

 どんどんと俯いてしまうヴィータの頬を、つんつんと人差し指で突付くなのは。
苦し紛れの言い訳というか、そうやって本音を口にしていないことは、はやてのみならずなのはも十分に承知しています。
ヴィータ本人も、そんな小手先が二人に通用するわけないと分かっていながらもそうせざるを得ませんでした。これが生来の気質なのだから仕方ありません。
勿論、二人もヴィータがそういう態度を取るだろうと分かっていて話を振っているのですが。

「ツンデレ、言うんかな。素直になのはちゃんが心配やからって言えへんの」
「な、なな! それにそのツンデレってなにさ! アタシは別にそういうんじゃねーから! それ意味間違えてるって!」
「良いの良いの、私は今のままのヴィータちゃんが大好きだから~」
「ああ、なのはちゃん! そうやってヴィータ独り占めはようないよ!」

 勢いだけで押し切ろうにも、特にこの二人相手では無理があります。
プリプリと怒ってみせる、そんなヴィータが可愛くて、なのはは我慢しきれずその腕を伸ばします。
柔らかくプニプニとした頬に頬擦りするなのはを見れば、暫くご無沙汰のはやてだって我慢できません。
お茶請けを取りに立ったはずの足で、そのままヴィータの座るソファーに飛び込みました。
蛙が潰れたような声を出すも、抱きついた二人は知らん顔。
頬擦りするなのはに、ぽじょぽじょのお腹を鼻でくすぐるはやて。
左右の手で迫り来る顔を押し退けて抵抗の意思を見せるヴィータ。左手は遠慮なく、右手は控えめに。
しかし。ヴィータと戯れるのが大好きな二人にとって、その程度の障害など道端の小石ほどにもならないのです。
寧ろそうやって嫌々してくれた方が、逆に燃え上がるというもの。
特にはやてはそういう反応をするヴィータが新鮮で、背中に回した手でわき腹を擽ったりするのでした。

「も、もう! 二人ともいい加減にしてくれー!」
「エエやないの~。一ヶ月以上ぶりのヴィータ分なんやしー」
「私は一週間ぶり~。えへへー」
「はやてはまだしも! なのは! お前はいい加減にしろ! 毎日やってんじゃねーか!」

 尚も止めようとしない二人に、口ではこう言いながらも毎度のことだなぁ、と内心諦めの気持ちで気の済むまでさせることにしたヴィータでした。

 

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2008年3月14日 (金)

ホワイトデーよ

 

 今日はお誕生日、という氷柱の出番です。
どっちをメインで書くのかと思ったら、自分でホワイトデーのことを書くなんてね。

 今日は自分が主役であるはずなのに、家族の為に週末のおやつを買出しに行くだなんて。
パティスリー(お菓子屋さん、より広い意味)に買出しに行った氷柱の「ユキと虹子でピンクの取り合いにならないように」というところ。
虹子がピンクを好きだと言うのは以前から分かっていましたが、綿雪も好きなんですね。
これは綿雪はフランボワーズだから好きで、虹子はピンクだから好き、ということでしょうか。
でも、綿雪が取り合い(しかも言及しているのが氷柱なのですから控えめな表現かもしれません)と言われるほどの行動力を示すというのは驚きでした。
吹雪のときといい、優しくて儚げですらある綿雪が四つ下の虹子と取り合いになるなんて――
今までのイメージなら一応主張するものの、黙って譲るぐらいだと思っていたのに。
何か個人的な思い入れでもあるのでしょうか。とても気になります。

     
本当は――
私の――
私のためだけの特別な1日のはずなのに。

     

 か、可愛い――!
もし小さい頃は誰かに愚痴をこぼした事があるかもしれません。
でも、今となってはそんなこと言う子供でもありませんし、真璃のように素直にもなれないでしょう(この子もあの歳にしては大変分別のある子ですが)
それをわざわざオニイチャンが読むであろう日記に書いてしまうのですから、昨日の海晴姉さんの言ってることに説得力も増すと言うものです。
世間ではこの日は自分の誕生日ではなくて「ホワイトデー」なのです。
他の何でもない日(記念日のない日はないでしょうけど、市民権があるものとして)ではなく、どうして自分の誕生日だけ、わざわざこの日なのか。
そう言えば、青空がバレンタインで生まれたことも影響しているかもしれませんね。
どちらかと言えばそちらがメインな日なのですから、自分の不遇など大したことない。だから文句言っちゃ罰があたる――なんて。
そんな思いを抱えたホワイトデーに「バレンタインのお返し」と来たのです。

     
あなたにバレンタインチョコレートなんて――

あげた覚えはないんですから!
     

