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新婚なの! 9-3 (2)

 
「なぁ、はやて~。誰が来て――おっ、ザフィーラ! ひっさしぶりじゃんか!」
「ああ。身体の方はどうだ、ヴィータ」
「どうだも何も、いっつも元気だってーの! えへへ、お前にこうすんのもホント久しぶりだなぁ~」

 一足遅くリビングへ顔を覗かせたザフィーラに、一目散に飛びつくヴィータ。
首周りの長い毛の内側に顔を埋め、以前のようにモフモフとその柔らかな感触を楽しみます。
その身を守るために少し硬い毛に覆われていますが、その内側は体温を保ったりするために柔らかで短い毛が密集しているのです。
この種類の狼に詳しいでもなければ、家族しか知りえない内容です。

「ヴィータ? 久しぶりなんは分かるけど。ほれ、向こうで旦那さんがこわーい顔で睨んでらっしゃるよ?」
「だ、そうだ。ヴィータ」
「……むーん、プハァ! おう、そうするー」

 ザフィーラは他の犬やらと同じで頻繁にお風呂に入ったりしませんが、獣臭いでもなく、何か良い匂いがするぐらいなのです。
これで最後だと言わんばかりに顔を押し付け、ぎゅーっと抱きしめてからソファーへ戻ります。
しかし、ソファーで待つ旦那様は別に怖い顔などしておらず、ヴィータはもう少し抱きついてても良かったのに、と思いました。

「まだシャマルが来るから。ちょいコート片付けてくる言うといて」
「はーい。お、そうと噂をすればシャマルじゃんか。久しぶり~、シャマル」
「は~い、ヴィータちゃ~ん! シャマルお姉さんですよ~」

 コートを持ったはやてが奥へ引っ込んでいくと、入れ替わるように反対側からシャマルが出てきました。
ヴィータの声に手を振りながらやってきては、隣へ腰を下ろしぎゅーっと抱きしめ頭にスリスリと頬を擦り付けます。
頭を抱きかかえられ、顔に大き目の柔らかオッパイがこれでもかと押し付けられるヴィータは、少しばかり鬱陶しく感じたようです。

「うぃー。ちょっとくっ付きすぎだ、シャマル。それに手が冷てーって」
「外から帰ってきたばかりだし、手を洗ったんですもの。だ・か・ら~」
「んだよー。気色悪ぃ声出しやがっ……っひゃ! むぎゅ!」
「ヴィータちゃんが暖めて~。あ~、昔を思い出すわ~。やっぱりヴィータちゃんの高い体温が一番よねー」
「だ、だから冷てーって言ってるだろ! お前は昔っからそうやって触るんだからよー!」
「…………あの、シャマルさん。ちょっとお話があるんですけど」

 服の中へ冷たい手を突っ込んだかと思うと、膝に乗せ思い切り抱きしめます。
ヴィータで暖をとるなど、これこそ家族ででしか出来ない行為です。
シャマルの腕の中で必死に暴れますが、腕が完全に折りたたまれた状態では力も入らない上、皆が思っている以上にシャマルは力持ちなのでした。
モゴモゴと髪を振り乱しながら暴れるヴィータに、幸せそうに頬を緩ませるシャマル。
しかし、そんな状況を打ち砕く一言が、直ぐ近くから発せられました。

「―――あ、あ。なのはちゃん? どうしちゃったのかしら」
「シャマル。早くその手を離せ」
「え、ええ。あ、あのねなのはちゃん。ちょーっと久しぶりでテンション上がっちゃったっていうか、その~」
「ブハッ! く、苦しかった~。さんきゅーな、なの……は」

 シャマルにぴったりと横へ付けたなのはの目は見事に据わっています。
この中では一番付き合いが長いヴィータですら、言葉に詰まってしまうほど。
その場に居合わせた三人は、背後に漂う黒いオーラが見えたような気がしました……が。

「さっき、ヴィータちゃんを抱きしめてましたよね?」
「え、ええ」
「そこで言ったこと、覚えてますか?」
「え、えーっと……体温が高いわn」
「違います! その前です!」
「ま、前!? えーっと……あ、ああ! 昔を思い出すわ~、ね!」
「(よく覚えていたな、シャマル)」
「そうです。 そこでモノは相談なんですけど。ヴィータちゃんと昔何してたか教えてもらえませんか?」
「…………へ? そんなことでいいの?」
「はい。え、えっと何か違うことだと思いましたか?」
『お前のその様子じゃ誰だってそう思うぜ』
『……ここは同意しておけばいいのか? ヴィータ。お前の伴侶だろう』
『構やしねーよ。アタシが言ってるんだからよ』

 あの纏っていた(ように見えた)黒いオーラは何だったのでしょうか。
怯えるシャマルに呆れるヴィータ。念話でこっそりと応えるザフィーラ。
そんな三人を他所に、なのはは一人訳が分からぬと言った顔をしてこちらを見ています。

「そ、そうね。ちょっと勘違いしちゃったかも。何せなのはちゃんに会うのも久しぶりだったしね。ねぇ、ザフィーラ」
「(私に振るのか、シャマル)流石、管理局期待のエースと言うところだろう。風格が出てきたようだ」
「(それはフォローになってねぇぞ)まあそう言うこった。んで、シャマル。答えなくて良いぞ」
「え、えー! どうしてー? ヴィータちゃんの過去を知る貴重なチャンスなのにー」
「うっせ! 世の中にはな、知らなくたって良いこともいっぱいあるんだよ」
「言わなくて良いの? せっかくなのはちゃんともっと親しくなれるチャンスだと思ったのに……」
「バ、バカ! だから余計なことを言わなくて良いっつってんだろ!」

 依然シャマルの膝の上にいるヴィータは肩をグラグラと両手で揺らしますが、当の本人は果敢にもなのはとの会話を試みようとします。
頭が揺れ、まともな言葉一つ発することの出来ないシャマル。
なのははそれを止めさせようとしますが、ヴィータも己の過去が懸かっているのです。簡単には引けません。
三人がソファーの上で揉み合っている中。
足元で寝そべっているザフィーラは密かに「念話を使えば良いものを……」と思ったりして静観を決め込むのでした。

「ぎぎぎぎ……! は、離せなのは!」
「だーめ! こうしてないとシャマルさんの邪魔するんだもの!」
「おやおや。なに三人で楽しそうなことしてんの? それも私に内緒で。するなら声かけてーな」
「あっ、はやて!」

 なのはに抱きかかえられたヴィータを覗き込むと、軽々と持ち上げてしまいます。
その勢いでパタンと後ろへ倒れてしまうなのはを避けて、借りてきた猫のように大人しいヴィータを椅子へ着かせます。

「さて。二人が帰ってきたことやし、ご飯にしよか?」

 はやては元気よく、夕ご飯開始の合図を告げました。


 


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