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新婚なの! 9-4 (4)

 
「…………う、うぇえー」
「バーカ。調子に乗ってグルグル回ってるからだ」
「空戦魔導師がこの調子やなんて。どうしてまったの、なのはちゃん? 具合でも悪かったん?」
「……ちょ、ちょっと油断してしまいまして。視点を固定してたのがダメだった……みたい。うえぇ~」
「ホホホ。ヴィータをじぃっと見すぎや。その点ちょいとヴィータは余裕あったみたいやねぇ?」
「どうせ調子乗るだろうって思ってたから、後のこと考えてたの。そしたらこの通り。えいっ、この。反撃できないだろ。ほれほれ」
「うぅー。頭突っつかないでぇ……」
「はいはい。もう良いでしょ、ヴィータちゃん。今からヒーリング魔法かけますね~」

 ソファーにひっくり返って目を回しているのは、普段空をグルグルと飛んでいる高町なのはさん。
お嫁さんのヴィータに膝枕されながら目を伏せていますが、ちょいちょいとお凸を突っつかれ、ささやかな反撃を受けています。
余りに具合が悪そうなので、堪らずシャマルが治療魔法をかけることにします。
頭にかざした手に、優しげな緑色した光が灯り、見ているだけで効果がありそうなその光になのはの表情も幾分か和らいでいきました。

「全く。いくら親友とはいえ、嫁の実家ではしゃぎ過ぎだ。自重しろ、なのは」
「ふぁ~い」

 先ほどまで豪く怒っていたはずなのに、いつの間にか悪戯娘をなだめる母親のような口調をしています。
はやてとシャマルは、またそれを話のネタにしようかと思いましたが、今日は少しはしゃぎ過ぎたと思い、自重する事にしました。
顔色が幾分か良くなるにつれ、緑色の光は弱まっていき、一息ついたところでシャマルは腰を上げました。

「もう良いんじゃないかしら。そうだ。何か飲む? のど渇いたものね」
「シャマルが飲みたいだけじゃねーの? へへへ、じゃあアタシも貰おうかな。なのははどうするよ」
「私も欲しい~」
「ほいじゃ私もお願いしよかな」

 頷きスリッパをパタパタと言わせながら台所へ向かい、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しコップを二つ、抱えます。
冷えたミネラルウォーターが心地いい音を立ててコップに注がれ、まずははやてとヴィータに手渡されます。
ガラスのコップを通じて伝わる冷たさが火照った手に心地よく、耳と手から冷やされていくのでした。

「ん~……プハァ。シャマル、私はもうエエわ」
「ほれ、頭起こせ。……あんだよ、その口は。ひょっとこの真似でもしてるのか?」
「んー。口移しー。んー」
「バ、バカッ! 頭からぶっ掛けるぞ!」
「ああ~ん。怒らないでぇ~。おきます、起きますったら~。もう、ヴィータちゃんは怒りん坊さんなんだから~」
「気持ち悪いんだから大人しくしてろよ。ほれ、水飲め。冷たくて気持ちいいぞ」

 コップを傾け、冷たいミネラルウォーターが喉を下っていきます。
景気よく飲み終わり、お代わりを要求する様子にホッとするヴィータ。それをジッと見つめていたはやてが口を出しました。

「ヴィータちゃんなぁ。さっきから豪い優しいことない? さっきまでの勢いはどこいってまったん?」
「それは私も思いました。口調よりも目が優しくなってるっていうか、そういうの他の人にしないですよねぇ」
「うん、それは私も思ってたとこ。なんや目の前でイチャイチャされて、こっち中てられっぱなしやわぁー。なぁ、シャマルぅ」
「ええ。それはもう。新婚オーラに中てられっぱなしで、調子狂っちゃいますよ~。ねぇ、ザフィーラ?」
「……いや、別nグエッ!」
「オホホホ。ザフィーラもそうですって」
「ひ、ひでーな。シャマル……」

 足蹴にされるザフィーラに同情をしつつ、シャマルはこんなキャラだったろうかと考えるヴィータ。
普段は突っ込みやのに偶にひっくり返ったりして面白い関係やなぁ、と他人事のように思っているはやて。
なのはは、ヴィータが優しくしてくれるのが嬉しくて割とシャマル先生の蹴りをスルーすることに。
普段優しい医者が家族の犬の鼻を足蹴にするなんて。
そこを一番に気にするべきな事に誰も気付かぬまま、ザフィーラは一人鼻を抱えてうずくまるばかりでした。