 精一杯の強がりでしょうか。
ここで氷柱が欲しかった物は「誕生日プレゼント」であって「バレンタインのお返し」ではなくて。
以前の春風さんのときといい、三点リーダーの差込どころが絶妙で多くの想像を掻き立てられます。
その間で氷柱は何を考えたのでしょうか。
結局分かってない兄に呆れたのでしょうか。
でもそれは「分かってくれるかもしれない」という期待の裏返しのような気もします。
それでも。そうせざるを得なかった氷柱の気持ちを考えるとモヤモヤした週末になりそうです。

 

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新婚なの! 8-11

 

『ヴィータちゃん』
「うわっ!? な、なんだよなのは! 驚かせんな!」
『私、何か忘れ物しちゃったかな?』
「忘れ――『忘れ物?』
『うん。それで追いかけてきてくれたんじゃないの?』
『忘れ物…………あ、ああ。そうだな』
『うんもー。ヴィータちゃんったらうっかり屋さんなんだからー。しょうがないなぁ』
『人に用意させておいて言う台詞じゃねーぞ。まあ、良いから。さっさとこっち取りに来い』
『はーい』

 念話を繋げたまま、小走りに近づいてくる。
自分で準備もせず、忘れ物したってのに何がそんなに嬉しいんだ。

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2008年3月12日 (水)

新婚なの! 8-10

 

 通常勤務に戻り、身体を軋ませる痛みもすっかり取れた頃。
なのはが本部から程遠い、"辺境世界"を幾つか管理している支部で短期の教導をすることになった。
期間は一週間と少しというが、移動に一日近くかかる距離だ。
下手をすると二週間近く家を空けることになる。
自分が同じだけ家を空けていた(しかも本当の理由は言ってない)手前、文句というか小言を言える立場ではない。
大体、別になのはが家を空けて文句なんて出るはずがない。
朝から晩まで手間や気兼ねが減って、寧ろ鬼の居ぬ間になんたらというヤツだ。
それなのに、教導の話を聞いたとき機嫌が悪くなった――らしい。
全然自覚ないんだけど、なのははアタシの態度にとても上機嫌にそう答えてくれた。
嘘かホントか。
多分、本当なんだろうと思うところが悔しい。

「じゃあ、行ってくるね。ヴィータちゃん」
「お、おう。気ぃつけてな」
「なにか美味しそうなのとか名産品とかあったら買ってくるね。楽しみにしててね?」
「名産に美味いものなし。別に無理しなくて良いからな」
「……う、うん」

 朝早くこっちを発つというから夕ご飯を早めにして、なのはには仮眠を取らせアタシが準備をする。
必要なものは向こうで買っても良いし、それほど大荷物にならない。仕事する時は最悪バリアジャケットでも良いわけだし。
ノロノロと靴を履く。
時間に余裕あるので急かすこともない。
ノロノロとしている理由は何となく分かる。これでも付き合いは長いからな。
それに―――嫁だしよ。

「あ、あのね」
「帰ってくる前に連絡しろよ。お前の好きなモン、作っといてやるから」
「じゃあ、お願いあるんだけど、良い?」
「リクエストか」
「ヴィータちゃん」
「なんだ?」
「だから。ヴィータちゃん」
「……?」
「じょ、冗談だよ冗談! えへへへ!」

 自分が家を一週間以上も空けるのを怒っていると思ってるらしく、叱られた子供みたいな態度を取っていた。
別に怒っちゃいない、と言うか傍から見たらそうなのかもしれなくて、自分のことは結構分からないものだとも思ったりした。
実際なのはと一週間も会えない、と先日の任務中のことが思い出されたのか、気付かない変化があったのかもしれない。
知らず知らずの内に、随分となのはベッタリになっているんだろうか。
しかし、こちらの悩みとは関係なく、何やら訳の分からぬことを言っては一人で照れてる。
その能天気な笑顔を恨めしく顔に出しながらも、胸のうちではやはり笑っていてくれた方が良いと思っていた。

