« 新婚なの! 9-4 (4) | トップページ | 新婚なの! 9-5 (2) »

新婚なの! 9-5 (1)

 
 なのはをお風呂に入れている間、ヴィータは酷くシャマルを叱りました。
しかし、なのはから聞いた話を"ヴィータの目の前で"はやてに伝えるまで死ぬわけにはいきません。
頭をポコポコと叩かれたり頬を抓られたりわき腹を掴まれて「太ったぞ」と言われても、鉄のような意志で続けました。
挫けそうになるシャマルを支えたのは、勿論ヴィータの可愛らしい姿です。
恥ずかしい話をはやての前で言われ、二人でキャーキャー言う光景はヴィータにとって拷問に近く、顔が真っ赤になったり涙目になったり。
普段はそれなりに中身が大人なヴィータも、その時ばかりは外見に相応しい振る舞いになってしまい、二人のテンションもぐんぐん上がっていきます。
自分の抗議の様子が二人のテンションを上げると分かっていても、シャマルの口を塞ごうとせずには要られません。
なのはが風呂から上がってくる頃には、グッタリしたヴィータにボロボロになったシャマルがソファーに横たわっているのでした。

「それじゃお休みなさい、シャマルさん」
「お休みだシャマル。明日覚悟しとけ――っててて! 痛いってはやて」
「そういう怖い顔せんの。ほんじゃねシャマル。早う風呂入って寝やーね。電気とテレビ、忘れんように」
「は、はいはーい……お休みなさい、はやてちゃん、なのはちゃん。それにヴィータちゃん……ガクッ」
「お休みなさいませ、主。シャマルのことはお任せください」
「うん、ザフィーラ。そんならお願いね」

 ソファーの上で力尽きるシャマルに、すくっと立ち上がったザフィーラを残し、三人は寝室へと向かいました。

「相変わらず広いベッドだねー」
「自由に小さしたり大き出来たりしたら便利なんやけどねーっと。ほいほい、二人とも。こっちいらっしゃいな」
「な、なんかそうやってベッドを叩く仕草ってオジサンみたい……」
「お前もそう思うか。実はアタシもそう思ってたところだ」
「うぅ、酷い! ヴィータは結婚して変わってまった! 前はそないなこと言う子やなかったのに!」

 大げさにベッドに伏せて泣く振りをするはやて。
どうしたモノかとヴィータが駆け寄ればまるで食虫植物の如く腕を伸ばして絡めとり、そのまま布団の中へ引きずり込んでしまいます。
出遅れた!とばかりになのはもベッドに飛び込めば、盛り上がった布団の中からギユッと不思議な音が聞こえてきました。

「ってーぞなのは!」
「きゃー! んもう、ヴィータちゃんひどい~。頭打ったじゃない」
「上から乗るほうが悪いんだろうが。それに! いつも家で埃が立つから止めろって言ってるだろ。止めないお前が悪いんだ」
「ふぁ~い。分かりました、すいませんー」
「ちっとも謝ってる風に聞こえないのは気のせいじゃないよな。全く、ここは自分家じゃないんだぞ」

 横を向いてさっぱり謝る気のなさそうななのはに呆れていると、布団の中から髪を乱したはやてが顔を出しては可笑しそうに笑います。
怒っているところに水を差されたようなヴィータは、何が可笑しいのだと尋ねれば、頬杖をついてニッコリと答えました。

「いやね。もう"二人の家"になってまったんやなぁって」
「へ? そんなこと言ったっけ?」
「ふふふ。それは置いといて。いっつもそうやって怒ったりしてるんかなって。そういうなのはちゃんが何や新鮮で、つい」
「う、むー。ほ、ほれ見ろ。笑われちまったじゃねーか。大体リラックスし過ぎなんだよ」
「うぅーん。ちょっとはしゃぎ過ぎました。ごめんなさい」
「うん、なら良い」

 ベッドの上で仁王立ちしていたヴィータは、布団に入ると端を捲り手招きをします。
床にペタンと女の子座りしたままのなのはが不思議そうに見ていると、ヴィータはちょっぴり頬を染めてそっぽを向いてしまいました。
更に訳の分からぬといった顔のなのは。
堪らず、はやてが如何にも楽しそうといった風にヴィータの向こうから顔を出しました。

