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新婚なの! 9-4 (3)

 
「あれ。これヴィータの寝巻きか?」
「えっと。うん、そう。いつも着てるやつ。あんでここにあるんだろ……」
「さっきシャマルが持ってきてくれたんやよね? 実はなのはちゃんの鞄に入っとったんと違う?」
「う~ん……そんな準備良いとは思えないし、そんな風にしてたの見てないから違うと思う」
「そか。まあ素っ裸でおってもしゃーないしね。さっさと着替えてシャマルにお話聞きに行こか。ちと残念やけどねぇ」
「な、なにが?」
「んー? 前に着てた寝巻きどこやったかな~って考えてたところやから。まあ、見たことないヴィータを見れるんやしそんなこともないかな?」
「そ、そっか……」
「んふふー。ヴィータの寝巻き姿、楽しみにしてるんやよ~?」

 脱衣籠の横に並べられた小さめの下着と見慣れぬ寝巻き。
シャマルが二人分を持ってきたと言っているので、この小さく見慣れぬ下着と寝巻きはヴィータのモノに違いありません。
しかし、先ほどヴィータ自身が持ってきていないと言っています。
その忘れ物が目の前にあるのです。
疑問が残るところですが、いくら空調が効いているとはいえ、いつまでも裸でいるわけにも行きません。
はやてが早く寝巻き姿が見たいとせがむのも手伝って、さっさと寝巻きに袖を通しリビングへ戻ることにしました。

「はやてちゃん。随分お風呂長かったですね。はい、お水。ヴィータちゃんも飲む?」
「おー。さんきゅーな、シャマル」
「ヴィータちゃん。髪の毛洗ってもらったの?」
「まあな。んでもさ、なんでそう思うんだよ。アタシが自分で洗ったかもしんないじゃんか」
「うーん、その頭のタオルの巻き方がちょっと違ったから。いつもよりちゃんと巻いてあるっていうか。上手くいえないけど」

 リビングへ帰る途中で待ち構えていたシャマルからミネラルウォーターを受け取る二人。
コップを傾けると、適度に冷えた水が喉を落ちていきジンワリとお腹に広がっていくのと同時に汗がスーッと引いていくようです。
これを五臓六腑に染み渡るなんて言うのかな、とヴィータ。
二人が丁度飲み終わったところで、なのはまでこちらへ寄ってきました。
頭に巻かれたタオルを見て、ヴィータ自身が髪を洗ったのでないと見破るなのはに、はやては感心するのでした。

「なるほどな。このやり方を教えたったのは私やし、ヴィータなりのアレンジ入った分が違和感やったんやろね」
「へ~え。なのはちゃんってホントよく見てるんですね。私なんか言われてもちっとも分かりませんでしたよ」
「……いや。シャマルのは単なるうっかり屋さんなだけやと思うわ」
「大体シャマルはアタシの普段見てないじゃん」
「あ、そっか」
「……ほれ。やっぱりうっかり屋さんや」

 シャマルの反論を受け付けないと言わんばかりにカウンターに空のコップを置き、ヴィータもそれに続きます。
しかし当のシャマルは感心するばかりで、はやての言葉が脳に届いておらず、頷きながらペットボトルを冷蔵庫へ片付けました。
四人でぞろぞろとリビングへ戻り、変わらず寝そべるザフィーラに一声かけて、ソファーへどっかりと腰を下ろします。

「ああ、シャマル。このヴィータの寝巻きどうしたん?」
「ヴィータちゃんのですか? ピンクで可愛いですよね。若しかしてなのはちゃんとお揃いなのかしら」
「私のはピンク色じゃないですけど」
「ちゃんと話を聞きんさい。どうしたんや聞いてるの。ヴィータの話やとこっちへ持ってきてへんって」
「あ、ああ。そのことですか。それならですね、なのはちゃん協力の下、魔法のマジックハンドでちょちょいのちょい、っと」
「ははーん、なるほどな。まあ、取ってきたとなればそれしかないわな。な、ヴィータ」

 待機状態のクラールヴィントをかざして、ちょいちょいと手招きの仕草。
それで二人の疑問は氷解しましたが、ヴィータは新たな疑問というか問題が生じたようで、小難しそうな顔をしていました。

「あのさ。なのはの協力って、具体的になにしたのさ」
「ええっとね。レイジングハートのナビに従ってあっちと繋げてね? そこからはなのはちゃんの指示で……あ、そうそう!」
「どうしたん、シャマルゥ。落ち着け」
「あのですねはやてちゃん聞いてください! あーもー! これは凄い話なんですよ!
 きっと聞いたら居ても立ってもいられなくなっちゃうと思うんです! 
 私なんかさっきからヴィータちゃんが早く出てこないか、もうそればっかり考えてて!
 実は何と! ヴィータちゃんとなのはちゃんは同じ部屋で寝起きしてるんですよ!
 ダブルベッドというには少し小さいベッドで、少しヴィータちゃんが窮屈そうに寝てるんです! 凄いでしょ!」
「あ、あー! てめー! 勝手になに喋りやがるんだ! おいバカヤロウ!」
「ほぉ~う。ヴィータはずっと私と寝とったから、一人で寝れるか心配やったんやけどやっぱ誰かと一緒に寝とったかね」
「ち、違うってはやて! アタシは一人で寝てるんだって――ふがふが!」

