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新婚なの! 12-4 (1)

 本局就きだと中々動く機会がないけれど、要請があったときは大概危険な任務なので、極端すぎる。それでも、陸と本局のどっちと言われれば……やっぱり、こっちだろうけど。
 最近は――なのはと結婚してからだ――、穏便な日が続いてて――アタシ達にお呼びが掛からない、という点で――ホッとしてたんだけど、世の中スムーズに事が運ぶことってのは少ないんだなって、思わされた。
 それもこれも、これから午後の勤務ってところで、要請がかかったからだ。
 どっかの世界で広域次元犯罪者一味が云々ってことで、近場の陸の人間だけでは戦力が足りないってことらしい。
 その世界の中だけで留まっているうちは、その世界の問題だから無闇に干渉しない――というか、出来ないという方が近いかも――けど、それが外へ飛び出すなら話は別だ。
 あっちからこっちへと、ちょろちょろしやがって。色々バランスってものがあるってのによ。
 ああ、文句言ったところで始まらない。要請が来た限りはきっちり応えなきゃならない。
 また別の世界にいって、そこで悪さされたんじゃ堪ったもんじゃないからな。
 メンバーを選出して、装備を整えて、一秒でも早く現場にいくために、隊員オフィスを飛び出した。


 


 切り立った岩場の合間。吹きつける風と、身を隠しやすい凸凹岩、うっすらと登りつつある太陽。そんな、よくある風景の中で、大捕り物をした。
 情報どおり、相手は戦力を整えていて、それを見越した戦力だったんだけど、ちょっとばかり多かった気がした。それでも、足りないのは避けたいし、別に文句もない。
 広域次元型の相手の場合、とにかく跳ばれたら終わりなので、それを海の連中と連携して抑えつつ、現場でとっ捕まえる。がっちりロック出来るなら、わざと逃がす手もあるけど、余り使いたくない。
 隊員の多くを占める陸士に対して、空を飛べる、というのは大きなアドバンテージで、それを埋める為に呼ばれたのがアタシ達だ。
 こういう手合いの場合、下っ端だと殺傷設定にしているヤツもいて――実力が中途半端だと非殺傷じゃ戦えない――、性質が悪い。
 それら諸々を踏まえて、お互いを立てながら――変な話、手柄を独り占めってのは避けたい――、相手の身柄確保になってくる。
 色々と難しいこともあるけれど、自分で選んだことだし、精一杯やるだけだ。

「用心棒稼業というのは、そんなに儲かるのかしら」

 お天道様がすっかり顔を出し、遮る物のないところでは随分と暑くなるらしいこの世界で、岩陰に隠れるようにして休憩を取っていると、メンテがこっそり寄ってきた。
 アタシ等航空隊の分隊長が打ち合わせに行ってる間、残りのメンバーはここで休んでいて、その中でのことだ。

「さあな。腕が立つんなら、そりゃ儲かるだろうよ」
「ふうん。地方世界の寂れた旅館の女将よりは良いのかしら。だったら考えちゃいますわね」
「……滅多なこというなよ。それに、あんま安定しない仕事なんじゃないか? 雇い主探したりよ」
「それもそうですけど、営業が大切と言うのは、どちらも変わりませんわ」
「ふ、ふうん」

 今一要点を掴めなかったアタシの横に、防護服の前を大きく開け、面倒臭そうに、メンテはどっかりと腰を下ろす。
 普段は、ちゃんと仕事してる風を装うだけなのに、今日は真面目に動いていたから、疲れたんだろう。
 いつものお礼に「慣れないことするからだ」と言ってやると、「そうかもしれませんわね」なんて殊勝なことを言いやがった。
 身柄を確保したときも、引き渡すまで人任せにしなかったし……悪いモンでも食ったのかな。
 いや、雨でも降るかもしれない。ああ、今降って来てくれ。

「よう。なんだか今日はお疲れじゃんか」
「あら。私は別に、あなたの顔なんて見ても疲れは取れませんわよ?」
「べ、別にそんなことの為に来たんじゃねーし……」
「お疲れさんだ、フーガ。今日は特に助かったぞ」
「うぅ~、ヴィータ~」

 ここで休んでいる中では、疲れの見えないフーガは、なにやら急に情けない声を出して寄ってきた。

「ど、どうしたよ。上手くいったんだから泣くことないだろ?」
「嬉し泣きですの?」
「ヴィータみたいに、褒めてくれる人がいてくれて良かったって……思ってるところだよ……グスッ」
「珍しく当たったな、お前のいうこと」
「ふふふ」

