« あら? | トップページ | ただいまイベント出張中☆ »

新婚なの! 12-2 (2)

「ただいま~」

 のんびりソファーに寝転んで、クッションを抱っこして、顎を乗っけてダラダラとしていたら、やっとのことで、なのはが帰宅した。
 今日は、特に遅くなるようなことを言ってなかったのに、夕飯の準備をし始めたところで、その旨の連絡があった。
 電話口の向こうから聞こえてくる声は、何だかどんよりとしていて、正直具合は余り良さそうではなかった。
 いつもなら遅くなる理由を尋ねるんだけど、その時は気が引けたというか何というか、見えもしないのに黙って頷いては「気をつけて帰って来いよ」とだけ言って電話を切った。
 何で聞かなかったんだろう?
 なのはの、どんより具合に何か感じるところがあったんだろうか? 意識しない、本能とでも言うべきレベルで。
 急用が出来たと言って、寂しそうにするなのはが、電話口の向こうにいても、こんな風にモヤモヤとして、理由を尋ねられないことなんてなかった。
 理由を言わないときこそ、聞きださなきゃいけないってのに。
 アタシは、一体なにに遠慮してるんだ……
 結局、はっきりとした結論を出せないまま、なのはが帰宅して今に至っているんだけど。

「お疲れさん。なにか面倒ごとでもあったのか?」
「う、ううん。そうじゃないんだ」

 コートを受け取り、上着やネクタイと、次々に脱いでいくのを抱きかかえていく。
 放っておくと、その辺りに脱ぎ散らかすから――疲れているときは顕著だ――、余計な仕事を増やさないために仕方ないんだ。うん。
 ふぅ~、と空気の抜けた風船みたいにして、ソファーへ倒れこむなのは。
 相当に疲れたんだろうか。完全にソファーに身体を預ける形になっている。
 疲れただけ……それだけなら、良いんだけど。
 抱きかかえた服に、すっかり顔が埋まってしまって、だらしない格好をしているかどうか、見てやろうにも、しっかり確認できなくて、伸びきった足から、そう判断しただけ。

「さっさと着替えろよ。スカートが皺になっちまうぞ」

 顔が埋まってしまって、もごもごとくぐもってしまう。
 脱いだばかりの服は、まだなのはの体温を残していて、そのせいか甘い香りを強く感じた。
 思わず顔を押し付けたくなるような香りだな……
 ああ、いかんいかん。
 このまま放っておく訳にはいかない。

「おい、起きてるか、寝るなよー」
「だーいじょうぶだよ~。未だに昔の癖が抜けないんだね~、ヴィータちゃんは」
「あ、あに嬉しそうに言ってんだよ。早々にこっちに慣れたお前がおかしいんだ。どうでも良いから早く着替えろって」
「は~い」

 面倒そうな返事が聞こえた。
 ソファーのスプリングが軋み、とんとんと軽い足音が聞こえる。
 どうやら、寝てしまわずに、ちゃんと着替えにいくみたいだ。
 アタシもその内に、これらをハンガーに掛けるなりしておこうと思った――けど。

「……なあ、なのは」
「んー? どうしたの、ヴィータちゃん」

 服の山から顔をなんとか覗かせれば、なのはは、ちょうど自分の部屋に入っていくところだった。
 もう着替える気満々なところ、後でも良いかなと思ってたけど、引きとめてしまった手前、聞かなきゃ悪いような気がした。
 ……いや、もっと別な何かがアタシを突き動かしたような気がする。
 なのはの制服を抱きかかえる腕に、思わず力が篭る。

「お前さ――香水、変えたのか? 全然気付かなかったぞ」
「――え? 香水?」
「ああ。この前まで使ってたのと違う気がしてさ」
「う~ん……どうだったかなあ」

 なのはは、何種類もずらっと並べて、それらを使い分けるタイプじゃないけど、それでも幾つか持っているのは知ってる。
 そんで、日常、特にイベントなり、季節が変わるなりしなきゃ変えたりしないのも知ってて、それじゃないのに、漂う香りが違うような気がしたから聞いてみたんだ。
 聴かれてなのはは、顎に手を当ててうーんと思案しては「ちょっと気分転換、かな」とだけ答えた。
 その答えに納得したわけじゃないけど、だからといって否定する材料もないし、ただ何となく納得できないなんて言われりゃ、なのはも困るだろう。だから、これはそういう事なのだと、自分を収めるしかない。
 なのはがそう言うなら、余程の確証でもない限り、アタシもどうこう言うのは変だしさ。
 ただ、本当に何となく気になっただけなんだし。

