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新婚なの! 9-1 (2)

「ふぃー。ヴィータ堪能したわぁ」
「私もー」
「エエなぁ、なのはちゃんは。毎日こうやってヴィータ分を補充してんねやろ?」
「や~ん、もう。そんなこと言ったら晩から朝までだよ~」
「バ、バカ! そういう余計なことは言わなくて良いんだよ! それにちょいと言い辛そうな振りすんな!」
「ほらほら、ゆっくりしてなきゃ。は~い、いい子ですねぇ」
「ったく。んなら黙ってろよ……」

 二人が談笑する横で、一体なにがあったのかと思うほどぐったりとソファーに横たわっているヴィータ。
しかし、なのはが余計なことを口走りそうになれば頭を上げなければなりません。
徹夜明けのような顔でなのはを睨みますが、持ち上げた頭をナデナデ。慣れた手つきで適当にあしらわれてしまいます。
もう一つ文句も言いたいところでしたが、ぐったりと疲れが抜けないこともあって渋々寝転びなおすのです。
はやては、そんな微笑ましいやり取りを見ていたのですが――

「さて。なのはちゃん」
「なにかな。はやてちゃん」
「オホン。ヴィータと結婚してからな、家に来るんは初めてやったね?」
「うん、直ぐに挨拶に来れなくてごめんね。でも、それがどうかしたの?」
「まあまあ。そんで、今。なのはちゃんは私のことなんて呼ぶかな」
「何てって……はやてちゃん、だけど」
「そう、それや。はやてちゃん。うん、昔からそうやね。私のことははやてちゃんや。可愛くて優しい出世頭のはやてちゃん」
「???」
「そんななのはちゃんは、この度ヴィータと結婚したわけやね。うん、改めておめでとう。なのはちゃん」
「あ、うん。ありがとう。はやてちゃん」

 祝福の言葉を述べながらもニサリと笑う。その笑いは十年来の付き合いを持つなのはをピリピリと警戒させます。
その隣で。こういうときは関わらないのが一番、とヴィータはタヌキ寝入りを決め込みました。
今この時だけは難を逃れることが出来る。敢えて火中の栗を拾うことはありません。
勿論はやても、ヴィータをそのままにしておく訳はありませんが、取り合えず、この場はなのはにターゲットを絞りました。

「なのはちゃんの可愛い可愛いお嫁さんは? そう、ヴィータや」
「うん。可愛い可愛い、ね。それは充分承知してるよ。三日見たって飽きないよ」
「そんなお嫁さんヴィータは、私の可愛い可愛い娘みたいなもんや」
「……そ、そうなの? ヴィータちゃん」
「……ノーコメント、だ」
「今はそういう感じやん。そこでここからが本題。なのはちゃんが結婚したんは誰の娘さん?」
「え、えーっと私が結婚したのはヴィータちゃんで。はやてちゃんの説を採用すると、ヴィータちゃんは娘なんだよね」
「分かったかしらん?」
「ヴィータちゃんははやてちゃんの娘だという考えを採用すると……だから?」

 なのはは判りかねるといった表情ですが、反対側に頭を向けているヴィータは何となしに何を言いたいのか分かった模様。
頭の天辺にクエスチョンマークを浮かべているなのはに、はやては胸を張り、鼻をふふんと鳴らして、こう、答えました。

「と言うことはや。なのはちゃんは私の義理の娘になるっちゅうことやね」
「……うーん。そういう事になるのかなぁ」
「義理と言えど娘は娘。であるからして、今日からなのはちゃんは私のことをお義母さんと呼ぶこと!」
「お義母さんっ!?」

 流石に腰を上げるなのは。
その反応にまずまずといった感じで頷くはやて。
ゆったりと背もたれに身体を預け、足と腕をゆっくりと組んではなのはを横目で見上げます。
予想通りの展開に、やはり口を挟まなくて正解だとタヌキ寝入りを続行するヴィータ。
ぽかーん、と口を開けたままのなのはに、はやては催促するように迫り出しました。

