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新婚なの! 9-3 (3)

  
「やっぱはやての作るご飯はギガ美味だなー。あ~あ、お腹いっぱい」
「お粗末さまでした。いや~、私もホント久しぶりで気合入りまくりやったもん。そう言ってもらえて嬉しいよ」

 はやて達とすれば、久しぶりのヴィータを交えた夕ご飯。
ヴィータ達にすれば、久しぶりの大人数での夕ご飯。特にヴィータは家族との、という注釈がつきます。
どちらにしても、今回の夕ご飯が楽しくないものになる要素が皆無で、誰もが予想したとおり、とても楽しい食卓になったのです。
テーブルいっぱいに並べられたお皿は、次々に片付いていき、はやては内心足りなくなるのでは?と心配したほどでした。
今は、ご馳走様の挨拶をして、お茶を一杯。一服しているところです。

「これから毎日ヴィータちゃんが来てくれないかしら?」
「それは普段の食事に不満があるっちゅーことの裏返しかな? いやー、シャマルがそないな事思ってたとはねぇ」
「あ、いえ! 決してそうじゃなくて、えぇっと~……ねぇ、ザフィーラ?」
「……太るぞ、シャマル」
「ああぁんもー! フォローしてよー!」

 勿論、ザフィーラの徳用おしゃれペット皿(大型犬用)にも、テーブルの上と遜色ない食事が盛られていました。
しかし、それは偶にであるから――例えば盆と正月――良いのであって、毎日では確実にカロリー取りすぎ。ダイエット一直線です。
八神家の永遠の成長期と言えばヴィータですが、その実シャマルの食いっぷりも負けていません。
しかも、シャマルの縦の成長期は既に横への成長期に変わりつつあるのですから、当然のことです。

「あははは。まあ、思わず食べてまうって言うのは嬉しい評価やね。そんでそこの新婚さん。義姉の作ったご飯は如何でしたかな?」
「む~ん……!」
「そうやってさっきからエライ難しい顔してらっしゃるけど。なにか気になることでも?」
「あんだよ、なのは。はやての作ったご飯になんか文句あるってーのか。滅多なこと言うもんじゃねーぞ。うん」
「まぁまぁ、そう言わんと。そない難しい顔してる可愛い顔に皺寄ってまうって」
「むむむ……!」

 ご飯を味わう、と言った風でなく何かを鑑定するような、店の主人としては嫌な客タイプな態度だったなのは。
食べ終わり、みなが一服している間も、空になったお皿とはやてを交互に眺めていました。
ふーむ、と鼻から息を抜くと難しい顔を保ったまま、ボソリとつぶやきました。

「これがヴィータちゃん好みの味……なの」
「は、はぁ。そりゃそうかもしれんね。こっち来てから初めて食べたんが私のご飯やし、それが基準になってんねやろ」
「そんなレベルじゃねーよ! 色んな世界で色んなモン食ったけど、はやての料理が一番美味かった!」
「そか? 桃子さんの料理もエライ褒めてたと記憶してるけど」
「あ、あれはさ。桃子さんは、なんて言うか……いー! はやての意地悪!」
「おほほほ。相変わらず可愛い子やね、ヴィータは」
「むーん」

 悩んでいたなのはの眼光が鋭く光ります。何かを決意したようです。
すっと面を上げはやてに向き直ると、一旦深呼吸をして、しっかりと言いました。

「はやてちゃん!」
「は、はいな。なんじゃらほい」
「私にも料理を教えて欲しい! はやてちゃんの味を教えて欲しいの!」
「―――は、はぁ。なんや、そんなことか。そない気合入れんでも普通にお願いしてくれたらエエやん。知らん仲やないやろ?」
「そうじゃなくて。ヴィータちゃんの旦那様として教えて欲しいの!」

 なのはの思わぬ提案にその場にいる全員が例外なく驚きました。
寡黙なザフィーラも流石に尻尾の毛が逆立ち、シャマルはひっくり返そうになったところでテーブルを掴み辛うじて体勢を保ちます。
なのはの隣、はやての左前に腰掛けたヴィータはあんぐりと、これまた見事に大きく開いたまま固まっていました。

「……わ、私の料理、を? いや、言うてくれるのは有難いけど、上手になりたい言うんなら桃子さんに習ったほうが私は……」
「良いの! 私ははやてちゃんに習いたいんだから。それに、お母さんにはそんな会えないし」
「いや。私らもあんま会えへん身やと思うんやけど……」
「お願い、はやてちゃん!」

 手を合わせ、頭を下げるその姿に、はやても断りきれないと言った雰囲気です。
ちらりとヴィータに目配せしますが、なのはを見るばかりでこちらに気付きそうにもありません。
十年来の親友であり妹の嫁にここまで頼まれて断ったとなれば、人が廃るというもの。
はやては、なのはに面を上げさせ、ゆっくりと頷くのでした。

「やった! ありがとう、はやてちゃん!」
「う、んまあ。教えるとか大層なことは出来へんやろうけど、メールとかで受け答えぐらいはするから。うん」
「はーい。よろしくお願いします、はやてちゃん」
「…………まあ、精々がんばれよ」

 屈託なく笑うなのはの顔を、なんとも言えない顔で見つめているヴィータでした。

「うんうん。やっぱりはやてちゃんの料理は三国一の美味しさってことよね!」
「ああ。それは多くの人が認めるところだと思う、がな」
「がな、って。何かあるの?」
「……シャマルは習おうと思わんのか。確かに、食べられないものを作ることはなくなったようだが」
「ひっどーい。あのね、ザフィーラ。人にはそれぞれ役割ってものがあるの。分かるかしら?」
「確かに私は皆を守る盾の守護獣を名乗り、お前は泉の騎士だと言ってはいるが、それと何か関係があるのか?」
「ええ。そうやって役割が決まっているのは、日常生活においても変わらないと思うのよ。
 私は気付いたの。この家では食べる役だって。美味しいものを食べて"美味しいわはやてちゃん!"と言う係りなの!
 そうやって、はやてちゃんが"明日も美味しいご飯を作ろう!"って気持ちにエールを送る役なのよ! 分かるかしら、ザフィーラ?」
「……そうだな。それが家族のためと言うヤツだろう」
「な、なんだか納得いかないわ……」


 


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