「ねえ。私の服、良い匂いする? 一日着てたから、ちょっと心配だったんだけど」
「な、なにがさ」
「だって、汗臭かったりするの、やっぱり嫌だもん。ヴィータちゃんが、そういうの好きだって言うなら……」
「い、いや。アタシにそんな趣味ねーし……ただ、香水がさ」
「そっかあ。そんなに好きなんだ? じゃあ、明日からも、当分そうしてようかなあ」

 なんでか知らないけど、なのははデレデレし始めた。

「ど、どうしたよ、急に」
「えー、だって。ヴィータちゃんったら、そうやって、ずーっと顔を埋めたままだから。そんなに気に入ってくれたなら――」
「ま、待て待て! そりゃお前、これだけ抱えたら、どうしたって顔が半分埋まっちまうだろ。勘違いすんなって」
「え~、本当? だって、幸せそうな顔してたよ? 毎晩抱きついてきてるときみたいに」

 えへへ~、と両頬に手を当てては、いやんいやんと身体をくねらせている。
 な、なんだ一体!?
 アタシがなのはの匂いで幸せそうにしてるとか、まるで頭がどうにかなっちまったみたいに言いやがって!
 そんなじゃないぞ、勘違いするな!
 それに毎晩抱きついてるときの顔なんて、アタシは知らないぞ!

「そ、そんなじゃねーって! 一日着てたから汗臭いなーとか思ってたんだ!」
「えー。ヴィータちゃんって、そういうのが好きなの~? だったら私考えちゃうなあ。普段から気にしてたのに……」
「ば、ばか! なんでそんな話になんだよ! 汗臭いのが良いなんて、一言も言ってねーだろ!」
「あ~ん。ヴィータちゃんがバカって言った~」
「へん! いっくらでも言ってやるぞ! ばーか、ばーか!」

 元々なんの話をしてたのか分からなくなって、まるで子供の喧嘩みたいだった。
 別に本気でしてるわけじゃない――じゃれあってる、とでも言うんだろうか――し、こんなやり取りも、偶にはいい気もする。
 なのはは口を尖らせたり、頬を膨らませたりして、忙しいったらありゃしない。まあ、アタシも文句言ったり、なのはの言葉にどぎまぎしたり大変だったけど。
 最後に「早く着替えて来い!」と言えば、なのはは「今日のこと、はやてちゃんに言っちゃうもんね!」と捨て台詞を吐いて部屋に入っていった。

「連絡しないから、夕飯食べないで待ってたんだぞ」
「うん。お腹空いちゃった」
「ちぇ。そういうときは嘘でも"先に食べててくれて良かったのに"とか言うもんなんだぞ」
「ううん。ヴィータちゃんに一人寂しく食卓を囲むなんてさせないから、そんなこと言わないよ」
「けっ、言ってろ」

 先に風呂を済ませて、食卓で夕飯が出てくるのを待つだけの体勢のなのは。
 真面目に言ってるのか冗談か知らないけど、どっちにしたってアタシは面白くないんだぞって、アピールだけはしておいた。それでもなのはは、全然堪えた風がなかったけど。
 なのはの本心はどうか知らないけど、お腹が膨れてるときにご飯の準備するって、思ったより面倒に感じる。まあ、言うほど気にしてないんだけどさ。
 珍しく遅い夕飯を一緒に済ませて、アタシは風呂に入る前に台所を片づけをしようとしたら、なのはが代わりにやってくれるなんて言い出した。
 風呂を先に済ませてるんだから、水仕事はさせられないし、その上疲れてるんだから休んでろって言ったんだけど、脱衣所に押し込まれてしまった。
 たまには、そういうのも良いかな……と、そのまま好意に甘えることにした。

「今日はあんま寝れないな」
「うーん、ゴメンね。これなら、泊まってきた方が良かったかなあ」
「駄目だ。帰ってこられるときは、出来るだけ帰って来い」
「えへへー。そんなに私と一緒にいたいの~?」
「ちげーよ。お前はちゃんと見てないと、誰に迷惑かけるか分からないからな。そういう意味だ」