 咄嗟にヴィータを押さえ込み、なのはへ視線を送ります。
それを受けしっかりと頷くと、すくっと立ち上がり胸を張って応えました。

「えーっとね。引っ越してからずっと一人だったのは本当。だけどね、結婚してからは二人で寝てるんだー」
「お~! 流石新婚さん!」
「それなら大き目のベッドを買った方が良いんじゃない? いくらヴィータちゃんが小さいとはいえ無理があるように思うの」
「んぐー! んぐー!」
「その辺はご心配なくなの。毎晩ヴィータちゃんを抱いて寝ているからあれぐらいの大きさで充分なのですー」
「おお~! 流石新婚さん!」
「大きいベッドだと逃げちゃうと思うの。だから少し窮屈なのを理由にくっ付いていられると言う理想的な状態なんですー」
「おお~お! 流石新婚さん!」
「寝室には私の私物を増やしちゃってるから、何かと理由をつけてヴィータちゃんのお部屋に入れるのー」
「お~! 策士なのはちゃんやな!」
「でも、それはヴィータちゃんが嫌がったんじゃないかしら?」
「えへへー。それはですね。忙しくて中々片付けられないでいたからヴィータちゃんが片付けてくれたんです」
「なるほどね。なのはちゃん自分の部屋でそのまんまにしとくと、大変なことになりそうやもんなぁ」
「それに元の家は引き払っちゃって荷物をこっちに持ってきちゃったから、私の部屋は荷物でいっぱいなの」

 暴れるヴィータにシャマルの援軍。
二人に押さえ込まれては、流石のヴィータでも易々とは振りほどくことが出来ません。
しかも、口を押さえられているので徐々に酸欠気味に陥り、段々と意識も遠のき、手足の力も弱まってきました。

「なのはちゃんから沢山お話聞けたんですよ? 二人は一緒にお風呂に入れたんですからそのぐらいの役得はあっても良いですよねぇ?」
「お風呂長かったからねぇ。随分色んなこと話せたんと違う? 羨ましいわぁ~」
「オッホホホホ―――んげっ!?」
「ッラー! いつまで抱きついてやがるんだ!」
「おおう、ヴィータ。シャマルの首があり得ん方向へ曲がってるやん……」
「少しはしゃぎすぎだ、シャマル」

 お尻を上にひっくり返り、首が横へ九十度曲がってしまっているシャマル。
なのはは肝を冷やし駆け寄りますが、はやてとザフィーラの冷ややかな反応に、どうしたものかと困惑気味です。
はやての腕を振り払い、鼻息荒いヴィータはズンズンと大股でなのはに迫ります。

「余計なこと言うなって言ったじゃんか!」
「だ、だってぇー」
「だってじゃない! そ、そんな二人のこと外で喋るんじゃねーって言ってるだろ!」
「ヴィータ? 自分が恥ずかしいことしてるって自覚はあるんやねぇ。そうやなかったら外で喋るなって言わへんもんなぁ?」
「そーだよね。と言うことはヴィータちゃん。恥ずかしいって分かっててしてくれてたんだ」
「!? ち、違ーよ! それは、なんつーか……ええーい! 違うったら違うんだ!」

 ちびっこ相撲のように、なのはに抱きついては部屋から押し出そうとしますが、ひょいと脇を抱えられグルグルとあしらわれてしまいます。
こういうの子供にしたったら喜ぶやろうなぁ、と思うはやてに、昔の映画か何かで恋人どうしがよくやるわよね、と曲がった首のまま思うシャマル。
ヴィータは、止めろーとか怒るぞーとか言っていますが、振り回されている格好では怖くもなんともなく、寧ろ可愛いぐらい。
なのははニタニタと笑いながら、暫く回っていました。


 


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コメント

胸を張ってヴィータとのラブラブっぷりを言うなのはが
楽しそうに嬉しそうに話してる姿を想像できて面白かったですw
ついでに首の曲がったシャマルも想像したら不気味でしたがorz

投稿: 時祭 | 2008年4月10日 (木) 05時25分

>楽しそうに嬉しそうに話してる姿を想像できて面白かったですw

 そう読み取っていただけて嬉しいです。
きっとなのはは職場でもこんな感じなのだろうと思っていただければ。

>ついでに首の曲がったシャマルも想像したら不気味でしたがorz

 シャマルさんはギャグ担当ですから。

投稿: あや | 2008年4月12日 (土) 00時12分

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