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新婚なの! 11-2 (1)

 なのはから、もう少しだけ美人さん――プリムさんのことを教わろうとしたところで、本人が戻ってきた。
 そのまま続けても良いのに、なのはは慌てて口を噤んでしまう。
 これは本人から聞いたほうが良いってことなのか?
 けれど、それにしてはどうにも様子が変だ。
 聞いた限りじゃ、別に普段の様子を喋っていただけなのに……なにか不味いことでもあったのか。
 しれーっと視線を逸らす様子に、何かしら具合が悪かったことは確かで、そうすることで取り繕ったなのはだったけど、それは徒労に終わってしまう。

「どうした、タカマチ。私の紹介はもう良いのか?」
「あ、あの、いえ」
「お前の説明に不都合な点は見当たらなかったが……念話を使ったほうが安全かもしれないな」

 お昼を乗せたトレイを先におき、腰を下ろす。
 言い方はキツイけど怒ってはいない。そういうのを隠して話せるような器用さの少ない人みたいだし。
 それなのに、なのはといえば黙ったままで、何も言わない。
 なんだろうな。変なヤツ。
 だけど、なんか都合があるんだろうし、ここは話題を変えてやるとするか。
 ……甘い、かな? やっぱり。

「ほれ、なのは。お昼にするぞ」

 雰囲気を一旦リセットする為に――というか、これが本来の目的なわけだけど――自分の弁当箱を取り出す。
 すると、助けられた本人は、不思議な光景を目にするような顔をした。

「あ、うん。って、ヴィータちゃん? 自分のお昼も持ってきたの?」
「ああ、そうだけど……なんかいけなかったか?」

 問い返すアタシに、なのははぽかん、とした顔をする。
 自分は当たり前のことをしたつもりなのに、こういう顔をされると何だか気になる。
 気になって聞き返せざるを得ないじゃないか。

「だって。一緒に食べよーっていうの嫌がると思って……どうして帰らないのかなって思ってた。ちょっとだけだけど」

 アタシを見つめる瞳に、僅かに戸惑いの色が見える。こちらの機嫌を伺うような。
 けれど、その声には嬉しさがしっかりと滲み出していた。
 しまった――そう思っても後の祭り。
 そうか。いつものアタシならそれを嫌がったはずなんだ。
 言われてみると、確かにそんな気がする、というか絶対そうしたと思う。
 普段なら「せっかく来たんだし一緒に食べよーよ」とかなのはが言い出して、それを断ろうとするんだ。
 で、結局なのはに押し切られて、仕方なく一緒になる……情けないことだけど、その光景以外思い浮かばない。
 そんな"当たり前"が、アタシ自身によって否定されりゃ、そりゃなのはだって戸惑うよな……

「やはり一緒にいたいと思うものか? それとも、昼ぐらいは別が良いと?」

 自分の情けない光景に気を取られてると、プリムさんが疑問も露わに尋ねてくる。
 注意を向けていなかったせいで、主語が聞き取れなかったけど、流れからしてお昼を食べることだと思う。
 なのはのいる前で、というのが躊躇させたけど、なるべく正直に答えることにした。
 ……出来るだけ、だけど。

「一緒が嫌だ、ということは無いつもりです。けど、あまり一緒に引っ付いているのは……」
「やはり、恥ずかしい――だろうね」

 そうだろう? 言わんばかりの言葉に対し、アタシは黙って頷いた。
 この感覚は一般的なのか、それとも、なのはの事前情報によってアタシの言動が見抜かれているからか。
 何となく後者なような気がしてならないけど、それが正解なのだから仕方ない。
 見透かされているってのは凄く恥ずかしい。しかも、それが初対面の人なら尚更だ。

「タカマチ。本当にキミのお嫁さんは、キミの言う通りの子だ」
「は、はい」
「い、言う通りって……」

 気まずそうな、なのはの返事。
 やっぱりアタシの考えは当たってたみたいだ。
 なのはめ。
 一体普段、アタシのなにを人にべらべら喋ってるってんだ。
 聞きたいような、聞きたくないような。
 分からないことには対策も立てられないけれど、聞いたら聞いたで後悔しそうだ――そう、直感とも言うべきものが語りかけてくる。
 けれど、結局は聞いてしまった、というか聞かされてしまった。

