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新婚なの! 12-5 (2)

 はやてに会ったのは、なのはの帰りが遅いって連絡があったから。
 今から思うと色々不安だったんだろうと思う。だから、はやてに会いたかったんだろう。
 都合さえつけば、いつだってはやてに会いたいんだけど、今回は特に積極的だったというか。
 凄く、今更だけど。
 帰り際にお土産を貰った。
 なんでも「一個しか買ってこられなかったから、内緒がええよ」らしい。
 珍しく気が利かないというか、ちょっとお粗末な感じだけど、偶にはそんなこともあるんだろうと思って、素直に頷いておいた。
 ただ、普通に饅頭が十個ぐらい入ってそうな大きさの箱だったから、ちょっとだけ気になった。
 饅頭なら、二人で半分ずつにしたら良いわけで、きっとそれが出来ないものなんだろう。
 そうなると、やたら大きいものになって、どちらにしろ、二人で分けることが出来そうな気がするんだけど……
 はやてからのお土産を、なのはに内緒で食べてしまう、というのは、案外気が引けた。

「なにかな。どっかの世界の名物だったり……名物に美味いものなし、とか言うけどさ」

 こっちの世界では珍しい、紙の包装を丁寧に開き、中の箱を開けてみると……普通に饅頭が十二個入ってた。
 なんだこれ?
 言われたこととの矛盾に首を傾げながら、真ん中においてある紙――お菓子の由来とか書いてあるアレ――を取り出してみる。
 そこには、この饅頭が、ミッドからちょっと離れた世界の名物だと書いてあった。縁起物らしい。
 はやては内緒にして、と言ってたけど縁起物だっていうなら、なのはにも食べさせてやんねーと―――

「……あっ。何か挟まってた」

 紙を広げようとしたところで、何かが落ちた。
 小さなカードだ。情報なんかを入れる、小さな指先ほどのもの。でもちょっと見たことない形だ。
 家で包みなおしたのだろうか。
 この包装紙が、その店の物なのか分からないし、今それを確かめる術はない。
 真偽は兎も角、はやての言う通り"なのはに内緒"にすることにした。
 気が引けるのは、変わらないけど……
 アイゼンに中身を覗いてもらう。
 アタシが明るくなかっただけで、アイゼンはその規格にばっちり対応してくれた。

「―――へえ」

 脳裏に映し出された情報には、はやてがここ数年で、見聞きしたり担当した事件の概要が記されていた。
 特に"ピックアップされているだろう"項目を辿っていくと、ミッドの郊外で起きた"事故"やら、本局が要請を受けてる事件が含まれていた。
 その中に、先日アタシが出かけた事件も入ってた。
 それらの多くはAMF絡みでありながら、その事実が大っぴらには公表されていないもの。
 気になることではあるけれど、正直なところ、その点については大して興味をそそられなかった。
 わざわざ、はやてが持ってきて、しかもこんな手の込んだ渡し方をしなくちゃいけないようには思わなかったから。
 AMFについては、充分に認識してるつもり。

「ゲンヤさんから情報回してもらったのかな。しかし、これはなあ……」

 その中で唯一、というか気になったのは"事故"の中で死者が数人でているところ。
 自分がパッと思いつく範囲、そんなのを見聞きした覚えはない。
 ただ、同じような事故をニュースで見たような気がする。ニュースでやるぐらいだし、結構酷い事故だったような……確か、直ぐにチャンネル変えちゃったんだっけ。
 でも、それでも、局員に死傷者が出てると言うなら、別に意味で関心があったはず。それなのに。
 もしそれが、誰かの手によるもので、その場にいた局員が、AMFのために防御を取れなかったとしたら。BJがあるとはいえ、万が一ってことはある。
 しかも、殉職の事実――事故として処理されてるのかも――を隠しているとすれば……
 しかし―――

「これで、一体なにを教えたかったのかな」

 はやての言わんとするところ。
 ミッドでの事件と、ここから少し離れた――言い方は悪いけど辺境というか――世界で、その数が多い。
 若しなにかあるとしても、地上本部のお膝元でやらかす意味が分からない。関係ないと考えても、偶然にしては多すぎる。
 そして、はやてが渡してくれたデータの、その記された期間。
 二年ほど前からのもので、それ以前にはなかったのか、それとも手に入らなかったのか。
 それの理由って―――なんだろう?

「アタシ達に気をつけろ……だったら直接言えば良いだけだし。うーん」

 さっぱり分からないけど、何だかもやもやしたモノだけが胸に残った。
 早く帰ってこいよ、なのは。一人じゃつまんないだろ……


  ◆


「明日もゆっくりめで良いのか?」
「うん。錬度の高い人たちを相手にするのって、たーいへんなんだもん」
「へん。楽しそうに言いやがって。そのシワ寄せがアタシに来てるってこと、ちゃんと覚えておけよ」
「はーい。ミッド一のお嫁さんをもらえたことに感謝してまーす」
「けっ。調子良いことばっか言いやがって。ほれ、寝るぞ」

 思ったより遅くならなかったものだから、なるべくご飯を早くにして、はやてから貰った饅頭を二人で三つずつ食べた。そんなに大きくないものだから、食後のデザートには丁度良いぐらいの大きさと数だった。
 はやてが選んだんだから、美味しいのは分かってたけど、なのはは饅頭について、色々講釈を垂れてくれた。流石は翠屋の娘ってところだろうか。
 和菓子――いや、そうと表現するのも変だけど――と洋菓子の違いはあっても、なにか通じるところがあるのかもしれない。
 残りの半分はまた今度食べることにして、今日も早々に寝ることにした。
 今はベッドの中にいる。

