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新婚なの! 11-7 (1)

 久しぶりに、なのはと一緒にテレビを見ている。
 普段はアタシも忙しいし、二人とも家に帰る時間がバラバラだから、揃ってゆっくりするってことが少ない。
 なのはが色々手伝ってくれれば、そういう時間も作れるんだろうけど、疲れてるって分かって……別に、そんな一緒にテレビ見たいわけじゃないし。
 そんな訳で、こんな風にソファーに座って、意味もなくテレビの画面を眺めるなんてこと自体が、久しぶりだったんだ。
 でも、そんなことよりも、なのはと一緒にっていうことが重要なんだけど。

「ニュースの時間みたい」

 リモコンを片手に、なのはは興味なさげに口にした。
 言われて意識を向けると、今日もトップニュースは事故とかなんとか、そんな気分がパッとしないものだった。
 画面には、ミッドから西よりの放棄区画、そこで大きな爆発があったとか映像が流れてる。
 そういえば、前にもこういう事件、というか事故があったような気がする。確か、人が死んだとかのニュースで、すぐに変えちまったんだっけ。
 この規模なら地上部隊も出たんだろうな。どこの管轄になるか知らないけど、下手したらゲンヤさんとこは今日は徹夜だな……

「ヴィータちゃん、コレ見る?」
「――んや。見たいのがあるなら変えて良いぞ」

 返事の代わりに画面がくるくると変わっていく。
 普段テレビを見ないものだから、連続モノの番組は分からないし、スポーツにさして興味があるわけでもないし。結局、程なくして教養番組みたいなものに落ち着いた。
 こういうときに、話題のお菓子かなんかの特集やってくれてると良いのにさ。ああいうのは見てるだけで幸せだし。腹減るけど。

「流行のお菓子とかの番組、やってくれたら良いのにね。もうちょっと、チャンネル数増やす?」

 なのはも、同じことを考えてたみたいで、なんだか可笑しい。
 いや、なのはの場合、食欲とかじゃなくて翠屋の娘としての本能だろうか?
 どちらにせよ、そんな面に出すことじゃないし、平静を装って返事をしておいた。

「どーせ殆んど家にいないんだしよ、今のままで構わないだろ。テレビもいらないぐらいだ」
「それもそうだね。私は、ヴィータちゃんとこうしてれば良いんだも~ん!」

 言うが早いか、ふわっと身体が浮いたかと思うと、隣に座るなのはの膝の上に乗せられてしまった。
 全く油断してて、然したる抵抗なく成し遂げられてしまったことを不覚に思うけど、そうも言っていられない。こうなると、そう簡単には離してくれないからだ。
 暴れると埃立つし、口やら手やらを使って振り払うのも面倒で、大人しく興味のないテレビの画面を眺めることにした。
 大体、構ってやるから調子に乗るんだ。
 最近、なんだかその辺の事が分かってきた……ような気がする。今更か、と思わないこともないけど。
 かといって、黙っていれば相手の思惑通りなんだし、それはそれで面白くないけど……これで良いんだ、多分。

「あれ? 今日はあんまり暴れないんだね? どうしたの?」
「なんだ。暴れて欲しいのか? お前の言う通りにするのは癪だけどよ、やっても良いんだぞ」
「いいえ。遠慮しておきますです」
「余計なこと聞くなよ、大人しくしてるんだからさ」
「はーい、えへへ」

 お腹に回された手から、頭の天辺に触る顎から、なのはが甚くご機嫌なのが伝わってくる。
 でも、何かおかしい。
 こっちの機嫌を伺うというか、というか少しだけ距離があるというか。何ていったら分かんないんだけど。
 なんか、アタシが怒ってるとでも思ってるんだろうか?
 いや、それぐらいでご機嫌を伺うようなヤツじゃないし……なんか引っかかるな。
 う~ん。まさか、またトンでもない買い物でもしたとか、そんなじゃ……いやいや、流石にそんな金銭感覚ないヤツじゃない。
 でも――そこまで考えて、何だかんだ言っても、なのはは大して悪いことした覚えがなくて、結構上手くやってきてるんだなって、そんな感想が浮かんでくるだけだった。
 甘いのかなあ――
 こんなのを、フェイトやはやてが聞いたら、やっぱり笑うんだろうか。い、いいや。フェイトだけには笑わせないぞ。

「さて、久しぶりに早く帰ったんだ。今日ぐらい早く風呂入って寝るか」
「えー、もうお風呂? もう少しゆっくりしよーよー」

 せっかく早く帰ったんだからー。
 なのはは頭の上で、ぶーぶーと文句を言ってる。アタシの頭に顎を乗せたまま。ガクガク揺れて仕方ない。
 まあ、なのはの言い分も尤もだ。
 寝てしまわずに、ゆっくりダラダラしたって良いような気がする。
 夕飯は、なのはが帰ってくる前に全部準備を済ませてあったから、今もこうやってのんびり出来るし、風呂なんざ直ぐに沸く。
 ひどく疲れているならまだしも、そうじゃないんだから、そういう日にのんびり出来る時間を確保できたってのは、有りがたく思わないといけないかもな。
 そう思えば、上げかけた腰も、ゆっくりとなのはの上で落ち着いた。

「それもそうだな、毎日疲れるったらねーからさ」
「そう?」
「それをお前が言うのか?」
「あ、えへへ……あ、そ、そういえば合同訓練があったんだっけ。じゃあ、大変だったよね」
「んー。大変だったような大変じゃなかったような」
「えー、どっち~?」