 目覚ましをセットして、布団に潜り込みながら喋っていると、なのははむーっと頬を膨らませていた。
 本心そのままに伝えるのは、はっきり言って……照れる。だから、本当のところは胸の中で呟いて、本心は悟られないよう、別のことを口にする。
 その「迷惑をかける」ってのは、なのはが我侭言ったりとか、普段アタシが言ってる意味じゃなくて。
 誤魔化すために変な言い方になったけど、なのはに"何か"があって、それで周りに心配をかけるってことだ。
 誰かが負い目に感じるような事態は避けたい。あんな想いは誰にだってして――
 そこまで考えて、小さな違和感に捉われた。
 今いってた"あんな想い"って、なんだったっけ。はっきりと、思い出せない。
 なにかあったはずなのに、それが何なのか思い出せないんだ。
 不安が大きくなる。
 そして、その不安と表現出来るものは、確かにあって、"一番知られたくないところ"に繋がっていった。
 そう。それは――なのはの言う通りだってこと。
 海鳴に帰る前。
 結局、どうしてあんなにナイーブ――と、いうことにしておく――だったのか分からない。
 なのはと一週間も離れ離れになるかと思ったら、居ても立っても居られなくなったのは確かだった。
 だから……ああ、お前の言う通りだよ。
 そうなった理由は分からないけれど、確かに、その"何か"が繋がっていた。

「ふーんだ。そんな子には、今晩から抱きつかせて上げないんだから」
「あっそ。言っとくけどな、それはアタシのセリフだぞ。よくよく考えたら、お前が手を伸ばして、アタシを抱き寄せてるんじゃないか?」
「そんな証拠もなしに言うなんて駄目だよ」
「お前だって、自分がやってない証拠なんてないだろ」
「そんなー。やってない証拠なんて出てくるわけないよ。だって、やってないんだもん」
「……それもそうか」

 布団を肩までしっかり潜ったなのはは、ふふんと勝ち誇った顔をした。
 誤魔化そうとしたのが裏目に出た。これじゃ、結局アタシから抱きつきにいってたと白状したみたいなもんだ。
 こういうとき。
 なのはは、アタシが観念して黙って抱きつかせるから、直ぐにくっ付いてくるのに、今日だけはニンマリと頬を緩めたまま、こちらを見ているだけ。
 なんだよ。こうなったら我慢比べだ。……別に、アタシはなんにも我慢することなんてないんだしな。

「ほれ、早く寝ろ。疲れ取れないぞ」
「は~い」

 勝ち誇ったような顔で、なのはは気分良さそうに、もそもそと首をすくめて布団に潜っていった。
 帰りが遅くなる旨の連絡のとき、その様子が気になったもんだから、すっかり調子を取り戻したらしい姿を見ると、安心できる。油断は出来ないけど。
 まあ、アタシの絡まない要因で機嫌を良くしてくれるのが、一番良いんだけどさ。背に腹は代えられないっていうか、何というか。
 ホント、心配かけてばっかりなんだぞ、お前は。
 幸せそうな顔して寝やがってよ。


  ◆


「起きたか、なのは?」

 部屋の扉から、眠気眼を擦りながら出てくると「う、う……ん」と何とか応えて、なのはは、そのままソファーへ突っ伏してしまった。
 なんて情けない格好だろう。年頃の乙女のする格好じゃない。
 こんな姿はフェイトにだって見せられないぞ。

「早く、顔洗って来いよ。もう直ぐ準備できるぞ」
「う~ん。そうするねえ……」

 大雑把にまとめた髪を解しながら、ふらふらと上半身を揺らしつつ、洗面所に消えていく。
 疲れはとれてるはずなんだけど……ちょっと、気になるな。
 単に、寝起きが悪いだけなら良いんだけどさ。
 気にしながら、フライパンを振っていると、意外にもスッキリした顔で、なのはは戻ってきた。

「今日はなんだかすっきりしてるよ。寝てる時間短かったのにね」
「短い時間でしっかり寝るのも必須の技能だからな。ちゃんと出来てるじゃねーか。それに、長く寝りゃ良いってもんでもねーしな」
「ふーん」
「……な、なんだよ。その顔は」
「別に~。ヴィータちゃんがそんな風に褒めてくれるのって珍しいなあって。そう、思っただけ」

 なのはは気付いたんだろうか。アタシがなにかしたことに。
 しまったな……
 変に褒めたりして、珍しいことなんざするもんじゃねーな、ホント。

「良いんだぞ。別にアタシは褒めなくたって。でもな、お前は褒めて伸びるタイプだって言うからよ。偶には良いかと思っただけだ」

 なのはは「変なのー」とでも言いたげな顔をしている。
 ううーん。誤魔化すために喋りすぎて墓穴を掘るってのは、定番の展開だけど、まさか自分がそういう立場になるなんてな……
 いや、元々アタシはそうやって墓穴を掘り易いタイプか?
 なのはが相手だと、特に。

