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新婚なの! 10-6 (3)

 
「さぁて。そこで何かやり遂げたような顔をしている高町なのは? まだ話は終わってないわよ」

 安心しきった様子で、カップを傾けていたなのはは、思わず咽てしまいます。
 あれだけで終わるわけないだろ、といったヴィータの声を遮るように、咽たなのはは、不満げな態度を露わにします。

「え~、まだあるの? もう違う話しようよ~。私だって最近のアリサちゃんとすずかちゃんの話聞きたい~」
「それは後で読むのもイヤになるほどメール送りつけてやるわよ。だからまずはアンタの話」

 深く腰掛け腕組みをし、なのはを迎え撃つ気満々のアリサ。
 最初こそ混乱していましたが、幾分か調子を取り戻しつつあるようです。
 調子を取り戻されては、追及の手が更に強まるだろうことは誰の目にも明らかで、なのはの危機感は、ティーカップの中身をかき混ぜる手に現れていました。
 その音から、カップの中が減っていることも察したすずかは、黙ってポットからお茶を継ぎ足します。
 三者三様。
 見事に個性の現れた、その隣で、尚も考え込んでいたヴィータの頭には、新たな疑問が浮かんでいたのでした。
 それは、こっちに来る前。はやての家に遊びに行ったときのことです。
 今のなのはの態度は、はやてに対するそれと余りにも違ったからです。
 嬉しそうに。頭を叩かれながらも喋っていたなのはが、こっちに来た途端、自分との事を話したがらないのです。
 もったいぶる事で、興味を持たせようとする作戦かとも思いましたが、どうにも違うに感じられます。
 普通なら、なのはが余計な事を言わないか神経を尖らせていなければならないのに、それどころではなくなっていたのでした。

「同棲したところまでは聞いたわ。で? それから結婚なんていう選択に至る経緯ってのは?」

 聞いてやろうじゃない、というふんぞり返らんばかりの、その態度。
 それが人の話を聞く態度!?とは、この場にいる誰もが口にしません。するはずもなく。
 なのはは、それどころではありませんし、すずかは、それが虚勢の類であることが分かっているからです。
 そこでヴィータといえば、そりゃ怒られて当然だろ、といった、付き合いの短さから来る、多少的外れな感想なのでした。

「そ、それは……非常にプライベートな内容なので勘弁して欲しいのですけど……ダメかな?」
「ダメだよ? 当ったり前じゃない」

 にっこり。
 拒絶の意思だけはしっかり伝えて。
 そんな事ぐらいで誤魔化せるはずがないことを分かっていたでしょうに、なのははガックリと肩を落とします。

「ダメよ。久しぶりに帰ってきたと思ったらいきなり結婚報告するような子には、詳しい経緯をしっかり説明して貰わないと」
「う~ん、こればっかりは私も気になっちゃうかな? アリサちゃんとは別の理由だけど。あ、ヴィータちゃんのこと、ね?」
「あ、アタシ……です、か?」

 急に話を振られ、間の抜けた声で返事してしまうヴィータ。
 なのはは標的が逸れた!今がチャンス!とばかりに同意しますが、アリサの一喝によってそれは敵いませんでした。
 さっきは「夫婦の美しい愛」だなんて言ってたくせに、よく言うぜ――ヴィータは舌打ちでもしたい気分です。

「なんで結婚しようかなぁって思った、かぁ。う~ん」
「ちょ、ちょっと。自分のことでしょ? 何をそんな悩むことがあるわけよ。あ、ははーん。恥かしいわけ?」
「恥かしい……のとは少し違うけど、そうかもしれない。だって、ねー?」

 ねー、などと同意を求められても困る。
 ヴィータは、顔をしかめて返答としますが、問いかけた本人はまるで気にしていない様子。
 そんなすっ呆けたなのはの向かいでは、そのヴィータ以上に渋面のアリサ。
 なのはの態度が惚気に見えたのでしょうか。それとも、尚、はぐらかそうとする態度にイライラしたのか。
 またしても、声を荒げてしまいそうな勢いで、文句をつけます。

「まあまあ、アリサちゃん。分かってあげなくちゃ、なのはちゃんの気持ちも。だって、ほら」
「す、すずかは気にならないわ……け?」

 一度、一瞬の沈黙をはさみ、結局続けた言葉。
 自分の向かいに座る親友の表情を伺い、それでも結局その語尾を変えることはなかったのです。
 その時のなのはといえば、照れたように頬を紅潮させ、ちょっぴり身体を左側に傾けながら視線を送っていたのです。
 理性と、それを上回ってしまった、言い表せない感情。
 アリサは、遠まわしにも、今一番聞きたくて堪らないことを、なのはの口から聞き出そうとするのです。
 すずかの忠告も、それを分かった上でなのか、そうでないのか。
 前者であると判断したために、止めるわけにはいかない、とアリサは思ったのです。
 そんな、二人のやり取りなど気付かぬ、のん気な渦中の人といえば、ホッとする表情を隠しもしません。

「二人が結婚したっていう事実の前じゃ、些細な問題かも。今更それを聞いたところで結果は変わらないよ?」

 すずかは、何を伝えようとしているのか。
 その言葉の響きに、アリサは確信を深めていきます。
 しかし、この胸にくすぶる気持ちを押さえ込めそうにありません。
 どうしてやろうか、と向かいの、憎たらしいほどニッコリ微笑む親友に視線を向けた途端。

「あ、そうだ。そろそろアリサちゃんからも祝福の言葉が欲しいなぁ、なんて」
「は、はぁ? どうしてあたしがそんなこと言わなきゃ――」

 そこまで言いかけて。
 しかし、今度はその言葉を続けることはありませんでした。
 その時アリサの視界に映ったもの。
 先ほどから黙りこくったままの、その張本人は、自分とは気付きません。

「……まあ良いわ。おめでと、なのは。ヴィータ」
「わーい。ありがとう、アリサちゃん」
「ありがとうございますです、アリサさん」

 決して悪気があったわけではないでしょうが、何かしら納得していない雰囲気を感じさせる響きを乗せるアリサ。
 ヴィータは、なのはがこの態度じゃ仕方ないんじゃないか、という判断でした。
 なのはは素直に礼を述べ、コレで一段落したとばかりに、すずかの注いでくれたお茶を、またぐぃーっと飲み干し、大きく息を吐きます。
 先ほどの言葉の響き通りの態度を崩さないアリサ。
 それを感じ取ったのか、慣れないヴィータは多少不安を覚えているようです。


 


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