「今日も大変だったんだから」
「それはさっき聞いた。んでもさ。お前を相手に出来る陸の連中ってのはよ、頼もしい限りじゃねーか」
「だね。相手は地の利を生かして迫ってくるわけだから。地形とか仲間の特性とか連携とか……ホントよく理解してる」
「しかしよ。居残り訓練を申し出てくるなんて珍しい連中だな。普通は一日やったらクタクタだろ?」

 特にお前のは―――そこまで言いかけて、なのはの眉が顰められた……気がした。
 光源はアタシの頭の後ろにあるスタンドだけだし、なのはの表情が暗くて見えなかった、ということはない。
 ただ、あまりに一瞬で、そもそも、アタシの勘違いだという可能性も大きいので、勘違いだということにしておいた。

「疲れてるなら、ちゃんと言うんだぞ?」
「分かってるったらあ。ヴィータちゃんは五月蝿いんだから」
「う、五月蝿いって……おめーがちゃんと言わないからだろ。無茶はお前の専売特許みたいなくせによ」
「そんなことないったら。これでもちゃんと責任感とか出てきてるんだよ?」
「お前はそれがやりすぎなんだろ。もうちょっと手を抜くとか、誰かを頼るとか覚えろよなあ」

 ヴィータちゃんには言われたくないよ! なんて反撃されてしまって、なのはとしてはお互い様だとでも言いたいのだろうか。
 へん。うるせーよ。
 そんなに言われたくなけりゃ、もうちょっと回りをぐるっと見渡すようにしろっての。
 どんだけの人が心配してると思ってんだよ。

「えー。ヴィータちゃんは、私のこと、普段はいい加減だーって言うくせに」
「え? 違うのか?」
「違わないことはないけど……あ、ううん! 違うったらー」
「な、なにが言いたいんだよ」
「だからね。私が疲れてるの隠すわけないでしょ? ヴィータちゃんの言う通りなら」

 どうだ、と言わんばかりの態度に、アタシとしてはどう反応して良いものか迷う。
 そんなに威張ることじゃないだろ……
 まあ、なのはの言わんとすることも分かるけど、アタシが言いたいのはそう言うことじゃない。

「あのな。いざってとき、お前は隠すだろ。そうじゃないのか?」
「う、うーん」
「お前がな、疲れたって言わない時は、逆に心配なんだよ」
「そうかなあ。自分で言うのもなんだけど、あんまり我慢強いほうじゃないと思うんだ」
「アタシはお前ほど我慢するの好きじゃないね」
「私、別に好きでやってる訳じゃないんだけどな……」

 納得いかないとばかりに、口をへの字に曲げる。
 生まれながらの性分は、変えようがないって話なら分かるけど、良い大人なんだから、ちょっとはだな……と思うのも、人情だろ。
 ぶーぶーと、文句を言いたそうな顔をしていると思ったら、何かを思いついたらしく、パッと表情を変えた。
 どうせ碌なことじゃないだろうけど、仕方ないから聞いてやることにした。

「ヴィータちゃんにも怒られちゃうけど、悪いことばっかりじゃないんだよ」
「そりゃ、メリットもあるだろうけど? なんだ、言って見ろよ」
「あのね? こうやってヴィータちゃんと一緒になれたんだから、悪いことばっかりじゃないよ~」
「むー! なんだって抱きついてくんだよ! それに、そんな理由で一緒になるだなんて、良い迷惑だ!」
「え~、つれないなあ、ヴィータちゃんは」
「だから、その手を離せっての!」
「いーやー。だって、疲れてるんだもん。こうしてると一番落ち着くよ?」
「…………まあ、そう言った手前、離れろとは言えねーってことか?」
「ご名答」

 なのはの胸にすっぽり顔を埋められてしまって、身動きが取れない。
 ここで暴れて離れようとすると、逆に離すまいと腕に力が入るし、匂いに頭がクラクラするのが分かってるから、黙ってることにする。
 なのはの思惑通りになってるのは癪だけど、これも自分で招いた事態だから仕方がない。
 今日はやけにしっかり抱きついてくるし、寝巻き越しに耳に届く鼓動もなんだか早いような気もするから、アタシも手を回して背中を擦ってやった。
 どっちが先に睡魔に負けるか分からないけど、自分の意識のあるうちは、このまま続けてやろうと思いつつ目を瞑る。


 ◆


「――ん」

 一瞬、意識が途切れたような気がした。眠ってしまってたんだろうか。
 背中に回る、なのはの腕が弱い。感じる、鼓動もゆっくりになってる。
 気付かないうちに、寝てたようだ。
 抱いてるんだろうけど、殆んど力は篭ってない。けれど、離れられなかった。
 なのはが離そうとしてないのか、アタシが離れたくないのか。それは分からないけど、ただ、そう思った。

「なんか、なのはの顔を見たような気がしたんだけどな……」

 いつも通り、横に並ぶなのはの寝顔を見たような気がしたのに……やっぱり寝てたんだな。夢だったんだろう。
 でも、なんというか、夢を見るような、あの現実感のなさというか、そういうのがなかった。
 なんだったんだろう。
 あの、寂しそうななのはの顔。あれは本当に、夢だったんだろうか―――


 


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