「そろそろ時間だな」
「え、まだ早いよ」
「なんでギリギリに行動しようとすんだ。早め早めだ。それに関しちゃお前にこそ教導が必要だな」
「そう? じゃあ、ヴィータちゃんが私の教導官さまになってよー」
「ば、ばか! 直ぐにそうやって抱きつく! は、はなせー!」
「ダメだよー。一週間分のヴィータちゃん分なんだからー」
「……い、一分だけだぞ」
「五分」
「二分だ」
「むー。じゃあ三分で我慢する」

 話を聞かないのは相変わらずだが、なにか様子がおかしい。
三分といっている手も強く押せば放してしまいそうな程しか力が入っていない。
案の定、それを証明するように三分も経たないうちに身体を放してしまった。
肩にかかっていたサイドポニーがスルスルと顔の横を流れ、洗いたてのシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
それが名残惜しくて無意識のうちに右手が伸ばすけど、一瞬出遅れたのを見透かしたかようにすり抜けてく。
手を伸ばしても掴めなくて。
そのどちらなのか、それとも両方なのか。
どちらにしろこの手の所在を知られなくて、素早く身体の後ろに隠した。

「じゃあ今度こそ行くね」
「……ああ。んじゃな。きっちり鍛えて来いよ」
「そ、それは教えられる人に言う台詞じゃないかなー」

 少し困ったような笑みを浮かべてドアノブに手をかけ、一瞬あってから、ゆっくりと回す。
重い扉が静かに開き、その向こう側へ。
手を振りながら、ドアの閉まる瞬間までこっちを見てるのも変わらない。いつもどおり。
蝶番もラッチも静かに、開けたときと同様、音も立てることなく玄関ドアは閉まった。

「……さて。まだ割りとあるな」

 一人になった玄関で、誰に聞かせるでもなく呟く。これもいつもどおり。
目の前には静かに閉まった玄関ドア。
しかし何かが違う。
毎日のように繰り返される光景であるはずなのに。
何かが足りない。
深夜だったせいだろうか。その僅かな、普段は気にも留めないような音は大きく、頭の中で響き渡っている。
今も残るその音は、これから始まる一人の一週間を告げる音みたいだ。
リビングも寝室も電気は点けっぱなし。
今日も仕事だし、寝るなら早く寝なきゃいけない。
なのに。
"何かを忘れていってしまった"なのはのことが気になって。
それが分からない自分への違和感が拭い去れなくて。


 閉まったばかりの玄関ドアを開け放ち、突っ掛けで走り出してた。


「ちぇ、行ったばっかかよ」

 廊下の突き当たりにあるエレベーターは、一つ下の階のランプが点灯している。
走っている間に、一つ二つとランプは降りていく。
普段は待たないと来ないくせに、こういうときだけ素直なんだから困ったヤツだ。
エレベーターに対する不満を胸のうちでぼやきながら、横の階段を駆け下りる。
いつかこの階段を駆け下りた時は逃げ足だったわけだけど、今日は逆。
数段飛び降りるのももどかしく、既にフロアへ着いたろうエレベーターを恨めしく思った。

「う~、ちと冷えるや」

 深夜のフロアはがらんとしていて、肌に触れる空気を一層冷たく感じさせる。
寝るつもりだったパジャマで出歩くには肌寒いが、今更引き返すわけにも行かず構わず走り続ける。
なのはは既にマンションを出た後か。
日本よりも数段スムーズに開閉する自動扉すらもどかしく、僅かな隙間に身体をねじ込むようにして外へ飛び出した。

「あっ、なの…………」

 暗くてよく見えなかったが、もう敷地を出ようとしている後姿を見つけることが出来た。
声が喉の奥でつっかえて最後まで出ない。
伸ばした手が何も掴むことなく、だらんと垂れ下がる。
突っ掛けのまま走った足は今更に痛み出した。
ここまで走ってきたくせに。何も考えず身体の動くままに飛び出してきたのに。
いざ本人が見えてきたら嘘の様に"いつも通りの自分"に戻ってしまった。

「……寒ぃや」

 タイミングよく夜風が薄着の身体を撫でていく。
まるで漫画みたいだ、なんてくだらない事を考えながら、再び掴み損ねた、無様な行き場のない右手を抱える。
馬鹿みたいだ。走っていって追いついて。一体なにをしようってんだ。
まぬけな顔して「いってらっしゃい」とでも言うつもりか。
寒さに鳥肌が立ち、無駄に終わりそうなまま引き返そうとしたとき。
未練がましく視界の端に捉える違和感。見つけたときからその背中が遠のいてないことに気がついた。
でもそれは、未練を抱える自分の願望なんじゃないかって、結局何をどうしたいのか自分でも分からなかった。

 

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2008年3月11日 (火)

呼んだ?