「結婚報告済んだんやったら次はそう来るべきやと思わへん?」
「うーん。何だか言い辛いなぁ。でもそうだよね。ヴィータちゃんと結婚したのなら、はやてちゃんはお母さんかぁ」
「(なんで納得してんだよ、なのは)」
「うん、そゆこと。ほれほれ、なのはちゃん。はよう私のことお母さんと呼んでみ?」
「……そうだね」

 何を思ったのか知らないが、なのはに「お義母さん」と呼ばせてみたいはやて。
小学生からの付き合いであるはやてに対して、今更ながらに呼び方を変える、しかも「お義母さん」に。
それは顔に出さない以上に抵抗を感じるものでしたが、暫し思案を巡らせて決めたようでした。
楽しそうに――幾らか悪巧みを含んでいる――なのはの次の言葉を待つはやて。
口が動き、その言葉を待つはやてでしたが、なのはは一つ。前置きをするのでした。

「あのね。それだったら、若しもの話だけど」
「うん? ああ、みんなの前で嫌やったらエエよ別に。私らの間だけでも構わへんし」
「ううん、そういうんじゃなくて」
「そんなら何かね」
「若しね? 私とヴィータちゃんの間に子供が出来たら。もしそれが三年以内だったら、はやてちゃんは十代でお祖母ちゃんだねって」
「………………は?」
「だってそうでしょ? ヴィータちゃんが娘で、娘に子供が出来たらはやてちゃんはお祖母ちゃんになるんだもん」
「…………うん?」
「私のお母さんには少し早い孫だけど問題は無いよね。だけどはやてちゃんは十代だからどうかなって思ったんだけど。そっか」
「あ、いや、ちょっと」
「はやてちゃんがそうして欲しいなら吝かじゃないよ。凄いね、私達の中で一番のりじゃない? お祖母ちゃんになるの」
「いや。いやいやいや! ちょい待ちなのはちゃん!」

 名案!とばかりに手をポン、と打つ。
悪意は見えません。ただ、純粋に思いついた事実を述べているだけ――という風にヴィータには感じられました。
まだ続けようとするなのはを止めるために慌てて立ち上がるはやて。
ガッシリと両肩をつかみ、少々余裕の無い目つきでなのはの大きな蒼色の瞳を見据えます。
しかし、当の本人は何処吹く風とでも言いたげに、にっこりと微笑み返しました。

「なんで? 家族が増えるって素敵なことじゃない。まだそういう予定は無いつもりだったけどね。
 孫ってとっても可愛いって聞くし、リインちゃんも喜んでくれるんじゃないかな? 歳の近い子っていないじゃない、私達の中で。
 それなら私はお父さんかな。お父さんってのも変だけどヴィータちゃんが奥さんなら私は旦那さんってことになるし。ね? はやてちゃん」
「……ごめん。そんな素敵な家族計画を想像しとるとこ悪いけど、やっぱ先のは無かったことにしてくれへんかな」
「なにを? 近いうちに子供を作るって話?」
「あ、いやね。それは構わへんのや。うん、子供は可愛いもんやし。そうやのうてその前」
「前って言うと……はやてちゃんがお祖母ちゃん一番乗りだねって話?」
「ちゃう。その前の前。ヴィータが私の娘やん?ってところ。 やっぱな、何ていうか思い直したんよ。うん」
「え、ヴィータちゃんを娘じゃなくしちゃうの!?」
「娘言うかね。やっぱヴィータは妹やと思うわけよ。うん、外見が変わらんだけでね? 昔から妹みたいというか妹そのものな訳よ」
「う~ん。そう言われればそういう気もするね」
「せやから、なのはちゃんは私のことをお義姉さんと呼ぶべきやないかなーと、ね? そういう事にならへんかな。いや、そういうことよ」

 ああ、なるほどね。と素のままのなのはと、両肩をガッチリ掴んで割と余裕の無い態度のはやて。
傍観を決め込んでいたヴィータは、お祖母ちゃんと呼ばれるのがそれ程嫌だったんだ、とボンヤリ思うのでした。
お祖母ちゃんといえば、海鳴にいた頃の老人会のゲートボール仲間に、伝説の三提督の一人。ミゼットばーちゃん。
良いイメージしかなく年寄りも良いもんじゃんか、という認識のヴィータにとって何がそれほど年頃の乙女を動揺させるのか分かりません。