「ほれほれ。早く食べて用意しろって。遅れるぞ」
「はーい」

 やっぱり気付いたんだろう。
 具体的なことは分からないにしても、アタシが何かしたってのは分かったんだろう。
 なのはは気にしてるだろうか。知りたがっているだろうか。
 教えてやったら喜ぶだろうけど――なんてのはアタシの自惚れかな。
 前に、アタシがなのはにしてもらったことだし、結婚してんだから、言ってもいいような気もするけど、逆にだからこそ、言わないでいい気もする。
 そうだよな。
 結婚してんだから、このぐらい当たり前だよな。
 わざわざ、してやったんだぞ、なんてアピールするのは性に合わないし、することじゃない。

「よーし。これで今日も頑張れそうだよ」
「気合入れて頑張るのは良いけどさ。そうやって――」
「分かってま~す。無茶しちゃ駄目だって言うんでしょ?」
「……ホントに分かってんのか?」

 呆れながら口にすれば、なのははえっへんと胸を張った。

「だって。私に何かあったらヴィータちゃんが泣いちゃうもんね。新婚さんで未亡人は嫌でしょ?」
「――んな縁起でもないこと言ってる暇があったら、さっさと行ってこい!」
「あ~ん。ヴィータちゃんが怒った~」
「ったりめーだ!」

 なにを自信満々にいうかと思えば、碌でもないこと言いやがって。
 イーっと怒ってやれば、なのははえへへーと笑いながら荷物を纏めて、玄関まで走っていってしまった。
 器用な真似しやがる。
 全く。朝から騒々しいヤツだな。

「忘れもんねーか?」
「うん。昨日のままだから大丈夫だよ」
「アタシは届けてやれねーんだから、そういうテキトウなことやってちゃ駄目だぞ」
「はーい」

 靴を履く間、コートと鞄を持ってやる。
 コートと鞄を渡して準備完了。後は玄関を開けるばかり、となったところで――なのはが振り返った。

「ヴィータちゃん。ありがと」

 恒例の行事とはいえ、お凸に触れた唇の感触は、いつもと違う気がした。
 やっぱり、なのはは気付いてたんだ。アタシが回復魔法を使ったことに。
 帰ってきたら、あの魔法は、ユーノが組んだモノだって教えてやんねーといけねーな。
 そう、昔に――

「……ん。昔、なんていったけど、いつだっけ?」

 覚えているはずの魔法を、いつ覚えたのか。
 それが、どうしてユーノのものだと思えたのか、さっぱり分からなかった……


 


「ね、ヴィータっ!」
「朝から元気だな、お前は」

 今日も今日とて元気印は、挨拶もなく話しかけてくる。
 たまには静かにしたらどうだ、とは思うけど、そう言ってみても、コイツに元気なかったら、それはそれで心配だけどさ。
 立ち止まって見上げた顔は、何だか、プレゼントを楽しみに待つ子供みたいだった。
 思ったより童顔なのかな、コイツ。

「そりゃ朝ぐらいは元気だよ。夜も元気だけどね。んーでも、お昼はちょっと元気ないかな」
「つまり、仕事以外は元気なんだな。そんで? アタシになにか用か?」
「え~。またまた~、そんなこと言っちゃって」

 肘でウリウリとしてくるけど、なにを言いたいのかさっぱり分からない。

「んもう。駄目だね、ヴィータは。言わなきゃ分かんないなんて。聞いてきてくれたんでしょ?」
「なにをさ」
「何をって……えー。まさか忘れちゃったの? 昨日の今日で?」
「え、えっとだな。えーっと、えーっと……」

 腕組みして考えてみる。
 …………
 ……駄目だ、完全に忘れてる。なにを忘れたのか分からないぐらい、完璧に。
 コイツと一体、なにを約束したんだろう。昨日のアタシは。
 そんなことを考えているうちに、目の前の顔がどんどん渋くなっていく。
 顎に梅干なんざ作ってちゃ駄目だぞ、年頃の女の子が。原因を作ったらしい、アタシが言うのもなんだけどさ。
 結局、アタシが思い出せないでいることに痺れを切らしたのか、仕方なさそうに、教えてくれた。