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 「ん? なぁに?」 お耳ぺターン

 

 カテゴリーを整理しましたが、暫定処置というかこれからも少しずつ手を入れていく予定です。

 

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2008年3月 9日 (日)

新婚なの! 8-9

 

「あんときゃ、まだ説明する前だったからなぁ」

 よく考えるまでもなく、端末で呼び出せば良いのだが久しぶりという事もあったのかもしれない。
一週間空け、一日休暇。それでもどういう訳か今日の午前は暇で、こうしてブラブラしていられるのだけど。
それに、シグナムの話を聞いた後だから余計に。
こうでもして時間を作りたかった。

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週末の終末。

 

 今更とは思いますが、好き好き大好きっのYU-SHOW様が詳しく考察をなされています。

 全く及びませんが、私なりに少し。

■吹雪と綿雪は双子説

 綿雪が学校へ通っているらしい記述があり、小学一年生と明記されている吹雪と双子の同級生かも。
しかし、双子だと考えると誕生日が11日違いとありますが、コレに関してはあり得ない話ではないので、許容範囲内です。

 二人とも雪と付いている。
これは双子だから、何か名づけのルールがあって、それに則っている。

 綿雪を学校へ通わせるために辻褄を合わせると、そうするのが簡単です。


 今回の件について、綿雪は身体が弱いという前提があり、吹雪は視力が弱い、程度の表現に留まっています。
どうしても綿雪に目が行きがちですが(実際新年早々寝込んでいますし)、実際は吹雪も視力のほかの身体に問題を抱えていました。
ここで二人が双子だと考えれば、二人とも身体が弱いというのも分からないことはありません。

 誕生日が違う件に関しては、未熟児か何かで別々に(帝王切開?)産まざるを得なかった。(実際そのような事が可能かは分かりません)
若しくは、吹雪の誕生日と設定されている日以前に二人を帝王切開で出産した。
未熟児室にいれ、峠を越えた(1ヶ月ぐらい入院することはあるそうです)順に出生届を出した。
正当な理由にこれが含まれるか分かりませんが(14日以内に届けなければ罰金があります)、無理ではないと思います。
この二人に限っては、誕生日≒出産日であり、誕生日=届出を出した日なのかもしれません。

 吹雪の視力が弱い件については、ただ視力が弱いだけなのでしょうか。
矯正するにしても年齢的にしていなければなりませんし、そうではないのでしょう。
また、体温が上がると眩暈を起こしてしまうなど、変調をきたし易い身体については脳機能レベルでの代謝不全かも知れません。
霙姉さんの日記により、五感は発達しているようですが、それも一部機能が制限されている故のモノなようですし。
網膜の働きが弱いともありますから、普通に視力が弱いだけでしょう。

 ここらで一番の謎の一つ。吹雪だけ血液型が不明な点です。
新生児のときに血液型を調べないことはあります。調べても後に変わることが稀にあるからです。
それでも、綿雪は調べていて吹雪が不明という点が謎ですけど。
何かしら秘密があるのか、単に調べ忘れているだけなのか……
後者であればうっかりさんで済みますし、前者であれば後付で増やすことも可能なので今後の展開をお楽しみに、と言うことでしょうか。

