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新婚なの! 12-6 (3)

 その後、フェイトには、なのはに対する愚痴を聞いてもらった。
 誤解のないように言っておくと、すすんでそうした訳じゃなくて、何となく話の流れから、それっぽくなっただけで……ホント、ホントだって。そりゃ、言いたいことは山ほどあるけどさ。
 言い終ってから「愚痴なんて聞かされても、面白くないよな……」って思ったんだけど、フェイトは嫌そうな顔をするどころか、ニコニコと笑っていた。
 それはフェイト自身の人の良さなのか、はたまた、アタシの知らない何かがあるのか。
 フェイトも、なのはとの付き合いは長いし、最近また連絡をサボっているらしいから、近況を聞けるって意味で、愚痴を聞かされるってのとは、少し違ったのかもしれない。
 とにかく、なのはは相変わらず我侭だって事を、具体例を挙げて愚痴ってたんだけど……また、甘えちまったかなあ、フェイトに。

「そろそろ帰るわ。すっかり話し込んじゃったからさ」

 時計を指していうと、フェイトは「そうだね」と席を立った。
 結局、なんのために来たのか分からない感じになっちゃったけど、心なしか、気持ちが軽くなった気がする。
 はやてとはまた違った、人を安心させる人間だと思う。アタシもこういう風になりたいもんだ。
 ……でも、なのはを甘やかすのは違うぞ。アタシのは、違う気がする。
 フェイトに連れられ部屋を後にし、人影のない、やけに足音の響く通路を歩く。あーでもない、こーでもないと、悶々としていると、ふとフェイトが足を止めた。

「あ、そうだ。この間の話だけど」
「なんだっけ。この前の話って」

 要領を得ないアタシの返事に「ヴィータの同僚の……」と、フェイトは少しだけ口ごもった。
 ああ、確かそんな話もあったなあ、なんて間の抜けた返事をすると、フェイトは小さく困り顔――というか呆れてただけかも――で話を続けた。

「結論から言っちゃうとね? 怪しいところは見つからなかったんだ。私の調べた限りでは」
「ふうん」
「変に疑っちゃったりして……ごめんね、ヴィータ」
「別に構うことなんざねーよ。アイツはそんなことぐらいで、どうにかなるような殊勝な神経は持ち合わせてねーだろうからさ」
「そ、そんな人なの?」

 小首を傾げるフェイト。身辺調査をしただろうに、アイツの性格とか分かんなかったのかな。
 モニターを立ち上げ、アタシにも見えるようにしてくれると、そこに映し出された報告書を、読み上げ始める。
 後でくれるんだろうけど、一応ということなんだろうか。
 ホント、フェイトは律儀なヤツだ。

「地方世界出身で、十四歳で訓練校に入校。成績は可もなく不可もなく。卒業後は、故郷に帰ることなくミッドの空隊で過ごし、ヴィータの少し後に本局に――だって」
「へえ。やっぱり、というか随分順調に出世してるみたいだな」
「やっぱり?」
「あ、いや。こっちの話」
「訓練校時代の成績からすると、ランクの空戦Aっていうのは、凄いかも。あと、ベルカ式だけど騎士登録はしてないみたい」
「……アイツが騎士だったら笑っちまうところだった」

 フェイトは、またも首を傾げている。
 騎士ってのも、今やベルカ式の登録って意味が強いし、そこまでの意味はないけどさ。アタシ達には、それなりのプライドってのがあるんだ。
 そのことを説明しようかと思ったけど、まあ……今はいいか。
 フェイトの報告は、特に興味を誘わなかったし、改めて聞いてみても、特筆する点はないように見える。

「訓練校時代から影の薄い人だったみたいで、ミッドの空隊でも、印象に残るような人じゃなかったって」
「へ? そりゃ本当か?」
「うん。……私の聞いた範囲、というか上がってきた報告書でも、そう指摘されてたよ」

 どうにも納得できないというか、アタシの現実と剥離しすぎてて、受け入れづらい。
 まあ、処世術というか、そんなのに長けてそうなタイプだから、面倒ごとを避けるために敢えてそんな風に過ごしてた、という可能性もある。
 ……だとすると、今の態度はどっちなんだろう?
 素なのか、それとも――
 どちらにしろ、アタシが迷惑することには違いないんだから、考えても詮無いことだし、やめておこう。

「報告書……いる、よね?」
「一応貰っとく。せっかくの好意だからさ」

 生きた資料というべきか、本人が目の前にいるんだから必要ない気もするけど、フェイトも心配してのことだし、貰っておかないとな。
 今と違う風に過ごしてたアイツを想像するのも……全然楽しくないけど、少しぐらいは反撃の材料があったって良いだろう。過去のことを、あれこれ穿り返すのは、余り気が進まないけど。
 フェイトは少しホッとしたように見えた。
 報告書を転送してくれる。紙のほうがそれっぽく感じるけど、こればかりは仕方ないだろうと思いながら、有りがたく受け取った。
 そのまま二人で並んで、中身のない世間話をしていると、あっという間にドックの入り口が見えてきた。
 相変わらず、そこは帰ってくる人と出発する人たちの、忙しそうな顔でごった返していて、一気に現実に引き戻される気がする。

「じゃあね、ヴィータ。ここ暫くは落ち着いてそうだから」
「ああ。アタシもなのはのこと笑えるように連絡する。あ、お前も無理するなよ。そう言われたところで、融通も利かないかもしんないけどさ」
「うん。ありがとう、ヴィータ。でも、それだったら私だって心配だよ。ヴィータもがんばり屋さんだから」
「心配には及ばねーって。アタシらは"身体の出来"が違うんだからよ」

 へへへ、と笑えば「またそんなこと言って……」と言わんばかりに、フェイトは軽く溜め息をついた。
 ホントのところを言うと、そうも言ってられない変化があるのは確かなんだけど、こればっかりは"アタシ達"だけの秘密だ。
 ――今のところはな。
 それを差し引いても、普通の人間よりは遥かに頑丈だし、ちょっとやそっとの怪我じゃ、死にやしない。少なくとも、近しい人間を、泣かせるようなことはするつもりねーし。

「じゃあな、フェイト。世話んなった」
「もう。変なところで他人行儀なんだから」

 ホントに優しい笑顔だ。少し困ったようにするところも可愛いと思う。
 この笑顔が曇らないよう、願わずにはいられないんだけど、仕事柄、そうも言ってられないだろう。
 自身の願ったこととはいえ、あんまり、ああいった荒んだことに出くわすことが多い仕事ってのは、フェイトにあわない気がすんだよな……

「また人手がいるようになったら言えよ。荒事ならアタシ等の得意とするところだからさ」
「うん。頼りにしてるよ、ヴィータ」

 えへへ、と可愛く笑うフェイトを見届けて、仕事場に戻ることにした。


 

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