「なぁ、ヴィータ。そろそろなのはちゃん放したりーな。お風呂にも入れたらないかんやろうし」
「むー。コイツをこうやってしとかないと誰になに喋るか分かったもんじゃないし。ほら、さっきのシャマルにしたみたいに」
「そうは言うてもなぁ。寝巻きを取ってきてくれたんはシャマルやし、下着だけで寝るわけにもいかんやろ?」
「ヴィータちゃん。忘れちゃったのを悔やむしかないわね。ホホホ」
「ちぇっ。長風呂控えてさっさと出てくりゃ良かったかな。でもさ、せっかくのはやてと久しぶりの……」
「ノンノン。ヴィータちゃんがいくら早く上がったところで無理な相談だわ。ねぇ、なのはちゃん」

 ニッコリとなのはに話を振るシャマルに、何がノンノンだ、などと眉間をひそめるヴィータ。
二杯目を飲み終わりコップを返したところで、なのはもニッコリと答えました。

「そうですね。なにせ、ヴィータちゃんがお風呂に入る前から喋ってたんですから」
「…………は? いつ、どこでさ」
「どこでって。ここで。ソファーに座ってですよ。ねぇ、シャマルさん」
「ええ。あ、なにその顔。全然話が見えないんだけどって感じね。うふふ、じゃあ種明かしちゃおうかしら」
「もったいぶらずに早く喋れって。あ、なのはは動くな」

 そっと距離をとろうとするなのはをガッチリ捕まえ、シャマルの次の一言を待ちます。
もったいぶっている癖に喋りたくて堪らないといった感じで、うずうずと頬がピクピクしています。
なのはとアイコンタクトの後、咳払いをしたシャマルは胸を張って答えました。

「実はねヴィータちゃん。とても基本的な話でね? テレビを見る振りをしながら念話でコンタクトを取ってたのよ」
「ぬぅわぁにぃ! こんな近くで念話使ってただって!? 全然分かんなかったぞ!」
「侮ってもらっちゃ困るわ。私だって魔導師の端くれなのよ? 一応に訓練の一つは受けてるんだから」
「それが寄りによって内緒話とは……要らないことばっか覚えやがってさ」
「ふっふーん。残念だったわね、ヴィータちゃん。それに私の相棒の存在も忘れてもらったら困るわよ? ほら」

 ガッカリと肩を落とすヴィータの頭を、なのはが優しく撫ぜます。
シャマルは勝ち誇ったように高らかに笑い、小脇からクラールヴィントを取り出します。
照明の明かりを受けてなのか自身の輝きなのか。
シャマルの相棒も少し誇らしげに見えます。

「ええーい、もう没収だ! アタシがいる間は没収!」
「ああん! 返してよ~。それがないと仕事だって出来なかったりするんだからぁ」
「だったら返してもらえるまで仕事が来ないよう神様にでも祈るんだな」
「神様……うーん。そう言えば私達ってどんな神様を信じてることになってるのかしら。やっぱりベルカの?」
「そやなぁ。ベルカってどういう神様がおるんやろ。やっぱカリムんとこの聖王って人になるんやろか。聖王さま~ってな具合に」
「そうなのかも。今度聞いてみたら?」
「あかんあかん。私らも聖王教会に入れられてまうし」

 シャマルからデバイスを取り上げたヴィータも、ソファーに腰掛けたままの二人も、う~んと考え込んでしまいます。
聖王教会の偉い人であるカリムと知り合いとはいえ、その辺りに全く疎い八神家の面々と高町教導官なのでした。

「さて。折角早くにお風呂したんやし、なのはちゃんもお呼ばれしたって?」
「は~い。じゃあ、お呼ばれしちゃいま~す。ねぇ、ヴィータちゃん。汗かいちゃったでしょ?」
「もう一回は入らないぞ。結構風呂って疲れんだ。それにだな……」
「新婚さんを一緒にお風呂入れたらお湯が汚れてまうやないねぇ? まだシャマルもザフィーラも控えてる言うのに」
「いや~ん。はやてちゃんのえっちぃ」
「???」
「あはははは。まだヴィータには早かったみたいやね」
「そうみたい。それじゃ行ってきま~す」

 はやてとシャマルは顔を見合わせ口の端をにんまりと持ち上げ、なのはは一人頬を染めてイヤンイヤンしています。
その中で一人訳の分からぬといった顔をしているヴィータを残して、なのはは脱衣所へ向かいました。


 


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