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新婚なの! 10-2 (2)

 
「ごめんなさいね、なのは。帰ってきたばかりだって言うのに」
「ううん。初めからそういう約束だったし、ちょっと早くなっちゃっただけ。ね、ヴィータちゃん」
「さっきまで文句言ってたのは誰だよ……あ、桃子さん。手伝いに来ましたです」
「ヴィータちゃんだけでもゆっくりして貰えば良かったんだけど……お願いできるかしら?」
「はい。お邪魔にならないよう、頑張ります」
「もう、他人行儀なんだから。これからはもう少し肩の力を抜いて、ね?」

 桃子から連絡を受け、急いで翠屋に駆けつけた二人。
とにかく急いで!というなのはに、ヴィータは疑問を口にする間もなく引っ張り出されてしまってのです。
行きがてらその内容を尋ねると、なのはは簡潔に説明してくれました。
驚きの表情を隠しきれないヴィータ。
その内容とは、真っ白になってしまった士郎が、全くの戦力にならず、急遽応援に来て欲しいということなのです。
今までの士郎のイメージとは、優しくて格好いいお父さん、といったところ。
元々、八神家には大人の男性が近くに居らず――いたとしても老人会のお爺ちゃんです――、「父親」と言うものが分かりません。
管理局に勤めるようになってから、そういう事態とは少しばかり縁遠くなりましたが、それでもです。
ヴィータにとって「父親=高町士郎」というイメージであり、士郎のイメージが父親そのものだったのです。
その人が"何故か知らないけれど"、落ち込んで身動きを取れないと言います。
それがどれほどの事態なのか。
なにやら重大な事件が起きているのではないか、と走るなのはの後を追いかけてココでまで来たのです。

「そうそう。これも将来のための予行演習なんだから」
「ま、まだその話ししてんのか?」
「だって。そうはいうけどこの経験はいつかきっとヴィータちゃんの財産になると思うんだ」
「……アタシ個人の財産なら歓迎だけどな」
「え~。そこは私たち、じゃないの~?」
「ほらほら、なのは。早く美由希の手伝いに行ってちょうだいな」

 桃子に肩を押され、渋々その場を離れていきます。
ヴィータはホッとするものの、なのはは意外に真剣に考えてるのではないか?と思い直すのでした。
なのはも自分も、当分この仕事を辞めるつもりはありませんが、"そういう"事も頭の片隅に止めておくぐらいは良いんじゃないか、と思うのでした。
 出迎えた美由希にエプロンを手渡され、慣れた手つきで身につけるなのは。暫く離れていたといっても見事なもの。
視界の端でその様子を捕らえては、流石に様になってるなぁ、と本人を前にしては決して口にしないだろう事を呟きます。

「あら、どうしたの? 難しい顔しちゃって」
「え、え? そんな顔……してましたか?」

 そこにはエプロンを持った桃子が立っていました。
エプロンを持っていると言うことは、美由希から預かったのでしょうに、全くその事に気付きませんでした。
ニコニコとするその様子に、今の迂闊さが見透かされたような気がして、慌ててエプロンを受け取ります。
それがまた桃子に"なにかあったかしら?"と思わせることになるのも気付かずに。
いそいそと準備をする手元は覚束ず、なのはとの違いが浮き彫りになってしまったような気がしました。
それでも、家事をするようになってからエプロンは必需品。
その出で立ちは中々のもの。
普段を知らない桃子にすら、その様子は伝わったようでした。

「なのはが小学生の頃に使ってたのを取っておいて正解だったわね」
「あ、これ……そうなんですか?」
「うふふ。着心地はどうかしら」
「あ、あぅ。えっと、あの」
「大丈夫、似合ってるわよ。じゃあ、あっちでお皿洗い。お願いできるかしら?」
「……はい!」

 ニッコリ、と優しく微笑む桃子。
ヴィータにとって母親であり姉であるはやてとは別に、"母親"というと高町桃子なのです。
その言葉のイメージするとおり、後押しされては厨房へ向かうのでした。

「う、うおぉ……こ、これがあの士郎さん、かよ」

 そこには真っ白に燃え尽きたぜ――
と言い出しそうなほどに、ガックリと項垂れた士郎が厨房の端に座っていました。
公園でゲートボールをやっている、老人会のお爺ちゃんたちよりも小さく見えるぐらいの様子に、つい、声を漏らしてしまうのでした。
何とか元気付けたいところですが、何故落ち込んでいるのか分からないのでは下手なことは言えません。
軽く頭を下げ、流し台へ急ぎます。
 こ、こんなに忙しいものなのかよ……
そこには、ウンザリするような量のお皿や何やらが、山のごとく器用に積みあがっては自分を出迎えてくれました。
これが一人暮らしを始めた頃なら、この時点で弱音を吐いていたかもしれないような量です。
その上、なのはの言ったとおり、予行演習になりそうなのが少し癪でしたが、そうも言っていられません。
桃子をガッカリさせないためにも、ここは気合を入れ、腕まくりをし、スポンジと洗剤を取って立ち向かうのでした。

「ふぅ、一段落ってところかな?」
「そうだね。次は下校時間ごろかな。少し、時間がある内に休んできたら? 久しぶりで疲れたでしょ」
「えへへ。いくら昔とった何たらとは言え、久しぶりだと疲れちゃうな。なんていうか……気疲れ、かな?」
「普段のお仕事とは使うところが違って疲れちゃうんだよね~。分かるよ、そういうの」
「なのは、ヴィータちゃんも呼んできて。少し遅くなっちゃったけどお昼にしましょう?」
「「はーい」」

 人影途切れた店内を見渡して、桃子は昼食の準備に掛かります。
3人分しか用意していない中から、どうにかして4人分を捻出しなければなりません。
しかしそこは、長年の経験がモノを言うものよ、とばかりに何とかしてしまう桃子。
その手際の良さに、ヴィータはただ感心するばかりなのでしたが、コレは何か一つ学べないかと手伝いを申し立てるのです。
二つ返事で応える桃子。
簡単な作業しか手伝えませんでしたが、ヴィータはとても満足するのでした。


 


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