 一歳ずつ十九人姉妹。
吹雪、綿雪が生まれたとき、霙姉さんは九歳です。
小学四年生です。これから多感なお年頃になろうと言うものです(この辺り、女の子は早熟ですから)
新しい家族が増えるのを心待ちにして(しかも初めての双子)、出産予定日をみんなで指折り数えていたのでしょう。
そんなところへ母親と子供に命の危機が迫り、何とか生まれたものの、面会すら出来ません。
下手をしたら死んでしまうかも――これは大きな衝撃をもたらしたに違いありません。
しかし、何とか二人は無事に退院することができ、少なからず問題を抱えるものの、家族として一緒に暮らすことが出来ました。
それでも、多感な年頃にその出来事は暗い影を落としたことでしょう。
それが影響したのか、辿りついた終末思想。
これは霙姉さんなりの防衛術なのかしら、とも思いました。
こんなに大切にしているものでも、大好きなものでも、それは永遠ではなく、いつか滅び去り形を失う――
何か起きても「これは仕方のないことなんだ」と、自分に言い聞かせるように。
普段の第一印象から随分と前向きで、しっかりモノのお姉さん振りを発揮している霙姉さんから、そう感じました。


 特に面白みのない、大方の範疇から出ない文章でしたが、ともかく明日の日記に気になるところです。


 

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2008年3月 8日 (土)

新婚なの! 8-8

 

「んで。なんだよ、アタシは暇じゃねーんだぞ」
「私とて暇を持て余している訳ではない。本局の航空隊と次に行う予定の交流会について打ち合わせに来ているのだからな」
「それなのにか? へーん、副隊長ってのは随分なご身分なんだな」
「事務レベルで調節済みだからな。今日は隊長同士の顔見世程度なのだ。私はそれほど必要ではない」
「……段々と手を抜くのが上手くなってきたと言うか」
「お前を見ていると息が詰まりそうだ」

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2008年3月 6日 (木)

氷柱ん 後

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2008年3月 4日 (火)

氷柱ん 前

*Baby Princess SSです。

  

 クローゼットからコートを取り出し、外出の準備。
夜が更けるのもいいところ。カーテンを開けると今だ冬の装いである木々が寒々しくその身を揺らしていました。

「まさか……聞かれてたなんて」

 あのように年上に甘えられることなど――冗談半分を含んでも――年頃の男の子にしてみたら効果は抜群です。
耳を撫で、頭の中をグルグルと駆け巡る言葉を、何とか口にしたとき。
今の時刻のことなど遥か彼方に忘れ去っていました。
恥かしさを吹き飛ばすように大声で、半ば叫ぶようにしてしまったのは仕方のないことかもしれません。
しかし、今思い出してもよくあんな恥かしいことを言えたものだと、思い出すだけでも顔が赤くなる思いです。

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2008年3月 3日 (月)

ひな祭り

 

「えらい豪勢なお雛様やねぇ」
「うん。実家のを持ってきても良かったんだけど、やっぱりね」
「はやてちゃん、ヴィヴィオもお手伝いしたんだよー」
「そかそか。偉い偉い」
「えへへー」

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2008年3月 2日 (日)

新婚なの! 8-7

 

「おっはよー、ヴィータ」
「おはようだ。なんだ、やけに元気だな」
「そうかな? フーガもおんなじこと言ってたよ。アタシから言わせれば二人が元気ないだけだよ?」
「やっぱそう、かな……」
「うん。あっちは酷い筋肉痛なんだって。ヴィータはどう?」
「似たようなもんだ。んでさ、メンテ知らねーか?」
「えーっとどうだったかな? さっき部屋を出てった気がしたよ」
「ふぅん。何処行ったか分かんない……よな」
「うん、知らない。何処に居ても呼び出しに応じれれば問題ないしねー。別に良いんじゃないかな?」
「いや、それじゃダメなんだけどよ……んじゃ後で探しとく。ありがとな」
「はいはーい、お疲れさーん」

 出勤するなり三人娘の元気印と顔合わせ。
言うところによると、フーガが酷い筋肉痛なのだという。
様子を見に行くために早々に話を切り上げる。メンテは後でいいだろう。
長い長い、部屋の端まで連なっているデスクに座る同僚の中から目当ての人物を探す。
酷いといっていたのだから、デスクに突っ伏していることだろう。
みな、業務初めの準備に追われ忙しくコンソールを叩いたり書類を纏めている。
幾らか歩き、自分が入った入り口から奥まった(逆の入り口からは一番近くの)席に一人、我関せずといった風にしているヤツを見つけた。
窓際側、天辺を目指して昇りながらゆるゆると空気を暖めていくお天道様の恵みを一身に受けている。
ぐるっとデスクを回り込み、ソイツの真横に着いた。
気づかない。眠っているんだろうか。
筋肉痛だと言うなら可哀想だけど、寝かしとく訳にもいかない。なるべく穏便に起こすことにした。