「指輪のお店。聞いてきてくれたんでしょ?」
「指輪……あ、ああ。そういやそんなこと言ってた気がするな」
「もう~! ヴィータったら酷い!」
「わ、悪い……」
「仕方ないなあ、ヴィータは。それで? お店の名前とか住所はどんなだった?」
「あ、ああ。ええっと、なんつーか、その……」

 完全に忘れてた。
 忘れてたことすら、忘れてた。重症だ。
 昨日はなのはの帰りが遅かった上に、色々気になることがあって、約束なんざ綺麗さっぱり忘れてた。
 いや、これは単なる言い訳だな。
 一言聞けば良いだけなんだし……こりゃ、素直に謝るしかねえ。

「まさか、忘れたのー?」
「……うん」
「え~。それはちょっと酷くないかなあ。昨日の今日だよ?」
「悪かった。あ、あのさ。今日はちゃんと聞いとくからさ。勘弁してくれないか」
「う~ん……そだね。そんな急ぎの用でもないし、別に良いよ」
「ホント、悪かったよ」

 謝っておくと、納得はしてくれたみたいだけど、腕組みをして、なにやら考えごとをしている。
 コイツは、他の面子ほど性質は悪くないけど、どうにも人が何やら思案している様子というのは、苦手だ。大概、アタシにとって碌なことがないからなあ。
 考え込んでいるうちに、少しずつ距離を取って、いつでも逃げだす準備をしようと思ったら、その考えは一瞬遅かったらしい。
 腕組みがパッと解かれると、コレは名案! とばかりに、手をポン、と打った。
 ピコーン!
 電球マークが浮かんでいそうである。

「ねえ、ヴィータ。電話して聞いてみてよ。今すぐ」
「だ、駄目だろそれは。今は勤務中だぞ。そういう私的すぎる電話は駄目だ」
「固いんだからあ、ヴィータは。奥さんが旦那さんにちょっと聞くぐらい問題ないったら。ほら、私が黙っててあげるし」
「そ、そいういうんじゃなくてだな。向こうはそんな電話出られないぞ」
「えー。それを言うなら、ヴィータが昨日忘れずに聞いておいてくれれば良かったのに」
「うぐぐ……」
「そんなこと言って。ホントは旦那様と電話で喋ってるの、聞かれたくないんでしょ?」
「な、なんでそーなんだよ!」

 良いから良いから、と言いながら、アタシに電話をかけさせようとするけど、そこまではやってやらないぞ。
 確かに、アタシが忘れたのが悪いんだけど、せめて、お昼休みとかだな。そういう現実的な提案してくれ。今すぐなんて絶対しないからな。
 べ、別に、電話してるところが見られるのが嫌とか、そんなことないぞ。
 当たり前のことを言ってるだけだからな!

「照・れ・屋・さ~ん。その様子だと、普段からラブラブみたいだねー」
「ば、バカいうな! そんなこと全然ないぞ!」
「ホント~? だったら、してみてよ。電話。ラブラブじゃないなら出来るよね、ね?」
「あ、ああ、えっと……うぅ」

 こっちから指輪の話なんて振ったら、なのはは絶対調子乗るに決まってる。
 そんな姿なんて見せらんない。恥ずかしいなんてもんじゃないからな!

「やっぱり出来ないってことは、そうなんだあ。きゃー!」
「バカ! 大声だすな!」

 コ、コイツ。若しかして初めからこれが目的だったんじゃねーだろうな……

「見たいなあ。いっつも不機嫌そうに目をこーんな風にしてるヴィータが、デレデレしてるとこ~」
「だ、だから。アタシはそんなことしないって!」
「じゃあ、そんなことないって証明して見せてよ~」
「今は勤務中だ! 駄目だ!」
「ふう~ん。そう言って、ホントは恥ずかしいんでしょ?」
「ちげーよ! デレデレすんのはなのはのヤツだ、アタシじゃない!」

 く、くそう! なんでアタシの周りにはこんなヤツばっかりなんだよ!

「へ~。ヴィータはやっぱり旦那様と下の名前で呼び合ってラブラブなんだ~。きゃ~」
「や、やっぱりってなんだよ! バカ、バカ!」

 年上の威厳もクソねーじゃんか、これじゃ……


 

 新婚なの! 12-3 (1) >


 

|

« あら? | トップページ | ただいまイベント出張中☆ »

新婚なの!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« あら? | トップページ | ただいまイベント出張中☆ »