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新婚なの! 9-4 (2)

 
「ほぉ~お。相変わらず綺麗な髪してるね、ヴィータ」
「うん。やっぱりさ。ずっとはやてに綺麗にしてもらってたから、一人暮らしするようになってからも気をつけるようにしてたもん」
「ヴィータ、そないに気にしてたんやね。ホホホ、やっぱり恋はオンナを変えるんかね?」

 ヴィータを足の間に座らせるように。
ちょっとはしたない格好ですけれど今は二人きりですし、ヴィータを少しでも近くに置きたいはやての気持ちの表れなのを分かってか、ヴィータ自身も何も言いませんでした。
頭頂部から髪の先へゆっくりと手を掬っていき、じっくりと眺めます。
頭の後ろで二ヒヒといやらしく笑うはやてに、ヴィータはすかさず反論するのでした。

「な、何言ってんのさ。それはさ、はやてを想ってだもん」
「私を?」
「うん。はやてがさ、ずっとアタシの髪を綺麗にしてくれてたの。他所に行くとみんな褒めてくれんだもん。桃子さんとか。
 だからさ。一人暮らししてからもずっと。アタシが褒められるって事はさ、はやてが褒められるって事とおんなじだから。そういうの」
「…………そか。うんうん。ヴィータはホント、可愛い子やね」

 髪を掬う手を休めてはいませんが、その手に込められる意味が変わったようにヴィータには感じられました。
そのまま丁寧に髪を解し、シャンプーで汚れを落としていきます。
頭皮をしっかりとマッサージする指使いは何年も慣れ親しんだもので、ヴィータにとってこれが気持ちいい基準なのです。
シャンプーが残らないよう丁寧に流し、毛先までこれまた丁寧にコンディショナーを行き渡らせます。
普段も同じようにしているとは言え、やはり人に、大好きなはやてにして貰えるというのは格別な気持ちよさ。
ヴィータはうっとりとその感触を噛み締めるのでした。

「そや、ヴィータ。なのはちゃんの髪は洗ったったりするん? それとも洗ってもらったりか?」
「た、たま~に。ホントに偶にだけど、一緒に風呂入ったときとか……ホント、数回だから」
「それは結婚してからの話か? それとも……」
「………………」
「え、えー! 結婚する前から一緒に風呂入ってたんかー! そ、そんな……!
 ヴィータ不潔や……。ああ、なんでそないな子に育ってまったんや。私の教育は間違ってたんか……ああ!」
「ふ、不潔って! そんなんじゃねーったら!」
「じゃあどういう理由があると結婚前の二人が風呂に入ったりするん」
「え、え~と。すんごい疲れてるときとか。あと、なのはがどうしてもって我侭言ったときとか、その」
「え~。我侭言うたら一緒に風呂入ってくれるんか。やったら私も我侭言うことにしよ~。なぁ、ヴィータぁ。私もヴィータの家行きたい~」
「ちょ、ちょっと! なんでそういう話になんのさ!」
「ヴィータと一緒にお風呂入ったりしたいんやも~ん~。なぁなぁ、我侭や~」

 髪の毛を大雑把に纏めながら、抱きついて揺ら揺らヴィータを揺らして我侭を言うはやて。
ヴィータはその我侭に困った風な口を効きますが、大好きなはやてに我侭を言われて嫌な気持ちがするわけがありません。
暫く我侭を言うままに任せておくヴィータなのでした。

「うー。そろそろ上がろか。ちょいと長湯しすぎたわぁ……」
「うん。それはアタシも思ってたところ」
「普段はこんな長いこと入ったりせーへんのやろ?」
「あんまり長いと疲れちゃうし、それに帰ってくるの遅いと時間そのものがないし。朝早く起きなきゃいけないし……」
「なのはちゃんのお弁当作りのために、やろ?」
「……う、うん」
「うっひょー! ヴィータ可愛えぇぇー! ああぁんもおうぅぅー! 私もヴィータにお弁当作ってもらいたい~!」
「べ、弁当は無理だけどさ。約束あるし、ちゃんと。だから」
「約束? なんやったやろ。でもお弁当やないんやよね。そんな約束したやろか」
「あ、あのさ。今度朝ご飯作ってあげるって。この前来たときに約束したじゃん。だから、明日はそうするつもりだったんだけど……ダメかな」

 再び湯船にゆったり浸かり、しっかりと染み込むのを待っている間。
イチャイチャ、ベタベタしていると、ヴィータが以前約束した時のことを持ち出しました。
はやてとしては、結婚の話がショックであったことは話したとおり。
その後についでのように約束した朝ご飯を作ってあげると言う話は、どこかへすっ飛んでいたのでした。
それでもヴィータ本人はしっかりと覚えており、密かに今日の日のことを楽しみにしていたのです。
上目遣いで尋ねるヴィータに、はやてのテンションは上がりっぱなしです。

「何を仰るウサギさん! アカンわけないやないの! 作って作って! ヴィータの朝ご飯食べたい~!」
「そ、そっか。んならさ、明日頑張るから。楽しみにしててくれよな、はやて」

 わしわしと頭を撫でるはやてに、ヴィータは満面の笑みで答えました。


 


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