「(やっぱアタシは妹って位置なんだな。リインははやての娘だけどアタシの妹って感じだし、この辺どうなんだろ……)」

 頭の後ろでは一件落着したようで、はやてはご機嫌に笑い声を上げています。
自分に飛び火しなくて良かったと思いながら、ようやく頭を上げるヴィータ。
相変わらず訳の分からぬ緊張感が漂うものの、実家の――というかはやての――変わらぬ様子に、自然と心が解れていくのを感じたのでした。

「あれ、ヴィータちゃん。もう良いの?」
「まあな。お前があんま騒ぐもんだからオチオチ寝てられねーの」
「え~。私だけじゃないよ? ね、はやてちゃん」
「もう、ヴィータったら。私はなのはちゃんを盗ったりなんてせぇへんから安心しや? 何を警戒しとるの?」
「ぶっ! な、何言ってんだよ、はやて!」
「おうおう。ヴィータもいつの間にかいっちょ前に嫉妬したりするようになったん? うう~ん、お姉ちゃん嬉しいわぁ」
「だから違うって! そういうんじゃねーから!」
「あのねー、はやてちゃん。実は凄い話があるんだよー」
「凄い話? おお、それは気になるなぁー」

 解れたのも束の間。直ぐに緊張を強いるなのはとはやて。
秘密の話を喋りたくてウズウズして居ても立ってもいられないなのはと、その態度に興味津々と目を輝かせているはやて。
ヴィータは素早く、それこそ魔法を使ったのではと思わせるほどの速度で立ち上がりますが、敵もさるもの。
はやてにペン、と見事にお凸をデコピンされ、へにゃっと尻餅をついてしまいました。
ヴィータが体勢を整える前に、なのははこっそりと耳打ちをするのでした。

「―――え、えー! そないな事があったん!? いや~、悪いけどちょっと信じられへんわー」
「そうでしょ? 私だって信じられなかったもん。だけどね、これは紛れも無い事実なんだよ」
「ちょ、ちょ! なに吹き込んだんだ!」
「んっふふー。なにかなー? 気になる? ヴィータちゃんがどうしてもって言うなら、教えてあげてもいいよ~?」
「当然っ――あ、いや。待てよ、うん。騙されないぞ。そうやってまたアタシをからかうつもりなんだろ」
「ヴィータちゃんがそう思うならそれで構わないよ? ねー、はやてちゃん」
「そーやね。うえっへっへ。イヤー、なるほどなるほど。ふぅん、ヴィータがねぇ~」

 ニコニコとご機嫌ななのはに、口元に手を当ててニヤニヤとするはやて。
二人の真意を今一測りかねるヴィータでしたが、これ以上話を引っ張るべきじゃない、どちらにしろ良い方向へは転びません。
耳打ちの内容は当然気になりますが、グッと堪えることにしたのでした。
それでも、僅かばかり口から漏れてしまうのです。

「うぅー。なんだよー、なのは。はやてまでさ、アタシのことよ……」
「まあまあ。久しぶりだからちょっとテンション上がっちゃっただけだよね?」
「うーん……ま、そういうことやね」

 なのはのフォローに、あっさり乗っかるはやて。
じっとりと二人を上目遣いで見るヴィータは、少しばかり実家に帰ってきたことを後悔するのでした。


 


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コメント

今回のはとても笑えましたーw
はやての行動もですがなのはの切り返しもよかったです。
でもあの切り返しは本当に素ですか?^^;
はやての家の回から書き方変わって柔らかい印象になってますし
より和やかさが出てた?ように思いますw

投稿: 時祭 | 2008年3月18日 (火) 11時33分

 コメントありがとう御座います。

>でもあの切り返しは本当に素ですか?^^;

 ヴィータにはそう感じられても、付き合いも長くなっていますし、
「そういう」対処法を学習したのかもしれませんね。

>はやての家の回から書き方変わって柔らかい印象になってますし

 少々事情がありまして、「新婚なの! 9」の区切りから三人称視点に切り替えました。

投稿: あや | 2008年3月19日 (水) 23時07分

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