「おい、朝だぞ」
「……ヴィ、ヴィータかぁ」
「そんなに痛いか、身体」
「あ、ああ……。身体中が石にでもなっちまったみたいでさ、動かすと痛ーんだ」
「アタシと一緒だな。医務局に行ったか?」
「昨日のうちに行ったよ。朝起きたら全然動けないもんだからさ……でもよ、全然効果ないでやんの」
「うーん。今日はどういう予定だ?」
「午後から通常の訓練があるだけ。ありがたいことに」
「なら昼まで寝てろ。身体動かないのは分かるからさ」
「あ~、ありがてぇ。ヴィータ、ガクッ……」

 相当キツイみたいだ。
こうやってヘタっているのを見ると、改めてなのはに対する感謝の念が強くなる。
治療魔法かけててくれなきゃ、コイツに並んでアタシもひっくり返ってたんだろうし。
そこまで考えて、寝ている自分に魔法をかけているなのはの姿が脳裏に浮かび、顔がカアッと熱くなるのを感じた。
頭を振って平静を装えば、誰かにバレてやしないかと早々に部屋を後にしようと思った。
次はメンテを探さなければならない。
出て行ったというぐらいだからフーガより症状は軽いのだろうが、様子を見ておかなくちゃいけない。一応、な。

「じゃあな。ちゃんと昼前に起きろよ」
「……俺の腹時計は原子時計より正確だ」
「あっそ」

 伏せたままだが、大丈夫だと言いたいのだろう。
隣を通りかかった同僚に目配せしてから、部屋を静かに出た。
 
 
 
 
 
 始業時の慌しさも一通り過ぎ、往来する人たちの足取りもゆっくりになる。
一週間ぶりの管理局。すれ違う人の中には当然顔見知りも居て、声を交し合う。
何人かはアタシを捕まえて話したい事があったらしいけど、急用以外は後回しにしてもらった。
メンテを探すのはそれほど急用ではなかったのだけど、立ち話をするにはまだ筋肉痛がしっかり取れていないような気がしたから。
すると、皆が皆、急用などなかったらしく「後でメールするわ」程度のものばかりだった。
通路を抜け、中央ロビーに到着した。
さて。ここから何処へ行こうか、と思案を巡らすように視線を泳がせた。
ロビーには流石に人が多く、ああ、活気があるなぁなどと年寄り臭いことを考えていれば、人ごみの中に見知ったピンクの頭を見つけた。
久しぶりなのだから声をかけようか、それとも先に用事を片付けようか。
今一決めかねると言うか、面倒くささから後者を採ろうとしたところでピンク頭がこっちを向いた。
今動くと余計な誤解を招きそうだ。
横目でこちらを捉えたまま、今まで話していた相手に挨拶するとこっちに向かってきた。

「久しぶりだな、ヴィータ」
「ああ、そっちこそ」
「最近顔を見せないからな。主が寂しがっておられたぞ」
「うぅ……今度帰るって言っといてくれ。中々一緒に休みが取れないんだよ」
「一緒? あ、ああ。そういえばそうだったな」
「……んだよ。その顔は」

 往来の激しいロビーだから、至って真面目な顔をしていたシグナムだったが、アタシの言葉にニヤリと口の端を曲げる。
コイツ。家族の前(はやてを除く)では本性だすよな。
仕事してる時、特に女連中の前では"毅然としたベルカの騎士"を演じてやがるけどよ。
まあ、それを演技とは言わないか。幾つかあるシグナムの一面であることは確かだしさ。

「ふふふ。いや、済まんな。改めてお前が結婚したのだなと実感したと言うか……くくくっ」
「そ、そんなに可笑しなことかよ」
「勘違いするな。馬鹿にしているわけではないぞ?」
「だったら何で笑うんだよ」

 まだ笑いが止まらないらしい。
ここでは話が出来ないと思ったのか、無言で手招きをしつつ窓際へ移動を開始してしまうので仕方なく後を追った。
一々手間のかかるやつだ。

 

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2008年3月 1日 (土)

八神家カテゴリー

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