 フーガも、人から評価されないってタイプでもないのに、なにをそこまで泣く必要があるんだ。
 よほど普段から人に――主にメンテとその一味だが――からかわれてるのが、堪えてるんだろうか。
 その点においては、アタシも苦労を分かち合える仲だと思うけど……どうしたもんか。
 もうちょっと、自信がつくと良いんだろうけど、こればっかりは性分ってもんがあるからな。
 アタシの周りには、もう少し自信なくせってヤツがいて、そいつから分けてもらえって思うぐらいなのに……上手く行かないもんだ。

「本局の航空隊にいるんだ。立派なもんだぞ。もっと自信持てよ、な?」
「俺はいつ本局を首になるかヒヤヒヤしてるところだよ……はあ。Bランク試験で運を全部使っちまったのかなあ」
「運?」
「ああ、そうだよ。あの大型スフィアが出てこなかったんだ、俺のとき」

 懐かしそうに遠くを見つめるフーガだけど、お前まだそんな歳じゃないだろ……と突っ込みたくなる。
 それは別の機会にするとして、コイツが今ひとつ自信に欠ける理由の一端が見えたような気がした。
 確かに、運がいい面もあるだろう。人材不足が叫ばれる管理局で、更に人手の足りない年に引っ張り込まれて、しかも試験では大型スフィアが居ないときた。
 世の中には逆の場合の人間が多いって聞くし、運を使い切った~なんて思っても仕方ないかもしれない。
 いや、多分誰かに嫌味の一つでも言われたのかもしれない。結構、気にしいだからな、こいつ。

「だけどよ。その後のことはお前の努力の賜物だ。それまで卑下するのは感心しねーな」
「う、うん……」
「それに、アタシらみたいなポジションは、どこへ行ってもやれなきゃいけないんだ。今日みたいにな。中途半端な実力のヤツはおいとかねーよ」
「そうですわよ。航空隊は決して出番が多くない分、今日みたいな危険な仕事も多いですから? 辞めるなら早いうちが宜しいと思いますけどね」
「直ぐそーいう口を利く。ちょっと黙ってろ」

 全く堪えた風もなく、メンテはしれっと返事をする。

「火力支援がないと、アタシ等みたいなのは困るんだぞ」
「……そうですわね。今日は助かりましたわ」
「ほれ。コイツも認めてるんだし、いつまでもめそめそすんな。胸を張れ! 分かったな?」
「お、おう」

 毎度、手の掛かるヤツだ。
 だからと言って放っておくわけにもいかないし、ちゃんと面倒見てやらないとな。これでもアタシは三等空尉だからさ。
 ガッカリ気味だったフーガは、アタシの手前ってのもあるのか、元気を取り戻したように見える。
 これで大丈夫かと安心していると、何を思いついたのか、少し言いにくそうに切り出した。

「そういやさ。今日の相手、思ったより手こずらなかったように見えたけど……」
「褒められた途端にそれでは。もう少し謙虚じゃありませんと」
「お前は黙ってろ。……そう言われてみれば、そんな気もしないでもないな」
「だってさ。俺の牽制があんまり上手くいくもんだから、ちょっと不思議に思ってたんだ」
「後ろ向きな分析ですこと……」
「黙ってろって。そんで、お前らはどうだった?」

 今のアタシたちのやりとりは"いつも通り"ってことで、無視してた面子も、アタシの言葉に顔を見合わせ、黙って頷いた。
 理由を尋ねてみると、口々に意見を述べるが、多くが事前の資料と現状との差に、違和感を覚えたという趣旨のものが多かった。
 自分も感想を同じくしていたところだったから、勘違いじゃなかったことに安心しつつ、小さな違和感は大きくなっていった。
 それは、アタシとメンテ。更にもう二人がベルカ式だったこと。偶然だろうか、と疑問に思う。
 若しかしたら、相手の構成から、ベルカ式が有効だと判断したのかもしれないけど、アタシにはそれ以上の何かを感じさせたから。
 勘と言ってしまえばそれまでで、何にも物証があるわけじゃないけど、何故かそれが拭い去れなかった。

「そろそろ暑くなってきたな」
「早く終わってくんねーかな。俺たちだけでも帰してくれりゃ良いのに……」
「今日は珍しく早くに片付きましたし。この場でのんびりとしていたって良いんじゃありませんの?」
「だけどよ。こうも暑くちゃ、いくら防護服があるったって堪えるって」

 フーガの発言に皆が頷く。
 今は日陰を抜ける風がまだ頬に心地よいけど、頭上で輝くお天道様は、いつまでも優しい顔をしていなさそうな雰囲気だ。
 確かに早く帰ったところで、別の仕事が待ってるだけだけど、先延ばしに出来ないんだから、やっぱり早く帰った方が良いかも知れない。
 アタシが様子を見に行ってくるから、そこで待っているように言って、腰を上げた。


 


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