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新婚なの! 11-8 (1)

 そういえば、なのはは今どこで教導してるのか知らなかったから、それとなく聞いてみると「ミッドの周辺世界」とか抜かしやがる。
 その辺だったら、アタシが顔を知ってる人がいるかもしんないし、挨拶の一つでもしておかなきゃいけない。それなのに、聞かなきゃ言わないなんて。
 まだ日程は残ってるっていうし、調べてみて、知っている人がいたら、時機を見て連絡を入れないと。
 一応、夫婦なんだし、そういう挨拶とか大切だろう。
 全く、世話の掛かるヤツだ、なのはは。
 前にも言ったような気がするのに、ちっとも反省している素振りなので、頬をひと抓りして、その日は寝ることにした。
 不機嫌さが顔に出ていたのか、布団に入ってから、やけにベタベタと甘えてくるので――ご機嫌取りのつもりなんだろうが、甘えちゃ駄目だろ――無視してやる。
 アタシがどの位怒ってるのか、分からせてやらないといけないしな。
 別にそんなことぐらい、と思わないこともないけど、甘やかしても良いことないしな。
 そんな訳で、その晩は背中になのはの体温と柔らかさを感じながら、寒さだけは万全に防ぐことが出来た。
 人間湯たんぽ万歳だ。


 


「そんで首が明後日の方向へ向いてるわけか」

 カフェテラスで、はやてのニタニタ笑いを視界の端に、アタシは不機嫌さいっぱいに、ため息を吐いた。
 説明した内容の、半分以上嘘だけど、なのはに抱きつかれてたせいで、寝違えたのは本当だし。
 なんでわざわざ、こんな面倒なことを――

「しっかし、なのはちゃん。そない寝相悪いんかね。私は寝相を知らん程度の仲やから」
「……そんなの、知らない方が幸せだって」
「何回か遊んだことあるけど、そんな覚えないなあ。フェイトちゃんに聞いたらどないやろ?」
「知らないよーだ。ところでさ、はやて。今日は何の用なのさ」

 何が面白いのか知らないけど、はやてはずっとご機嫌だ。
 このままだと、延々なのはの話をさせられそうで、本題に入ることにした。
 今のは別に、具合が悪くなったからだけで、話の矛先を変えたわけじゃない。
 はやてが用あるっていうから、わざわざ時間を作ったんだ。
 アタシは、そんな忙しい身分でもないけど、暇なわけじゃ絶対にないんだから、早く済ませるに越したことはない。
 はやてなんか、アタシより何倍も忙しいはずなのに……なんか暇そうにしてるなあ。
 はやては、仕方なさそうに――ホントに、用事があるんだろうか、疑問に思う――、切り出した。

「これからな、資料を受け取りにユーノ君とこへ行くんやけど、ヴィータはどうするかと思って」
「――は、はあ」
「最近会ってへんやろ? 私もご無沙汰やったし、ついでにどうかなあと」
「う、うーん」
「そない時間かかるわけやあらへんし、な?」

 はやては、身を乗り出して、目をキラキラさせてる。
 曲がった首で、思わず仰け反った。
 別に、ユーノに、会いたくないわけじゃない。
 だけど、いざ会うとなると……首を縦に振りづらいってのが、正直なところだ。
 アタシだって、そこまで愚鈍じゃない。
 でも、はやてが折角誘ってくれるのも、考え合ってのことだろうし、それを無下に断るのもどうかと思う。
 暫く悩んだ後に、痛い首を縦に振っておいた。

「そかそか。せやったら善は急げ、早速出発しよかね」
「い、今からか!?」
「うん。これから~言うたやない。次~、と今度~みたいな話と違うんやから」
「?」
「はっはっは。ちょっと急やったかね。んなら、ケーキもう一個注文してからにするか?」

 どうしたいのか分からない。
 大方、アタシの反応を見て楽しんでるんだろうけど、なんか違和感がある。
 でも、その違和感の正体も見抜けない限り、どうしようもないから、取りあえず、はやてが二個目のケーキを平らげるのをゆっくりと待つことにした。
 アタシは首があさっての方を向いてて痛いから、喉を通らないんだ。
 今日は――予定として――暇な日でよかった。