「好意を口にしてくれない。けれど、ちゃんとそれは伝わってる……確かそうだったと記憶しているが」
「あ、あう」

 気まずそうだ。
 なんだよ、そのぐらいのことアタシにいっつも言ってるじゃないか。っていうかだな。そんなこと他所の人に喋るんじゃねーよ。恥ずかしいだろうが。
 それにだ。
 アタシに聞かれて困るようなことなら、初めから言うんじゃねーの。
 あーあ。もう、教導隊の人に近づけねーじゃん……

「……私としては多少、羨ましいかな」
「そう、ですか?」

 少し伏せ目がちに語る、プリムさんの表情は、少し寂しそうな困ったような顔だった。
 その言葉と表情に、気にするなという方が無理な話なんだけど、話の腰を折ってしまうかと思って聞き流すことにしてしまった。
 別に、なのはを好きとかどうとか言いたいわけじゃないけど、自分のこの性格は割りと難儀だと思う。
 なのに、それを多少とはいえ、羨ましいといわれると、なんだかくすぐったい気持ちだ。
 座るお尻がムズムズする感じ。
 しっかし。
 アタシはそんな、人を好きだっていうの、分かりやすい人間なんだろうか? そんなに、なのは好きだってアピールしてるんだろうか?
 それはそれで新たな疑問だったけど、今は胸にしまっておくことにした。

「付き合いも長いし、今更変えるつもり……いや、変えられないというべきかな。これでもね、自分の性格をどうなんだ、と思わないこともないんだ」

 相変わらずな表情に、アタシは曖昧に相槌を打った。
 判断できるほどこの人のことを知らないし、取りあえず話を進めるためにそうしておいた。

「自分で言うのもなんだが、隠しごとが下手……らしい性分のくせに、好意だけは伝わらないらしくて」
「そう、なんですか? アタシはそんな風には」
「本当に可愛いな、キミは。素直で。タカマチが好むのも分かる気がする」

 何が照れくさかったのか。
 プリムさんは言い終わるや否や、頬杖を突くのだけど、居心地が悪そうに身体を斜めに構える。
 だったらもう少し言い方を変えたら良いのに、と思ったけど、そう出来ないのがこの人の良いところなんだと。何だかそう思えた。
 それは、黙っていたなのはも同じだったようで、代弁するかのように口を開く。

「そんなことないと思います。私、プリムさんの、そういう素直なところ、好きです」
「素直? ……言い方を変えればそうなるのかな」

 さっきと同じだ。
 言い方はキツイのに、ちゃんと嬉しく思ってる気持ちは伝わってくる。
 なんだろう。
 この人の気持ちはなのはにも、会ったばかりのアタシにもちゃんと伝わってくる。
 それなのに、こんな風に思うようになってしまう原因が分からない。
 これは……気になるけど聞いちゃ駄目だ。
 なのはならまだしも、会ったばかりのアタシじゃ失礼にも程がある。
 いや。仮になのはがこの場で尋ねようとしたのなら止めるだろうと思う。誰にだって触れて欲しくないことはあるはずだ。

「ヴィータ君も、私の言いたいこと……分かるのかな」
「た、多分、ですけど。ほかの人にするのと同じぐらいは」
「ふうん」

 感心するように、けれど軽く頷く。何か考えるように。
 テーブルに置いたお昼に視線を落とし、じっと黙ってしまう。
 湯気がゆらゆらと上がるお昼ご飯。プリムさんはどのランチセットを頼んだんだろう、なんて余計なことを考えてしまう。
 この話題から離れたいんだろう。
 だから、アタシの頭は自然と、思考をわき道に逸らせようとして、そんな今更なことを考え始めたんだ。
 誰だって――例えそれが会ったばかりだといっても――人の悲しみに耽る顔なんて見たくない。
 その想いに同意するかのように、未だにアタシを抱いたままの、なのはの手に――力が篭った気がした。

「このままでは折角のお昼が冷めてしまうね。続きは食べながらにしようか?」
「あ、はい」
「たまには、こういう楽しい食事も良いものだ」

 こっちとしては割りと緊張を強いられる環境だし、さっきみたいな表情を見せられた後じゃ説得力にかけるのだけど。
 それでも、口だけでも楽しいと思ってくれるのなら、それで良いかな、と思える。
 悪い気はしない。
 それはなのはも同じようで、アタシから手を離し、弁当箱を包むナプキンに手をかけた。
 少し、遅めのお昼ご飯だ。


 


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