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新婚なの! 8-3 (1)

「おっはよー、ヴィータ」
「おはようだ。なんだ、やけに元気だな」
「そうかな? フーガもおんなじこと言ってたよ。アタシから言わせれば二人が元気ないだけだよ?」
「やっぱそう、かな……」
「うん。あっちは酷い筋肉痛なんだって。ヴィータはどう?」
「似たようなもんだ。んでさ、メンテ知らねーか?」
「えーっとどうだったかな? さっき部屋を出てった気がしたよ」
「ふぅん。何処行ったか分かんない……よな」
「うん、知らない。何処に居ても呼び出しに応じれれば問題ないしねー。別に良いんじゃないかな?」
「いや、それじゃダメなんだけどよ……んじゃ後で探しとく。ありがとな」
「はいはーい、お疲れさーん」

 出勤するなり三人娘の元気印と顔合わせ。
言うところによると、フーガが酷い筋肉痛なのだという。
様子を見に行くために早々に話を切り上げる。メンテは後でいいだろう。
長い長い、部屋の端まで連なっているデスクに座る同僚の中から目当ての人物を探す。
酷いといっていたのだから、デスクに突っ伏していることだろう。
みな、業務初めの準備に追われ忙しくコンソールを叩いたり書類を纏めている。
幾らか歩き、自分が入った入り口から奥まった(逆の入り口からは一番近くの)席に一人、我関せずといった風にしているヤツを見つけた。
窓際側、天辺を目指して昇りながらゆるゆると空気を暖めていくお天道様の恵みを一身に受けている。
ぐるっとデスクを回り込み、ソイツの真横に着いた。
気づかない。眠っているんだろうか。
筋肉痛だと言うなら可哀想だけど、寝かしとく訳にもいかない。なるべく穏便に起こすことにした。

「おい、朝だぞ」
「……ヴィ、ヴィータかぁ」
「そんなに痛いか、身体」
「あ、ああ……。身体中が石にでもなっちまったみたいでさ、動かすと痛ーんだ」
「アタシと一緒だな。医務局に行ったか?」
「昨日のうちに行ったよ。朝起きたら全然動けないもんだからさ……でもよ、全然効果ないでやんの」
「うーん。今日はどういう予定だ?」
「午後から通常の訓練があるだけ。ありがたいことに」
「なら昼まで寝てろ。身体動かないのは分かるからさ」
「あ~、ありがてぇ。ヴィータ、ガクッ……」

 相当キツイみたいだ。
こうやってヘタっているのを見ると、改めてなのはに対する感謝の念が強くなる。
治療魔法かけててくれなきゃ、コイツに並んでアタシもひっくり返ってたんだろうし。
そこまで考えて、寝ている自分に魔法をかけているなのはの姿が脳裏に浮かび、顔がカアッと熱くなるのを感じた。
頭を振って平静を装えば、誰かにバレてやしないかと早々に部屋を後にしようと思った。
次はメンテを探さなければならない。
出て行ったというぐらいだからフーガより症状は軽いのだろうが、様子を見ておかなくちゃいけない。一応、な。

「じゃあな。ちゃんと昼前に起きろよ」
「……俺の腹時計は原子時計より正確だ」
「あっそ」

 伏せたままだが、大丈夫だと言いたいのだろう。
隣を通りかかった同僚に目配せしてから、部屋を静かに出た。
 
 
 
 
 
 始業時の慌しさも一通り過ぎ、往来する人たちの足取りもゆっくりになる。
一週間ぶりの管理局。すれ違う人の中には当然顔見知りも居て、声を交し合う。
何人かはアタシを捕まえて話したい事があったらしいけど、急用以外は後回しにしてもらった。
メンテを探すのはそれほど急用ではなかったのだけど、立ち話をするにはまだ筋肉痛がしっかり取れていないような気がしたから。
すると、皆が皆、急用などなかったらしく「後でメールするわ」程度のものばかりだった。
通路を抜け、中央ロビーに到着した。
さて。ここから何処へ行こうか、と思案を巡らすように視線を泳がせた。
ロビーには流石に人が多く、ああ、活気があるなぁなどと年寄り臭いことを考えていれば、人ごみの中に見知ったピンクの頭を見つけた。
久しぶりなのだから声をかけようか、それとも先に用事を片付けようか。
今一決めかねると言うか、面倒くささから後者を採ろうとしたところでピンク頭がこっちを向いた。
今動くと余計な誤解を招きそうだ。
横目でこちらを捉えたまま、今まで話していた相手に挨拶するとこっちに向かってきた。

「久しぶりだな、ヴィータ」
「ああ、そっちこそ」
「最近顔を見せないからな。主が寂しがっておられたぞ」
「うぅ……今度帰るって言っといてくれ。中々一緒に休みが取れないんだよ」
「一緒? あ、ああ。そういえばそうだったな」
「……んだよ。その顔は」

 往来の激しいロビーだから、至って真面目な顔をしていたシグナムだったが、アタシの言葉にニヤリと口の端を曲げる。
コイツ。家族の前(はやてを除く)では本性だすよな。
仕事してる時、特に女連中の前では"毅然としたベルカの騎士"を演じてやがるけどよ。
まあ、それを演技とは言わないか。幾つかあるシグナムの一面であることは確かだしさ。

「ふふふ。いや、済まんな。改めてお前が結婚したのだなと実感したと言うか……くくくっ」
「そ、そんなに可笑しなことかよ」
「勘違いするな。馬鹿にしているわけではないぞ?」
「だったら何で笑うんだよ」

 まだ笑いが止まらないらしい。
ここでは話が出来ないと思ったのか、無言で手招きをしつつ窓際へ移動を開始してしまうので仕方なく後を追った。
一々手間のかかるやつだ。


 


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