「ヴィータも食べたら良かったのに」
「……食欲なくなるようなことするからさ」
「なにが?」
「はやてがなに考えてんのか分かんないから、ずっと考えてたの」
「ふうん」

 無限書庫に向かう、延々と続きそうな長い通路。
 本局は広いんだから、もう少し移動を便利にするための設備を整えて欲しい。
 それでも道すがら、はやてはさっき食べたケーキが美味しかったみたいで、またもご機嫌だった。
 どうやら、今日待ち合わせしたカフェは、アコース査察官に教えてもらった場所らしい。
 はやてとしては、一緒にあれこれ喋りたいらしいと、今更に気付く。
 でも、今日はアタシは食べてないから、今度食べに行くからその時に、といえば「それはなのはちゃんと一緒に? へへえ。ご馳走様~」と勝手なことをいう。
 アタシとしては、はやてと一緒って意味だったんだけど……
 それでも、そう言われてしまうと、なのはとは一緒に行けない気がしてしまって、勝手に躊躇してしまう。
 ムキになるというか、意地になるというか。
 そんなこんなで、本当に他愛のない話――にしたい気がする。はやての思惑は別として――をしている内に、無限書庫に到着した。

「司書室にいこうかね」
「誰かに挨拶しとかなくて良いのか? こんな勝手に入ってさ」

 慣れた感じで――決して自分も勝手知らない場所じゃないんだけど――、無重力空間に蹴りだすはやて。
 止めるにも遅かったし、置いてきぼりも困るから、その背中を追うことにした。
 アタシの先を、慣性でゆったりと、はやては薄暗い空間を進んでいく。
 こうして、改めて見てみると、局の制服に身を包んだはやては、やり手のキャリアウーマンみたいで、やっぱり格好良いと思う。
 この辺り、仲の良い三人娘――もちろん、はやて、なのは、フェイト――に共通するところで、しかも、"黙っていれば良いのに"と感じることがあるのも、一緒だった。
 容姿は優れているんだし――身内の贔屓目ってのを差し引いても、充分に――、キャリアも同年齢の人と比べて、全く遜色なく、特に問題点も見当たらない。
 ただ、口を開くとガッカリ加減が大きいというか、イメージが壊れるというか、その辺りがネックなんじゃないかって。
 ……まあ、別に、はやてやフェイトが男に言い寄られて欲しいと思ってるわけでもないし、良いんだけどさ。
 そんな下らないことを考えているうちに、はやての向こう側に、見慣れた、少しくすんだ黄色い頭が手を振っているのを見つけた。
 久しぶりのユーノだ。

「ユーノ君、おひさ。元気しとった?」
「お陰さまで。はやてこそ元気そうでなによりだよ。ヴィータはどう?」
「こっちもお陰さまで、だ。病気してる暇もねーよ」
「みんな忙しいみたいだね。全然集まる機会もないし」
「一番はユーノ君やない? いっつも発掘やの調査やの言うて、ここにおらへんし」
「うーん、耳が痛いなあ」

 相変わらず笑顔の絶えないユーノ。
 既に、魔導師としては動いてないけど、そもそもの本業で偉い人みたいだし、年齢以上の自信というか、貫禄が出てきたように思える。
 魔導師としても実力充分だし、その辺の武装隊員より修羅場を潜ってたりしてるだろうし……外見も相まって、いい男の子の部類じゃないか?
 それなのに、この仲良しグループの例に漏れず、浮いた噂の一つも――
 そこまで考えて、これはアタシの口からいうべき言葉じゃない、と考えるのを止めることにした。
 はっきり言ってデリカシーの欠片もない考えだから。

「立ち話もなんだし、入ってよ」
「ほいじゃお言葉に甘えて。ヴィータもついておいで」
「あ、うん」

 変に意識しないよう――そう、気をつけたってのが既に意識してたんだ、と気付いたのも後の祭り。
 ユーノの顔が見づらいなあ、なんて考えながら、はやての背中だけを見て司書室にお邪魔することにした。


 


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