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新婚なの! 11-6 (1)

 各世界から集まった面々による合同訓練が始った。
 アタシが――多分、教導隊の面々も――心配した混乱みたいなものは、意外にも起こらず、その日は順調にメニューを消化していった。
 アタシとメンテは、本局とはいえ航空隊なのに、シグナムとリインと顔を合わせることがなくて、少しだけ残念だった。
 一日目の工程も終わり、引き上げようとしたところでプリムさんに会った。
 今日もご機嫌なようで、その理由というのが「なのはがタンコブを作って泣いてたから」というものだった。
 めそめそと泣いては、自分が参加できないことを嘆いていたという。
 その姿が余りにも可愛かったので、原因を作ったアタシに会いたかったというのだ。

「あれは……自業自得なんです」

 初めて会ったときとは違い、今日のプリムさんには、随分幼い印象を受けた。
 バリアジャケット姿のプリムさんは、細めの、スラリとした身体つきに、この間より、背丈が一つ小さく感じられた。
 表情も少し柔らかく、雰囲気が違ったのも手伝ったのかもしれない。
 歳不相応――どのくらいの年齢なのか知らないけど――な感じだった。

「随分と仲が宜しいようですわね」
「ああ。この間、顔見知りになってもらったというか、なのはの上司なんだ」

 アタシの説明に、何が面白くなかったのか、ふうん、とどうでもよさ気に相槌を打つ。
 だったら聞くなよ、と思ったけど、いらぬ話題を振ることもないので、それは口に出さずにおいた。

「今日は例の話。出ませんでしたのね」
「あ、ん? あれか。明日なんじゃねーの? 初日からごたごたさせることないようにさ」

 メンテのいう"例の話"ってのは、当然AMFのことなんだけど、その時のアタシは全く別のことを考えてた。

「どうでしょう? 初日から帰るわけにもいきませんし、二日目なら義理は果たした、と言いませんかしらね」
「それはねーだろ。向こうさんの要望だってあるんだし、わざわざ関係を悪くすることもねーだろ」

 アタシの読みは甘い、とでも言いたげな視線を向けてくる。
 妙に腹が立ったので、世の中お前みたいに捻くれ者ばっかりじゃねーんだよ、と返してやった。
 メンテは、その返しが気に入ったのか、くすくすと笑っては、くるりと踵を返した。

「それではヴィータさん。また明日、お会いしましょ」
「あ、ああ。気をつけてな」

 今日は珍しく、納豆の糸みたいなしつこさを発揮せず、あっさりと引き上げていく。
 なにか用事でもあったのだろうか。
 気になるところではあったけれど、これも新たな手かもしれないし、そう考えると易々と乗ってやるわけにもいかない。
 どちらにしろ、結論を出す頃には視界から見事に消えてしまっていたのだし、声をかけることは出来なくなっていた。


 


 二日目は、想定外のことで、少々ごたついた。
 開始時点では何もなかったけど、AMF対策訓練が始り、教導隊と数名の経験者――アタシとシグナム、リインもその中にいた――による実演。
 実演といっても、実際に魔法が使えない様を見せ、数パターンの対処法を見せる、といった具合に留まった。
 それでも、多くの参加者から、大きなざわめきが上がった。
 見聞き――殆んどが聞いただけだろうが――するのと、実際目にするのとは違うってことだ。
 そして、主催側から、いかに、これらが将来大きな脅威になりかねない可能性を秘めているのか、という解説があった。
 確かに、AMF自体は既にあるものだけど、それを装置として、しかも小型化・量産されているのだ。
 流石は管理局内の選りすぐりの面々。顔色を変えてやる気を出す。
 反発の予想された陸のメンバーも、現場レベルから、そういう声が上がっている訳でないし、問題はないように思われた。

「どうしたんでしょうかしらね」

 参加者達は整然とし、次の指示を待ってはいたが、ざわめきとでも言うべきものが、じっとりと辺りを埋め尽くしていた。
 実際にAMFに対する訓練が始り、今日の工程がそろそろ終わろうという時、急遽、陸側から横槍が入ったらしい。
 入ったらしい、というのはプリムさんの念話を聞きかじったから。
 本来、こういう横流し的なことは許されないんだろうけど、アタシは元々、対策を打ち出す側にいたこととか、その辺が働いたから。
 だから、シグナムとリインのところにも、同様に連絡が入ってることだと思う。
 何というか、対応の速いことで――
 しかし、そこまでして嫌がる理由ってのは何なんだろうな、と思わないこともない。

「さあな。AMF発生装置にトラブルでもあったんじゃねーの? 特殊な機械だかんな」
「まさかそんな、初歩的なミス、これだけの大仕事でやりましょうか。技術部の恥さらしですわよ?」
「だけどよ。実際訓練は止まってんだからさ」
「そこまで言われるのでしたら……ねえ」

 なるべくイライラしているのを装って、舞台の裏側を知っていることを悟られないよう、気をつけた。
 普段はなのはに「分かりやすい奴だな」なんて言っているアタシも、なのはに負けず劣らずの分かり易さらしいから。不本意だけどさ。
 特に今、目の前にいるのはそういうのに敏いヤツだ。気をつけすぎて、すぎることはない。

「まあ、私としては思っていたより厳しい内容でしたので、一休みできて良かったのですけれど」

 飄々と言い切るその姿に、何言ってやがる、と思わず毒づきたくなる。
 だって、コイツがへたばってるところを見たことがない。
 体力には自信があるのだろうか。
 そういえば、前にジャングルに連れて行ったときも、コイツ一人だけ元気だったなあ。
 そんな事を考えているうちに訓練は再開され、陸の連中――ほんの一握りだけど――を抜きにして、その日は終了した。


  ◆


「中止、ですの?」

 一部、陸の面々が抜けた四日目の朝。主催側から通達があった。
 詳しい理由は書いていない。
 アタシは、陸からの強い横槍のために中止に追い込まれたんだと思い、出すぎた真似だとは思ったけれど、朝一番に教導隊のところへ足を向けた。
 運良くプリムさんを捕まえることが出来、思い切って理由を聞いてみた。
 すると、彼女の口から飛び出したのは、全く予想だにしない理由であり、思わず聞き返してしまった。
 何と説明されたかというと「参加者の多くがひどい筋肉痛を訴えて動けないから」といったものだった。
 筋肉痛?
 さらに「AMFというのは、やはり相当に負担が大きいみたいで、結果から言って私たちもコレは仕方ないと思っている」と付け加えた。

「ああ、そういうこった。今は教導隊預かりだからな。暇して良いぞ」

 確かに、あの条件下での訓練は負荷が大きい。
 だけど、この訓練に選抜されるような連中が、その程度で動けなくなるほどの筋肉痛になるだろうか?
 少なくない疑問を残したアタシに対して「追跡調査はこちらで行う。そういうデータの収集も目的の一つだからね」と言ってくれたことが救いだったけど。
 と、いうわけで、別スケジュールになっていたアタシとメンテは、三日を残したところで暇になってしまった。

「だからと言って遊ぶわけにもいかないからな。ちっと顔出してくるわ」
「あらあら。随分真面目ですこと。少しばかり息抜きしても、バチは当たりませんことよ?」

 お前はバチが当たってしまえ、と胸の中で呟きながら、自分の部署に顔を出しに行く。
 頑張ってくださいまし~、などというのん気な声が背中にかかるが、それも無視して足を進めた。


 


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