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新婚なの! 9-1 (1)

「たっだいまー、はやてー!」
「こんにちは、はやてちゃーん」

 久しぶりの光景。1ヶ月ぶり、それよりもう少し振りぐらいにくぐる玄関。
上がり口で元気よく、部屋の奥へ届くように挨拶をすればドタバタとした足音とともに家の主が駆け寄り、勢いよく抱きしめます。

「お~ヴィータ~、よう来たねぇ。よしよしよし」
「えへへへー。はやて~」
「うーん、よしよし。そいでなのはちゃん、お久しぶり。元気してた?」
「うん、お陰さまで」
「そかそか。二人とも元気そうで何よりや。ささ、立ち話もなんやから。上がって上がって」
「はーい。お邪魔しまーす」

 久方ぶりのヴィータを抱きしめるはやて。
はやてに抱きつかれながら器用に足だけで靴を脱ぐヴィータに、遅れて家に上がるなのは。
普段は靴を揃えるのはヴィータですが、今日ばかりはなのはが揃えるます。
そのままリビングへ通され、ソファーに腰掛ける二人。
ヴィータは元々自分の家であるのだし、なのはも何度か来たことのある家だけに動作は慣れたもの。
しかし、なのはは少しだけ腰が浮くような、そわそわして深く腰掛けようとしません。
台所へお茶請けを用意しに行こうとしていたはやては、その僅かな変化に目敏く食いつくのも当然でしょう。

「んっふふー。どうしたん、なのはちゃん」
「え、え? べっつにー」
「そかー? 落ち着かんみたいやけど? まあそれも当然っちゃー当然かもしれへんけどなー」
「んー。どうしたんだよ、なのは。やけに落ち着きねーな」
「なんでもないったら、ホント。気にしないでヴィータちゃん。ね?」
「怪しいなぁ。お前のさ、"気にしないで"ってのはよ。こっちが気にしなきゃいけないことなんだよな、大概」
「う、う~」
「うんうん。それは私等も重々承知してるところやけど」
「だけど、なに?」
「そういうのは今までフェイトちゃんの役目やったやん? それがヴィータになったって辺りに感慨深いものがあるわー。にへへへ」
「ア、アタシに変わったとかどういう意味だよ!?」

 茶化すように軽く振舞いながら、二人の様子をチラチラと窺うはやて。
なのはの言葉に、ヴィータは相変わらずだと言わんばかりに呆れながらも、その目は心配の色を含んでいます。
そんな二人のやり取りが、面白くて堪りません。
もっと二人のやり取りが見たくなってくるのは当然でした。
飽くまでも自然に、そうした意図が透けて見えないように、もう一押しするはやて。
案の定、ヴィータは腰を上げて食いつきました。

「勿論、ヴィータだって同じように心配しとったことは、私以外にも知るところやけど、口に出してたんはフェイトちゃんやったやろ?
 それがなによ。私が知らんうちにすっかりヴィータまで口にするようにして。しかもエッライ自然に。んー? その辺どうなんよって気になるやん」
「ど、どうなんよって言われたって。別になんつーか、その」
「しかも注意されとるというのに、なのはちゃんの嬉しそうなこと」
「えへへ。それはなんと言いますか、その」
「二人には私の知らん時間が随分あるってとこを見せ付けられたみたいで、なんや妬けるわ」
「そうかな~? 妬けちゃうんだ。んもー、照れちゃうな~。ねぇ、ヴィータちゃん」
「し、知らねーよそんなこと! こ、これは別にアタシがしたくてって訳じゃなくてフェイトが居ない間はその、なんつーか」

 最初はなのはも同様にからかわれていた筈ですが、いつの間にかヴィータを弄ると言う点ではやて側に立っています。
二人に挟まれてしまえば、ヴィータに打つ手なし。口をモゴモゴと、あの勢いは何処へやら。腰を下ろしてしまいました。
しかし追撃の手を緩めないはやて。
アイコンタクトの一つもせず、なのはと共に話を続けるのでした。

「なんつーか、なぁに?」
「そこが一番重要やない? なぁ、私も聞きたいなー」
「ホント、なんでもないって。フェ、フェイトがさ……うぅ」
「なるほどね。フェイトちゃんが海に出てる間に代わりをしとっただけやと。そう言いたいん?」
「あ、いや。そこまでは、その……」
「えへへー。そんな風に言っても騙されないからねー」
「だ、騙されるとかどういうことだよ」

 どんどんと俯いてしまうヴィータの頬を、つんつんと人差し指で突付くなのは。
苦し紛れの言い訳というか、そうやって本音を口にしていないことは、はやてのみならずなのはも十分に承知しています。
ヴィータ本人も、そんな小手先が二人に通用するわけないと分かっていながらもそうせざるを得ませんでした。これが生来の気質なのだから仕方ありません。
勿論、二人もヴィータがそういう態度を取るだろうと分かっていて話を振っているのですが。

「ツンデレ、言うんかな。素直になのはちゃんが心配やからって言えへんの」
「な、なな! それにそのツンデレってなにさ! アタシは別にそういうんじゃねーから! それ意味間違えてるって!」
「良いの良いの、私は今のままのヴィータちゃんが大好きだから~」
「ああ、なのはちゃん! そうやってヴィータ独り占めはようないよ!」

 勢いだけで押し切ろうにも、特にこの二人相手では無理があります。
プリプリと怒ってみせる、そんなヴィータが可愛くて、なのはは我慢しきれずその腕を伸ばします。
柔らかくプニプニとした頬に頬擦りするなのはを見れば、暫くご無沙汰のはやてだって我慢できません。
お茶請けを取りに立ったはずの足で、そのままヴィータの座るソファーに飛び込みました。
蛙が潰れたような声を出すも、抱きついた二人は知らん顔。
頬擦りするなのはに、ぽじょぽじょのお腹を鼻でくすぐるはやて。
左右の手で迫り来る顔を押し退けて抵抗の意思を見せるヴィータ。左手は遠慮なく、右手は控えめに。
しかし。ヴィータと戯れるのが大好きな二人にとって、その程度の障害など道端の小石ほどにもならないのです。
寧ろそうやって嫌々してくれた方が、逆に燃え上がるというもの。
特にはやてはそういう反応をするヴィータが新鮮で、背中に回した手でわき腹を擽ったりするのでした。

「も、もう! 二人ともいい加減にしてくれー!」
「エエやないの~。一ヶ月以上ぶりのヴィータ分なんやしー」
「私は一週間ぶり~。えへへー」
「はやてはまだしも! なのは! お前はいい加減にしろ! 毎日やってんじゃねーか!」

 尚も止めようとしない二人に、口ではこう言いながらも毎度のことだなぁ、と内心諦めの気持ちで気の済むまでさせることにしたヴィータでした。


 


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