 顔を覗きこんでは来るけど、"大変だった"当事者と同僚なわけなんだし、分かってて、単に話のネタにしたいだけってのがバレバレだ。
 後頭部に、大きく豊かになった膨らみが押し付けられて、恨めしいやら気持ち良いやら、そんな感じ。
 特に気持ち良いほうを悟られたくなくって、口を尖らせたりして、覗き込む顔を何とかやり過ごした。
 なのはにバレるのも、体裁悪いし、はやてのおっぱい好きが感染ったみたいな気がして、何だか心配になるから。

「知らね。明日、誰かに聞いてみりゃ良いだろう?」
「そんなこと言うけどね、ヴィータちゃん。現場に直で行くんだから、聞くチャンスないよ?」
「あ、そういやそうか」
「んも~。私のスケジュール忘れないで~」

 アタシをゆさゆさしながら、口を尖らせてるのが分かる口ぶり。
 しかし、それと同時に、今の態度が不機嫌だ、というアピールに過ぎないのも分かる。
 だから、一々付き合ってはやらないけど、なのはだって、そうされるのを分かってやってるはず……分かってるよな?
 口を尖らせて不機嫌そうな、なのは。
 それを知らん振りして聞き流すアタシ。
 人から見たら、どんな新婚夫婦なんだって――ベタベタするのが普通なのか? 新婚って――思われるかもしれないけど、そんな他人の目なんざ気にしちゃいない……とは言い辛いのが、正直なところだ。
 やっぱり外見からくる格差とか、色々気になる。
 なんていうか、海鳴を出てからこっち、随分世界が広がったように思う。
 それにつれ、前とは別の意味で、周りの目を気にするようになってきた気がする。
 それで小さくなることがなけりゃ、悪いことじゃないとは思うけど……ちょっとだけ、なのはの隣にいる自分を想像して、腰が引けた。
 勝手な想像で、勝手に周囲にツンケンしてただけで、よく考えるまでもなく、馬鹿馬鹿しいことなんだけどさ。
 小さなアタシにしてみりゃ、ちょっとだけ問題だったんだ。
 これがアタシなりの、なのはとの付き合い方なんだ、と思ってはいても――事実そうなんだけど――、そう思うのと同じ心で、どこか引け目に感じてたのも事実。
 それに――やっぱり、長くそういう光景を見てきたってのも手伝ってか、なのはの隣にはどうしても……あの、長くて柔らかな金髪がちらついて仕方ない。
 背格好以上に、何というか、ベストな組み合わせっていうか。そういう比較対象があるせいで、どうにも気後れして。
 だけど、現実として、なのははアタシを選んでくれたわけだし、その選択をアタシは受け入れた。
 だから、未だにそう思えてしまうことっていうのは、相手に対する裏切りに他ならない。そう、思うっていうのに――

「明日には予定通りになるだろうし、のんびり出来るのも今日ぐらいだろうなあ」
「私は今週いっぱい忙しいよ。新人さんの相手じゃないから、それなりに難度の高い内容だし」
「ふうん。お前は、そっちの方が楽しそうだな」
「そうかな。どっちでも、私自身、勉強になるのは変わらないけど、やっぱり」
「へへへ、自覚がないだけだな」
「え~、大変なんだったら~」

 いかにも大変そうなのをアピールしてはいるが、決して口調はそうではない。
 どこか、楽しげでワクワクしているのが分かる。
 こいつの、呆れるほどの向上心に付き合わされる武装局員に合掌だ。
 まあ、そんななのはに認められるってことは、随分名誉なんだって事は胸に刻んでおいて欲しいけどな。
 ……身内の贔屓目っていうか、やっぱ甘いかな。

「ねーねー。なにかデザート食べたくない? 私は食べたいなー」
「いきなりだな、おい」
「だって、急にそう思っちゃったんだから仕方ないんだもん」
「……アタシの意見聞くつもりねーだろ。違うか?」

 ため息混じりに言っては見たものの、さしたる抵抗にもならず、なのはは、えへへーと笑うだけ。
 なんにせよ、急にデザート食べたいとか言い出すし、一体なに考えてるんだか分からない。
 今日は、ゆっくりする時間があるって言ったときから、考えてたかもしれないし、さっきのテレビの話がきっかけかも。
 どちらにせよ、こうしてるのは久しぶりだ。
 前に、そうしたのも、なんだか随分前のことのような気がする。
 もっと早くに思いついていれば、帰りにでも買ってくるとか、そういう事も出来ただろうけど。今更言っても遅いしな。
 もし、思いついていたとしても、今日は時間があることも踏まえて、なのはなりの考えがあってのことかもしれない。
 アタシに取っちゃ、どっちも碌でもない考えだけどさ。

「んじゃ、今から買いに行くか」
「わーい! じゃあ、私がおごってあげるね。あのね、新しいクリームチーズケーキが美味しそうなんだよ」
「へいへい。ちゃんと温かくしてけよ、今日も寒いんだからな」

 うきうきと、予め目星をつけておいたらしいスイーツの名前を挙げていくなのは。
 そんなことぐらいで、はしゃぐなのはを可愛く思いながら、コート片手にコンビニを目指すことにした。
 新作のデザート、美味いと良いな。なのは。


  ◆


「ところでなのは。お前、予め調べておいたなら、買って帰ってこいよ」
「え? あ、えーっと、だって……ヴィータちゃんと一緒にお買い物したかったんだもん」
「……あ、そう」
「んも~、照れない照れない~」
「照れてねーっての! バカ、バーカ!」
「えへへへ。ヴィータちゃんは可愛いなあ~」


 


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