「こっち来やーってこと。ヴィータも素直やないねぇ。口に出して一緒に寝よー言えばエエのに。うりうり~」
「べ、別にそう言うんじゃねーもん。た、ただ……」
「ただ?」
「風邪ひかれるとさ、迷惑だし。局で仕事してる他の人たちにさ、もう責任ある立場なんだし」
「ふぅ~ん。じゃあ看病すること自体は迷惑やと思っとらんわけや。エエなぁ、ヴィータに看病して貰いたいなぁ」
「ブフッ! そういう訳じゃないって! まだ話の途中なんだから口挟まないでくれよ~!」
「じゃあどういう意味なん? ほれほれ、向こうで期待して待っとる旦那さんに向かって言ってみ?」
「うぅ……」

 身を乗り出し期待に胸膨らませるなのはに、頬を突付きながらニヤニヤと笑うはやて。
二人に挟まれては普段の強面―と本人は思っている―航空隊のヴィータさんも形無しであります。
待ちきれなくなった旦那さま。
素早い匍匐前進で詰め寄ると、はやてに占領された頬を避けわき腹を掴みに掛かり鼻の頭でくしゅくしゅと擽ります。
布団の中でモソモソと動くなのはに、ヴィータはなす術もなく二人にいい様に扱われてしまうのでした。

「な、なのは! いい加減にしろ! はやてもぉ~、勘弁してくれったら!」
「あーかーん。普段からそうやって二人でイチャイチャしてるんかと思ったら我慢出来へんもん!」
「えへへー、羨ましいでしょ? こうやって~、毎晩してるんだぁ。くしゅくしゅー」
「うへ、うひゃひゃひゃ! や、止めろってなのは! そ、それに毎晩だなんて嘘つくなよ! してないじゃんか!」
「あれ。毎晩しとらんの?」
「うーん、それはヴィータちゃんが知らないだけなの」
「な、なんだって! ちゃ、ちゃんとアタシより先に寝てるじゃないか! それがどうして!」

 ヴィータの疑問に布団から顔を出したなのはは、ちょいとばかり照れ笑いを浮かべれば、毎晩ヴィータの寝た後に悪戯していると言います。
それを聞けば黙っていられません。
毎朝起きないなのはを叩き起こすのにどれだけの労力を割いているのか。
思わず、えへへっと笑うなのはの両頬を抓ってやります。

「じょ、じょーらんれふ、じょーらん。うひょだよ~……うひ~、痛かった~」
「性質の悪い冗談なんていうからだ。その頬の痛みを忘れるなよ、嘘を吐く前にその痛みを思い出せ」
「ほうほう。嘘って言うたんが嘘っぽいけどなぁ。んでも、ヴィータが毎晩でないにしろ、結構イチャイチャしてるんは認めるんやなぁ」

 ヴィータの頬をツンツンしながら、なのはを肩越しに覗き込むはやての目の前でヴィータの耳はみるみる赤くなっていきます。
触れる指先から伝わる体温は、明らかに普段のモノとは違ったように感じれら、どれほど照れているのかを伺わせます。
その向こうでは、ヴィータが余計なこと言っただの、なのはが失言じゃないのなどと言い合っている。
それでもなのははとても幸せそうで、つい、つつく人差し指に力が篭ってしまうのでした。

「はぁ~あ。二人のイチャイチャを見せつけられんのも見飽きたし、そろそろ寝るとしよかね」
「あ、ごめんはやてちゃん」
「う、うん、わかった。もう寝ることにする。ほ、ほれ。ちゃんと布団被れって」

 ヴィータに布団を被せてもらい、三人はようやくベッドの上で川の字になることになりました。
広いベッドに三人。
窓側から、はやて、ヴィータ、なのはの順で。
先ほどまでの騒がしさが嘘のように寝室は静まり返り、お互いの呼吸すらはっきりと耳に届きます。
規則正しいお互いの息遣いを感じながら、早く寝てしまおうとジッと瞼を落としますが気分が高まってしまってさっぱり眠れそうにありません。
それを何故か気まずく思ったヴィータが先陣を切って、天井を向いたまま独り言のように喋り始めした。


 


 新婚なの! 9-5 (2) >


 

|

« 新婚なの! 9-4 (4) | トップページ | 新婚なの! 9-5 (2) »

新婚なの!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 新婚なの! 9-4 (4) | トップページ | 新婚なの! 9-5 (2) »